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【R18】♯36 弟はサイコなホラー
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僕はベッドにうつ伏せに寝っ転がりながら読んでいた小説から目を離して時計を見た。
午後9時50分
姉さんの部屋から帰ってきてからまだ30分しか経っていないのにもう10回以上は時計を確認している。
時間を気にしすぎるのを紛らわせるために読み始めた小説も全然頭に入ってこない。
あぁ、だめだ、早く姉さんの様子を見に行きたい。
僕が部屋を出る時でさえ『あんな状態』だったんだから。
きっと今頃『あの薬』が身体に回って来て姉さんは相当辛いはずだ。
あぁ、早く、また姉さんと繋がりたい。
あの最高に多幸感に包まれた、『あの夜』をもう一度味わいたい。
そう思ったら思わず自分のものが反応してしまって熱を持ち始めてしまったので寝返りを打って仰向けになった。
けどもう少し待とう。
早く行きすぎて姉さんに警戒されてしまっても意味がない。
できれば姉さんの我慢の限界が来て、それしか考えられなくなった頃まで待ちたい。
あともう少し。
あともう少しだけ我慢しよう。
そう思ってまた小説に視線を戻すも目が滑って全然内容が入ってこなかった。
仕方ないので小説を閉じてベッドの隅に放り投げて立ち上がり、姉さんの部屋側の壁まで歩いて行って耳を当ててみる。
まあ、こんなことしたところでさっき姉さんは防音の魔法を使っていたし、何も聞こえるわけはないのだけど。
でも何もしていないとソワソワしてすぐにでも姉さんの部屋に行きたくなってしまうから。
こんなことでもして気を紛らわせていたかった。
「…っ……ぁ……」
え…?
今なんか聞こえた…?
僕はもっとよく聞こうと思って呼吸を止めて意識を集中させて壁に耳を押し付けた。
「……ぁ…!…、…ぃ!!ぃぐ!!」
ドクンッと僕の心臓が跳ねた。
姉さんが隣の部屋で『ナニ』をしているのか、すぐにわかった。
思わず声を出して笑いそうになったので、手で自分の口を押さえて壁から耳を離して距離を取る。
「あは、あははっ!サイッコー!」
防音の魔法はもう解いたってことなのかな?
それとも、薬が効いてきて魔法が使えなくなったのだろうか?
いずれにせよ姉さんの集中力が保てない状況になってるのは明らかだ。
さて、どうしようか?
もうこのまま『あの方法』を使って姉さんの部屋に行ってみようか?
それもいいけど…
でも。
そうだな…
もう少し確証がほしい。
姉さんにまだ理性が残っているかどうか。
確認したい。
当初の予定通り、まずは確認するために真正面から姉さんの部屋に行って様子を見てみようか。
僕はソファーの上に脱ぎ捨ててあった上着を掴み大雑把に羽織ると足早に部屋を出て隣の姉さんの部屋に向かう。
そして扉の前に立ちノックをしようと軽く握った手の甲をドアに近づけた。
その時。
「あ…!!ま…いく!!…う!!……き…う!!イグッ!!!」
扉の向こうから明らかに『それ』とわかる姉さんの声がした。
僕は思わずまた笑いそうになって口元を手で覆った。
いやいやいや、姉さん?
流石にコレは丸聞こえすぎでしょ?
誰かがここを通ったらどうするの?
まぁ、この時間ほとんど使用人も通らないけどさ。
それにしたってコレはダメでしょう?
いやぁ、でも、あの薬は本当にすごい。
いつも警戒心の強い姉さんをここまで堕とせるんだから。
素晴らしすぎる。
もう確認しなくたって姉さんの理性は残ってなさそうだけど…
まぁ、一応ね…?
"コンコン"
僕がドアをノックすると姉さんの部屋から漏れ聞こえていた声がピタッと静かになった。
あぁ、だめだ、笑ってしまいそうになる。
今更そんな声を顰めたってバレバレだというのに。
でも堪えなきゃ。
僕はあらかじめ頭の中に用意していた言葉を口に出す。
「ねえさん、もうねた?なんか…明日の新学期想像したら…緊張して寝れなくなっちゃったんだけど…」
さぁ、どうだ?
もし姉さんが起きていたとしたら、僕のことを絶対に無視することはない。
何なら寝ていたとしても、このくらいの声量で話しかければ姉さんはすぐに目を覚ます。
そしてわざわざ起きて来て出てくれる。
姉さんはそう言う人だ。
だからもしこれで今の状態を堪えて我慢しながら扉を開けて出て来たならば。
まだ姉さんは誤魔化せる理性が残ってる。
でももしこれで出てこないで寝たふりをするならば。
姉さんはもう僕に顔を見せられないほどきつい状態になっているはずだ。
僕は中の音を聞こうと呼吸を止めて耳を澄ませる。
しばらく聞いてみたが、物音すら聞こえない。
きっと僕が部屋の前を去るのを待って息を潜めているのだろう。
ふふ、そうだよね?
あんな声をあげながら自分を慰めてる状態で僕の前に出てくるなんて無理だよね?
あー。
ダメだ。
顔がニヤける。
もう確定だ。
それならここに長居する意味もない。
『最後のセリフ』を言って姉さんを安心させて、この場を去ろう。
そう思ったその時。
「…ぅっ…っつ…」
かすかに部屋から声が聞こえた。
僕は耳を疑った。
え…
まさか…?
まさか、ねぇ?
僕はごくりと唾を飲み、辺りを見渡して人がいないことを確認して扉に耳を近づける。
「んっふぅ…!!!」
その部屋から漏れ聞こえる明らかに姉さんが『ナニか』をしているであろう声に僕はまた笑いそうになって慌てて自分の口を手で覆った。
うそだろ??
僕がまだ扉の前にいるのに我慢できなかったの??
サイコーすぎるよ姉さん!!
まあ確かに初めてこの薬使った時も僕の前で我慢できなくて触ろうとしてたけどさ??
でもあの日は『あの薬』をまるまる一本いれたからであって。
今回はその半分も入れてない。
本当にちょっと。
ほんのちょっと垂らし入れただけ。
それなのに。
まさかこんなになるなんて。
本当に『あの薬』は劇薬過ぎてヤバいでしょ。
「なんだ、ねちゃったのか…ざんねん…」
このままここにいると今度は僕の方がテンション上がり過ぎてボロが出そうだから、急いでまたあらかじめ用意していた『セリフ』を口に出す。
そして足早にその場を後にして自分の部屋に戻り、部屋の鍵をしっかりと閉めた。
「ふふ、あはは、あははは!」
自室の隔離された空間に入って安心したせいで、思わずずっと我慢していた笑いが溢れ出た。
「今楽にしてあげるからね?姉さん?」
僕はそのまま急いで窓に向かい鍵を開けてバルコニーへと出た。
春先とはいえ夜風はまだひんやりとしていて、気持ちの昂ぶりとあいまって思わずブルッと体が震えた。
僕は足音を立てないようにしてゆっくりと隣の窓に近づく。
隣の、姉さんの部屋の窓に。
僕の部屋と姉さんの部屋はバルコニーで繋がっている。
まあもちろん、普段は窓の鍵が閉まっているから、たとえバルコニーが繋がっていたとしても姉さんの部屋に入ることはできないけど。
普段…ならば。
姉さんの部屋の窓の前に着くと、カーテンが開いたままになっていた。
僕がさっき、姉さんの部屋に入った時と同じ、開いたままだ。
おそらく姉さんはあのあと窓の近くに来ていないのかもしれない。
中から気づかれないようにゆっくりと中を覗く。
するとそこからは天蓋つきベッドが見えたが、ベッドの窓側のカーテンが閉められており、姉さんの姿は確認できなかった。
でもこれは好都合だ。
多分姉さんはあのカーテンの向こう側にいる。
いまなら僕の姿も姉さんからは見えない。
さらに今日は新月。
いつもより外は暗い。
中から外の人影にも気付きにくいだろう。
僕はごくりと唾を飲んで興奮で震える手を落ち着かせながらゆっくりと窓の取手に手をかけ、力をかける。
ガチャ…
開いた。
やっぱり『あの時』姉さんは気づいていなかった。
姉さんの部屋に様子を見に入った時、僕がこっそり窓に近づいて『窓の外を眺めるふりをして鍵を開けていたこと』を。
あぁ、思い通りに行き過ぎて笑ってしまいそうだ。
姉さんはもっと僕を警戒するべきだ。
本当に危なっかしい。
「はぁ…きもちい…!」
僕がゆっくりと部屋の中に足を踏み入れた瞬間、今まで聞こえていたくぐもった声とは違い、壁を通さない明瞭な姉さんの艶のある声が耳に飛び込んできて思わずドキッと心臓が跳ねて口元がニヤけた。
緊張と興奮で自身のものはもうはち切れそうなくらいパンパンで早く服を脱いで解放したい。
でもまだ我慢だ。
せっかくここまできたんだから。
最後まで計画通りにしなくちゃね?
僕はそのまま足音を立てないように部屋に侵入して窓をそっと閉めると、姉さんに気取られないようにこっそりと姉さんの声がするベッドの方に近づいていく。
あぁ、もうこの距離でもわかる。
この部屋に充満した姉さんの匂い。
高鳴る鼓動と熱を持つ自身のものを落ち着かせながらゆっくりとベッドを回り込みカーテンが開いている箇所を見つけて近づくと、ベッドの上で全裸で無心に自身の中を掻き回しながら乳首をいじってる姉さんの姿が目に飛び込んできた。
姉さんは快楽を得ることに必死になりすぎて、僕がもう目と鼻の先の距離にいるのに全く気づかない。
その視界からの情報の過激さに僕の興奮度合いは最高潮に上り詰める。
あぁ、可哀想に。
想像していた以上に悲惨だ。
こんな情けない姿になるまで追い詰められて。
本当に可哀想。
可哀想過ぎて。
最高に可愛すぎるよ姉さん。
そんな姉さんの姿を見ただけで僕のモノはもう限界を迎えてしまいそうだった。
「欲しい…ほしいの…!!」
姉さんは譫言のように呟きながら必死に自分を慰めている。
あぁ、姉さん。
辛かったよねぇ?
ごめんね?
いま、僕が楽にしてあげるからね?
僕はゆっくりと姉さんに触れようと手を伸ばした。
その瞬間、また姉さんが口を開いた。
「あぁっ!ごめんなさいッ…ごめんなさい!!こんなのダメなのに…!気持ちいの…!!エルッ!」
は?
あまりの衝撃に心臓が止まるかと思った。
今。
なんつった?
え?
聞き間違え。
だよね?
僕の耳に入ってきた、姉さんの口から出たとは思えない信じられない単語に、一瞬にして体温が下がるのがわかった。
いや。
まさかね?
姉さんはそんな愚鈍な人ではないよね?
まさかそんなまさか。
あんなクソみたいなやつのことを。
考えながら。
まさかそんなこと。
シてるわけ。
ないよね?
「はぁ!!エルッきもちぃ!!ごめんなさい!!…っイぐっ!!!」
しかし僕の期待とは裏腹に、僕の目の前で姉さんの口から再び放たれた言葉に、思わず衝動的に姉さんの首を締めようと伸ばした手を、僕はすんでのところで反対の手で押さえつけて止めた。
いやまて、落ち着け自分。
姉さんは悪くない。
悪いのはあいつだ。
姉さんの中に無理やり入り込んだあいつが悪い。
我慢だ。
せっかく今姉さんから僕を求めてもらえるチャンスなんだから。
今ここで怒りに飲まれてしまってはダメだ。
まずは予定通り姉さんから僕を求めてもらわないと。
まぁ、でも。
その後にじっくり、姉さんには色々と、反省してもらわないといけないけどね?
だからもう、お願いだからこれ以上僕をイラつかせないでよ。
姉さん…
って。
おもってるのに。
「エルッ奥に、出して…!!んはぁ!!!!」
必死に僕が気持ちを落ち着かせようとしている目の前で。
あろうことか姉さんは。
アイツに中出しを懇願しながら潮を撒き散らした。
あはは。
あははは。
なにそれ。
全然笑えない。
ねえ。
姉さん?
もしかしてわざとやってんの?
僕がいること気づいててわざと?
もしそうだとしたら姉さんは。
本物の悪魔だよ。
ねぇ?
そんなに気持ちよかったの?
アイツのことを想ってするオナ◯ーは。
そんなにアイツのことが
好 き な の ?
あぁ、だめだ。
もうむりだ。
憎い。
憎い憎い憎い。
姉さんが憎いよ。
どうして?
なんで?
何であんなクソなやつのことを考えてるの?
他のやつを想ってしてるのだって許せないけど。
でもどうして。
よりにもよって。
なんでアイツなんだよ。
あの昔から僕と姉さんの間を散々邪魔して嘲笑う人間以下のゴミクズなんかを。
ふざけんな。
ふざけんなよ。
そもそも。
姉さんは気づいてないかもしれないけど。
アイツは姉さん以外にも手を出してるゲス野郎だよ?
僕がアイツを陥れようとして送り込んだクラスの女子にもアイツは迷わず手を出していた。
僕がそれを利用しようとしたら相当な金を積んだのか無かったことにされたけど。
でもあまりにも手を出してから揉み消すまでのやり口が手慣れ過ぎててどう考えても常習犯だろ。
ねぇ、姉さん?
アイツは姉さんのことを好きだと言いつつ他の女に手を出しまくってる最低なクソ野郎なんだよ。
そんな腐れ外道なんかに引っかからないでよ。
でも僕は違う。
僕は今までもこれからも。
姉さんただ一人だけ。
こんなに愛してる。
姉さんのためなら命だって惜しくない。
それなのに。
ねえどうして?
ねえなんで?
全然わかんない。
僕にわかるように説明してくれよ。
アイツが姉さんと交わったから?
それを思い出してるの?
だったら僕だって姉さんとしただろ?
僕のことは微塵も頭に浮かばないの?
『あの日』あんなに気持ちよさそうに。
ヨガリクルッテタジャナイカ。
それなのに。
『あの日』よりも。
アイツとのセック◯の方が良いってこと?
ふ ざ け る な よ?
そんなの絶対に許さない。
そんなわけないだろ?
ねえ、ちがうよね?
姉さん?
「しんど…」
姉さんはそう呟いてぐったりとベッドにへたり込んだ。
ねぇ…しんどいのは僕の方だよ。
僕はゆっくりと目を開いた姉さんを覗き込んだ。
姉さんはびっくりして声を上げようとしたから、僕は姉さんの口を塞いであげた。
さっき、姉さんも、『こんな夜中に大きな声出しちゃよくない』って言ってたもんねぇ?
姉さんの言いつけを律儀に守って僕は良い子でしょ?
今そんな声出したら困るのは姉さんなんだからね?
僕って気がきく優しい弟でしょ?
こんなに姉さん思いな聞き分けの良い弟、世界を探したって僕だけだよ?
それなのに。
「ねぇ…なんで…?」
僕に、わかるように。
「ねえ…どうして…?」
僕が、なっとく出来るように。
「ねぇ…何で姉さんはあんなヤツの名前を呼びながらしてたの…?」
ちゃんと。
説明してくれるよね?
ねぇ…?
姉さん?
午後9時50分
姉さんの部屋から帰ってきてからまだ30分しか経っていないのにもう10回以上は時計を確認している。
時間を気にしすぎるのを紛らわせるために読み始めた小説も全然頭に入ってこない。
あぁ、だめだ、早く姉さんの様子を見に行きたい。
僕が部屋を出る時でさえ『あんな状態』だったんだから。
きっと今頃『あの薬』が身体に回って来て姉さんは相当辛いはずだ。
あぁ、早く、また姉さんと繋がりたい。
あの最高に多幸感に包まれた、『あの夜』をもう一度味わいたい。
そう思ったら思わず自分のものが反応してしまって熱を持ち始めてしまったので寝返りを打って仰向けになった。
けどもう少し待とう。
早く行きすぎて姉さんに警戒されてしまっても意味がない。
できれば姉さんの我慢の限界が来て、それしか考えられなくなった頃まで待ちたい。
あともう少し。
あともう少しだけ我慢しよう。
そう思ってまた小説に視線を戻すも目が滑って全然内容が入ってこなかった。
仕方ないので小説を閉じてベッドの隅に放り投げて立ち上がり、姉さんの部屋側の壁まで歩いて行って耳を当ててみる。
まあ、こんなことしたところでさっき姉さんは防音の魔法を使っていたし、何も聞こえるわけはないのだけど。
でも何もしていないとソワソワしてすぐにでも姉さんの部屋に行きたくなってしまうから。
こんなことでもして気を紛らわせていたかった。
「…っ……ぁ……」
え…?
今なんか聞こえた…?
僕はもっとよく聞こうと思って呼吸を止めて意識を集中させて壁に耳を押し付けた。
「……ぁ…!…、…ぃ!!ぃぐ!!」
ドクンッと僕の心臓が跳ねた。
姉さんが隣の部屋で『ナニ』をしているのか、すぐにわかった。
思わず声を出して笑いそうになったので、手で自分の口を押さえて壁から耳を離して距離を取る。
「あは、あははっ!サイッコー!」
防音の魔法はもう解いたってことなのかな?
それとも、薬が効いてきて魔法が使えなくなったのだろうか?
いずれにせよ姉さんの集中力が保てない状況になってるのは明らかだ。
さて、どうしようか?
もうこのまま『あの方法』を使って姉さんの部屋に行ってみようか?
それもいいけど…
でも。
そうだな…
もう少し確証がほしい。
姉さんにまだ理性が残っているかどうか。
確認したい。
当初の予定通り、まずは確認するために真正面から姉さんの部屋に行って様子を見てみようか。
僕はソファーの上に脱ぎ捨ててあった上着を掴み大雑把に羽織ると足早に部屋を出て隣の姉さんの部屋に向かう。
そして扉の前に立ちノックをしようと軽く握った手の甲をドアに近づけた。
その時。
「あ…!!ま…いく!!…う!!……き…う!!イグッ!!!」
扉の向こうから明らかに『それ』とわかる姉さんの声がした。
僕は思わずまた笑いそうになって口元を手で覆った。
いやいやいや、姉さん?
流石にコレは丸聞こえすぎでしょ?
誰かがここを通ったらどうするの?
まぁ、この時間ほとんど使用人も通らないけどさ。
それにしたってコレはダメでしょう?
いやぁ、でも、あの薬は本当にすごい。
いつも警戒心の強い姉さんをここまで堕とせるんだから。
素晴らしすぎる。
もう確認しなくたって姉さんの理性は残ってなさそうだけど…
まぁ、一応ね…?
"コンコン"
僕がドアをノックすると姉さんの部屋から漏れ聞こえていた声がピタッと静かになった。
あぁ、だめだ、笑ってしまいそうになる。
今更そんな声を顰めたってバレバレだというのに。
でも堪えなきゃ。
僕はあらかじめ頭の中に用意していた言葉を口に出す。
「ねえさん、もうねた?なんか…明日の新学期想像したら…緊張して寝れなくなっちゃったんだけど…」
さぁ、どうだ?
もし姉さんが起きていたとしたら、僕のことを絶対に無視することはない。
何なら寝ていたとしても、このくらいの声量で話しかければ姉さんはすぐに目を覚ます。
そしてわざわざ起きて来て出てくれる。
姉さんはそう言う人だ。
だからもしこれで今の状態を堪えて我慢しながら扉を開けて出て来たならば。
まだ姉さんは誤魔化せる理性が残ってる。
でももしこれで出てこないで寝たふりをするならば。
姉さんはもう僕に顔を見せられないほどきつい状態になっているはずだ。
僕は中の音を聞こうと呼吸を止めて耳を澄ませる。
しばらく聞いてみたが、物音すら聞こえない。
きっと僕が部屋の前を去るのを待って息を潜めているのだろう。
ふふ、そうだよね?
あんな声をあげながら自分を慰めてる状態で僕の前に出てくるなんて無理だよね?
あー。
ダメだ。
顔がニヤける。
もう確定だ。
それならここに長居する意味もない。
『最後のセリフ』を言って姉さんを安心させて、この場を去ろう。
そう思ったその時。
「…ぅっ…っつ…」
かすかに部屋から声が聞こえた。
僕は耳を疑った。
え…
まさか…?
まさか、ねぇ?
僕はごくりと唾を飲み、辺りを見渡して人がいないことを確認して扉に耳を近づける。
「んっふぅ…!!!」
その部屋から漏れ聞こえる明らかに姉さんが『ナニか』をしているであろう声に僕はまた笑いそうになって慌てて自分の口を手で覆った。
うそだろ??
僕がまだ扉の前にいるのに我慢できなかったの??
サイコーすぎるよ姉さん!!
まあ確かに初めてこの薬使った時も僕の前で我慢できなくて触ろうとしてたけどさ??
でもあの日は『あの薬』をまるまる一本いれたからであって。
今回はその半分も入れてない。
本当にちょっと。
ほんのちょっと垂らし入れただけ。
それなのに。
まさかこんなになるなんて。
本当に『あの薬』は劇薬過ぎてヤバいでしょ。
「なんだ、ねちゃったのか…ざんねん…」
このままここにいると今度は僕の方がテンション上がり過ぎてボロが出そうだから、急いでまたあらかじめ用意していた『セリフ』を口に出す。
そして足早にその場を後にして自分の部屋に戻り、部屋の鍵をしっかりと閉めた。
「ふふ、あはは、あははは!」
自室の隔離された空間に入って安心したせいで、思わずずっと我慢していた笑いが溢れ出た。
「今楽にしてあげるからね?姉さん?」
僕はそのまま急いで窓に向かい鍵を開けてバルコニーへと出た。
春先とはいえ夜風はまだひんやりとしていて、気持ちの昂ぶりとあいまって思わずブルッと体が震えた。
僕は足音を立てないようにしてゆっくりと隣の窓に近づく。
隣の、姉さんの部屋の窓に。
僕の部屋と姉さんの部屋はバルコニーで繋がっている。
まあもちろん、普段は窓の鍵が閉まっているから、たとえバルコニーが繋がっていたとしても姉さんの部屋に入ることはできないけど。
普段…ならば。
姉さんの部屋の窓の前に着くと、カーテンが開いたままになっていた。
僕がさっき、姉さんの部屋に入った時と同じ、開いたままだ。
おそらく姉さんはあのあと窓の近くに来ていないのかもしれない。
中から気づかれないようにゆっくりと中を覗く。
するとそこからは天蓋つきベッドが見えたが、ベッドの窓側のカーテンが閉められており、姉さんの姿は確認できなかった。
でもこれは好都合だ。
多分姉さんはあのカーテンの向こう側にいる。
いまなら僕の姿も姉さんからは見えない。
さらに今日は新月。
いつもより外は暗い。
中から外の人影にも気付きにくいだろう。
僕はごくりと唾を飲んで興奮で震える手を落ち着かせながらゆっくりと窓の取手に手をかけ、力をかける。
ガチャ…
開いた。
やっぱり『あの時』姉さんは気づいていなかった。
姉さんの部屋に様子を見に入った時、僕がこっそり窓に近づいて『窓の外を眺めるふりをして鍵を開けていたこと』を。
あぁ、思い通りに行き過ぎて笑ってしまいそうだ。
姉さんはもっと僕を警戒するべきだ。
本当に危なっかしい。
「はぁ…きもちい…!」
僕がゆっくりと部屋の中に足を踏み入れた瞬間、今まで聞こえていたくぐもった声とは違い、壁を通さない明瞭な姉さんの艶のある声が耳に飛び込んできて思わずドキッと心臓が跳ねて口元がニヤけた。
緊張と興奮で自身のものはもうはち切れそうなくらいパンパンで早く服を脱いで解放したい。
でもまだ我慢だ。
せっかくここまできたんだから。
最後まで計画通りにしなくちゃね?
僕はそのまま足音を立てないように部屋に侵入して窓をそっと閉めると、姉さんに気取られないようにこっそりと姉さんの声がするベッドの方に近づいていく。
あぁ、もうこの距離でもわかる。
この部屋に充満した姉さんの匂い。
高鳴る鼓動と熱を持つ自身のものを落ち着かせながらゆっくりとベッドを回り込みカーテンが開いている箇所を見つけて近づくと、ベッドの上で全裸で無心に自身の中を掻き回しながら乳首をいじってる姉さんの姿が目に飛び込んできた。
姉さんは快楽を得ることに必死になりすぎて、僕がもう目と鼻の先の距離にいるのに全く気づかない。
その視界からの情報の過激さに僕の興奮度合いは最高潮に上り詰める。
あぁ、可哀想に。
想像していた以上に悲惨だ。
こんな情けない姿になるまで追い詰められて。
本当に可哀想。
可哀想過ぎて。
最高に可愛すぎるよ姉さん。
そんな姉さんの姿を見ただけで僕のモノはもう限界を迎えてしまいそうだった。
「欲しい…ほしいの…!!」
姉さんは譫言のように呟きながら必死に自分を慰めている。
あぁ、姉さん。
辛かったよねぇ?
ごめんね?
いま、僕が楽にしてあげるからね?
僕はゆっくりと姉さんに触れようと手を伸ばした。
その瞬間、また姉さんが口を開いた。
「あぁっ!ごめんなさいッ…ごめんなさい!!こんなのダメなのに…!気持ちいの…!!エルッ!」
は?
あまりの衝撃に心臓が止まるかと思った。
今。
なんつった?
え?
聞き間違え。
だよね?
僕の耳に入ってきた、姉さんの口から出たとは思えない信じられない単語に、一瞬にして体温が下がるのがわかった。
いや。
まさかね?
姉さんはそんな愚鈍な人ではないよね?
まさかそんなまさか。
あんなクソみたいなやつのことを。
考えながら。
まさかそんなこと。
シてるわけ。
ないよね?
「はぁ!!エルッきもちぃ!!ごめんなさい!!…っイぐっ!!!」
しかし僕の期待とは裏腹に、僕の目の前で姉さんの口から再び放たれた言葉に、思わず衝動的に姉さんの首を締めようと伸ばした手を、僕はすんでのところで反対の手で押さえつけて止めた。
いやまて、落ち着け自分。
姉さんは悪くない。
悪いのはあいつだ。
姉さんの中に無理やり入り込んだあいつが悪い。
我慢だ。
せっかく今姉さんから僕を求めてもらえるチャンスなんだから。
今ここで怒りに飲まれてしまってはダメだ。
まずは予定通り姉さんから僕を求めてもらわないと。
まぁ、でも。
その後にじっくり、姉さんには色々と、反省してもらわないといけないけどね?
だからもう、お願いだからこれ以上僕をイラつかせないでよ。
姉さん…
って。
おもってるのに。
「エルッ奥に、出して…!!んはぁ!!!!」
必死に僕が気持ちを落ち着かせようとしている目の前で。
あろうことか姉さんは。
アイツに中出しを懇願しながら潮を撒き散らした。
あはは。
あははは。
なにそれ。
全然笑えない。
ねえ。
姉さん?
もしかしてわざとやってんの?
僕がいること気づいててわざと?
もしそうだとしたら姉さんは。
本物の悪魔だよ。
ねぇ?
そんなに気持ちよかったの?
アイツのことを想ってするオナ◯ーは。
そんなにアイツのことが
好 き な の ?
あぁ、だめだ。
もうむりだ。
憎い。
憎い憎い憎い。
姉さんが憎いよ。
どうして?
なんで?
何であんなクソなやつのことを考えてるの?
他のやつを想ってしてるのだって許せないけど。
でもどうして。
よりにもよって。
なんでアイツなんだよ。
あの昔から僕と姉さんの間を散々邪魔して嘲笑う人間以下のゴミクズなんかを。
ふざけんな。
ふざけんなよ。
そもそも。
姉さんは気づいてないかもしれないけど。
アイツは姉さん以外にも手を出してるゲス野郎だよ?
僕がアイツを陥れようとして送り込んだクラスの女子にもアイツは迷わず手を出していた。
僕がそれを利用しようとしたら相当な金を積んだのか無かったことにされたけど。
でもあまりにも手を出してから揉み消すまでのやり口が手慣れ過ぎててどう考えても常習犯だろ。
ねぇ、姉さん?
アイツは姉さんのことを好きだと言いつつ他の女に手を出しまくってる最低なクソ野郎なんだよ。
そんな腐れ外道なんかに引っかからないでよ。
でも僕は違う。
僕は今までもこれからも。
姉さんただ一人だけ。
こんなに愛してる。
姉さんのためなら命だって惜しくない。
それなのに。
ねえどうして?
ねえなんで?
全然わかんない。
僕にわかるように説明してくれよ。
アイツが姉さんと交わったから?
それを思い出してるの?
だったら僕だって姉さんとしただろ?
僕のことは微塵も頭に浮かばないの?
『あの日』あんなに気持ちよさそうに。
ヨガリクルッテタジャナイカ。
それなのに。
『あの日』よりも。
アイツとのセック◯の方が良いってこと?
ふ ざ け る な よ?
そんなの絶対に許さない。
そんなわけないだろ?
ねえ、ちがうよね?
姉さん?
「しんど…」
姉さんはそう呟いてぐったりとベッドにへたり込んだ。
ねぇ…しんどいのは僕の方だよ。
僕はゆっくりと目を開いた姉さんを覗き込んだ。
姉さんはびっくりして声を上げようとしたから、僕は姉さんの口を塞いであげた。
さっき、姉さんも、『こんな夜中に大きな声出しちゃよくない』って言ってたもんねぇ?
姉さんの言いつけを律儀に守って僕は良い子でしょ?
今そんな声出したら困るのは姉さんなんだからね?
僕って気がきく優しい弟でしょ?
こんなに姉さん思いな聞き分けの良い弟、世界を探したって僕だけだよ?
それなのに。
「ねぇ…なんで…?」
僕に、わかるように。
「ねえ…どうして…?」
僕が、なっとく出来るように。
「ねぇ…何で姉さんはあんなヤツの名前を呼びながらしてたの…?」
ちゃんと。
説明してくれるよね?
ねぇ…?
姉さん?
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・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
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