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第八十二話 サバイバル迷路 六

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 長い首を持つ恐竜が木の上の葉っぱを食べている。地下迷宮にいることを忘れてしまうほどリアルだ。

「サバイバルやっている感があるな~」

 トモが呟く。腹も減るし、喉も乾くので言ってることも良く分かる。難易度が高くなったのか、この場所に来た時に自分が使っていた武器がストレージに入っていた。
 僕達はすぐに使い慣れた武器を定位置に装備する。背中にずっしりと重みが伝わってくる。頼もしい武器も戻った事だし、肉食恐竜も倒すことができるかもしれない。そんな事は状況判断するとしてまずは先に進まないといけない。

「あそこに煙が見えますよ!」
「本当だね!」

 アサガオが煙の上がっているところを指差しながら言うので、リリがすぐに反応した。

「キャンプがあるかもだぞ!」

 トモが言う。煙が上がっていると言うことはその可能性も十分にある。この場所にも先住民みたいな人達も住んでいるのか。住んでいるとしたら友好的なのだろうか。そんな不安を抱えながら向かっていく。
 数分が経ち、僕達は無事に煙が上がっているところに到着した。複数のテントに焚き火。そして散らばる日用品の数々。しまいには人影一つない。ここに住んでいた人達は肉食恐竜に襲われてしまったのだろうか。

「そろそろ、現実世界で夕食時だから交互にログアウトしましょ!」

 ツキナが時間を見て言う。ストレージを開いた時に現実世界の時刻も表示されるのだ。地下迷宮に落ちてからそんなに時が過ぎたのか……。
 僕はツキナの意見に賛成なので、「オッケー」と答える。みんなも賛同しているらしい。二人、二人、三人と言う順番で僕達は交互に現実世界に戻り、夕食を取った。
 みんなが再び集合したのは、最初のグループがログアウトした時から二時間くらい経った時だ。
 食事を食べたおかげなのか、みんなの表情が生き生きとしていた。地下迷宮で色々あったので疲れていたのだろう。リフレッシュ出来たようなので本当に良かったと思っている。

「帰ってきてそうそう悪いが、ディノニクスを討伐しないといけないみたいだ」

 キャンプに来てからすぐに〔ディノニクスの群れを全滅させてください〕と言う通知が来ていたのだ。  
 このキャンプにいた人達はディノニクスと言う恐竜にやられてしまったと思われる。

「ディノニクスですか~。厄介ですね~」
「コジロウ。ディノニクスを知ってるのか?」
「はい! 群れで行動する小型の肉食恐竜です! 尖っている鉤爪に攻撃されると大ダメージを受ける可能性があります!」
「それは厄介だな~」

 僕はコジロウの話を聞きながら、作戦を練る。集団、鉤爪、どれも厄介な事ばかりなのでどうやって倒すのか考えるべきだと思ったのだ。しばらく考えて作戦を決めたのでみんなに展開する。

「ディノニクスは個々で戦うと危険だから、ツキナを中心にして密集陣形で倒そう! それとツキナはディノニクスが姿を現したら、シールドを貼ってくれ!」
「オッケー!」
「了解!」

 頼もしいみんなの声が聞こえてくる。みんな、戦闘の準備が出来たらしいので、僕はストレージを開きメールの下の方にあった〔起動〕と言うボタンを押す。ボタンを押した瞬間、周辺から足音が聞こえてきた。十匹はいるだろうか……。
 足音が物凄い勢いでこっちに向かってくる。そろそろディノニクスを拝見できるだろう。ディノニクス はムサシが言った通りの外観だった。ディノニクスがジャンプし、鉤爪で攻撃してくる。

「ツキナ! 頼む!」
「任せて! シールド!」
 
 ツキナは僕たちを囲むようにシールドを張る。ディノニクスは壁にぶつかったかのようにシールドに強打して地面によろめきながら着地する。
 あの勢いで突っ込まれたら避け切れるか心配だ。シールドのおかげで救われたと思って良いだろう。
 僕はそのまま近くにいたよろめいたディノニクスに一撃を与える。一撃で倒せるのではと思ったが、そんな簡単にはいかなかったようだ。

「天眼雷!」

 トモは真上に矢を放つ。真上に放ったのはちゃんとした理由がある。真上に放つ事でシールドを囲んでいるディノニクス達に一斉に矢の雨を降らすことができるのだ。ディノニクスを六属性が混ざった矢の雨が襲う。
 ディノニクスは危険を察知して範囲外に出ようとするが、逃げ遅れたものも存在する。逃げ遅れたものはあっさりとHPが無くなり消滅した。やはりレジェンダリーウェポン武器スキルの威力は尋常ではない。

「畳み掛けるぞ!」

 トモの攻撃で残ったディノニクス は七匹ほどこちらと同等の人数になったので、一人一匹を相手にすれば問題ないと判断した。僕達はディノニクスと一対一で相手をし、全滅させた。

〔おめでとうございます! 目的達成です! では、テントをあさりましょう!〕

 と言う通知が届く。まだ、テントの中を詳しく見ていないので、この通知が来たのだろう。テントの中にどこに進むべきかが分かるヒントがあるはずだ。

「テントの中を見て行こう!」
「そのつもりだ!」

 僕の言葉に返事を返してくれたのはトモだ。元々、トモは僕に言われなくてもテントを見ていくつもりだったらしい。ここに来る前に一つ一つの家を確認したほうがいいと言ったのもトモだったので、納得なのだが……。僕達はテントの中にあるものを片っ端から拾っていく。

「ねぇ、ヒビト! これ、必要かな?」

 ツキナが手にひまわりの種と成長剤を手に持ちながら僕に聞いてくる。

「必要だと思うよ」

 ひまわりの種と成長剤がなんの意味もなく置いてあるというのは考えにくい。一見使えそうにないと思ってしまうが、きっと何かの役に立つと確信している。

「ふ~ん。それじゃあ、持っておくね」
「おう!」

 ツキナは安心したのか、微笑を浮かべていた。しばらくテントの中をあさり、僕達は再び集合した。

「みんな、どんな物があった?」
「気になるものを一つ見つけましたよ」

 ムサシが手に気になると言っていたアイテムを、実体化させて見せてくれた。そこには空には輝く太陽。そしてその方向を見る三つの花の絵が描かれていた。また何かの問題みたいだ。

「他には何かあった?」
「鉢を手に入れたぞ!」
「私は土を手に入れた!」

 僕の言葉にトモとリリが答えてくれた。ツキナがヒマワリの種と成長剤を持っていたので、花を育てろという事なのだろう。だだ、ムサシが持っていた絵の意味がさっぱり分からない。僕達はじっくりと考え始めた。
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