私を見つけて!  転生令嬢は失った婚約者との運命を取り戻したい

耳おれ猫

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敵の正体

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 ジルデア公爵領の領都に入った途端、ベリルが呟いた。

「おかしい…」

「何がおかしいの?ベリル」

「街に冒険者と思われる者の姿が多すぎるのです」

 そういえば、パーティーを組んでいるような、5人連れや6人連れのグループがここかしこに見られる。
ベリルは「ちょっと冒険者ギルドに行っていいですか?」と言って私たちは冒険者ギルドに行くことにした。

「おや、ベリルじゃないか!元気してたか?最近姿が見えないがどこにいるんだ?」と声をかけてきたのは、いかつい真っ赤な剣を差した男だった。

「ウルフか、久しぶりだな」とベリルとウルフという男はお互いに肩を叩きあって再会を喜んだ。聞くとベリルが私を探しに旅をしていた時、一時一緒にパーティーを組んでいたそうだ」

「その眼帯にあいかわらずの美形ですぐわかったぜ。うちのパーティーもジルベールとジーナが結婚して引退したが、ガントはまだ斧を振り回してるぜ。どうだまたパーティー組まないか?」

「すまんな、今仕事中だ。この子供はある貴族のお坊ちゃまでな。離婚した母親が連れて出たんだが死んだんで父親の所に送る護衛をしているんだ」とベリルが言うと、今気づいたようにウルフは私の姿を見まわして私を値踏みしたようだった。

「ウルフ、なぜこんなに冒険者がこの街に来ている?何かあったのか?」

「いや、お前聞いてないのか?ドラゴンの墓場の話」

「ドラゴンの墓場だと?」

「おう、上級再生ポーションの材料を探すのに山の深い所に入った冒険者がいて、足を滑らせて崖から落ちたそうだが、そこが驚いたことにそこがドラゴンの墓場でドラゴンの爪やうろこが取り放題。それに聞いてくれよ!ドラゴンの魔石がゴロゴロ転がってたって言うんだから驚きだよな。
それで見つけた冒険者は全部持てないから一番値が高そうな魔石を持って帰ったんだが、途中で足折ってこの街の病院に担ぎ込まれたんだ。それで入院費が無くて魔石を病院の下男に頼んで換金してくれるよう頼んだんだが、その下男が魔石を全部持ったまま姿を消しちまったらしい。そしてご想像通り下男は死体で見つかり、ドラゴンの魔石は1個残らず消えてたって話だ」

「ドラゴンの魔石…それでこの人出か。それでドラゴンの墓場は見つかったのか?」

「いや、俺たちもその話を聞いて駆け付けたんだが見つからねえんだよ。魔獣は多いし霧がずっと出てるし、今自分がどこにいるかわからなくなるんだ。あれ以上深い所に行ったら誰も戻って来れねえよ」

「ドラゴンの魔石持って帰ったギルって奴も迷ってどこ歩いたかわからないうちに崖から落ちたらしいしな。もう二度と誰も行けねえんじゃないかって話になってる」

「そうか、いい話聞かせてもらってありがとな。じゃ、この子家に送ってくるわ」と言って、ベリルは私を連れて冒険者ギルドを出た。

「ロー、ちょっと病院に寄ります。入院しているギルって男、知っている奴かもしれません」

 ここではクロウズ王太子を名乗るのは危険なので、ベリルは私をローと呼ぶ事にしていた。

「うん、わかった!」 私たちはギルという人を訪ねて入院している病院に行くことにした。

 ギルが入院している病院はこの領都で一番大きな病院らしく、2階建てで病室が10室もある大きな病院だった。
その中の一室に入ったベリルは「やっぱりな」と言って寝ていた男性の頭を小突いた。

「何すんだ!」と目覚めて怒った男性だったが、黒の眼帯をしたベリルの顔を見た途端、「ベリルの旦那…」と言って逃げようとした。しかしすぐ「いてっ!」と傷に障ったのだろう大人しくなった。

「ロー、紹介しましょう。私がミルドレン王国を旅している時、通訳として雇ったのがこの男です。まだ10才くらいのチビで漁師の父親が行方不明で病気の母親と姉と幼い兄弟がいるって言うので同情して雇ったのですが、有り金全部盗んで逃げました」

 しっかり者だと思っていたベリルがこの男に騙されたと聞いて私はビックリして男の顔を見つめた。

「あの時の事は悪い事したなーって思ってたんですよ。でもあの金で母ちゃんは医者にみてもらえたし、姉ちゃんも身売りせずに済んだ。後悔はしてません」と言った。

「それで、上級再生ポーションの材料を探して山の深い所まで潜ったそうだが、どうしたんだ?」

「ええっ、そこまで話つかんでるんですか!わかりましたよ。全部話しますよ。あれから母ちゃんは死んだんですが、港で酌婦をしていた姉ちゃんが船から荷崩れした荷物に巻き込まれて片足失くしちまって、俺たち弟妹が面倒見てるんですけど、上級再生ポーションってのがあったら足が生えてくるらしいんですよ。でもそれ買うとバカ高いから、材料揃えて錬金術師に作ってもらおうと思って山に入ったんです」

「それで崖から落ちてドラゴンの墓場に落ちたのか」

「いや、崖から落ちた時は木に引っかかって骨も折らずに下まで降りたんです。だから墓場を見てこれはお宝の山だだって喜びましたよ」

「それでドラゴンの魔石はどのくらい持って帰った?」

「ドラゴンの爪や骨なんかもあったんですがそれは泣く泣く諦めて、魔石を14個持って帰りました。ドラゴンの魔石は大きくてそれが持てる限界だったんです。でも霧が深くて足元も見えないうえに重い魔石を担いで帰ってたらよろけちまって、また崖から落ちました」

「また落ちたのか」

「今度落ちた所は霧も無い所だったんですが、両足骨折して動けなくなってもうダメかって思ってたら、運よく通りかかった猟師に助けられてこの街に運び込まれたってわけです」

「そりゃ運が良かったな。それで魔石はどうなった?」

「魔石を入れていた袋が破れて3個無くなってました。持って帰れたのは11個です。それで1個は助けてくれた人にお礼に渡して残りの10個を持ってたんですが、ここの入院費が前金でバカ高くて、下男に換金に行ってもたうよう10個渡したら全部盗まれちまったわけです」

「嘘だな。おまえ1個だけ換金を頼んだんじゃないのか?前金でも1個売れば入院費が全額出るだろう。残りの9個はどうしたんだ」

「あっ、やっぱわかります? 1個売ってくれって下男に渡したんですけど、俺が麻酔かけれて寝てる間に病室に置いてあった荷物の中から、あいつ残りの9個盗んだんですよ」

「それで10個全部下男が盗んだって言ったわけだな。1個渡したのに残りの9個も寝てるうちに盗まれたって言ったら、病室にまだあるかもってここに来る奴がいるかもしれないしな」

「そこまでわかりますか!そうなんですよ。俺今動けないから押し入ってこられたら困りますからね」

「それにお前みたいな奴が手の内全部下男に見せる訳が無い。他にもどこかに何個か隠し持っているだろう?」

「降参です。やっぱベリルの旦那はもう騙せないや」と言って、ギルは腹巻の中から3個取り出した。

「これで正真正銘全部です。この前のお詫びに旦那にあげますよ。だからこれで勘弁してください」

 ベリルはもらった魔石のうち1個だけ受け取ると2個をギルに返した。

「姉さんに上級再生ポーションを買ってやれ」ベリルはそう言うと私を連れて部屋を出た。

 宿屋に入った私たちは、ベリルの結界の中で話をした。

「クロウズ様、このドラゴンの魔石は危険です。普通の火の魔石の1000倍の魔力を宿しています。これで火を放射する武器でもあれば、この街くらい簡単に焼けるでしょう」

「そんなに危険なの」

「ええ、10個の魔石を下男から奪った犯人が誰かですね。悪用するような人物の手に渡らなければ良いが…」

「10個のドラゴンの魔石を何に使うんだろう?明日はジルデア公爵の所にお見舞いに行って、それとなく情報を聞いてみようか」

「そうですね、これを使うとしたら貴族か金持ちの商人でしょうし、明日公爵家で情報を得ましょう」

 私とベリルはそう話して休んだのだった。
  

  
 私とベリルは、次の日ジルデア公爵家を訪れた。
私のマントはどこにでもありそうな黒のマントだ。でも裏返せば王太子紋が刺繍された深紅のマントになる。公爵家を訪れるのに問題はない。同様にベリルのマントも裏返せばズッシード王国近衛騎士団のマントになる。
 公爵家の正門で「王太子殿下のご視察である。速やかに門を開けよ」とベリルが言うと、門の番をする公爵家の衛士が慌てて駆けて行った。
 慌てた様子でジルデア公爵家の使用人たちが正門に一列に整列した。その中を私は当然のような顔をして通って行く。
その先にはジルデア公爵の嫡男でシルビアーナ義姉上の婚約者、クレナンドが立っていた。

「クロウズ王太子殿下、突然のご訪問で驚きましたよ。今日は初のご視察で我が領に来て頂きありがとうございます。当主である祖父、グスタフはただ今病床についておりますが、お目通りがかないましたら喜ぶ事でしょう。さあ中にお入りください」 

 そう言って案内されて公爵家で一番挌上の応接室に通された。そしてクレナンドは床についている公爵の面会の準備をするのでしばらくお待ちくださいと言い席を外した。

 誰もいなくなった部屋で「殿下、ちょっと周りの音を拾ってみます」ベリルがそう言うと、風使いの”声寄せ”の魔法で邸内の声を集めた。

   
      ジルベールデン・ヤクソクガチガウ・ハアリマセン・クロウ・・アンサツスルヤクソクデ・

      ドラゴンノマセキヲワタシタ・・カエンホウシャソウチ・ラジルヲコウゲキ・ルノハミッカ

      ゴノアサ・ズルフガワヲ・フネ・コウゲキスル・テハズハカンリョウ・・コレデゴルシラッ

      ク・ミナトハ・タシタチノモノ。ハヤク・クロウズ・コロシテクダ・・・クスリヲ・・オチ 

      ャ二イレタ・・ドコカヒトノイナイ・・・・ゴエイモロトモ・・・・コロス・フタリトモ・


「何か物騒な話をしていますね」

「そうだね。ジルベール殿下というのはたぶんランドア聖国の王太子だね。この屋敷に来ているのか。何しに来ているのかな?」

「ドラゴンの魔石を下男から奪って殺したのもクレナンドの差し金でしょう。それで火炎放射装置を作ったみたいですね。ゴルシラックって事はうちの港が欲しいってことでしょうか。だけど困ったな、3日後までにラジル王国にこの事を知らせる方法が無い」

 ズッシード王国からラジル王国に行く唯一の道がズルフ河の川船だ。しかし船はランドア聖国を通る。ランドア聖国がラジル王国に攻め入るつもりなら、今は河の通行は止められていて知らせに行くのは不可能だろう。

 「その前にここから無事に脱出しなければなりません。ロー、急病になってもらえますか?」

 しばらくしてメイドがお茶の入れ替えに入って来た。クロウズはベリルと一瞬目を合わせ、急に意識を失ったように倒れた。それをすかさずベリルが受け止める。

「殿下!大丈夫ですか!そこのメイド、殿下の体調がお悪いようだ。今日の視察は中止とする。クレナンド殿に言付けを頼む」そういうと、ベリルはクロウズを抱きかかえたまま玄関に向かい屋敷を後にした。
 門から出て、ジルデア公爵家から追手が来ない事を確認すると、宿屋を目指して二人は走った。
街に戻った私たちは、宿屋の厩に預けていたアクゥに飛び乗り街から出たのだった。

 その頃ジルデア公爵家では、ランドア聖国の皇太子ジルべールとジルデア公爵家の嫡男クレナンドが笑みを浮かべながら話していた。クロウズとベリルが体調を崩して視察が中止になったとの報告を聞き、「王太子に何か勘づかれましたかね?」とクレナンドはジルベールに聞いた。

「何も気づかれるような事は無かったと思うよ。だけどせっかくのチャンスだったのに、ここでクロウズを始末できなかったのは残念だな」

「まあ3日後の総攻撃に支障は無いでしょう。何かに勘づいてラジル王国に知らせるにしてもズルフ河は昨日から通行止めにしてありますしね」

「それより、早くクロウズを始末してくださいよ。クロウズさえ生まれなければ、私がべランナーシェと結婚して王位に就けるはずだったのに、本当邪魔な奴だ」

「なに、10才の子供を始末するなんてわけないよ。もう少し待っておくれ」

「早くお願いしますよ。ほんと3日後の侵攻が楽しみだ。ドラゴンブレスで焼かれるラジル王国…。世界中から物が集まるゴルシラック港。ジルデア公爵領の鉱石はジルデア公爵家のものなんですから、もっと採掘して世界中に売りさばくべきなんです。今の王みたいに付加価値をつけるなんて冗談じゃない。我が領の鉱石を国に全部取られてしまうじゃないですか。我が領がゴルシラック港を自由に使えるようになればジルデア公爵家はもっと豊かになれる。ジルベール殿下、この計画をぜひ成し遂げてくださいよ。フフフ」

「もちろんだとも、クレナンド。ゴルシラック港という富が集まる金の卵は私達のものだ」

 3日後のドラゴンブレスで燃えるラジル王国を頭に描き2人は笑みを浮かべるのだった。

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