この恋は始まらない

こう

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第四十五話・お兄ちゃんはお兄ちゃん

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とある日の東山家。
休日の昼間から騒がしい。
ほんま、この家はいつも騒がしい。
平穏と静寂を望む俺には、住みにくい世界である。
「ばばーん!」
ドアを破壊すんな。
思いっきり扉を開けて現れる。
妹の陽菜は、新しい制服姿でリビングに入ってきた。
表情が自慢気である。
俺達家族に届いたばかりの新しい制服を見せたかったらしい。
親父や母親。秋月さんは、素直に拍手をする。
手放しで可愛い可愛いと言うあたり、陽菜には甘々だな。
俺は無である。
コーヒーを飲みながら無である。
正直な話。
陽菜が制服を着込むと馬子にも衣裳だが、多少は似合っている。
中学三年生だった愚妹も、ちょっとずつ大人になっていき、高校生に上がり新学期の準備をする。
それは喜ばしいが。
何で、俺達の高校に入学するんだよ。
地獄かよ!
不安の種が増えた。
この世界は、俺に恨みでもあるのか。
「お兄ちゃんみてみて。似合うでしょ!」
見慣れた制服姿が現実を突き付ける。
見てみろ。
あれが俺達の後輩になる問題児だ。
アホ面をしている。
こいつの偏差値では入学出来ないと思っていたが、秋月さんを筆頭に頭がいい人が勉強を見てくれたおかげで、無事に合格出来た。
毎日のように、学校終わりから塾に通い、寒い日でも友達と勉強を頑張っていたのは知っている。
親父は仕事終わりで疲れていようがいつも車で迎えに行き、夜に出歩いて危なくないようにしていた。
母親は夜食を作ってあげたりしていた。
俺はお菓子を買ってくるパシリにされていた。
そんなみんなの助力があり、陽菜は無事に高校を合格が出来たわけだ。
それでも最後の最後は、こいつの行動があってこその結果だ。
どんなに頑張っても、テストで良い点数を取らなければ合格は出来ない。
俺の妹は、五月蝿いしわがままで、観たいテレビがあると毎度誘ってきて、暇な時に壁ドンしてイラストの邪魔をしてくるし大っ嫌いだが、まあこいつの頑張りは評価している。
陽菜が初台高校を受験した理由が、ギリギリまで寝れるからだとしても、それでも頑張ったのは事実だからな。
入学式前に新品の制服をおろすほどに楽しみなのは、気持ちとして分からんでもないからな。
ぴょんぴょん跳ねている。
母親は、はしゃいでいる陽菜を注意する。
「陽菜、せっかくの制服なんだから入学式までは汚さないでね」
「うん! 気を付けるよ」
あ、こいつ直ぐに汚すな。
陽菜は、性格がこんなんだ。
注意力散漫な上に、食べ方が下手くそだから、家族全員は同じことを思っていた。
制服にホットドッグとかの染みになる食べ物を溢さない限りは、多少は汚しても大丈夫だろうか。
……大丈夫だよな?
駄目そうだ。
こいつの将来が心配になるわ。
「そうだわ。陽菜のお祝いをしないとね。今日の晩御飯は豪勢にするわね。……三人とも暇だったら、陽菜の入学祝いを買いに行ってきて」
「え~、なにを買おうかなぁ?」
「買っていいのは、学校で使うものだからね? 一万円以内で抑えるのよ」
母親に釘を刺されていた。
漫画やゲームでも買うつもりだったのか。
「ぶーぶー」
欲しいものが買えずに不貞腐れている陽菜と共に、俺と秋月さんはお祝い選びに付き合うことになった。


ほどなくして、いつも立ち寄っている駅前のショッピングモールに着く。
キャキャしながら先を行く陽菜を見ながら、俺と秋月さんは冷ややかな目をしていた。
何故か三人とも制服姿だ。
選ぶ際に制服姿の方が、似合っているか分かるからいい。
ついでに、みんなで制服合わせで遊びに行きたいとか、ふざけたことを言い出したのでこの様だ。
日曜日の昼過ぎから、休日なのに制服姿に着替えて恥ずかしい格好をしている。
その上、人通りが多い駅前に駆り出されているわけだ。
知り合いに出くわしたら、どう言い訳したらいいのだろうか。
「そうね。私にいい案があるの。休日制服デートということにしましょ」
「え?」
妙案だと言いたげではあるが。
すみません、意味分かんないっす。
……根本的な解決案じゃない。
秋月さんって、かなり抜けてるよな。
そこが可愛いと思うこともあるけれど、かなりの力業を多様してくる。
最近は、萌花の方が常識人に見えてくるくらいだ。
制服デートねぇ。
しかし、妹に付き合って制服に着替えてきたと説明するよりかはマシか。
死んでもシスコンに思われたくはない。
三人で遊ぶことをデートと言うべきかは謎だが、秋月さんがそれで満足してくれているならいいか。
秋月さんと大体遊ぶ時は陽菜が一緒にいて、二人でいられる時間は少ないのだ。
五月蝿い陽菜はかなりのお邪魔虫なはずなのに、常日頃から妹の相手をしてくれて助かる。
二人は本当の姉妹のように仲良しだし、秋月さんは家族の一員として大切な存在だけど、あくまで他人の家の娘様だ。
礼儀は必要であり。
やってもらいっぱなし。
無償の愛というわけにはいかない。
借りたものは返さないといけないのだ。
ちゃんと恩義に報いるように、何かしらしてあげないとな。
陽菜を祝う目的で遊びに来たが、秋月さんの日頃のお礼も考えないといけないだろう。
お金もあまりないので、数千円くらいのほんの些細なお礼しか出来ないが、何がいいか。
付き合いが長い今だって、女の子の好きなものはよく分からんし、毎回プレゼントを選ぶのも大変である。
女心が分かるのは大分先になりそうだ。

「お兄ちゃん、遅いよ!」
陽菜は大声を出して呼んでくる。
……俺が必要か?
秋月さんと仲良くショッピングするんなら、俺は要らないだろ。
先に陽菜の目的を果たすか。
こいつの欲しいものなら、秒で分かるわ。
さっさと買い物をしよう。


「これ欲しい!」
色々な店を回って普通に遊んでいた。
たまたま立ち寄ったキャラクターショップで、大きなくまのぬいぐるみを持ってくる。
くまくま体操のくま。
何かと縁があるな。
何度も顔を合わせていると、このくまも可愛く感じてくる。
とはいえ、正直今じゃない。
「初っぱなから関係ないものを持ってくるな」
「陽菜ね、ずっと前から新しいぬいぐるみが欲しかったの」
「いらねぇだろ」
「うちの子にも、新しい友達が必要でしょ!」
「お前に必要なのは、新学期からの友達だろ」
陽菜の部屋には、数え切れないくらいのぬいぐるみがある。
ベッドの上まで侵食しているくらいに横並びになっていたはずだ。
このままだと、自分の寝る場所がなくなるわ。
いや、だから、ぬいぐるみは必要ないだろ。
「ほら、新しいぬいぐるみがあるからって、陽菜のお家に遊びに来てもらうの。そこからお友達になれるかも」
お前のコミュニケーション能力は、小学生止まりかよ。
単純過ぎる。
お子ちゃま思考なのは知っていたが、相変わらず無茶苦茶な考え方をしているな。
小日向とか白鷺なら、ノリノリで遊びに来そうだけど。
その意味では、陽菜ならばそういう方法で友達が出来るのかも知れない。
「それ幾らなんだ?」
「五千円」
微妙に頑張れば買える値段だな。
まあ、たまには兄らしいことをしてやるか。
「しゃあねえな。買ってやるよ」
「流石、お兄ちゃん。優しー」
「この金だってタダじゃないんだからな? その分、高校に入ってちゃんと勉強するんだぞ? うちの高校はテスト難しいんだから気を付けないと……」
「大丈夫、大丈夫」
五千円を奪い取り、そそくさとレジに持っていく。
羅生門かよ。
しばいてやろうか。


レジ待ちしている陽菜を見ながら、俺達二人は待っていた。
「ふふ、お兄ちゃんだね」
秋月さんは褒めてくれていた。
でも、俺からしたら嫌がらせでしかない。
「それ以上言ったら、自決しますよ」
「……え? 死ぬほど嫌なの?」
「二歳違いの妹が、同じ小学校。中学生と、毎日毎日学校で絡んできて、他のやつに冷やかされる生活を歩んできたし、女子からはシスコン野郎と言われて嫌われていた。それでも妹を好きになれるほど、俺は出来た人間ではない」
「まあそうよね……。でも、陽菜ちゃんはやっぱりお兄ちゃんと一緒に居れて嬉しそうだし、今日くらいは優しくしてあげて?」
そう言われると困ってしまう。
まあ、俺が大人になるしかないのか。
陽菜は笑顔で、くまくま体操のくまを抱えて戻ってくる。
「はい。お兄ちゃん」
「○すぞ」
秒で俺に渡してくるんじゃねぇよ。
てめぇが持てよ。


ほどなくして、くまくま体操のくまは、コインロッカーに収納される。
やっぱり邪魔じゃねぇかよ。
可愛いと言っていたぬいぐるみを、コインロッカーにギチギチに押し込む妹はやばいと思うわ。
やっと両腕が使えるようになる。
「それじゃ次は、えっと何だっけ?」
ぬいぐるみのインパクトに全部持っていかれていて、当初の目的を忘れていた。
「陽菜ちゃんの入学祝いで、高校生活に必要なものを買いに来たのよ?」
「それだわ。確か、バッグとか必要なんだっけな」
中学までの鞄は学校の名前が入ったやつで使え回せないので、新しいものが必要だ。
うちには学校指定のバッグはないから、使いたいものを使っていい。
スクールバッグや、リュックサック。
派手じゃなければ、ブランドものの鞄を使っても問題ない。
好きな鞄を使える。
初台高校はファッションにはおおらかなため、鞄にシュシュを付けたり、缶バッジを付けたりしているやつもいるので、校則は緩い方だろう。
髪の毛を染めてもいいし。
真っ赤なマニキュアをしているアホもいるし。
どっちかというと、貴重品であるパソコン持ってきている俺の方が怒られそうだ。
「じゃあ、陽菜の鞄でも選ぶか」
新学期の撮影に使った時に、小日向からリュックサックのことは色々聞いていた。
流行りのデザインやブランドとか死ぬほど聞かされていたし、誰よりも詳しいと思う。
リュックが売っているのは、スポーツショップとかか。
ショップまでの場所が遠くて、歩き回るのは得意じゃないが、色々な店で鞄を探すよりかはいい。
こいつ、優柔不断だしな。
お店を決めうちさせて、その場所で買わせよう。
再度、俺より先に行く陽菜と秋月さんだった。
「リュックだ、リュック~。わたし、大きいのがいいなぁ」
「陽菜ちゃんは小さいんだから、軽いのにしましょ」
「え~、高校生になったら、もっと成長するよ」
大人の女性に憧れるお子ちゃまである。
女の子の成長期は、普通に中学生までだろうがな。
「もっと大きくなって、ママみたいな大人の女性になるの」
悪夢かよ。
いや、悪魔だな。
身長もスタイルも悪い陽菜だが、将来は母親のようなナイスボディになりたいらしい。
無理だろ。
成長期は中学生までだって。
何度も言わせるなよ。
「陽菜ちゃん。女の子は小さい方が、男の子の庇護欲が強くなって構ってもらえるから有利よ?」
「秋月さん? 何言ってんの?」
狂気。
いきなりSAN値チェックが入るのやめて?
秋月さんといると、定期的に精神削りが発生する。
萌花の一件で、萌花を庇って揉めたことを羨ましがっていた。
男の子に守ってもらいたい。
そういう乙女チックな夢があるのは分かるが、問題は起こさないでほしい。
あと、妹に悪知恵を教えないでくれ。
陽菜は話す。
「麗奈ちゃんは、お。スタイルいいもんね」
お、言うなよ。
「ありがとう。でも、私はそんなに身長も高いわけでもないけれどね。革靴もちょっと厚底のやつを履いているし」
ほんまや。
いつもより数センチ高く見える理由がそれか。
厚底だとその分、脚が長く見えるらしく、見映えがいい。
スラッとしたシルエットが、より美人に見せてくれる。
すれ違う男性も目に止まっているくらいだし。
「いいなぁ。わたしも厚底の革靴買おうかなぁ」
「制服に合わせて、靴も新調した方がいいものね。一緒に見に行きましょう」
女の子と買い物をすると、ショッピングの目的が二転三転する。
好奇心が強過ぎ。
無駄に体力があるから、色々なお店に行きたがる。
特に俺の周りは、同じようなタイプが多くて困るものだ。
とりあえず、リュックを買おうぜ。
……疲れたわ。


スポーツショップに来て、リュックサックを色々見ていた。
陽菜は小柄なので、大きすぎないものを選ぶ。
「キツネさんのリュック可愛い」
薄手のリュックを手に取る。
夏コミで小日向が使っていたやつか。
海外ブランドのリュックで、女の子に人気らしいな。
小さいながらも丈夫で収納性も高い。
けっこう便利らしい。
陽菜は背負ってみせて、くるりと回る。
「えへへ、似合う?」
ガキだな。
似合っている以前の問題だわ。
「ちなみに幾らする?」
値札を確認する。
……一万円以上するやんけ。
予算は一万円なので、余裕でオーバーしている。
それに合わせて革靴を買おうとしていたら、全然足りないからな。
「お兄ちゃん……」
「舐めんな」
神速の超反応である。
くまくま体操のくまを買ったんだから、無茶を言うな。
サークル活動で得たお金は貴重だ。
俺が五千円を稼ぐ為に、どれだけ頑張っていると思う。
毎日イラストを上げて、日々努力しても数千円稼ぐのも難しいのだ。
そもそも、最近はずっと、自分の為にお金を使ってないからな?
「陽菜はこれが欲しいの!」
「そういうのは、自分のお年玉を崩して買うんだよ。あと、兄に買ってもらおうとするなよ。貰っているお小遣いは、お前と変わんないんだぞ?」
「お兄ちゃん、テストでいい点取って、お金を貰ってたじゃん」
「……俺の努力だろ、それ」
なにそれ。
テストを頑張っていい点数を取ったら、妹に奢らないといけないの?
普通にマイナスなんだけど。
わがままばかりの陽菜を諌める。
何度言っても、全然言うことを聞かない。
「陽菜は、これが欲しいの!」
「いや、マジでふざけんな! 自分が望んだものが、全部手に入るわけないだろ? 何か一つでも欲しいものを得たなら、他は妥協しろ。みんなそうやっているんだよ」
五千円のリュックだって、いいものは沢山ある。
ブランド物じゃなくて可愛くないとしても、鞄としての品質は変わらないはずだ。
陽菜は泣き出す。
「酷いよ。お兄ちゃん、陽菜だけに怒るんだもん」
お前しかわがまま言わないんだよ。
他のやつは一度で分かってくれるんだよ。
秋月さんが仲介しようとするが、止める。
「俺は、お前が悪い時にしか怒らない。一万円あれば、五百円のランチが二十回食べられるんだぞ? 親父が身を粉にして働いているのに、ゲームに課金はしないし、母親が毎日お弁当を作ってくれて節約しているから、お前に渡せる金なんだよ。だから、わがまま言わずに我慢しろ。我慢しないといけないんだよ。……陽菜なら出来るだろう?」
「うん。ごめんなさい」
稼いだこともない中学生にきつく当たるのは心苦しいが、それが事実である。
一軒家を建てて、何の不自由もなく生きていられるのは、両親が俺達を多少なりとも愛しているからだ。
パソコンを買ってもらってぶっ壊した俺が言うのは不義理ではあるけれど。
言わないといけなかった。
親の頑張りを知らないまま、大金を使わせるわけにはいかない。
こんなやつでも、ちゃんとした人の道を歩んでほしい。

「はい。陽菜ちゃん」
秋月さんがハンカチを渡してくれる。
「麗奈ちゃん、わがまま言ってごめんなさい」
「ううん。分かっているならいいの。陽菜ちゃんは大人だね」
陽菜に抱き付いて、頭を撫でる。
まるでお姉ちゃんだな。
秋月さんには後で謝らないといけなくなってしまった。
それから、陽菜は予算内でリュックを買って大切そうにしていた。
泣いて赤くなった目を見ていると、罪悪感が強くなる。
陽菜がお手てを要求してくる。
幼い頃から、寂しくなると俺の手を握りたくなる癖は直らないらしい。
今日ばかりは、断れないものだ。
「……まあ、なんだ。すまんな」
妹が嫌いではあるが、別にこいつを傷付けたり、不幸にしたいわけではない。
陽菜が間違っていれば怒るし、俺が言い過ぎたなら謝る。
妹であっても、一人の人間としては対等である。
俺は兄らしいことは出来ていないし、早く生まれただけだからな。
それを理由に、妹に強く当たらないようにはしているはずだ。
わがままばかりなやつだが、読み終わったファッション雑誌を俺にくれるし、いつもイラストを応援してくれている。
妹として感謝しているところもある。
言い出しつらいが。
「……まあ、誕生日までは我慢しろよ」
「お兄ちゃん大好き!」
「暑苦しい! 抱き付くな!!」
直ぐ調子に乗るから嫌いなんだよ。


麗奈は、二人を遠巻きに見ていた。
兄妹で仲良くする二人を、見ているだけで嬉しかった。
陽菜ちゃんの誕生日は五月で。
「本当に甘いお兄ちゃんなんだから……」
それがとても好きだった。


夕方になる。
革靴も買ったので、当初の目的は果たした。
「そうだ。秋月さんは何か欲しいものはありますか?」
「え? 私?」
「なんか申し訳ないし、日頃のお礼も兼ねて、プレゼントしないといけないなって」
予算はちゃんと伝えておく。
反応があまりよろしくない。
無欲なのかな?
遠慮しがちな人だから、表情が読めなかった。
「あ、そうね。じゃあ、ケーキが欲しいかな」
「ケーキ?」
「ほら、お祝いの席にはケーキが必要でしょう?」
それは母親に連絡したらお金を出してくれると思うけど。
それを言ったらいけない気がした。
「陽菜ちゃんにプレゼントしたいけど、時間的に探すの難しいし。今日はお祝いだから、ケーキくらいはね?」
「ケーキ! いちごのショートケーキが食べたい!」
うっせぇな。
あんだけ泣いてたのに、完全復活するなよ。
「陽菜ちゃんが選んでいいよ」
「え~、麗奈ちゃん優しい」
この二人が仲良過ぎて、兄妹じゃなく姉妹にしか見えなくなってきた。
他の人から見たら、俺が部外者じゃん。
通り過ぎる男性が、美人姉妹とか言っている。
陽菜は美人ではないがな。
その横を一緒に歩く俺。
百合の間に混ざる野郎にしか見えん。
「秋月さんが欲しいものを買ってもいいんですよ?」
「ううん。一番欲しいものは、もう貰ったからいいの」
「何かあげましたっけ?」

「教えてあげないっ」

そう言って、秋月さんは笑うのだった。
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