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第一部 巨神の目覚め
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〝九つ頭〟の襲撃から三度の晩をあかした朝、サリュ・フライオットは、闇の中で目を覚ました。
エブンジュナの森に設けられた避難民用テントの中である。
ランプの明かりはなく、周囲を枝葉の天蓋に覆われているため、自分の手のひらさえ窺い知ることができない。黒い海に溺れているかのようだ。
それが甘い夢幻をみせる。隣で寝息をたてる女性の輪郭が、母のそれと重なって見えるのだ。彼女は、サリュの母より十以上も若く、朝の陽光のような美しい白銀の髪をもっていて、母とは似ても似つかないというのに――。
サリュはかぶりを振って拳を握りこんだ。
もう認めなくちゃ……。パパもママも、死んじゃったんだって……。
強いて言い聞かせると喉のおくが詰まった。焼石を押しつけられたように、目頭が熱くなる。けれどサリュは、女性を気遣ってすぐには泣きださなかった。
起こしちゃいけない。この人だって辛いんだ。必死に戦って、だけど大切な人を亡くしたって言ってた……。
サリュはなるべく物音をたてないようテントから這いだした。
外では三人の遺物堀がうろうろと歩き回っていた。その一人、禿頭の男だけが目敏くサリュを見つけ出し、しかめ面を作った。
「なんだ、もう起きたのかよ。ガキは寝るのが仕事だ。さっさと戻れ」
サリュはザキムに取り合わず訊ねた。
「なにしてるの?」
「あ? うるせぇな。寝てろって」
「なにしてるの? お願い、教えてよ」
しつこく詰め寄ると、ザキムは意外にもあっさりと折れた。
「あー、うるせぇ……。南へ逃げた奴らがここへ来るんだとよ。俺は、そのお迎えのために、こうして早くから待ってやってんだ。ホントは魔法使いどもの仕事のはずなのにな。ちくしょう。あいつら疲れたとか言ってぐぅすか寝てやがる。ヴァニの奴に押し付けようにも、あいつまで起きやしねぇ。そもそもテントの残りは、もうほとんどねぇんだってのに……」
内容の半分が愚痴で嫌になる。
この人がヨトゥミリスに襲われていた私を救ってくれたらしいけど……ホントにそんないい人なのかな。
サリュの記憶は欠落していて、ザキムのことはほとんど憶えになかった。
死にもの狂いで走り続けていたのは憶えていても、助けられた場面はごっそりと抜け落ちている。彼女のつぎの記憶は、荷馬車の暗闇で目覚めたところだった。
「噂をすればなんとやらだ。来やがったぜ」
不意に、ザキムが吐き捨てるように言った。
視線を追うと、森の木々に両脇を守られるようにして、三台の馬車が近づいてくるのが見て取れた。どうやら、あれが南へ逃れたアオスゴルないしマクベルの避難民を乗せた馬車らしい。
このままザキムといると、延々愚痴をきく破目になりそうだ。サリュは大人しくテントへ引き返すことにした。
すると折悪しく、中からあの女性が出てきた。
薄暗い森の中であっても、白銀の髪は自ら輝くかのように眩しく感じられた。こちらを見る瞳の色は、夏の晴天の木漏れ日に似た緑がかった青色だ。大人の何人かはそれを海の色だと言うけれど、サリュは生まれてこのかた海を見たことなど一度もない。やはりそれは空の色だった。
「もう起きてらしたのね、サリュさん」
彼女は、まだ幼いサリュに対しても敬語を用いて話した。
サリュは、彼女もまた命の恩人であることを知らなかった。血塗れの怪物に助けられたのは憶えている。しかし、あれが目の前の美女と重なって見えるはずがない。
「おはようございます、カルティナさん。なんか眠れなくて」
「ええ、わたくしもです」
そう言って這いだしたカルティナの目の下には、びっしりと濃い隈がうき出ていた。せっかくの美貌も哀切を塗りたくられては翳って見える。
サリュはなんとなく引き返すタイミングを失い、茫然とたち尽くした。
その横を、カルティナが「失礼」と通りすぎた。馬車の方向へふみだしていく。
「おい、そこの姉ちゃん! 馬車の邪魔に……」
ザキムがその背中を咄嗟によび止めたが、語尾は舌打ちに変わった。風になびいた大樹の模様が落ちこぼれの神経を逆撫でたのだ。
嫌な空気に、サリュは今度こそテントへ戻ろうかと考えた。
だが、少女の小さな体躯が、ついにテントの中へ消えることはなかった。馬車が近づいてくるにつれ、いよいよその中が気になりだしたのだ。
もしかしたらパパが、ママがいるかもしれない。
やはり、諦めようとしても諦めきれるものではない。傍らにぼんやりと灯った希望をふき消して歩きだすには、彼女はまだ幼すぎたのだ。
カルティナが一台の馬車のまえで足を止めると、驢馬もまた止まった。
操馬を務めていた男が馬車からおり、二人は簡単な抱擁を交わした。サリュの位置からでは模様まで視認できないものの、黒地のマントが、魔法使いのそれだということはすぐに判った。
サリュは言いしれぬ寂寥を感じ、ふと目を逸らした。
心のどこかでカルティナも孤独の人であって欲しいと願っていた。
みにくい感情に辟易としながら、サリュはその場にへたり込んだ。
それに気付いたザキムが、なにか言いかけてやめた。
嗚咽もなく涙をながし始めた少女に対して、慰めも悪態も意味はなさないだろうと考えたのかもしれない。
サリュは独りあふれだす涙を拭う。
心にぽっかりと空いた穴から、黒ずんだ靄がふき出してきていた。それが胸の中に詰まり、息をつくのも苦しくさせる。
やがて靄は形をなし、言葉となった。十にも満たぬ少女に、残酷が問いが投げられた。
生きて、なにが残ったの? 生かされてなにが残ったの?
少女は空っぽの手で顔を覆った。涙に冷えてゆく手のひらに、温もりが戻ることはない。
ない。なにも残ってないよ。私は独りぼっち。
こんなことなら、こんなことになるなら、私もパパやママのところへ行きたかった。助けてもらわなければよかった……。
サリュは膝を三角に折って座りなおすと、膝の間に顔を埋めた。
思い出したように嗚咽がもれ出してきた。喉をしゃくり上げる悲しみの熱波が、胸の中を余すところなく灼き尽くしてゆく。
そのあとには、きっとなにも残らない。
熱波が去り、心が冷えかたまった頃には、絶望が深く根付き、温もりの栄養を奪い取ってしまうだろう。
小さな肩に触れてくれる人が誰もいない限り、闇を涸らすことはできないのだ。
だが仮にいたとしても、それはサリュの望む手ではないだろう。父も母も、もうこの世にはいないのだから――。
「……大丈夫、サリュ?」
その時、不意にとんと声が落ちてきた。
サリュの小さな肩は、驚きに微かに震えた。
それは彼女が一番聞きたかった声で、もう二度と降りかかってくるはずのない、愛しいものだったから。
ああ、私ってバカな子……。パパもママももういないのに、まだ信じてるの?
自嘲しながら、顔を上げる。
期待したわけではない。
ただ、幻でも慰めてほしかったのだ。
見上げた視界は、涙にくだけていた。浮かび上がった輪郭は曖昧で、やはり幻めいていた。けれど、そっとのせられた手のひらの温もりは、じんわりと肌に沁みた。とても幻覚のようには思われなかった。
あったかい。知ってる。知ってるよ。間違えるはず、ない。
濡れた相貌に、また一筋、涙の痕がつたった。
息を切らして走り続けて、また、記憶の一部をとり落としても、この感触だけは忘れない。絶対に忘れない!
だって、だって、この感触は……あの時、絶対に手離しちゃいけなかった、ずっと待ち望んできた人の手だから!
「……ママ、ママぁ!」
震える声で母をよび、彼女はその胸にとびこんだ。
その拍子に膝の皮がめくれ上がっても、愛する母をうしなう痛みに比べれば、こんなものは痛みとさえ感じられなかった。
「サリュ、無事でよかった……」
母もまた声を上ずらせ、そっと娘を抱いた。この温もりが幻でないことをたしかめるように。
「ママぁぁ……ママぁ……」
母の鼓動を聞きながら、娘の無事を願ったその身体を抱きしめながら、サリュは先の考えを恥じいっていた。
生きていなければ、再会はかなわなかった。
声を聞いて、抱きしめ合うこともできなかった。
そしてなにより、この身に死がふりかかっていたなら、己も両親もすべてが失われてしまうことに気付いたのだ。
幸福だった思い出すらも無に帰し、なにもかもが消えてしまうところだった。
サリュは死の恐ろしさを改めて思い知った。
その上で、互いの温度を感じながら、母をたぐり寄せた。
「ママ、ママが生きてて、よかったぁ……。私、生きててよかったぁ……!」
母の髪に顔を埋め、懐かしい匂いをいっぱいに吸いこんだ。
この一瞬一瞬も、思い出となって積もってゆくのを実感した。
ありがとうございます、名も知らぬ神様。
樹冠の間隙からちらりと顔を覗かせる天空へ向け、サリュは歓喜でくしゃくしゃに歪んだ相貌をほころばせた。
やがて、テントから一人の若者が這い出してくる。
そこへパイプを吹かした男が歩みよった。若者に手をかし起こしてやる。禿頭の遺物堀が駆けつけ、なにやら悪態をついた。
抱き合った魔法使いたちは、おもむろに杖を掲げ目を細めた。
地上を濡らすたおやかな光は、それらすべてに、等しく御手を伸ばしていた。
第一部『巨神の目覚め』〈了〉
第二部『果てなき旅』へ続く
エブンジュナの森に設けられた避難民用テントの中である。
ランプの明かりはなく、周囲を枝葉の天蓋に覆われているため、自分の手のひらさえ窺い知ることができない。黒い海に溺れているかのようだ。
それが甘い夢幻をみせる。隣で寝息をたてる女性の輪郭が、母のそれと重なって見えるのだ。彼女は、サリュの母より十以上も若く、朝の陽光のような美しい白銀の髪をもっていて、母とは似ても似つかないというのに――。
サリュはかぶりを振って拳を握りこんだ。
もう認めなくちゃ……。パパもママも、死んじゃったんだって……。
強いて言い聞かせると喉のおくが詰まった。焼石を押しつけられたように、目頭が熱くなる。けれどサリュは、女性を気遣ってすぐには泣きださなかった。
起こしちゃいけない。この人だって辛いんだ。必死に戦って、だけど大切な人を亡くしたって言ってた……。
サリュはなるべく物音をたてないようテントから這いだした。
外では三人の遺物堀がうろうろと歩き回っていた。その一人、禿頭の男だけが目敏くサリュを見つけ出し、しかめ面を作った。
「なんだ、もう起きたのかよ。ガキは寝るのが仕事だ。さっさと戻れ」
サリュはザキムに取り合わず訊ねた。
「なにしてるの?」
「あ? うるせぇな。寝てろって」
「なにしてるの? お願い、教えてよ」
しつこく詰め寄ると、ザキムは意外にもあっさりと折れた。
「あー、うるせぇ……。南へ逃げた奴らがここへ来るんだとよ。俺は、そのお迎えのために、こうして早くから待ってやってんだ。ホントは魔法使いどもの仕事のはずなのにな。ちくしょう。あいつら疲れたとか言ってぐぅすか寝てやがる。ヴァニの奴に押し付けようにも、あいつまで起きやしねぇ。そもそもテントの残りは、もうほとんどねぇんだってのに……」
内容の半分が愚痴で嫌になる。
この人がヨトゥミリスに襲われていた私を救ってくれたらしいけど……ホントにそんないい人なのかな。
サリュの記憶は欠落していて、ザキムのことはほとんど憶えになかった。
死にもの狂いで走り続けていたのは憶えていても、助けられた場面はごっそりと抜け落ちている。彼女のつぎの記憶は、荷馬車の暗闇で目覚めたところだった。
「噂をすればなんとやらだ。来やがったぜ」
不意に、ザキムが吐き捨てるように言った。
視線を追うと、森の木々に両脇を守られるようにして、三台の馬車が近づいてくるのが見て取れた。どうやら、あれが南へ逃れたアオスゴルないしマクベルの避難民を乗せた馬車らしい。
このままザキムといると、延々愚痴をきく破目になりそうだ。サリュは大人しくテントへ引き返すことにした。
すると折悪しく、中からあの女性が出てきた。
薄暗い森の中であっても、白銀の髪は自ら輝くかのように眩しく感じられた。こちらを見る瞳の色は、夏の晴天の木漏れ日に似た緑がかった青色だ。大人の何人かはそれを海の色だと言うけれど、サリュは生まれてこのかた海を見たことなど一度もない。やはりそれは空の色だった。
「もう起きてらしたのね、サリュさん」
彼女は、まだ幼いサリュに対しても敬語を用いて話した。
サリュは、彼女もまた命の恩人であることを知らなかった。血塗れの怪物に助けられたのは憶えている。しかし、あれが目の前の美女と重なって見えるはずがない。
「おはようございます、カルティナさん。なんか眠れなくて」
「ええ、わたくしもです」
そう言って這いだしたカルティナの目の下には、びっしりと濃い隈がうき出ていた。せっかくの美貌も哀切を塗りたくられては翳って見える。
サリュはなんとなく引き返すタイミングを失い、茫然とたち尽くした。
その横を、カルティナが「失礼」と通りすぎた。馬車の方向へふみだしていく。
「おい、そこの姉ちゃん! 馬車の邪魔に……」
ザキムがその背中を咄嗟によび止めたが、語尾は舌打ちに変わった。風になびいた大樹の模様が落ちこぼれの神経を逆撫でたのだ。
嫌な空気に、サリュは今度こそテントへ戻ろうかと考えた。
だが、少女の小さな体躯が、ついにテントの中へ消えることはなかった。馬車が近づいてくるにつれ、いよいよその中が気になりだしたのだ。
もしかしたらパパが、ママがいるかもしれない。
やはり、諦めようとしても諦めきれるものではない。傍らにぼんやりと灯った希望をふき消して歩きだすには、彼女はまだ幼すぎたのだ。
カルティナが一台の馬車のまえで足を止めると、驢馬もまた止まった。
操馬を務めていた男が馬車からおり、二人は簡単な抱擁を交わした。サリュの位置からでは模様まで視認できないものの、黒地のマントが、魔法使いのそれだということはすぐに判った。
サリュは言いしれぬ寂寥を感じ、ふと目を逸らした。
心のどこかでカルティナも孤独の人であって欲しいと願っていた。
みにくい感情に辟易としながら、サリュはその場にへたり込んだ。
それに気付いたザキムが、なにか言いかけてやめた。
嗚咽もなく涙をながし始めた少女に対して、慰めも悪態も意味はなさないだろうと考えたのかもしれない。
サリュは独りあふれだす涙を拭う。
心にぽっかりと空いた穴から、黒ずんだ靄がふき出してきていた。それが胸の中に詰まり、息をつくのも苦しくさせる。
やがて靄は形をなし、言葉となった。十にも満たぬ少女に、残酷が問いが投げられた。
生きて、なにが残ったの? 生かされてなにが残ったの?
少女は空っぽの手で顔を覆った。涙に冷えてゆく手のひらに、温もりが戻ることはない。
ない。なにも残ってないよ。私は独りぼっち。
こんなことなら、こんなことになるなら、私もパパやママのところへ行きたかった。助けてもらわなければよかった……。
サリュは膝を三角に折って座りなおすと、膝の間に顔を埋めた。
思い出したように嗚咽がもれ出してきた。喉をしゃくり上げる悲しみの熱波が、胸の中を余すところなく灼き尽くしてゆく。
そのあとには、きっとなにも残らない。
熱波が去り、心が冷えかたまった頃には、絶望が深く根付き、温もりの栄養を奪い取ってしまうだろう。
小さな肩に触れてくれる人が誰もいない限り、闇を涸らすことはできないのだ。
だが仮にいたとしても、それはサリュの望む手ではないだろう。父も母も、もうこの世にはいないのだから――。
「……大丈夫、サリュ?」
その時、不意にとんと声が落ちてきた。
サリュの小さな肩は、驚きに微かに震えた。
それは彼女が一番聞きたかった声で、もう二度と降りかかってくるはずのない、愛しいものだったから。
ああ、私ってバカな子……。パパもママももういないのに、まだ信じてるの?
自嘲しながら、顔を上げる。
期待したわけではない。
ただ、幻でも慰めてほしかったのだ。
見上げた視界は、涙にくだけていた。浮かび上がった輪郭は曖昧で、やはり幻めいていた。けれど、そっとのせられた手のひらの温もりは、じんわりと肌に沁みた。とても幻覚のようには思われなかった。
あったかい。知ってる。知ってるよ。間違えるはず、ない。
濡れた相貌に、また一筋、涙の痕がつたった。
息を切らして走り続けて、また、記憶の一部をとり落としても、この感触だけは忘れない。絶対に忘れない!
だって、だって、この感触は……あの時、絶対に手離しちゃいけなかった、ずっと待ち望んできた人の手だから!
「……ママ、ママぁ!」
震える声で母をよび、彼女はその胸にとびこんだ。
その拍子に膝の皮がめくれ上がっても、愛する母をうしなう痛みに比べれば、こんなものは痛みとさえ感じられなかった。
「サリュ、無事でよかった……」
母もまた声を上ずらせ、そっと娘を抱いた。この温もりが幻でないことをたしかめるように。
「ママぁぁ……ママぁ……」
母の鼓動を聞きながら、娘の無事を願ったその身体を抱きしめながら、サリュは先の考えを恥じいっていた。
生きていなければ、再会はかなわなかった。
声を聞いて、抱きしめ合うこともできなかった。
そしてなにより、この身に死がふりかかっていたなら、己も両親もすべてが失われてしまうことに気付いたのだ。
幸福だった思い出すらも無に帰し、なにもかもが消えてしまうところだった。
サリュは死の恐ろしさを改めて思い知った。
その上で、互いの温度を感じながら、母をたぐり寄せた。
「ママ、ママが生きてて、よかったぁ……。私、生きててよかったぁ……!」
母の髪に顔を埋め、懐かしい匂いをいっぱいに吸いこんだ。
この一瞬一瞬も、思い出となって積もってゆくのを実感した。
ありがとうございます、名も知らぬ神様。
樹冠の間隙からちらりと顔を覗かせる天空へ向け、サリュは歓喜でくしゃくしゃに歪んだ相貌をほころばせた。
やがて、テントから一人の若者が這い出してくる。
そこへパイプを吹かした男が歩みよった。若者に手をかし起こしてやる。禿頭の遺物堀が駆けつけ、なにやら悪態をついた。
抱き合った魔法使いたちは、おもむろに杖を掲げ目を細めた。
地上を濡らすたおやかな光は、それらすべてに、等しく御手を伸ばしていた。
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