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【R18】♯7 他人の空似【エイトリウス編】
しおりを挟むあかん。
ヤってしもた。
私は帰りの馬車の中で頭を抱えていた。
いや、念のためああいうことになるんじゃないかという想定はしていた。
だからちゃんとエルにバレないような細工をして『あっち』の対策もしていた。
していたけども。
私の中ではその想定は1番最悪だった時の場合として想定していたものだ。
まさかエルがあんなに手慣れたヤ◯チンだったとは思わなかったのだ。
だって4歳?からずっと私のことが好きだったんだぞ?!
誰にも見向きもせずにずっと一途に私のことを好きだったはずじゃないのかよ?!
初恋大事にしないんか?!
初めての人は好きな人と♡
みたいな甘酸っぱい青春を送らんのか?!
いや、あの手この手で私に愛想をつかせようとしても一途にずっと好きでいてくれちゃったから私は頭を抱えるハメになったのだけども…
でもだからこそ、私はエルが童貞だろうと踏んでいた。
そして、童貞ならもし万が一『そういう計画』だったとしても、慣れていない分隙が生まれて話し合いに持ち込むのにまだやりようがあるだろうと踏んでいたのだ。
なのに。
あれよあれよという間にエルのペースに流されてあんなことになってしまった。
あんな手慣れた自信満々野郎が童貞なわけないだろう。
全年齢対象ゲームどこいったよマジで。
こんなの状況が悪化しただけじゃないか。
結局私はエルの言う通り、詰めが甘いのだ。
でもそれは仕方のないことなのだ。
転生したとはいえ、転生前もなんの才能もない、ちょっとお絵描きができて、ゲームプレイセンスがあるかな?ってくらいしか誇れることのないただのアラサー女子だった。
まあ、この『エターナルミラーハート』のおかげで一応コンテンツ会社の代表取締役という肩書きはあったけど。
でも蓋を開けてみれば優秀な周りの人に恵まれただけで私は何一つすごくない。
なんなら恋人に裏切られたショックから立ち直るために、セッ◯スに依存しちゃうような、わりと弱いところがたくさんあるタイプの人間だった。
そんな人間に心理戦だなんて土台無理な話だったわけで。
だから出来損ないなのはわかっていたから、無い知恵を絞ってここまでコツコツコソコソと色々頑張っていたのだ。
それなのに。
これも全部あの悪魔のせいだ。
まあでもこんなこと考えたとて仕方がない。
そもそもあの悪魔を手元に置いたのは私自身なのだ。
結局、それも含めて私の詰めが甘かったということなのだ。
だからこそ、今日はなんとしてでもエルとのことをちゃんとうまく裁かなきゃいけなかったのだ。
それができなかったのは私の落ち度でしかなかった。
それにもう一つ。
エルには私の心をかき乱す大きな問題点があった。
なんなら今日改めて思ったがこれが一番厄介かもしれない。
私は大きなため息をつきながら先ほどまでの出来事を反芻した。
◇◇◇
「そこで服を脱げ」
いやいやいや、急に?!
いきなりエルは交渉事をすっ飛ばして肉欲コースにダイブしてきた。
エルは頭がいいし、なんだかんだ言ってもいつものチェスみたいにもっとじわじわと戦略的に攻めて話し合いができるような形に持ってくると思っていたのに。
その時点で私のプランは大幅に崩れまくっていた。
「もし従ったら、協力してもらえるってこと?」
やっとの思いでそれを立て直そうと試みたけども。
この時点ではまだエルが『初めて』だと思っていたから、まあ、服を脱いで裸を見せるだけでいいなら安いもんだと思った。
けど。
現実はそんなに甘くはなく。
結局あっちの提示してきた事項はかなりカロリー高めだった。
なんとかこっちが最低限守りたいものを咄嗟に絞り出して契約を取れたのは不幸中の幸いと思うことにしよう…
流石の私でもこの時点でエルの考えてることは大体察しがついた。
私を孕ませて逃げられなくさせる作戦なのだろう。
いくら性格が自己中だったとしても、私のことを好きだというならば、私の気持ちを配慮してくれることを願ったが。
彼は捨て身で一番厄介な選択肢をとってきた。
私の心がどうなろうとも、身動きを取れなくして仕舞えば諦めさせてあとでどうとでもなるとでも思ったのだろう。
普通に考えたらこんな非人道的な選択をしてくるなんてどうかしてると思うだろうが、私にはその行動が理解できてしまった。
なぜならそれが恋というやつのおそろしいところなのだ。
恋とは、愛とは、簡単に人が悪魔に魂を売ってしまうような恐ろしい心の病なのだと、私は考えている。
もちろんそうじゃなく、ちゃんと恋や愛を適切に扱える人もたくさんいると思う。
なんならそういう人の方が世の中にはきっと多いだろう。
でも私は嫌というほど前世でその恋だの愛だのの恐ろしさを経験したのだ。
初めて私の心を救ってくれた彼氏。
その彼氏のためなら命さえも捧げられると本気で思っていたし。
だからこそ裏切られた瞬間、彼らを殺そうとも思ったし、自ら命をたとうともした。
そして、たまたまボロボロになりながら彷徨った街で出会った『恩人』から『身体だけの関係』という心の発散方法を教えてもらってからやっと普通の生活が送れるようになったものの、結局最後はその彼氏の愛憎によって前世を終わらすことになったのだ。
だからあんな恐ろしい病に、2度とかかるまいとこの転生に気づいた時に、私は心に誓った。
だから、そんな私だからこそ、こんなことを選択してくるエルの気持ちを理解できるだけに、こちらも反応が鈍ってしまったのだ。
そしてさらに私にとって厄介で大問題なのが。
エルの色々な特徴が前世の彼氏に似ているところだった。
まずはその見た目。
マッシュボブに目の下のほくろ。
そしてタレ目ぎみのくせに鋭い目。
確かに、私はキャラデザをする時、なんとなく手なりで心の赴くままマッシュボブの絵を描いた。
キャラデザをしたのはまだ彼氏と出会う前だったから本当にたまたま。
テキトーに。
しかもモブだったし、顔の描写はちゃんとしなかった。
前髪で目が隠れてて見えないみたいなかんじで。
でも今世になって前世の記憶を取り戻してから、間近でエルがだんだんと成長していき元彼に似ていくのを目の当たりにして、私は戸惑ってしまった。
そして見た目だけならまだしも、ドSなところや考えがすぐ顔に出ることも似ていた。
言い訳するならば、そんな元彼に似過ぎたエルに、私が『無関心』だと知ってショックを受けたような顔をされたら、私の平常心が一気に吹き飛ぶのはもはや不可抗力で。
つい咄嗟に傷つけないような言い回しをしてしまってドツボにハマってしまったのだ。
よくない。
非常に良くない。
この体に染みついた悪い意味での日本人的な感覚。
自分のことを多少後回しにしてでも他者を尊重して誤魔化そうとするこの感覚。
ここで生き残るために捨ててきたつもりだったけど、一度パニクると咄嗟に出てしまうのはやはりそういう体に染みついた感覚なのだと思い知る。
エルを期待させればさせるほど、待ってる結末が変わらない以上、彼をどん底に落とすことになるのに。
そしてそれは回り回ってまた私の命を脅かすことにつながりかねないのだ。
だからこそ私はより傷が浅いところでエルを突き離さなければいけなかったのだ。
それなのに。
エルの望むままにあれよあれよと進んでしまい。
そしてソコから繰り出されるあのわけのわからぬイチモツのデカさの凶器またパニックになり。
基本的には日本人のものしか前世でもお世話になってなかったから。
欧米人のソレのサイズというか、それ以上かもしれない。
本気でちん◯でころされるかとおもったくらいだ。
とにかく初めての破瓜の痛みを想像したら冷静でいる方が無理だった。
そして極め付けの大問題はなんと言ってもあの攻め方だった。
前世でも私の『初めて』だった彼氏が、私にあらゆる快楽を教え込んだ。
その時と全く同じセリフを吐いたのだ。
「ナカイキをおしえてやるよ。」
今思うとなんて自信過剰な言葉なんだと思うけど。
確かに最高にテクニックはあった。
そしてそれはエルもなのだ。
さらにイったときの「ちゃんとうまく中でいけたな」と言って優しく頭を撫でられた時。
それも元彼と全く同じセリフだったのだ。
一瞬本気でエルも転生者かと疑った。
けど、それはありえない。
以前から見た目が似ているのが気になって試したことがあった。
私の書く日本語の文字を見せたことがあったのだ。
けれど、もちろんその文字はよめなかったし、さらに前世でよく二人で遊んだゲームの話もしてみたりしたけど、何一つピンときてなかった。
嘘をついていることも考えたけど、こんなに顔に出やすいエルが隠して置けるわけもないとは思う。
だから結局エルはは転生者でも無いし、彼とは全く無関係なのだけど。
でもあまりに私の過去を抉る要素が揃いすぎて、思わず感情がバグって涙腺が崩壊してしまったのだ。
泣くつもりなんて全くなかったのに。
そんな感情を表に出してしまったら、よりエルの興味をひいてしまいかねないのに。
やらかしてしまった。
本当に恋という病は恐ろしい。
完治したと思ってはいたが、生まれ変わってもこんな厄介な後遺症が残るなんて。
前世の彼はSとMの関係のなんたるかを私におしえてくれた。
どんなに激しい攻めの後でも、かならず終わった後は優しく私を労ってくれた。
Sはただ攻めればいいってもんじゃない。
そこに愛があって、初めてSとMが成り立つのだと。
MもSの愛が感じられるからこそ、Sに従いSを満足させるために奉仕する。
そして、エルのやりかたはまさにそれを思い出させるには十分すぎた。
そして前世から元彼に仕込まれたわたしのドM脳は転生したくらいじゃ治るはずもなく。
エルのドSっぷりな態度にその記憶が蘇り勝手に体が反応する始末。
途中から目的も何もかもどうでも良くなって我を忘れてつい快楽におぼれて自分で腰を振ってしまっていた。
たしかに、最悪の想定として体を差し出す覚悟はしていたけども。
あんな反応じゃあ、まるで私が喜んでますと言ってるようなものだった。
◇◇◇
「はぁ…」
私はまた深くため息をついた。
エルに協力してもらえることにはなったけど。
これじゃあ婚約破棄をする前に本当に私が彼に丸め込まれそうで頭が痛い。
しかも、エルの心を折ることもできず、なんならかなり自信をつけさせてしまった気もする。
しかもしかも、久しぶりのセック◯も最高すぎて、せっかく今世では私の中でがんばって封印していた快楽という最高のストレス発散法を、この今世の身体も味わってしまったのだ。
非常によろしくない。
よろしくない予感しかない。
でもまあもう起こってしまったことは後悔してもしかたがない。
また家に帰って今日のことを改めて、『この人生』の対策用に認めている『(禁)ノート』に書き出して策を練ろう。
転生に気付いてから私は、自分が作ったこの世界の全ての設定とルートの分岐の考察と、実際に起こった出来事を日本語で細かくその『(禁)ノート』と私が命名したノートにまとめていた。
なぜ日本語かというと、この世界の誰も日本語を読むことができなかったからだ。
あの悪魔でさえも。
だから、今回のように、資料は悪魔に見られて悪用されてしまったが、この1番重要な決して誰にも知られてはいけない機密事項は、見られたところで日本語ならば解析不可能で安全なのだ。
しかし今日のせいで考えることはまた山積みになってしまった。
へとへとだしなるべく徹夜はしたくないけど、できる限り早いうちに策を練りたい。
私は散々エルにだき潰されて疲れ切った身体を少しの間でも休ませておこうと揺れる馬車の中で目を閉じた。
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