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第八話 後編
立花桃、発見 3
しおりを挟む「亀田先輩!」
下校時の道すがら、亀田留衣が振り返って見た女子は知らない子だった
後輩の異性が自分に向かって小走りで来る姿、部活をしていない自分がいつか望んでいたであろう青春らしい光景だ
ただ、一体誰なのか分からない
まさか、告白!?
亀田留衣は僅か数秒の間であらゆる妄想を描いてしまう
長い髪をポニーテールにした女子高生が、少し息を切らしながら目の前で立ち止まる
「あの、亀田先輩で間違いないですよね?」
「そう、だけど」
違う、告白じゃない
顔と名前が一致しない告白なんてこの世にあるものか!
走ってもない自分の方が顔を熱くしてしまう
「先輩は、臼井さんの親戚ですよね?」
「そう、だけど」
会話の内容は的外れだが、よく見たら亀田留衣のタイプとして的を射ていた
「あ、ちなみに、先輩は犬神絵美さんって知ってます?」
「あの、君の名は?」
「私、雉本穂希って言います!雉本の雉は鳥のキジです」
亀田留衣は二ヶ月ぐらい前の話を思い出した
臼井誠や犬神絵美から、神から与えられたという能力や、それを使って自分の高校の生徒と繋がった話を聞いていた
まさか、その張本人から声を掛けられるなんて思ってもみなかった
「あの、思い詰めてる様に見えますけど、具合が悪いんですか?」
「いや、大丈夫。犬神だよね、一応知ってるけど…えっと、雉本の帰り道は駅方面?」
「はい、駅前からバスに乗ります。いつも自転車で通学してるんですけど、昨日盗まれちゃって。今日からしばらくはバス通学です」
「君、めっちゃ喋るな…まあいいや、じゃあ歩きながら、ちょっと話しようか」
「はい、私も聞きたいことあるんで」
雉本穂希と駅方面へ歩きながら、犬神絵美と会った時の話や、臼井誠について聞き出すことができた
だが、それはかなり不思議な内容だった
臼井誠とは知り合いだが、きっかけは思い出せないと言う
さらに、親戚が同じ高校に通っていることを知りながら、それを臼井誠から聞いたからだろう、という曖昧なものだ
今日声をかけて来たのは、もしかしたら、というこれもぼやっとした感覚で話しかけてきただけ
臼井誠の言っていた能力による記憶の書き足し、それを使われた人にしか分からない感覚だ
あとはそれぞれの性格によって、雉本穂希のように、臼井誠に関する人に接触するといった行動をとる者がいるのだろう
縁を切る、もしくは、期限が切れた時にどんな影響が出るのか、亀田留衣は気になってきた
今、臼井誠を通して繋がった人と話しているのだ
ただ、臼井誠と縁が切れた雉本穂希は、その後、自分と話している今を果たして覚えているのだろうか
能力が作用している間に交わした雑談も、例え遊びに行って思い出を作ったとしても、全て消えてしまうのだろうか
「先輩、良かったら連絡先、交換しません?」
いつか望んでいた青春のワンシーン、部活をしている連中を羨ましく思っていた寂しさが成仏する瞬間だ
亀田留衣にとって、臼井誠たちの問題はどうでも良かった
二ヶ月ほど連絡すらしてないが、自分は彼らと違う時代を生きているのだ、仕方がない
目の前には自分のタイプな後輩がいて、二人で並んで歩き、さらに時間もある
一日一日を大事にしなきゃいけない、人生で最も多感で、最も恋をしたい青春時代を今、生きているのだ
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