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♯131 天然爆弾
しおりを挟む放課後。
生徒会室で、生徒会役員と来週の新入生歓迎パーティーについての最終チェックをしていると。
“ピピピピ”
僕の胸ポケットに入っていた通信機が鳴った。
「失礼――」
断りを入れて胸ポケットから通信機を取り出し、受けるかどうか判断するために発信元を確認する。
そこに表示された名前を見て思わず固まってしまった。
「どうぞ。あとは事務作業のみなので。勝手にこちらで進めますので」
「あぁ、すまない。ありがとう」
副会長のティアナが空気を読んで僕の前にある書類を集めてまとめると、仕事を他の役員に振り分け始めたので、僕も笑顔を作り返事をする。
生徒会役員の面々は、各学年の学力順に任用の権利が与えられ、そこから有志を募るため、平民・貴族・派閥を問わず優秀な人材が混在している。
これはアピールするにはちょうどいい機会かもしれない。
あえてその場で通話ボタンを押す。
「ミーチェさん、どうしたの?」
僕の一言で、案の定皆が手を止め、こちらに視線を向けた。
まあ、手始めにはこんなところでいいだろう。
「込み入った話なら部屋を移動するけど――」
僕は念の為、会話を聴かれないようにするために、席を立ち上がり隣の準備室に足を向けた。
その瞬間――
『お忙しいところすみません…!あの!!わたし!!父と母がお姉様をルミナーレ家から追放するというような話をしているのを聞いてしまって…!!慌てて止めに入ったんですけど、失敗してしまいまして…!』
あまりの衝撃に言葉を失ってしまった。
しかしすぐにハッとしてチラッと周りに視線を配ると、突然のとんでもないミーチェ嬢の爆弾投下に、生徒会室にいる他のメンバーもこちらを凝視して凍りついていた。
これはまずいと思い、慌ててこれ以上彼女が暴走しないように何か言わなければと口を開こうとすると。
『お兄様にも協力を仰いだのですが全く相手にしてもらえなくて…部屋にいるように叱られてしまって…!お姉様も今不在ですし…私どうしたらいいでしょうか?!』
「ちょ、ちょっとまって?大丈夫だから、まずは落ち着いて?」
僕が頭の整理をするよりも早く、どんどんととんでもない追撃をしてくるので、慌ててミーチェ嬢の言葉を遮った。
だめだ、彼女の天然破天荒を甘く見ていた。
流石に僕の状況を何も確認せずにいきなり爆弾を投下してくるとは思わなかった。
しかも通信機なんて、いつ誰に盗聴されているかわからないのに危機意識が足りなすぎる。
まさかこんな、国家の情勢を揺るがすほどのとんでもない話を、こんなセキュリティーが不安定な状態でぺらぺらと話し出すなんて、誰が想像するだろうか。
いや…言い訳している場合ではないな。
これは完全に、ミーチェ・ルミナーレという人物を見誤っていた僕の落ち度だ。
今はこの現状をなんとかすることを考えよう。
こんな今のリグの逆境に追い打ちをかけるような致命的な餌、世間が放っておくわけがないのだから。
「とりあえず…本人は今どこにいるのかな?」
ミーチェ嬢を落ち着かせるために、最大限の優しい声色でゆっくりと語りかける。
『姉は今エイトリウス様の…アルゼンハイト公爵家のお屋敷におります!』
ミーチェ嬢は声を張って即答した。
こんな時に彼の家か…
まぁ、今、彼がリグと仲が良い姿勢を見せること自体は悪くはない…
ないけれど。
世間はそう受け取ってくれるとも限らない。
ルミナーレ公爵家がわざわざリグを家から遠ざけて計画的に話し合いをしているだとか。
アルゼンハイト公爵家からも見切りの話をされているとか。
逆に呑気に婚約者の家に遊びにいってる場合かとか。
揚げ足を取ろうと思えばキリはない。
さてどうするべきか…
今の最善策はなんだ――?
まず、ミーチェ嬢の言っていることは本当に正しい情報だろうか。
冷静に考えて、あの公爵が現状でそんな決断を下すとは到底思えない。
おそらくミーチェ嬢の早とちりという可能性が濃厚だとは思う。
しかしながら万が一もありうるし、なにより『聖女』である彼女が『そう言っている』のであれば、軽んじることはできない。
ならば僕が取るべき行動は――
「わかった。大至急そちらに行くよ」
『わぁ…!本当ですか?!ありがとうございます!!』
「ではのちほど」
通信を切って複雑そうな表情を顔に貼り付けると、メンバーの方に視線を向ける。
「申し訳ないけど急用ができたから今日は先に上がらせてもらうよ。みんなも今日は適当なとこでもうあがってもらって構わないから」
皆も緊張した面持ちでうなづいた。
ここまできたらもはや逆にこの状況を利用するしかない。
とことんやってやろうじゃないか。
僕は意を決するとビートンに視線を向けた。
「ビートン、車の手配を」
「えっ…!?く、車ですか?!」
僕の指示に案の定ビートンは動揺して目を丸くした。
「聖女様からの急ぎの要件だ。妥当だろ?」
僕が笑顔を作ると、ビートンはしばらく固まっていたが、メガネを指先でクイっと整えて大きなため息をついた。
「…承知いたしました」
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