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第七話 前編
臼井と亀田と栗原の作戦 7
しおりを挟む半袖、ハーフパンツ姿で器具に座っていた女性の名前が頭に記憶される
臼井誠は、額から汗を流す女性に声を掛けた
「頼みがあります、八峰さん」
不審者じゃないかと、周囲の男たちが近寄ろうと動いた時、八峰華澄が話し出す
「あら、臼井くんじゃない?こんな所に急に来て、頼みってなに?」
周囲は知り合いだと知らされると、まだ不審がるが、それ以上は近寄ろうとしなかった
女性の名前は八峰華澄(はちみね かすみ)、地元出身のオリンピック銅メダリストだ
メダルを獲得してからは引退したが、地元で選手育成に力を入れながら、自らも現役さながら鍛えている
引退した理由は臼井誠には分からないが、八峰華澄は地元の有名人であり、臼井誠もよく知っていた
「八峰さん、一生のお願いです。すぐそこにいる僕の友人の女性を守ってくれませんか?」
能力の効果があらわれた人間は皆、協力的になる傾向がある
八峰華澄もベンチプレスの器具から立ち上がり、臼井誠の言葉に了承する
急いで更衣室へ走り、着替えて来てくれた
鍛え抜かれた筋肉を隠すようなギャップある服装、出るとこがしっかり出たシルエット、今の状況には好都合だと臼井誠は判断の正しさを噛みしめる
2人で急ぎ車へ戻ると、まだ犬神絵美は居てくれていた
「お待たせ、犬神さん、この方を連れて行ってください。それなら大丈夫でしょ?」
犬神絵美の腕から手を離した栗原優が車から降り、八峰華澄を見て驚いた
「え、八峰華澄じゃない!?」
「そう、彼女は八峰華澄さん。レスリングの元オリンピック銅メダリストで、僕の友人」
犬神絵美は知らないらしく、首を傾げている
亀田留衣も後部座席から降りてきて「誠さん、そんな人ととも知り合いなの?」とまだ能力について信じていない様子で臼井誠に尋ねる
「この三人は僕の能力について知ってるからいいだろうけど、八峰さんは今知り合ったんだよ」
臼井誠が言ってのけると、八峰華澄が不満そうに言う
「臼井くんとは数年の付き合いなんですけど~」
「あ、そうでしたっけ!?」
笑って誤魔化す臼井誠をよそに、八峰華澄が他の三人に挨拶をする
そして、今の状況を臼井誠が説明すると、八峰華澄は快く了承してくれた
犬神絵美も最初は臼井誠を睨んではいたが、心強いボディーガードの登場、そして女性という条件に納得するしかなく、改めて臼井誠のアイディアに感心せざるを得なかった
「じゃあ、八峰さん行きましょうか。行きながら私との関係性を決めておきましょ」
そういうと2人は雑居ビルの中へ姿を消した
「いや~私服の八峰華澄って魅力的、スタイル良いな~」
栗原優が鼻の下をのばして言った
「でも、あれは全て筋肉だよ」
臼井誠が水を差す
「そんなこと言わないでよ~兄貴~」
「誰が兄貴だよ。まあ、これで一安心かな?」
「いや、これからが俺らの番っすよ、兄貴」
そう会話をしていると、後ろから亀田留衣が遅れてやって来る
「俺には分からないよ。誠さんがメダリストと友達だったり、栗原さんが誠さんの舎弟だったり」
「誰が舎弟だよ!」
「それより栗原くん。俺らの番って言ってたけど、僕らはこれから何をすれば良いのかな?」
「兄貴、亀田少年、君らは非常にツいている」
「は?」亀田留衣が睨みつける
「まあ少年、聞きたまえ。2人は知らないから教えるてあげるよ。俺の車を見て気付いて欲しかったが、俺には金がある」
キメる栗原優をみながら、ぽかんとなる臼井誠と亀田留衣
「うちの親父は大企業の社長でね。つまり、猿渡ってやつが猿渡グループを操作することがあれば、俺が対抗馬として猿渡の動きを封じ込める」
「凄いね!栗原さん」
「で、栗原くんの会社は何をしてるの?」
「遊園地の経営」
「…ああ、そりゃ息抜きにいいね」
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