Memory in Vain

サレルノのエルマンノ

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最終話

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僕は暗号で通信内容を守ることにした。
なぜマリの攻撃から通信を守ることができたのか?
正確には時間稼ぎだ。
マリを油断させるために解読可能な暗号で暗号化したものだ。

その一方、僕はマリに盗まれてもいいように、暗号文に個人認証用のデータを混ぜられる、通称「なおやん暗号」を使った。
パソコンでやり取りする情報は全部見られているとして、大事なデータは全部プログラム電卓で暗号化して送った。

ーなおやん暗号ー。
ナオヤという暗号フリークが作った暗号。

これは暗号文の送信者が文書の内容を知っていることを証明した後でなければ復号できない特殊な暗号だ。
なおやん暗号のこの特殊な機能はゼロ知識証明という認証手段を使っている。
この暗号方式はどのような攻撃に対しても安全だとされている。
これは僕が実装したからわかるんだけど・・・、やめておこう、頭が痛くなるだけだ。
このラインより上のエリアが無料で表示されます。
とにかくこの暗号を使えば、どんな攻撃にも耐えられる。
なぜSNSのE2EEチャットを使わなかったのかって?
正確には囮の情報を流すのには使っていたのだが、そんなところに本物のデータは書き込まない。

じゃあどうやってその秘密を伝えたのか。
答えは目の前にある。
マリの目の前にも。
でもマリは気づかない。

ランダム。
僕たちはランダムをやりとりする。
僕のプログラムはそれを振るい分ける。
ランダムとは・・・、止めておこう。

僕たちはいつも通りの生活をしているかのようにE2EEで囮の情報を流した。
マリたちは僕の暗号に発信機が付けられていることに最後まで気づかなかった。
マリは発信機付きのデータを政府に送っていたのだ。
これでマリと政府、そして討伐隊の関係は明らかになった。
僕はジャーナリストに、このデータを送った。
このラインより上のエリアが無料で表示されます。
マリが死んだという話を聞いた。
遺体からはポロニウムが検出された。
誰かに毒を盛られたらしいが、彼女の身の回りにそれらしい容疑者は出てこなかった。
プリズム・・・?

僕は通信履歴を公開したが、マリが死んだのはその直後だった。
この事件は一部の報道機関が地味に取り上げただけで、大きな問題にはならなかった。
事件は今でも謎のままである。

マリは僕たちのメッセージを収集していたはずだ。
真実は確かめようがない。
僕たちが監視されているかどうかを証明するのは原理的には不可能だ。
ただ状況証拠からその可能性があったとしか言いようがない。


これでマリの一件は終わった。
しかし僕たちは忘れない。
僕たちが狙われていることを。
そしてこれからもまだ僕たちの困難は続くだろう。

チカラ、やっと終わったね。
そして2番目の彼にも。
ー追悼ー。

ごめんね、こんなことしかできなくて。

終わったんだ。
僕の中のまだ終わってなかった問題が、ついに終わった。
そう、始まりのあるものはいつか終わる。

僕たちの未来が平和で豊穣な社会であるためには、常に注意を怠ってはならない。
ここにいてもいいですか、と聞かなくてもいい存在になるために。
僕は暗号の持つ可能性を信じている。
監視社会における自由の拠点は、暗号の中にしかない。

そして僕たちの手で、僕たちの新しい日常は始まる。

ー終ー

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