136 / 292
136
しおりを挟む
「気付かない内に、此処もだいぶん変わったな。昔は、休憩所ではなく物置だった」
見渡しながら感慨深気に呟く。
「此処が、物置だったのですか?」
綺麗に整備され、テーブルや椅子まで置かれている場所を手で示しながら、尋ねてくるが、不思議そうな顔をしている。
マーカスが来た頃には、物置も無かったのかもしれない。
「ああ、今では別途倉庫があるが、最初は無かったからな」
説明しながら、座るよう促し自分も腰掛けた。
「園長様から、ここは領主様と創り上げたと伺ったことがあります。その頃の事でしょうか?」
また呼び名が元に戻ってしまったが、無理強いするほどの事ではないと、聞き流す。
「いや、それから、2、3年後だな。その当時は、領主館に道具を置いていたが、大きくなると道具は増えるし、持ち運びが難しくなって物置を作った筈だ」
「では、倉庫はいつ頃建てられたのですか?」
「確か…2年前位だと思うが、定かではないな。気になるようなら、アリサか古参の者に確認してみるといい」
微妙な頷きに、素直な事でと内心苦笑した。
恐らく、大して興味もないが、話題に困った結果、私の呟きに便乗したのだ。
嘘でも「そうします」と応じない辺り、生真面目さがでている。
「まあ、それはいいとして。学園は行きたくないか?それとも、行くのが怖いのかな」
前置きもなく、直球で問われて目を見張っている。
どうでもいいのだが、大きな目が零れ落ちそうな開きっぷりの方に、目がいってしまい、表情の変化を見落としてしまう。
「どちらも一緒では?その話題は聞き飽きました」
先程までの友好な態度が、一変して堅い声音だ。
どうも、警戒されてしまったようだ。
「そうか?私は単に勉強が嫌なのか、学ぶ場所に行くのが怖いのかを尋ねただけだが、他に警戒する点でもあるのか?」
余計に目が三角になってしまったが、図星のようだ。
アリサも昔、同じような態度だった。
一緒に生活をしていると、妙なところが似るようだ。
「そんなに行く必要があるのですか?」
ムスッと拗ねた物言いだが、子供にしては自制が効いている。
「いや、ないな。別に、無理してまで入学する必要はない」
「っえ?あの、入学の説得では?」
「妙な事を訊くな。私は、無理強いする趣味はないが、ただ興味があって問うているだけなんだが」
拍子抜けしたようで、困惑しだす様子は、幼く感じさせた。
「学ぶことは好きです。でも…」
「学園で学ぶのは嫌ということかな?」
言い淀むマーカスの後を、補填するように問えば、眉尻が下がっている。
「申し訳ありません」
「謝るような事でもないよ。実際、アリサも候補だったが、あの性格故に辞退したと言うよりは、辞退させたが正しいな」
「…辞退させたのですか?」
マーカスは、怪訝な顔で訊き返してくる。
内心ニヤリと、ほくそ笑んだ。
見渡しながら感慨深気に呟く。
「此処が、物置だったのですか?」
綺麗に整備され、テーブルや椅子まで置かれている場所を手で示しながら、尋ねてくるが、不思議そうな顔をしている。
マーカスが来た頃には、物置も無かったのかもしれない。
「ああ、今では別途倉庫があるが、最初は無かったからな」
説明しながら、座るよう促し自分も腰掛けた。
「園長様から、ここは領主様と創り上げたと伺ったことがあります。その頃の事でしょうか?」
また呼び名が元に戻ってしまったが、無理強いするほどの事ではないと、聞き流す。
「いや、それから、2、3年後だな。その当時は、領主館に道具を置いていたが、大きくなると道具は増えるし、持ち運びが難しくなって物置を作った筈だ」
「では、倉庫はいつ頃建てられたのですか?」
「確か…2年前位だと思うが、定かではないな。気になるようなら、アリサか古参の者に確認してみるといい」
微妙な頷きに、素直な事でと内心苦笑した。
恐らく、大して興味もないが、話題に困った結果、私の呟きに便乗したのだ。
嘘でも「そうします」と応じない辺り、生真面目さがでている。
「まあ、それはいいとして。学園は行きたくないか?それとも、行くのが怖いのかな」
前置きもなく、直球で問われて目を見張っている。
どうでもいいのだが、大きな目が零れ落ちそうな開きっぷりの方に、目がいってしまい、表情の変化を見落としてしまう。
「どちらも一緒では?その話題は聞き飽きました」
先程までの友好な態度が、一変して堅い声音だ。
どうも、警戒されてしまったようだ。
「そうか?私は単に勉強が嫌なのか、学ぶ場所に行くのが怖いのかを尋ねただけだが、他に警戒する点でもあるのか?」
余計に目が三角になってしまったが、図星のようだ。
アリサも昔、同じような態度だった。
一緒に生活をしていると、妙なところが似るようだ。
「そんなに行く必要があるのですか?」
ムスッと拗ねた物言いだが、子供にしては自制が効いている。
「いや、ないな。別に、無理してまで入学する必要はない」
「っえ?あの、入学の説得では?」
「妙な事を訊くな。私は、無理強いする趣味はないが、ただ興味があって問うているだけなんだが」
拍子抜けしたようで、困惑しだす様子は、幼く感じさせた。
「学ぶことは好きです。でも…」
「学園で学ぶのは嫌ということかな?」
言い淀むマーカスの後を、補填するように問えば、眉尻が下がっている。
「申し訳ありません」
「謝るような事でもないよ。実際、アリサも候補だったが、あの性格故に辞退したと言うよりは、辞退させたが正しいな」
「…辞退させたのですか?」
マーカスは、怪訝な顔で訊き返してくる。
内心ニヤリと、ほくそ笑んだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。
あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。
宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。
対極のような二人は姉妹。母親の違う。
お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。
そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。
天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。
生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。
両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。
だが……。運命とは残酷である。
ルビアの元に死神から知らせが届く。
十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。
美しい愛しているルビア。
失いたくない。殺されてなるものか。
それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。
生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。
これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる