傍観者を希望

静流

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「…言われてみれば、いつもの者ではないな。何か知っているか?」

首を傾げ、宰相殿に振るが、困惑気味に「存じません」と否定している。

「不思議な事に、アルフやグレンは先程まで、顔見知りと認識していたんですよ」

「つまり、今は違うということか?」

陛下は、怪訝な様子で、アルフ達に目を遣っている。

「あり得ないという結論に達し、グレンが取り押さえている状態です。何故か、自分の上司を知らない騎士ですから、其方で対処して貰えますか?」

「ちょっと待て、直属の上司を知らぬ者は居らんだろう。制服からして「ラン」の部下ではないのか?」

「その者は、花と勘違いしましたよ。まず、あり得ない反応です」

何の冗談かと陛下が、当たり前の問いをして来たのに、即座に応じた。
もちろん、陛下の読みとは真逆の方向でだが。

「…花ね。確かに花でもあるが、部下なら厳罰ものだな」

言うに事欠いて、花に例えたなど、命が惜しければ、口が裂けても言わぬ言葉だ。
まして、ランは騎士団長なだけに、信望者が多数いる。

「闇討ちに遭うのが先ですよ。間違っても、我国の騎士なら口にしません」

「では、やはり間者か暗殺者という事か。それならば、私が引取るのが筋だな」

手で合図し、陛下の騎士がグレンに代わって捕縛している。
その様子を眺めながら、報告書の内容を思い出していた。

「陛下。その者かは判りませんが、記憶操作に長けた者が関与してますので、ご注意下さい」

「記憶操作だと?…先程も、聞いた気がするのだが」

「義兄に関してですね。符合が妙に噛み合って、余計に際立った感じがしますね」

そう思いませんかと、陛下に目配せをした。

「セイ殿。何を掴んでいる?」

「今回の件を確定する程の情報は、持ってませんが…。転移の許可を頂けますか?」

胡乱気な視線を受け流し、別の話を振る。

「誰の…、そういえば、先程の転移は何だったのだ」

「失礼ながら、陛下を呼ぶ為にライトに頼んだだけで、他意はありません」

シラっと言えば、口をパクパクさせて一瞬怒ったが、直ぐに真顔になる。

「…方法に、少々文句を言いたいところだが、まあ良いだろう。転移も許可する」

勘の良過ぎるのも、可愛くないが、この場合は非常に助かった。
余計な言葉を発する必要がない分、有難い状況なのだ。

「ライト。手紙を用意するから、ライの元に飛んでくれる?」

アルフレッドが、すかさずに差し出した紙に、サッと認めて封をする。

「薬師長で、宜しいのですか?」

ライトが不思議そうに尋ねてくるのに、頷き急かした。

「ああ。急ぎ返事が欲しいと、渡す時に言葉を添えて欲しい」

「承知致しました」

ライトは言葉と共に、一瞬で消える。

「毎回ながら、素早いな」

陛下が感心したような目で、ライトが居たところを眺めていた。
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