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第四十八話 ボスを高速撃破

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 遠くからでも目立つような巨大な門が僕とトモの前に姿を表す。門には猿の顔に狸の胴体。そして手足は虎で尻尾に蛇の特徴を持つモンスターが彫られていた。

「この彫られているモンスターが、ボスか?」

 僕はトモに質問する。目立つように彫刻しているので、単純にボスモンスターではないかと思った。

「多分、そうだと思うぞ! 強そうだな!」

 トモは胸を小躍りさせている。僕も同様に同じ気持ちになっている。

「今回はタイムアタックやらないか?」
「乗った!」
「決まりだな! できるだけ早い時間で終わらせようぜ!」
「おう!」

 僕とトモは打ち合わせをすると部屋の中に入っていく。

「グラァァァルォォォォォ!」

 部屋の中に入った瞬間にボスモンスターの咆哮が響き、部屋のいたるところに雷が落ちる。僕とトモは雷の攻撃は効かないので回避せずに攻撃を開始する。ボスモンスターの名前は鵺。HPは十万と表示されていた。

「トモ! 援護を頼む!」
「オッケー! 任せろ!」

 僕は頼りになるトモに背中を預けて接近する。鵺の手足には雷袋がついており雷の攻撃をするときに光る。

「あそこが弱点なのかな……」

 僕は胸の中から最後の空気を出すように呟き、右前足についている雷袋に一撃を入れる。

「面‼」

 僕が攻撃したところは弱点だったらしく、鵺は大きくのけぞる。鵺が見せた隙を見過ごすわけにはいけないので、僕は続けて攻撃する。そして鵺の右前足についていた雷袋を破壊した。

「グラァァァルォォォォ!」

 鵺は悲鳴の鳴き声をあげ、両前足に雷を纏わせて僕にひっかき攻撃を行ってくる。雷の攻撃は効かないと思うが物理攻撃はダメージが入ってしまうので、後方に跳んで回避する。

「アースアローウ! 高速四連射!」

 トモは雷属性モンスターの弱点である土の矢を鵺の左前足についている雷袋に命中させた。その攻撃で鵺の左前脚についていた雷袋も破壊される。雷袋が破壊されたので、鵺のひっかき攻撃は途中で中断され、後ろにのけぞる。

「ナイス! トモ!」

 僕はトモを褒め称え、顔面に最高威力の技をぶつける。

「雪・月・花‼」

 僕が持っているスキルの効果でSTRが十二倍になっており、クリティカル率が百パーセントなので、鵺のHPは大きく削られ半分になる。(やっぱり雪月花強いわ!)僕は改めて感心する。

「グラァァァァルォォォォ!」
 
 鵺は怒りのこもった咆哮をしてくる。鵺が叫ぶと部屋全体がピリピリし始める。おそらくは大技が来る前兆だろう。僕は雷問の鍵を手に実体化させ、トモの元に戻る。

「雷問の鍵を使って大技を何とかするから、すぐに攻撃に移る準備をしといて!」
「りょーかい!」

 僕とトモが合流してから三秒が経ち、部屋の端っこ以外の場所から雷が発生する。超広範囲技である。威力もすごく高そうだ。 
 
「雷問の鍵! 頼む!」

 僕はどんな効果があるのか少しだけ楽しみにしながら、鍵を開ける動作を行う。鍵開けの動作を行うと雷がさっきまで何事もなかったかのように消滅した。

「雷問の鍵、強すぎでしょ!」

 動くことができなくなるほど驚いてしまう。トモも同様に動けないでいた。雷を消滅させたときに鵺はひるんでいたが、この現象に目を奪われていた僕とトモは攻撃するチャンスを逃してしまった。

「しまった! 攻撃チャンス逃したわ!」
「タイムアタックをやっているのに何をやってるんだか……」

 僕とトモは反省を行い、気持ちを切り替えて鵺に攻撃を行う。狙うところは鵺の後ろ足についている雷袋だ。(すべて破壊したら攻撃チャンスが生まれるに違いない!)と確信している。
 僕が接近すると鵺は雷を体に纏わせ、転がってくる。転がったところには雷が落ちる。僕はそれを右に回避するが、鵺は追ってくる。

「攻撃できない……」

 僕は心の中の声を漏らしてしまう。何度もサイドに回避しているのだが、追跡が終らないので一向に攻撃ができないでいた。

「ピィアスアローウ! 高速五連射!」

 トモは僕を助けるために回転している鵺の左後ろ足に矢を命中させた。神射撃である。左後ろ足についている雷袋を破壊された鵺はバランスを崩し転倒する。トモが作ってくれたチャンスを逃さないためにすぐに鵺に接近する。

「さっきはよくも、僕を苦労させてくれたな!」

 そう言うと右後ろ足の雷袋を数回斬りつけ、破壊する。鵺が起き上がってきたので僕は少し距離を取る。起き上がりざまに攻撃されたら困るからだ。
 鵺は体を起こすと蛇の尻尾と口に雷を溜め始める。おそらくブレスを放とうとしているのだろう。雷を十分に溜め終わると尻尾から放ったブレスはトモに、口から放ったブレスは僕に向けて飛ばしてくる。

「効かないぜ!」

 僕とトモは同時に声を出して、ブレスを正面から受ける。僕はブレスに当たりながら鵺の頭に接近して攻撃する。トモもブレスに当たりながら弓を構えて矢を射る。

「雪・月・花!」
「アトリビュート・ピィアスアローウ!」

 僕とトモの最高威力の攻撃をブレス中に受けた鵺はきれいに消滅した。鵺を倒すまでにかかった時間は二分だった。あの失敗がなかったらもう少し早く倒せたと思う。

【界雷を獲得しました‼】

「やったな! トモ!」
「おう! いい記録が出たな!」

 出た記録に十分に満足した僕とトモはハイタッチをする。

「早速、手に入れたスキルの確認をしようぜ!」
「オッケー!」

 今回はトモのリンクメニューで一緒に確認することにした。

【界雷、半径三メートル以内のプレイヤーとモンスターを感電させる。一日一回のみ使用可能。 獲得条件、鵺を二分半以内に倒すこと】

「危ない! ギリギリじゃん!」
「本当だな!」
「よかった、よかった!」
「本当にな!」

 僕とトモは胸をなでおろす。強いスキルを手に入れた僕とトモは次の階層に上がるための階段の近くに歩いていく。

「今度は何属性だと思う?」

 僕はトモに質問する。次の階層は氷属性か、土属性が出てくる可能性が高い。流れ的に氷属性になるのではないかと僕は予想する。

「流れ的に氷属性じゃないか?」
「やっぱりトモもそう思うのか」
「流れ的にそうしかないでしょ!」
「同意!」
「だよな! 早く確認しに行こうぜ!」
「いいよ!」

 予想を立てた僕とトモは結果を確認するために階段を上っていく。そして扉を開けて中に入って行った。
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