傍観者を希望

静流

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「見解の相違を、互いに主張した所で時間の無駄です。私は、好きでやった事に礼をされても困ります。しかし、陛下も受けた恩義は返したい。これでは、幾ら話し合っても平行線です。そもそも、今回の交渉における貸付に関してから逸れています」


「それは解っているが、こういう機会でもないと、付け込む隙がない方が悪い。茶会の席で話を振っても、お気遣いなくと躱すだろう。その癖、陰で動いて問題を未然に防いでいる。これでは、何時になったら礼が出来るんだ…。恩義が、雪だるま式に増えていくだけなのだぞ」


憮然と拗ねた物言いは、どこか子供染みている。

最後は愚痴になり、ボヤいている始末だ。


ここ迄いくと、独り言の様相をていして、此方の意見は求めていない。


「陛下、その言い方ですと、子供の我儘と大差ない様に聴こえますよ。難癖を付けて、恩の押売りをするのは、迷惑だとお解りでしょう?」


「だが、他に方法がなければ、誘惑に駆られるのも人の性だと思うがな。指摘されれば、逆効果だと理解できるのだが、やっている時には最善だと捉えているものだよ」

肩を竦めて、悪かったなと詫びてきた。

結局は、陛下が一歩引くことで纏まったが、双方スッキリとはいかなく。

何となくモヤモヤ状態のままだ。


「陛下を子供扱い出来るのは、セイ殿くらいですよ。陛下も形無しですな」

横で傍観していた宰相殿が、苦笑して陛下を余計に扱き下ろしている。

宰相殿には言われたくないと思うが、倍返し以上になって返ってくると解っていて、突っ込むほど物好きではない。


「おや、何か言いたげですが、どうかされましたか?」


「いや、何でもない。それよりも、話し合いは終了でいいかな。大臣擬きと大国の話は、その証拠で充分だろうし、それに伴う交渉も済んだと思うのだが、まだ何かあるか?」


勘の良い宰相殿の機先を逸らし、確認する方向に話題を変える。


「そうですね。また何かありましたら、話を伺いに来るかもしれませんが、今日はこれ以上用件はないです。長々と、居座って済みませんでした」


あっさりと引き、迷惑を掛けたと詫びを入れてくる。

年長者から、深々と頭を下げられるのは居心地が悪い。


妙に悪い事をしている様な、罪悪感を覚えるのだ。

とはいえ、拒否するのは立場上、無理なことも知っている。


「相変わらず、慣れないのですか?申し訳ないのですが、こればかりは諦めて貰うほかありません。礼節の一種だと受け流して下さい」


此方の様子に、困ったように助言してくるが、慣れる方が怖い気もする。

形式美の一種なら、一連の流れ全てが当てはまりそうだ。


する側が良かったかと訊かれれば、其れはそれで遠慮したくなる。

なにしろ、決まりが事細かくあるので、覚えるのが大変な上に、失敗した日には目も当てられない状況になる。

体面を損なっただの、面子が潰されたなどの問題へ発展してゆき、個人ではなく家対家か、国家間の大事にまで、展開する危険性を含んでいる。


何方も微妙なのだが、される方が多少は気楽に思える。

相手の粗相に気付かなくても、別段問題ない。

その上、知らないうちに株が上がっているのだ。

理由は、粗相を咎めない寛容な方だとのことだ。

事実無根だが、良いように勝手に解釈されて、褒められる。

人は見たいように観て、評価する生き物だといういい例だ。


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