片翼の騎士と魔法の工匠

まめきち

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第十一話

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夜も更け、工房は静まり返っていた。
炉の火は落とされ、ランプの明かりだけが、柔らかく室内を照らしている。

私は作業台の横で、簡単な書き物をしていた。
本当は休めと言われたのだけれど、完全に何もしないのも落ち着かない。

視線を上げると、向かいの椅子に座ったレオンが、動かなくなっている。

……寝てる?

最初は目を閉じているだけかと思った。
けれど、呼吸が規則正しく、肩の力も抜けている。

椅子に深く腰掛けたまま、背もたれに身を預け、頭がわずかに傾いていた。
義手は膝の上に置かれ、もう片方の手は、きつくもなく、力なくもなく、指が曲がっている。

昼間の緊張が、ようやく切れたのだろう。

「……無理、しすぎ」

小さく呟いても、返事はない。

私は立ち上がり、音を立てないよう近づく。
彼の前にしゃがみ込み、顔を覗いた。

近い。

睫毛が、思ったより長い。
眠っているせいか、普段よりもずっと幼く見える。

「起きたら、怒られるわよ」

そう言っても、彼は動かない。

ランプの明かりに照らされて、頬の傷跡が柔らかく浮かぶ。
昼間の戦闘を思い出し、胸の奥が少しだけ締めつけられた。

私は、そっと彼の義手を持ち上げ、机の端に置く。
そして、近くにあった上着を肩に掛けた。

そのとき。

「……リオン」

寝言のような声が、喉からこぼれる。

思わず、動きが止まる。

「……ここ、います」

そう答えると、彼の眉間の皺が、わずかに緩んだ。

それだけで、胸が妙に落ち着く。

私は一歩下がり、椅子の背にもたれかかる。
視界の端に、眠る彼が入る位置。

この距離なら、起きたらすぐ分かる。
何かあれば、声も届く。

ランプの火が、静かに揺れた。

今夜は、これでいい。
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