Alice in the Arithmetic World Part.1

サレルノのエルマンノ

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第2話:図書館にて

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アリスが手に取った本は守りの数秘術の専門書で、国際魔術協会が出版している数少ない専門書だ。
それが10年前に帝国防衛隊に翻訳されるまで、ずっとこの図書館に眠っていた本らしい。
魔術大全は重要書籍なので持ち出し禁止であり、図書館の中でしか読むことが出来ないのだった。
魔術の基本はたかが10年くらいでは変わらないので、アリスにとっては宝箱のようなものである。

家に居ると年老いた祖母に文句を言われるだけなので、アリスはこうして日中を図書館で過ごすのが常だった。
アリスの家は父親が不まじめな人間なため経済的にいつも困っていた。
母親は遠くの国に行って家政婦などをしながらアリスの家に仕送りをして支えてくれたが、その仕事も不安定だった。
祖母はいつもお金の話しかせず、アリスとは喧嘩ばかりだった。

アリスはこんな現実から抜け出すには、早く大人になってまともな職業に就くしかないと思っていた。
しかしアリスはまだ15歳なので働くことを禁じられていたのだった。
来年は高校かもしれないが、どうせ母たちに反対されると思い、進路を決めかねていた。
そこで見つけたのが高等魔術学校、この辺りではアルビ算術院と言われている魔法使いの登竜門である官立の専門学校だった。

ここに入れば給料も支給されるし、全寮制で住む場所にも困らないのであった。
これで誰にも邪魔されずに暗号の勉強ができる、とアリスは思った。
年齢は無関係で、魔力のあるものは能力が優秀な成績上位者が毎年50人まで入学できる。
もちろん該当者なしの年もあり、この制度が国民からエリート偏重主義であると非難を浴びることもあった。

魔術師の多くは帝国の大臣たちが設立した工業規格標準局や、軍隊、技官、研究所などに職を求めた。
だからアリスにとっては魔術師になれるこの学校はまさに憧れの在り処であった。
受験科目は、物理、姿変えの術、数秘術、外国語、そして国語か社会のどちらかを選択した合計5教科だった。
高校入学程度の学力を試され、それにプラスして魔力を試される。

アリスは合格を目指して毎日図書館で勉強をし、その合間に数秘術を学んだ。
学校には行かず、定期的に試験を受けに村の学校に行く以外はこうして図書館で自分の好きな科目を勉強するのだった。
アリスにとって学校はなにか違和感を感じる居心地の悪い場所だったのだ。
だから、幼なじみのアルルという少年以外に友達はいなかった。

アリスの成績は悪くなかった。
というのもアリスは何かわからないことがあったら、分かるまで考え、理解しないと気がすまない完璧主義者だったから。
その日の午後、勉強がはかどったためアリスはいつもより長く数秘術の勉強をしていた。
先日見つけたモノ直しの技を守りの数秘術に応用する方法について調べ始めたのだ。

しかしアリスにとっては難しいことこの上ない。
まずアルジェブラが何かわからない。
四則演算と剰余はいいとして、物直しの技を習得しなければならないのだ。
モノ直しの技。

それは壊れたものを元通りにする方法だ。
アリスにはまだ出来ない。
できる魔力があるかどうかもわからない。
アリスにとっては魔力というものは必要になれば出てくるものだと思っていた。

アリスは魔術院に落ちた人のことを顧みず、、自分は天才なんだと思うふしがあった。
そしていつしかアリスは自分の中にいる偽物の魔術師を感じていた。
私もいつか魔術を諦める日が来るのかもしれない。
しかしアリスにその日が来るまでには、まだ時間があった。

補足:
後は、モノ直しの技で守りの数秘術を作るためには算術の方が多いということを明らかにして、魔力がなくても守りの術を設計できることを言って、さらにアリスが何故守りの数秘術をやりたいのかが明らかになるであろう。
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