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第七話 前編
臼井と亀田と栗原の作戦 8
しおりを挟む「遊園地は置いといて、金の話っすよ。猿渡はヤクザじゃないんで、グループも真っ当な会社。少々ブラックな企業体質らしくて、グループで危害を加えようなんて動きはしないはず。公になれば会社が傾くんで。危険なのは猿渡慎吾っす。あの道楽息子が任されているのは歓楽街の複数の店、そこは猿渡慎吾でも簡単に経営が出来る程、店長たちがしっかりしてるんで、管理をするだけっす。ただ、権力が大きいというとこが危険っすね」
「結局は、裏の組織と繋がりがあるとか?」
「そんな噂が出てきてるみたいっすね。絵美っちが猿渡慎吾と知り合って調べたから、あまり詳しくは無いっすけど。猿渡グループに裏の顔があるって噂があるのは、歓楽街に羽振りを効かせ出した猿渡のせいらしくて。親父さんがどう見てるか分からないけど、今のところは猿渡慎吾の思うがままになってるみたいで」
「その猿渡に、金を渡して危害を加えようとしたら止めるつもり?」
「いえ、猿渡慎吾に恩を着させるんす。猿渡慎吾にトラブルを起こさせて、莫大な金を払わなくてはいけない状況をつくる。そして猿渡慎吾は、それが親父にバレると自分の立場や将来が危うくなる。だから金を提示してピンチを救ってやります。貸すんですけどね。借金の事実と口封じで猿渡慎吾を大人しくさせる。どうっすか!」
臼井誠は亀田留衣を見ると、スマホを栗原優へ向けていた
「留衣、何してるの?」
「録音だよ。俺からしたら、状況の整理が追いつかなくて話を覚えられないから。こうやって録音しておくと、家で復習できる」
「さすが受験生」
「それを盗聴って言うんだぞ、少年」
犬神絵美たちはまだ戻ってくる気配がない
大丈夫だろうか、と臼井誠は心配になりビルを見上げる
亀田留衣が車の中でコソッと教えてくれた「犬神絵美は立花桃を殺そうとしてる」という計画を思い出し、止めなくてはいけない人物は猿渡慎吾ではなく、犬神絵美ではないのか、と不安になった
この計画を栗原優に伝えたら、犬神絵美を心配する彼は全力で止めるはず。
そうなれば、立花桃を探すメンバーから栗原優は外される可能性がある
しばらくは黙っておいた方が良いかもしれない
「ところで兄貴、猿渡のところへ八峰華澄も行ってしまえば、彼女もメンバーに加えるつもり?」
「いや、八峰さんは今回だけの特別なボディーガードだったから、ここで役目終わりかな」
「でも計画知ってたらマズくないっすか?」
「僕の能力は縁を切ることもできるんだ。だから、2人が戻ってきて、安全が確認されたら八峰さんとは、さよならだ」
有名人と縁を切る勿体なさを感じたが、仕方がない
これ以上、八峰華澄を巻き込むわけにはいかない
「誠さん、それは厳しいんじゃないかな」
亀田留衣が口を開いた
「俺は誠さんの能力を信じ始めているけど、本当に縁を切れるなら切った方が良いって、俺も思う。けど、八峰さんは猿渡にも会ってる。あんな有名人がこの先で猿渡に目をつけられて、今の記憶も全てなくなるとしたらそれはマズいよ。八峰さんは事が済むまで知っていたほうが安全だよ」
「確かに」臼井誠は納得する
「少年の意見は正しい。だが盗聴する犯罪者の意見は説得力がない」栗原優が難癖をつける
次の瞬間、エントランスから足音が聞こえ、三人はそちらへ振り返った
犬神絵美と八峰華澄が話しながら並んで歩いている
果たして、猿渡慎吾とどんな話で決着がついたのか
栗原優の作戦や犬神絵美の思惑を含め、この話し合いの結果が新たなスタートになる
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