せっかく異世界に転生できたんだから、急いで生きる必要なんてないよね?ー明日も俺はスローなライフを謳歌したいー

ジミー凌我

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冒険者の街クアント④

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 クレハと一緒にギルドに戻ってきた。
 もう夕方になってきたし、二人でギルドで夜ご飯を食べることにしたのだ。
 ギルドの食堂がある2階へ行きながら俺はクレハにずっと疑問に思っていたことを聞いてみた。
「そういえばクレハはどこに住んでいるんだ?まさか毎日ギルドで泊っているわけじゃないよな?」
「うん。そういえば言ってなかったね。私は今このギルドの近くにある建物の部屋を自分の家として借りてるんだ。女性の冒険者は旅をしている人じゃなければ、自分の家を借りている人も多いんだよ」
 ふーん、アパートみたいなものがこのせかいにもあるのか。
「あ、でも最初の1年くらいは私もまだまだ冒険者の見習いみたいなものだったから、ずっとここで寝泊まりしてたんだよ。ご飯は今でもほとんどここで食べてるし」
 そういえば、14歳の時にここに来たって言っていたもんな。
「あ!そんなことより、リョウトは何を食べる?メニューはここだよ!」
 食堂にたどり着き、クレハとともにメニューを吟味する。食堂の前にメニューが張り出されていて、そこで食べたいメニューを頼んでから中に入り店員さん?に注文するシステムみたいだ。
 今の残りの手持ちは1,800ドゴム。クレハに確認すると朝ごはんでもこの食堂は使えて、朝ごはんは500ドゴムで均一されているらしい。つまり今使えるのは1,300ドゴム。1,300ドゴムで食べられるのは……。
「クレハは、もう何が食べたいか決めたのか?」
「うーん……。私のおすすめはこのミドルリザードの香味ステーキセットなんだけど……。いつも食べている私の思い出の味とも呼べるのはこのサイバーコングのログシチューなんだよ……。どっちにしよう…うーん……」
「サイバーでコングなのに食べるところあるのか……?」
「よし!じゃあ!私はミドルリザードの香味ステーキセットにする!リョウトは?」
「うん。じゃあ俺もそれにするよ。サイバーコングは食べるのにまだちょっと勇気が出ないから……」
「そうなの?美味しいよ?じゃあ、次はそっちを一緒に頼もうね!」
 ミドルリザードの香味ステーキセットを店員さんに注文し、お金を払って、席について料理が来るのを待った。
 ステーキセットは1,000ドゴムだったので懐にも問題はない。
 しばらく待つと、店員さんがステーキセットを持ってきてくれた。
 ミドルリザードが、もともとどんな見た目かわからないが、出てきたお肉は元の世界のもので言うと分厚く大きい牛肉のステーキといった感じだった。そのステーキに、何かわからない細い野菜の入ったスープと丸いこぶし大のパンのようなものが3つのセットだ。
 どれも出来立てなのか熱々で湯気が立っている。
「どう?美味しそうでしょ!味も間違いないんだからね!じゃあ、食べましょう!」
 そう言って、クレハは食べ始める。
 この世界には食べる前に〈いただきます〉のような作法はないようだ。
 変に思われてもよくないので、俺もさっそく食べ始めることにする。
 まずステーキから。大きな肉の塊にナイフを入れると確かな弾力もある中、刃を入れるとサッと切れてしまうほど柔らかい。それに切ると肉汁が溢れてくる。香味調味料で味付けされているのだろう。スパイシーな香りが鼻をくすぐる。ひと口大に切ったステーキを口に運ぶと、キバノシとはまた違う肉のおいしさがあった。調味料ともマッチしていて、口の中でホロホロ崩れるほど柔らかい。ステーキでこの柔らかさはすごいなと感心した。
 口の中の油をぬぐうようにアツアツのパンもちぎって口に入れるが、これもまたおいしい。少量の塩とバターの様なものが使われていて、塩パンのような味だった。ステーキとの相性も抜群で、一緒に食べてもそれぞれで食べてもおいしい。
 次にスープを一口飲む。肉の油と、ぬぐうばかりかさらにバターで口に油を追加したパンの余韻をキレイにぬぐい、さっぱりとした味のスープだった。少しの酸味もあり、細切りで入っていた野菜はピリ辛で盛り上がった幸福感を一度落ち着けて休ませてくれる。
 すごい。この値段でこの料理なら毎回注文してもいいなと感じた。
 それから、食事をしながらクレハとたわいない話をした。
 食事が終わり、俺はギルド内で借りた部屋へ、クレハは自分の家へ別れることになった。
「クレハ。今日は一日ありがとう。明日からもよろしくな」
「リョウトの冒険者としての初めての依頼になるんだから、頑張ろうね」
 手を振って、別れ、部屋に向かった。
 そう、明日は冒険者としての初めての1歩を踏み出す日。
 ワクワクとドキドキなんて、もう感じることはないと前の世界では思っていたけれど……。
 この世界に転生出来て、良かったのかもしれない。
 部屋について、すぐに今日一日の疲れからベッドに飛び込んだ。
 明日から頑張ろう。
 そう思うと同時にすぐに眠りについた。
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