俺とTSと無口系男子〜幼馴染二人を早くくっつけたい〜

自信だけはある白豚

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俺と更衣室と日焼け止め

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「男のときに夢見た世界は、所詮幻想だったんだな……。」
「なに?皐月ちゃんはキャッキャウフフが見たかったの?」

今日は日曜日。
昨日はあのまま解散になってしまい、今日を迎えているわけだが女子更衣室が思った感じとは違った。
ほら女子更衣室って言ったら、なんかおふざけで胸を揉んでいるキマシタワーみたいな展開とか想像するじゃん。
まあ、実際に目の前に広がっている光景はそんなものではなく、知り合いと少し喋りながら淡々と着替えているだけなんだけどな。男の夢が壊されると、元男としては複雑なんだが……?

「つーか、早く着替えようぜ。」
「止まってたのは皐月ちゃんだけどねー。」
「うっせー。」

そう言いつつ俺はTシャツの袖から左手を抜き、次に右手を抜いて最後に首を抜く。
更にデニムショートパンツに手を掛けつつチラリと明日香の方を向くと、黒のスタンダードなビキニを着ていた。……ん?

「いや、着替えるの早っ!?」
「皐月ちゃーん、遅いよー?」
「お前が早いんだよ!」

俺はまだTシャツ脱いだだけなんだが!?どんな早わざだよ!怖すぎるわ!
その5分後くらいに俺も着替え終わった。女の着替えは遅いって聞くけど、俺たちは驚くほど早かったな。つーか明日香が思っていた以上に早かった。こんなに早いんだったら、いつももっと早く出て来れるはずなんだが……。

「明日香、着替え終わったなら早く行……こう……ぜ?」
「ん?あぁ、待って待って。皐月ちゃんもまだ日焼け止め塗ってないでしょ?」
「……お前今、日焼け止め塗ってるのか!?」

あり得ねえ、コイツ。
しかも心底不思議そうに首を傾げやがって、本気度が伝わってくる。本気で理解していないってのが!

「いいか!?日焼け止めっていうのは、出かける30分前にはしとかなきゃ意味ねーんだよ!?もしくは雄人にでも頼んで、塗ってもらえよ!誘惑していけよ!出かけたあとで自分で塗るとか、意味ないだろうが!?大体お前には女子力が根本的に足りねえ!いいか?まず雄人に持っていってる弁当、あれ冷凍食品ばかりだろ。少しは料理をしねえと、弁当を持ってくる意味がねえ。それに絆創膏やハンカチくらい常備しとけ。それから……。」
「長い長い長い!?長いよ、話が!なんでそんな詳しいの!?」

なんでと言われても、男の頃から気を遣っていたからとしか言いようがない。学校には毎日手作り弁当を持っていってるし、小さめのポーチに絆創膏とかポケットティッシュとか色々入れていた。一時期食費がなさすぎてもやしだけになっていたこともあったけど、使えるお金が増えてからは少しだけ回復した。それでも節約しまくってるけど。
日焼け止めだって、出かけるときはいつも必ず塗っていた。金が足りなくても、これは買っていた。俺は日焼けなんてしたくないんだ。ヒリヒリするってよく聞くからな。
明日香がなんだかため息を吐きながら肩を落としているが、明日香は頭がおかしいのかもしれない。

「じゃあさっさと出るぞ、明日香。」
「あ、だから日焼け止め塗らせてってば!?」
「雄人に塗らせるに決まってるだろ。それ持って早く来い。」
「えー、雄人は恥ずかしいからやだ!せめて青葉君にしてよー。」
「ヒデは駄目だ!明日香はもっと押していけよ!雄人のやつ、お前の好意に気付いてないからあんなのなんだぞ!?」

もし雄人が明日香の好意に気付けば、すぐにでもくっつきそうだと言うのに……。いや、俺とヒデがしっかり裏から手を回せばなんとかなるだろう。
つーかなんでよりにもよってヒデを選ぶんだよ。意味が分からなすぎて、少しイラッて来たな。

「ヒデを誘惑すんなよな、マジで。アイツ絶対そういう耐性ないから。」
「えー、誘惑とかじゃないんだけどなー。」
「……なにニヤニヤしてんだよ?こっちは、さっさとしろってさっきから何度も言ってるんだけど?」
「んーん。なんでも?」

こうして俺たちはようやく更衣室から出るのだった。
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