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私が気になったのは、学園で傅かれるという点だった。
学園内で、家柄の上下関係があるのかと驚いたのだ。
大人社会以上に、明確な差をつけているようだ。
学園自体は、平等を求めているが内実は真逆で、平民と貴族で先ず使用可能なトイレなどが別になっている。
貴族も王族や公爵家は全てに於いて優先され、男爵と子爵は冷遇されている。
下位の者は下手に目立てば、目を付けられる。
ただ、上手くいけば後ろ盾を得る機会にもなるが、出る杭は打たれるで排除される怖さも含んでいる。表裏一体の賭けだ。
それだけに、没落寸前の貴族にとっては、大事な売込みの場になっている。
逆に、ステファンの様に優秀な平民は、入園前から学園側に根回ししておけば、特待生として一定の優遇措置や保護対象の恩恵に預かり、権力争いから一歩引いた位置におかれて安全に過ごすことも可能だ。
因みに、平民と特待生は礼節に関して、割と大目にみて貰える。
貴族階級外という意味で、別枠扱いになるようだ。
最低限の礼儀作法を守っている相手に、難癖を付けるような行為は逆に恥だという。
貴族らしい思考の結果、平民達には寛容な対応になったのだ。
その一方で、貴族階級内の上下関係は年齢も関係なく、一年に三年の先輩が傅いても当然だという雰囲気がある。
年長者を敬うという、ごく一般的な礼節は加味されない歪さがあるのだ。
この環境で学んで、謙虚さや慎み深さをどう養うというのだろう。
公爵家の生まれなら、入園から卒業までの間ずっと傅かれて、その状態に慣れきってしまうだろう。逆に、優遇されなければ、怒るのではないだろうか。
彼等を不愉快だと非難する前に、学園のありようを考え直した方が建設的だ。
つい、「他国の学園なども参考にして、改善案を出して貰ったら如何でしょうか」と話を振ってしまう。
その瞬間、罠に嵌ったと悟り、顔を顰めた。
注意していたのに、確りと陛下の術中に絡め取られている。
これだから、政治の中枢にいる人間は苦手なんだと、嘆いたところで逃げ道は用意されてない。
茶会などで、愚痴の様に漏らしては、此方の反応を見て、隙あらば引き摺り込むのだ。
引っ掛かる私にも問題があるが、政治的関与は駄目だと禁止しておいて、巻き込んでくるのは可笑しくはないか。
その頭脳が惜しいと、解決案を練らされた事もある。
「陛下、私をいい様に利用してませんか?単なる茶会で、済ませたいのですがね」
前例があるだけに、ジトーと睨んでも、効果なく笑って躱して下さる。
「まあ、そう怒るな。今後、建国祭などで他の貴族と会った際に、不快な思いをする可能性を下げる為だ」
自分の為にもなるぞと述べているが、結局は国の品位を守るのに、一役買えと言っている様なものだ。
第一、公爵位の精霊の子を、不快にさせるような事態が、本当に起こるとは想定してないだろう。
冷めた視線には、流石に不味いと判断して頭を下げてくる。
「訂正する。どうか、学園の綱紀を改善する案を検討して頂きたい。セイ殿の柔軟な発想が、年寄りの凝り固まった思考を解かすの役立つ筈だ」
最終手段で、陛下が頭を下げてくるのは、狡くはないのか。
ヒクリと口の端が引き攣る。
選択の猶予すら与えないやり方に、苛立ちを覚える。
とはいえ、此方が了承しない限り、陛下は頭を上げないだろう。
強迫紛いだが、本来頭を下げるべきではない方に、此処までされては断れない。
溜息混じりで了承すれば、多少は申し訳なさそうだが、満面の笑顔で「頼む」と言われる。
宰相殿は横で苦笑している。
陛下に「頭をそう簡単に下げるのはお辞め下さい」と以前は注意していたが、言うだけ無駄だと達観している。
私に方に憐むような目を向け、軽く頭を下げてくる。
陛下の所業を止められない事への、謝罪を兼ねているようだ。
立場的に、陛下を非難する様な物言いが出来ないから、無言で詫びてくるのだ。
割と言いたい放題に見えて、線引きがあるようなのが意外でもある。
最も、他の臣下が見れば驚くような態度をとるのは、緑雲宮だけなのだという事実は、私だけが知らなかった。
学園内で、家柄の上下関係があるのかと驚いたのだ。
大人社会以上に、明確な差をつけているようだ。
学園自体は、平等を求めているが内実は真逆で、平民と貴族で先ず使用可能なトイレなどが別になっている。
貴族も王族や公爵家は全てに於いて優先され、男爵と子爵は冷遇されている。
下位の者は下手に目立てば、目を付けられる。
ただ、上手くいけば後ろ盾を得る機会にもなるが、出る杭は打たれるで排除される怖さも含んでいる。表裏一体の賭けだ。
それだけに、没落寸前の貴族にとっては、大事な売込みの場になっている。
逆に、ステファンの様に優秀な平民は、入園前から学園側に根回ししておけば、特待生として一定の優遇措置や保護対象の恩恵に預かり、権力争いから一歩引いた位置におかれて安全に過ごすことも可能だ。
因みに、平民と特待生は礼節に関して、割と大目にみて貰える。
貴族階級外という意味で、別枠扱いになるようだ。
最低限の礼儀作法を守っている相手に、難癖を付けるような行為は逆に恥だという。
貴族らしい思考の結果、平民達には寛容な対応になったのだ。
その一方で、貴族階級内の上下関係は年齢も関係なく、一年に三年の先輩が傅いても当然だという雰囲気がある。
年長者を敬うという、ごく一般的な礼節は加味されない歪さがあるのだ。
この環境で学んで、謙虚さや慎み深さをどう養うというのだろう。
公爵家の生まれなら、入園から卒業までの間ずっと傅かれて、その状態に慣れきってしまうだろう。逆に、優遇されなければ、怒るのではないだろうか。
彼等を不愉快だと非難する前に、学園のありようを考え直した方が建設的だ。
つい、「他国の学園なども参考にして、改善案を出して貰ったら如何でしょうか」と話を振ってしまう。
その瞬間、罠に嵌ったと悟り、顔を顰めた。
注意していたのに、確りと陛下の術中に絡め取られている。
これだから、政治の中枢にいる人間は苦手なんだと、嘆いたところで逃げ道は用意されてない。
茶会などで、愚痴の様に漏らしては、此方の反応を見て、隙あらば引き摺り込むのだ。
引っ掛かる私にも問題があるが、政治的関与は駄目だと禁止しておいて、巻き込んでくるのは可笑しくはないか。
その頭脳が惜しいと、解決案を練らされた事もある。
「陛下、私をいい様に利用してませんか?単なる茶会で、済ませたいのですがね」
前例があるだけに、ジトーと睨んでも、効果なく笑って躱して下さる。
「まあ、そう怒るな。今後、建国祭などで他の貴族と会った際に、不快な思いをする可能性を下げる為だ」
自分の為にもなるぞと述べているが、結局は国の品位を守るのに、一役買えと言っている様なものだ。
第一、公爵位の精霊の子を、不快にさせるような事態が、本当に起こるとは想定してないだろう。
冷めた視線には、流石に不味いと判断して頭を下げてくる。
「訂正する。どうか、学園の綱紀を改善する案を検討して頂きたい。セイ殿の柔軟な発想が、年寄りの凝り固まった思考を解かすの役立つ筈だ」
最終手段で、陛下が頭を下げてくるのは、狡くはないのか。
ヒクリと口の端が引き攣る。
選択の猶予すら与えないやり方に、苛立ちを覚える。
とはいえ、此方が了承しない限り、陛下は頭を上げないだろう。
強迫紛いだが、本来頭を下げるべきではない方に、此処までされては断れない。
溜息混じりで了承すれば、多少は申し訳なさそうだが、満面の笑顔で「頼む」と言われる。
宰相殿は横で苦笑している。
陛下に「頭をそう簡単に下げるのはお辞め下さい」と以前は注意していたが、言うだけ無駄だと達観している。
私に方に憐むような目を向け、軽く頭を下げてくる。
陛下の所業を止められない事への、謝罪を兼ねているようだ。
立場的に、陛下を非難する様な物言いが出来ないから、無言で詫びてくるのだ。
割と言いたい放題に見えて、線引きがあるようなのが意外でもある。
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