傍観者を希望

静流

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「あの方の属性は、作物に影響するのですか?」

「?あ、そうか。アルフは知らなかったな。属性は土だよ。だから、庭師を職に選んでいるみたいだ」

「そういえば…精霊王は、なぜ働いているので?」

今更ながらの問いだが、普通の精霊もよほど物好きでなければ、人に紛れて働かないものだ。王で人嫌いとしか思えない庭師にしては、可笑しな行動にみえる。

「私が、物心つく頃に言ったからだそうだよ。残念ながら、私には覚えがないけどね」

「セイ様の希望に沿った結果ですか…。それで、皆様それぞれ違う分野で、働かれているのですね」

「そうらしいが…ここ数年で始めた者や、長年続けている者と差はあるよ。ライやランが割と長くて、次が庭師かな?」

「以前から気になっていたのですが、その呼び名の違いは?」

「ライとランは公の職で、その他大勢が口にしているから問題ないけど、他は自営と職人で名を口にする者は数えるほどの少なさだから、私には呼べない名となる。言霊で縛ってしまうからね」

答えてくれそうな時にという感じで、次から次に質問される。
肩を竦めたり、首を傾げたりと忙しないが、聴いている方も目を見開いたり、瞬かせたりと一々驚いている。

「縛ると不味いので?」

「生憎と、絶対服従させるような趣味はないのでな。だが、まあ当人達が望んでもいるのは知っている。成人すれば契約しても構わないと約束もしたが、精霊は基本気位も高いから、契約成立までは名は呼ばない。気が変わっていたら、命取りだしな」

「セイ様、それを聞いたらあの3人は拗ねますよ。だいたい、セイ様より弱い我等が暴れたところで意味がないのは、よくご存知でしょうに、それを言いますか…」

忘れていたが、未だに残っていたライから呆れ声で文句が言われる。

「それはそうだが、一般論ではそうなるだろ?精霊の子は、本来なら精霊王より強くはないと聞いたしな」

嘘は言ってないと反論すれば、渋面になるが黙ってしまう。

「…つまり、契約を交わさないで呼べば、怒りを買う恐れがあるという事ですか?」

「ああ、そうだ。実際、過去にそういう事例もあるしね」

アルフレッドの確認に頷き、実例があると教えたら、ライが再び苦情を言う。

「セイ様。確かに間違いありませんが、その時は他の精霊が止めて事なきを得てます。少しは信用してくれませんか?」

「別にライを疑ってない。過去の事例として挙げただけだろ」

「普通なら、そんな事例知りませんよ?いったい、いつお調べになったのです」

「…再三契約を求められていた頃だ。満面の笑みで、毒入り料理を差し出す母親を散々みた後では、何も信じる気になれないから馴染みの精霊に命じた」

「あの精霊ですか…。それで先程の言葉なのですね。それほどまでに、お嫌だったのですか?」

「契約した途端に、反論も反対もしないで頷き、悪態すら付かない。あれでは、面白くもないだろ?そんなつもりで契約を交わした訳ではなかったのに、個性が全くなくなった操り人形のようだった」
昔を思い出して、思いっきり顔を歪ませる。
私にすれば悪夢のような結果だったが、あの精霊の寿命は元々あと僅かだったので、その寿命よりは長く生きてはくれた。

「ですが、本人の希望だったのでは?」

「ああ、契約すれば長く一緒に居られると頼まれた」

本人の希望ではあったが、果たしてあれが良かったのかは分からない。
狡賢い面からすれば、計算違いだった可能性もあるが、確認しようがないことだ。
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