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「お気づきではないようですが、セイ様は対等に接する相手のボーダーラインが結構高い。ある一定の結果をなした時に初めて認識してもらえる。認めてない者が何をしでかしても気にも止められない。怒らないというより無関心なのではないかと愚考しています」
「怒ることは相手への期待があるから。期待することを辞めた結果が現状です。怒りに無駄な労力を使わず。実質的な対応に力を注いだ方がより建設的だと気づいてからは、意識してするようになりましたし」
ステファンの思い違いだと説明しているはずが、理論を補強している。
自分では気づきえない意外な一面というより、悪癖というべきものかな。
自分のことへ意識が向いていてステファンの反応を見逃していた。
全く期待されて無かったことを暗に告げられたようなものだった。
なんとなく察しているのが事実だと、頭では理解しても感情はやはり別だ。
顔色がサッと変わったことにグレンは気づいて注意を喚起させてくれたが、目を向けた時にはもう元に戻っていた。
彼もまた、若くして官僚になっただけに感情を相手に気取らせない術に長けている。
しかし、長い付き合いだけに目に浮かぶ感情を読みとることは可能だ。
「今のは失言だ。日々の生活をより良くするのが領主である私の役割であり、生き甲斐だったから。私の跡を継げる人材育成も同時に必要だった。故に領民に教育を義務付けたし、それに対しての反発があることも想定内だった」
その当時の事を告げ、だから何をしても敢えて怒らなかったと説明した。
はっきり言ってステファンには期待している。
跡を任せる為に根回しもある程度済ませているから、行き違いで失望して去られたくはない。こちらの都合ばかりだが、領主でいられるうち全て完了させておかなければ領民たちに迷惑をかけることになる。それだけは避けたかったのだ。
「それで今日来て貰ったのは、これを渡したかったからだ。出来れば断わらないでくれると助かる」
「拝見致します」と急な話題変換に妙な顔をしながら、渡された書類に目を通していた。しばらくしてこちらへ向けた表情は、官僚としては失格と言いたくなる程だった。
「そんなに驚くことでもないだろう。以前から次期領主への引き継ぎに関する書類や討論に加わっていたから、そろそろ交代の時期と理解していただろう?」
そう振ったが、未だ口をパクパクして声が出てこないみたいだ。
自分に白羽の矢が立つとは思わなかったのが逆に謎だ。
見渡しても他に適任者はいないというのに。
他に誰を候補と考えていたのかと想定できる相手を思い浮かべていたら、立て直したステファンが「なんの冗談ですか!?」と少々キレ気味に抗議してきた。
「冗談ではない。逆に他に適任者がいるのか?」
「私は農夫の次男です。貴族でもない。領主なんて誰も認めません!」
「別段、生まれや育ちがどうでも問題ないだろう。要は領地を治められるかどうかだけが重要で他は瑣末なことだ。違うのか?」
「建前はそうでも、実際にはそれでは罷り通りません。無茶は言わないで下さい」
「その無茶は、私の一存で幾らでも通せる。故に出来るか否かのみ訊いている。能力的に無理だというなら他を当たるが、出来ないのか?」
拉致があかないから、敢えて煽ってみた。
感情的になっていたから出来ないとは言ってないと希望通りの言質がとれた。
これで次代が決まった。満足気な笑みを見て、ステファンが我に返ったようだ。
残念ながら、了承した以上反論は聴くつもりはない。
「快く応じてくれて良かった。外野への対応はこちらでしておくから、安心して引き継ぎ作業の方に力を注ぎなさい」
引導を渡しているのをグレンが気の毒そうにみていた。
「怒ることは相手への期待があるから。期待することを辞めた結果が現状です。怒りに無駄な労力を使わず。実質的な対応に力を注いだ方がより建設的だと気づいてからは、意識してするようになりましたし」
ステファンの思い違いだと説明しているはずが、理論を補強している。
自分では気づきえない意外な一面というより、悪癖というべきものかな。
自分のことへ意識が向いていてステファンの反応を見逃していた。
全く期待されて無かったことを暗に告げられたようなものだった。
なんとなく察しているのが事実だと、頭では理解しても感情はやはり別だ。
顔色がサッと変わったことにグレンは気づいて注意を喚起させてくれたが、目を向けた時にはもう元に戻っていた。
彼もまた、若くして官僚になっただけに感情を相手に気取らせない術に長けている。
しかし、長い付き合いだけに目に浮かぶ感情を読みとることは可能だ。
「今のは失言だ。日々の生活をより良くするのが領主である私の役割であり、生き甲斐だったから。私の跡を継げる人材育成も同時に必要だった。故に領民に教育を義務付けたし、それに対しての反発があることも想定内だった」
その当時の事を告げ、だから何をしても敢えて怒らなかったと説明した。
はっきり言ってステファンには期待している。
跡を任せる為に根回しもある程度済ませているから、行き違いで失望して去られたくはない。こちらの都合ばかりだが、領主でいられるうち全て完了させておかなければ領民たちに迷惑をかけることになる。それだけは避けたかったのだ。
「それで今日来て貰ったのは、これを渡したかったからだ。出来れば断わらないでくれると助かる」
「拝見致します」と急な話題変換に妙な顔をしながら、渡された書類に目を通していた。しばらくしてこちらへ向けた表情は、官僚としては失格と言いたくなる程だった。
「そんなに驚くことでもないだろう。以前から次期領主への引き継ぎに関する書類や討論に加わっていたから、そろそろ交代の時期と理解していただろう?」
そう振ったが、未だ口をパクパクして声が出てこないみたいだ。
自分に白羽の矢が立つとは思わなかったのが逆に謎だ。
見渡しても他に適任者はいないというのに。
他に誰を候補と考えていたのかと想定できる相手を思い浮かべていたら、立て直したステファンが「なんの冗談ですか!?」と少々キレ気味に抗議してきた。
「冗談ではない。逆に他に適任者がいるのか?」
「私は農夫の次男です。貴族でもない。領主なんて誰も認めません!」
「別段、生まれや育ちがどうでも問題ないだろう。要は領地を治められるかどうかだけが重要で他は瑣末なことだ。違うのか?」
「建前はそうでも、実際にはそれでは罷り通りません。無茶は言わないで下さい」
「その無茶は、私の一存で幾らでも通せる。故に出来るか否かのみ訊いている。能力的に無理だというなら他を当たるが、出来ないのか?」
拉致があかないから、敢えて煽ってみた。
感情的になっていたから出来ないとは言ってないと希望通りの言質がとれた。
これで次代が決まった。満足気な笑みを見て、ステファンが我に返ったようだ。
残念ながら、了承した以上反論は聴くつもりはない。
「快く応じてくれて良かった。外野への対応はこちらでしておくから、安心して引き継ぎ作業の方に力を注ぎなさい」
引導を渡しているのをグレンが気の毒そうにみていた。
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