傍観者を希望

静流

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「では、利用された者を如何されるのですか?」

「セイ殿には悪いが、王宮内で騒動を起こしたのだ。減刑は諦めてくれ」

陛下が、理由の如何は関係ないと素気無く言い捨て、厳罰に処すと言外に匂わせる。
宰相殿も、異論はないようで目を伏せ、視線を逸らす。

「つまり、陛下は大国の暗躍を黙殺するのですか?それでは、トカゲの尻尾切りでしかない」

義兄(甥)を見捨てる気かと、反発するような態度をとったが、頭では最善だと支持もしている。今回助けても、また同じ事になる可能性がある以上は、目を摘み取るのが1番確実な方法でもあるのだ。無論、血も涙もない冷酷な手段だとしっかり認識している。

「セイ殿は、理解しているだろう?そなたが、為政者的な思考をしているのは、先刻承知している」

「陛下…意地が悪いですよ。心情は別ですから、そう割り切れません」

「こんな時ですが、セイ様は惜しい人材ですな。公爵としては勿論ですが、陛下の片腕になって支えて欲しいくらいです」

宰相殿が、妙にしんみりと言ってくるが、本人が自認するように今口にする内容ではない。

「ですが、同時に向いてもいません。優し過ぎて、冷徹さには欠けます。精霊の子としては当然ですが、博愛精神過多ではこういう場合に対処を誤りますから、寧ろ良かったのかもしれません」

此方の反論を封じたかったようだと、漸く理解できたが迂遠過ぎるにも程がある。

「宰相殿は、よほど精霊の報復が怖いようですね。そう警戒せずとも、セイ様が見逃してくれませんから、我らが手出しするのは実質不可能ですよ」

ライが、面倒臭そうに無用だと手を振っている。
だが、不穏な要素が充分含まれていて、どの辺が大丈夫なのだと宰相殿が胡乱気な様子をみせていた。

「ちょっと待て。その言いようだと、セイ殿の胸三寸に聴こえるのだが?」

まさか違うよなという副音声が付いてくる。

「…気付いてないので?セイ様が制止をしなければ、当に公爵家は滅んでますよ。序でにこの国も。我らには不要でも、セイ様が要るなら話は別ですから」

ライが、さも仕方ないという態度で応じ、場が一気に凍りついた。

「…我らが何かした覚えはないのだが?それとも、公爵家故なのか」

陛下が納得がいかないと言い募り、まさかと言うように確認している。
ライが、一瞬お伺いを立てるように視線を寄越し、多少申し訳なさそうでもあった。

「蒸し返してどうする?何方にしても、取り潰しで没落決定だ」

肩を竦めて、一応は明言を避け有耶無耶にしている。

「そういう問題ではない。セイ殿、どうなのだ?」

だが、当然陛下は納得する筈もなく、此方に話を振ってきた。

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