俺とTSと無口系男子〜幼馴染二人を早くくっつけたい〜

自信だけはある白豚

文字の大きさ
2 / 16

俺と俺の家庭事情と選択ミス

しおりを挟む
腹が……腹が減った……。
ただでさえ食費が底をついていて、今日の弁当が最後の食料だったのに……。
俺は覚束ない様子で歩き、なんとか家まで着いた。
雄人や明日香には心配され、原因の一端であるはずのヒデにまで大丈夫かと声をかけられた。
今日の弁当で二日間食べてない分のカロリーは帳消しにできそうだったんだが、仕方ない。我が家には、保冷剤などという高価なものはないのだ。
一縷の望みにかけて弁当箱を開けてみると、それはもう想像通り腐っていた。

俺は一人暮らしをしている。別に両親が死んだとか捨てられたとかそんな理由ではなく、ただあの二人がラブラブすぎるだけである。
単身赴任する父親に付いていくためとはいえ、普通高校生になったばかりの息子を置いていくかね?しかも送られてくる食費が少ねえ!
そのくせ「オレたちといつでも話せるように、お前にスマホをやろう!なに気にするな、料金はオレが口座に振り込んどくよ。」と言って、スマホを渡してきた。父さん、俺が今ほしいのは金だ。
スマホよりも食事が大事なんだよ、人間は。お願いだから食費をもっとくれ。外食もせず自炊して、一日朝昼の二食に抑えているというのに、全く関係なしに食費が減る。
アイツらと遊ぶときも、俺はワンコインで済むポテトとかソフトクリームとかで我慢してたのに。そうして外食してしまった次の日は、朝まで抜いて節約したのに!

とにかくそんな訳で俺は一人暮らしだ。
ちなみに俺には姉が一人居るが、父さんたちが単身赴任する少し前に県外で一人暮らしを始めており、父さんたちは姉に帰っておくように連絡しておくと言ったが俺が断った。せっかく念願の一人暮らしができると、決まった日からウキウキしていた姉にそんなことを頼むのは忍びないのだ。
まあ、そのせいでこんなにも苦しい生活をしているわけだが。
と、そこまで考えてぐぅという腹の虫の鳴き声で、俺は目の前の現実から目を逸らすのをやめた。

「……たべるしか……ないよな……。」

そう、生きるためには食べるしかないのだ。食中毒で死ぬ可能性があろうと、どうせこのままでは餓死してしまうのだから。
二日間食べることができず、近所のオバちゃんから食材を貰ったときは正直助かった。
これでなんとか持ちそうだと、そう思っていたのだが……。

「あーあ、こんなことなら雄人に遠慮しないで明日香の弁当を食べておけばよかったものを。」

しかし同じ男子ならば分かるんだ。好きな女の子が弁当を自分のために作ってきたと思ったら、他の男にもあげていた。そんな場面は、普通に心が傷付くものなんだ。だから、俺は食べないと断固拒否したのだが……。正直言って食いたかったです。恋愛的な意味ではなく、生命活動的な意味で。
これがあっちと同じ女子ならば、すぐに飛びつけるんだがなぁ。いや、俺は男子だから無理なのは分かっているんだが。
去勢手術?そんなことする金もないんだが?

「うーむ、やっぱりあの三人には父さんの単身赴任を伝えておくべきだったか?」

そう、俺が弁当はいらないと言ったときに明日香がすぐに引いた理由はそれだ。
アイツらは単身赴任を知らない。必然的に俺が一人暮らしなことも知らない。
だから、俺がここまで生活に困っていることも知らないはずだ。
何度も「授業の間の休み時間で少しでも食べたら?」と言ってきたのは、俺の母さんが保冷剤を入れていると思ったからだろう。まあ、その意見には「その時間は次の授業の準備の時間だろうが!?」と言い返しておいたが。

うん、こうやって長々と頭の中で言っているのはこれを食うことを、頭が拒否しているからだ。
いや、だってなんか変なにおいするんだよ。酸っぱいにおいがなんか部屋に広がっていってるんだよ。これは誰でも拒否するだろう。俺だってそうする。
そんなこと言ったって、食わなきゃ死ぬんだろ?だって?
あぁ、そうだよ!だから食わざるを得ないんだよ!

「だーー!南無参!」

俺は弁当の中身を全部、気合で食いきった。
腹が痛いが、とりあえず我慢して弁当箱を洗い風呂に入ると、腹よりも頭が痛くなったので、明日に残さないように寝間着用のジャージに着替えてすぐに寝た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...