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第十一話 後編
臼井と犬神のパレード 3
しおりを挟む観覧車は遊園地には欠かせない
展望台としての役割、楽しい遊園地の場所はここだよ!と伝えてくれるシンボルになる
御島崎遊園地の観覧車は真っ白だ
「不易流行(ふえきりゅうこう)色!これなら周辺がどんな発展をしても邪魔しないし、子供たちは乗り込む色に迷わなくて済む」
以前、栗原優が説明してくれていたが、そもそも御島崎遊園地に栗原優は何も関わっていない
栗原優が社長になったら手柄を奪われそうで、一緒に働きたくはないなと臼井誠は思っている
ようやく辿り着いた観覧車の乗降口近くで、臼井誠は時間を待つだけになる
ただ、ここに居続けると写真撮影のチャンスタイムのように人が来そうな予感がした
立花桃も観覧車に向かっていたと聞いていた為、予め手に入れていた服装などの情報を頼りに、周囲を見渡して探し始める
すると、館内放送が流れ出す
「ご来園の皆様、まもなく、午後三時より、キャラクターたちによる、パレードが始まります。ご来園の皆様は…」
イベントを知らせる放送で、来園者たちにパレードを行う場所の説明があり、緊張感が高まってきた
すると、臼井誠の前方に衝撃の光景が目に入ってくる
観覧車を指差しながら歩いてくる二人の若いカップル
亀田留衣と雉本穂希だった
シマリスの着ぐるみの中で臼井誠は叫びそうになる
二人がいつ深い関係になったのか、そんな話を聞いたことがなく、ショックを受けた
近付いてくる二人に焦るが、観覧車から離れられない状況にジタバタしてしまう
気付かれたのか、犬神絵美から無線が入る
「あんた、おしっこ行きたいの?」
「違います!…あの、留衣君と雉本さんが一緒に歩いていて。こっちに近付いてきてるんです」
「……ああ、あの子!へえ~、亀田君と付き合ってるの?」
「遊園地に来る男女で付き合ってない関係があります?」
「あるわよ。あら、あんた童貞?」
このタイミングで、ついに亀田留衣と雉本穂希に捕まった
「あ、リスさん。一緒に写真良いですか?」
久々に雉本穂希の声を聞いた
シマリスは黙って頷き、喜ぶ雉本穂希に罪悪感が込み上げてくる
中身が臼井誠と知ったら、この写真は消去されるんだろうなあと想像しながら、亀田留衣のスマホで撮影が行われる
そして次に亀田留衣が近付いてくると「俺も撮ってもらおうかなあ」と言いだした
「え~先輩、意外にこういうの好きなんだあ」と雉本穂希が返して「素直に可愛いじゃん」と亀田留衣が照れ笑いする
二人でキャッキャと楽しんでみせる光景に、思わず腹が立った臼井誠は、地面を片足で強く踏みつけた
「ん?今、このリス怒ってなかった?」
亀田留衣が睨んでいる
マズい、と臼井誠は固まってしまった
「そんなことないでしょ~!ねえ、リスさん?」
うんうんと頷いてみせる、シマリス臼井誠
無事に撮影が終わり、二人は観覧車に乗る前にパレードを見ようと言いながら去って行った
あえて静かだった犬神絵美から無線が入る
「なかなか…面白いもの見せてもらったわ」
「こっちは地獄ですよ。知ってる二人が自分に気付かずイチャついてるんですから!」
「いや、興味深い光景でしょ。あんた分からないの?」
「童貞ですから」
「違う!関係ないから。親戚の亀田君はいいとして、能力で繋がった穂希ちゃんは、着ぐるみを着た臼井、つまり姿が分からない臼井であれば、能力で繋がってても効果は無いってこと」
「どういうメリットが?確かに他にも能力で繋がってた人たちと写真撮って、気付かれてなかったみたいですけど」
「それを早く言いなさいよ、この童貞」
「関係ないって言ったでしょ!」
「…とにかく、その姿なら立花の能力が働かずに近付けるかもしれない」
「なるほど」
「栗原の計画は成功してる。最初の予定通り、まずは立花に接触してみて」
臼井誠の視界に、人が増え始めてきた
この姿は足止めを受けるデメリットがあるが、早く立花桃を見つけよう
臼井誠のモチベーションは上がっていく
ふと、観覧車の乗降口へ体を反転させ、視線を付近へ向けてみる
伝えられている立花桃の顔の特徴と、来園した時の服装を思い出す
白のワンピースの下にデニムパンツを履き、茶色のカバンを手に持っているらしい
「……発見した」
ついに、臼井誠と立花桃が対峙する
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