Change the world 〜全員の縁を切った理由〜

香椎 猫福

文字の大きさ
61 / 106
第十話 後編

立花と犬神

しおりを挟む


神様は一体何人いるのだろうか
様々な宗教があり、世界には様々な神様がいる
日本のように神社毎に神様が居たり、小さい頃には、まだ使える消しゴムを捨てようとした時に母親から「物を大事にしないと、消しゴムの神様が悲しむよ」と、自分の身の周りは至る所に神様が宿っていると教わり、少し窮屈に感じた
幽霊よりも多く存在している神様を、本当に感じることが出来たのは友人が亡くなった後だ
立花桃にとって、犬神里美は生涯付き合っていたいと思っていたほど、趣味趣向が合っていた
お互いに惹かれたものがあったのだろう
大人になってから出会ったのに、これまでの人生を一緒に歩んできたかのように、全てを話せる仲だった
しかし、まさか自分の為に死を選ぶとは想像もできず、その衝撃は心と頭に詰めてきたものを容易く吹き飛ばした
残された空っぽの体にある命は、果たして友人の命よりも大きく、大事にされるほどの価値があるのだろうか
もちろん答えはハッキリしている
どちらも誰かにとって大きく、自分にとっても価値があり、失ったら取り戻せない尊い命だ
では、なぜ犬神里美は命を絶つことを選んだのか
死人に口なしとは、残されたものにとって残酷なものだ
この葛藤を生涯にわたって繰り返さなければならない
唯一、知っていそうな妹の犬神絵美に尋ねようか迷ったこともある
犬神里美の葬儀が終わってしばらくは家にこもっていた立花桃が、意を決して犬神絵美に会いに行こうと出掛けた時、マンションのエントランスにスーツを着た男が立っていた
如何にも営業マンという雰囲気の男は、道を塞ぐようにエントランスの中央に立ち、爽やかな笑顔で立花桃に視線を向けてくる
それを避けて外へ出ようとオートロックのドアをくぐった時、声を掛けられてしまう


「あなたは、神を信じますか?」


宗教の勧誘か、と立花桃は勘付いて「もう神様はいるんで」と言いながら横を通り過ぎるが、男は背後から驚いた声で応えてくる


「え、もう繋がっているんですか?」


繋がってる?それは信じているという意味だろうか
マンションの外へ出て、駐車場へ向かっていると、妙な違和感を覚えた
視線の先、住宅街の十字路に自転車に乗った女性が見えるが、道を塞いでいる
しかも、両足がペダルに乗ったまま止まっているのだ
気味が悪いなと感じ、振り返ってみると、反対側の十字路には点滅信号が設置されているが、こちらに向かって点滅しているはずの黄色信号が点灯したままになっている
次の瞬間、その視界に先程の男が現れ、こちらへ歩みを進めてくる
立花桃の足は本能的に自分の車へ向かって後退していた
バッグからリモコンキーを取り出し、ドアロックの解除を試みたが、反応した音が聞こえてこない
振り返ってみて、手を伸ばしてもう一度ボタンを押しみるが、やはり反応しない


「あの、心配しなくて大丈夫ですよ」


男が声を掛けてきた
信用できるわけがない
車に辿り着き、すぐに運転席へまわってドアのボタンを押したがやはり反応せず、無駄に取っ手を引っ張ってしまう
普段は防犯ブザーが鳴るものの、何度引っ張っても鳴らない
リモコンキーの電池切れ、車のバッテリーがあがってる、など電気系にツキがないんだと嘆いた


「立花さん、落ち着いて下さい。時間を止めているせいです」


男が近くで足を止めて話しかけてきた


「なんで私の名前を知ってるの?」


「僕は鬼塚悟史(おにづか  さとし)、あなたを救いに来た、神の使いです」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

神楽坂gimmick

涼寺みすゞ
恋愛
明治26年、欧州視察を終え帰国した司法官僚 近衛惟前の耳に飛び込んできたのは、学友でもあり親戚にあたる久我侯爵家の跡取り 久我光雅負傷の連絡。 侯爵家のスキャンダルを収めるべく、奔走する羽目になり…… 若者が広げた夢の大風呂敷と、初恋の行方は?

火輪の花嫁 ~男装姫は孤高の王の夢をみる~

秦朱音|はたあかね
キャラ文芸
王を中心に五家が支配する、綺羅ノ国。 五家に覡(かんなぎ)として仕える十六夜家の娘、久遠(くおん)は、幼い頃から男として育てられてきた。 都では陽を司る日紫喜家の王が崩御し、素行の悪さで有名な新王・燦(さん)が即位する。燦の后選びに戦々恐々とする五家だったが、燦は十六夜家の才である「夢見」を聞いて后を選ぶと言い始めた。そして、その夢見を行う覡に、燦は男装した久遠を指名する。 見習いの僕がこの国の后を選ぶなんて、荷が重すぎる――! 久遠の苦悩を知ってか知らずか、燦は強引に久遠を寝室に呼んで夢見を命じる。しかし、初めて出会ったはずの久遠と燦の夢には、とある共通点があって――? 謎に包まれた過去を持ち身分を隠す男装姫と、孤独な王の恋と因縁を描く、和風王宮ファンタジー。 ※カクヨムにも先行で投稿しています

裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する

克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。

白苑後宮の薬膳女官

絹乃
キャラ文芸
白苑(はくえん)後宮には、先代の薬膳女官が侍女に毒を盛ったという疑惑が今も残っていた。先代は瑞雪(ルイシュエ)の叔母である。叔母の濡れ衣を晴らすため、瑞雪は偽名を使い新たな薬膳女官として働いていた。 ある日、幼帝は瑞雪に勅命を下した。「病弱な皇后候補の少女を薬膳で救え」と。瑞雪の相棒となるのは、幼帝の護衛である寡黙な武官、星宇(シンユィ)。だが、元気を取り戻しはじめた少女が毒に倒れる。再び薬膳女官への疑いが向けられる中、瑞雪は星宇の揺るぎない信頼を支えに、後宮に渦巻く陰謀へ踏み込んでいく。 薬膳と毒が導く真相、叔母にかけられた冤罪の影。 静かに心を近づける薬膳女官と武官が紡ぐ、後宮ミステリー。

処理中です...