片翼の騎士と魔法の工匠

まめきち

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第十八話

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共同討伐の依頼は、急だった。

「隣国の騎士団が応援要請?」

掲示板の内容を読みながら、私は眉をひそめる。

「国境付近に魔物の群れが出たらしい。
数が多くて、単独では手が足りないって」

レオンは静かに頷いた。

「俺が前に出ます」

「無理はしないで」

「分かってる」

短いやり取り。
でも、以前より自然だった。

討伐地は、岩場の多い渓谷だった。
すでに隣国の騎士たちが布陣している。

その中に、一人だけ異質な男がいた。

銀縁の外套。
年は三十前後。
無駄のない装備と、戦場を見渡す冷静な目。

「隣国騎士団、副団長のカイエルだ」

名乗りは簡潔。

「応援に感謝する」

戦闘が始まると、状況は想像以上に厳しかった。

魔物は狼型だが、動きが速く、連携してくる。

「左、来る!」

私の声と同時に、レオンが踏み込む。

剣を振る角度。
足運び。
間合いの詰め方。

義手であることを感じさせない、流れるような動き。

一体を斬り伏せ、次へ。
無駄がない。

その一連の動きを、カイエルは見逃さなかった。

「……あの剣筋」

彼の視線が、レオンに固定される。

戦闘が佳闘に入る。

魔物が三体、同時に襲いかかる。

「囲まれる!」

レオンは一瞬、下がる素振りを見せた。

――が、違った。

半歩引いて、誘う。

飛び込んできた一体の喉元を断ち、
反転して二体目の足を払う。

残った一体が跳ぶ。

その瞬間、カイエルが息を呑んだ。

「……騎士剣術、第三式」

思わず、声が漏れる。

それは、侯爵家直系にのみ伝わる型。
隣国でも、記録でしか知られていない技。

「いや……違う」

剣を受けながら、彼は確信する。

「“教本通り”じゃない。
実戦で磨かれた……本物だ」

魔物を倒し終えたあと。

血を拭い、剣を収めるレオンに、
カイエルは近づいた。

「失礼」

低く、慎重な声。

「その剣。
誰に教わった?」

一瞬、レオンの表情が固まる。

私は、彼の横に立つ。

「傭兵です」

代わりに答える。

「戦い方は、彼自身のもの」

カイエルは私を見て、次にレオンを見る。

「……そうか」

少し間を置いてから、静かに言った。

「だが、あの型を使える者は限られている」

視線が、逃がさない。

「名を聞いても?」

レオンは、短く息を吸った。

「レオンです」

それだけ。

カイエルは、目を細めた。

「覚えておこう」

そう言って踵を返す。

去り際、低く呟いた。

「侯爵家が、黙っていないだろうな……」

その言葉が、嫌な余韻を残した。

レオンは、私を見る。

「……やっぱり、隠せなかった」

私は首を振る。

「隠れる必要はない」

彼の義手に、そっと触れる。

「あなたはもう、
奪われる側じゃない」

彼は、少しだけ笑った。

でもその夜。
隣国の騎士団から、正式な書簡が届く。

差出人は、カイエル。

内容は、丁寧で、しかし――重かった。

「貴殿の剣について、個人的に話をしたい」

影は、確実に近づいていた。
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