傍観者を希望

静流

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ライカは呆然自失状態でも、所作は綺麗でマナーにも間違いがない。

何処に連れて行っても問題ない。

こんな状況下でなければ、素直に喜べたが、薬師塔の者は皆お通夜のような雰囲気で、只管どんよりと暗い。

済んだことと流したいが、もう直ぐ第二波が来る。
予想通り此方に足早に向かっているのが、簡易で張った結界から伝わってくる。

ここが王宮内の禁足地であるのが、今回騒ぎを大きくしていた。
内々で終わらせてしまいたいが、そういう融通性は期待できない環境下だ。

煩わしさに溜息が出そうだが、この場ですれば更に相手を追い詰めそうで怖い。
内心散々文句を言っても、口から出す気はない。

言霊という言葉もあるが、私の場合には精霊が反応する引き金に近い。
下手に言葉にして、騒動を拡大するのは遠慮したいのだ。

足音を響かせるように近付いてくる、陛下と宰相殿の姿が見えてきた。

他の面々は、サッと音まで揃いそうな勢いで跪いて礼をする。
そんな中で、一人立ち上がって礼をするのは私だけだ。

「転移があった様だが、問題ないのか?」

やはり、王宮内にも張り巡らせている結界に、反応があったのが来訪の理由だった。

挨拶もすっ飛ばして、訊きながら、目は忙しなく辺りをサッと確認している。


「お騒がせして申し訳ありませんが、特に問題はありません。少々行き違いがあり、報告が遅れたせいで、ご迷惑をお掛けしました」

当たり障りのない説明で済ませるが、誤魔化している訳でもないのは伝わったようだ。

安堵した風に、椅子に腰掛けて、漸く跪いている方へ目を遣る。


「客人が多いようだが、何かあったのか?ああ、礼は不要だ座りなさい」

半ば態とらしく聞こえる解除の一言に眉を寄せた。


到着早々に、私には手で不要だと礼を解かせていた陛下が、他の者には長く跪かせたのは意味があるのかと疑念が湧く。

今回の騒動に対する罰にしては細やかだ。


陛下が態々飛んで来るような騒ぎを引き起こして、今の一言で納得したとは言い難い。

だが、精霊の子を追い詰めるような真似もしない。

その分、側仕えや客人への当たりは強いのも確かだ。


「薬師塔勤務の二人を、緑雲宮で雇い入れる事にして呼んだ次第です」

「そうか」
それでと言うように、目を向けながら、アルフレッドが用意したお茶を口に運んでいる。

納得がいくまで腰を据えて聴く構えに、ヒクリと口の端が引き攣った。

礼儀作法の試験も兼ねて東屋に招き、調査を依頼していた者の不注意で誤って緑雲宮に転移したことを説明した。

口を一切挟まず静かに聴いていたが、無反応なのも怖い。

重々注意し、今後は気を付けると告げたところで、漸く頷いた。


「事の顛末は解った。私の下への報告は、間に合わなかったが、許可を先に出した以上は不問にしよう。ただ、次はないと理解して行動を自粛するように」

ライカに向けて警告をするに留め、「賑やかになりそうだな」とニヤリと笑ってみせる。
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