この世界から、出ていくか消えるか決めてくれ〜出入界在留管理人〜(仮)

えのきあき

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送還対象【奴隷王】

小さな世界①

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ゆっくりと降りていく。真っ直ぐと立った状態で、ゆっくりと。

私は今、職場の上空1万メートルほどの上空に居る。今まさに出勤したばかりだ。
棒立ちのまま、ゆっくりと降下していく。

出勤の際はいつも同様だ。その『世界』が見渡せる空高くから、目的の場所へ降りていく。

「…小さいな。」

思わず口にする。

地球とほぼ同じであろう大きさの世界。眼下はただ広がる海だけ。

「降下する前にもう少し近づいておくか。」

立ったままの姿勢で、自分を支点、目的地を終点としたベクトルを求める。
ゆっくりと落下していた体が前に進む。

周辺の酸素濃度や風圧を位置とスピードに合わせ調整しながら進んでいく。
その間に今回の対象に関する情報を引き出し、周囲にウインドウとして展開する。

「これは、こじれるだろう…な。」

異世界転生者、転移者、召喚者などを私達は総称して、『アザーズ』と呼んでいる。その言葉の通り
異なった存在。なんのひねりもない。『バグ』という蔑称もあるが、私はこの呼び方は好まない。

『バグ』は『アザーズ』がその世界に深刻な問題を起こしている場合の言い方だと思っている。
今回の対象は…どうだろう。

彼…この世界で「タツヤ」と名乗る男は『転移者』。
自分の姿と記憶、名前、そして授かった『恩恵』を持ってこの世界に現れたアザーズだ。

例のごとく「鑑定スキル」「成長率倍増」「獲得資金倍増」などベタな…いや、選べるなら誰もが選ぶであろう
基本的チートスキルを『恩恵』として授かっている。

元の世界でも特になにかに特化していたわけではない14歳の少年は、この世界を刺激し拡大するための
拡張ツールとして転移した。残念ながらマヨネーズの作り方も知らない彼は、元の世界の知識を使って
この世界に変革を起こす事は出来ていない。それでも、世界に新たな価値観を広め、小さな変化を起こすことを
期待されていたが。


「…見えてきた。」


既に2万キロほど移動しただろうか。降下も同時に行っていたため、今の高度は5000メートルほどだ。
ただただ広がる海の青、ようやく「陸地」が見えてくる。この世界唯一の陸地だ。

その形は縦長で、日本の本州に似ている。ただし北海道は無いし、沖縄も、四国もない。
うろ覚えで描かれた日本地図の様な大陸の名は『グランザニア』どこかで聞いたことのありそうな名前だ。

地球と同じ大きさの星に、冗談のような形の小さな大陸。『奴隷王』はそこでハーレムを作り、未知を探求する
ことも、見聞を広げることも辞めた。彼の知識、行動が反映された小さな世界。

この『ムダ』が強制送還の理由だ。

拠点の街付近に点在するいくつかのダンジョンや遺跡。彼はそれらを探索し、溜まった金で奴隷を買う。
奴隷と体を重ね、同じダンジョンで、遺跡で稼ぎ、また奴隷を買い、抱く。

奴隷以外とのコミュニケーションは殆ど取らず、奴隷を得るため以外に目的を持たず、
ただただ金稼ぎとセックスを数年間繰り返している。世界に刺激を与えなければ、転移させた意味は全く無い。

「いや、やっぱこじれるでしょ…これ…」

この停滞した、ふしだらな世界のクローズが私の、今回の仕事だ。


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