傍観者を希望

静流

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「セイ様。先程のお方は、後日また訪ねて来られるのでしょうか?」

「約束した以上は来ると思うが…それがどうかしたのか?」

アルフレッドが、控えめに尋ねてきたのに応じるものの、何が言いたいのか解らない。

「いえ。今回は特例で陛下も黙認してますが、急に転移されては騒ぎになるかと」

言い難そうに進言された内容は、アルフレッドの杞憂に過ぎないものだった。

「それなら問題ない。事前に連絡する位の常識はある。それに、騒動を起こすほど浅慮な真似はしない」

「…随分と信頼されているのですね」

「物心つく前からの付き合いだからな。但し、あの通り頑固で偏屈な面がある」

癖がある人柄だと言いながらも、悪い感じには聞こえないのは、笑い混じりに説明しているからだ。

「言葉の割に楽しそうですよ?」

「いや。ああ皮肉っぽいのに、根は優しく心配症だと知れば、損な性格だと思わないか?」

「…それは、セイ様に対してだけでは?我らへの視線には、かなり険がありましたが…」

アルフレッドが、訝し気に応じてくる姿に、思わず笑いが出る。

「悪い。だが、な。あれは、照れ隠しに過ぎないのだ。別に機嫌も悪くなかった、というより寧ろ良かった方だ。目付きや口調は、あれが普通なんだよ」

「失礼ながら、本当に先程は機嫌が良かったのですか?では、不機嫌だと無口に?」

「間違いなく上機嫌だったよ。逆に、機嫌が悪いと饒舌で、口調も丁寧な感じだよ」

よく知らないと逆に、怒りを増させてしまうのだが、目は凍っていて慇懃無礼な口調だと気付かない方にも問題がある。

もっとも、あのぶっきらぼうな対応が一気に別人のようになれば、勘違いするのも仕方がない気もしないではない。落差があり過ぎるのも問題だ。

「それは…また、極端ですね。そうなる方々を知ってますが、普段もそれなりに丁寧な口調です。故に、勘違いする者もいませんが、あの方では多そうですね」

「まあね。余計に怒らせて、笑えない事態になるかな。ただでさえ、激怒しているのに火に油を大量に注ぐ物好きがいるよ。目が凍てついてるのに、気付かない方も悪いと思うが、急に友好的に見える真似をするのも…ね」

どっちもどっちだと漏らせば、アルフレッドは幾分顔色が悪い。

「言い難いにですが…その、笑えない事態とは?」

「仮にも精霊王だから、そんな無体な真似はしないが…。精々、その年の直轄領が多少不作だとか、好物が壊滅状態かな?ああ、民に悪影響がない程度だから問題ないよ」

顔が完全に引き攣って、硬直してしまったアルフレッドに気付いて、安心させるように言葉を追加したが、さほど効果はなかった。
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