傍観者を希望

静流

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「あの、大変心苦しいのだが、北の牢獄内は記憶操作を無効化出来ますか?」

明日調べるにしても、調査する者が操られては意味がないと、下からお伺いを立てている。

「遣っておく。それから、執務室に証拠品は届けた」

「何から何まで、誠に有難うございます」

「充分礼はされた。これ以上は不要だ」

陛下が頭を下げる前に、庭師が釘を刺し断っている。
何やかや言いつつも、礼を尽くされて照れているみたいなのだ。

「では、我らはこれで失礼します。セイ殿、世話になった。ゆるりと休まれよ」

庭師の願いを叶えるべく、早急に下がって行く陛下と宰相殿を見送り、庭師に目を遣った。

「未だ、陛下と国を崩壊させたいのか?」

「…解らん。現状では保留を希望する」

眉根を寄せ、顰めっ面で応じてくるが、これでも大分緩和している。
以前なら、即座に「諾」と返されていた筈だ。

「今はそれで構わないよ」

「…信用した訳ではない」

「はいはい。分かっているよ。ああ、余計な手出しは駄目だからね。悪戯ぐらいは構わないけど…加減は守ってくれ」

この後の事を考えて、念の為に釘を刺したが、今回は私も幾分腹が立っているので、本来なら全面禁止を緩和して告げる。
庭師も、心得たものでニヤッと含みのある笑みを浮かべた。

「確かに承った。今後は、しっかり養生して下さい」

了承の言葉と共に、アルフレッドに目配せしながら、休息を促してきた。

「分かっているが、後日にでも土産話を頼めるか?」

暗に大国の王宮情報を求めれば、苦笑されつつも頷いている。

「私でなくても、セイ様なら簡単に手に入ると思うが。何か希望はあるのか?」

「人間性というか人となり?を頼む。主観で構わないから、どんな印象かもね」

「…それは、私よりもライの方が向いてないか?」

庭師は、適任ではないと顔を顰めるが、毛嫌いしている方が面白い情報を持ち帰りそうだと踏んでいるのだ。

単なる通り一遍の情報なら、それこそ依頼するまでもなく手に入るのを、忘れていないかと皮肉気に見返せば、呆れ顔になっている。

「私が言うのも変だが、悪趣味だと思わないのか?」

「いや?誰よりも適任だと判断しただけだ」

胡乱気な問いに、躊躇なく否定し開き直る。
逆に、庭師が頭を抱えているが、その辺は自業自得だ。

大国の方がマシだと嘯いていた過去があるだけに、現状は真逆だろうと話を振るのは意地悪だろうが、最近は何方も嫌悪していたのも知っている。

その相手がどう感じるかは、充分参考になりそうだと宣言されては、確かに決まりは悪いだろう。

「失礼ながら、先程からいったい何を?」

アルフレッドが訝し気にこちらを見ていた。
主語を抜かしての会話では、傍で聴いていれば意味不明なだけだろうが、説明するのは障りがある話題だ。

「大した内容ではないよ。ただの雑談だ」

明らかな誤魔化しだが、そう言われてはアルフレッドも引き下がるしかない。
雑談だとされ、怒るほど狭量でもない庭師は半笑いを浮かべ辞去の挨拶をして、転移して行った。
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