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レベル45 元性職者カナミ 非処女 麻の服 鈍く光るイヤリング 奴隷の烙印 奴隷の首輪 ステ:意気消沈 金0JEM
ナショナルリバーサイド奴隷地区編①終「売られる身体、捧げる身体」微Ⓗ(奴隷の焼き印、人身売買オークション)
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「おい! なに寝てやがんだ!」
「……ふえっ?」
暗闇に包まれた空間、断続的に続く揺れ、周りから干渉されない時間が続いたことにより、カナミはいつの間にか眠りに落ちていたようだ。
「お前がこの倉庫の最後だ。とっととついてきやがれ!」
色々なことが一度に起こり過ぎて、最早抵抗する気もおきない。
タトゥー入りの太腕が光の向こうから伸び、外へと引きずり出される。
「先にこれを着ておけ」
ガタイのいいスキンヘッド男が押し付けてきたのは、麻でできた服。
「あ、ありがとうございます。あの。あたし、いったいどこへ連れていかれるんですか?」
「あー? 今さら何を言ってんだ。これからお前たちをナショナルリバーサイドの奴隷地区でオークションにかけるんだよ」
「オークション!?」
「ま、オメェなんざまだまだションベン臭いガキだが、俺たちのお得意さんはむしろガキを好む傾向が強いからな。チチもケツもデケェし、アピールによっちゃ高値がつくぜ。ひっひっひ」
「た、高値って……! いったい人のことなんだと思ってるのよ!!」
「おいおい。自分の立場が分かってんのか? 行き場を失った哀れなガキどもに生きる道を与えてやってんだ。むしろ感謝の言葉が先だろうが」
「感謝!? そんなのするわけないじゃない!」
「くくっ。これから見ず知らずの人間の性奴隷になるって言うのに、ずいぶんと威勢がいいじゃねぇか。ま、もう少ししたらその生意気な口もきけなくなるだろうぜ」
オークション。高値。性奴隷。
これらの言葉を並べるだけで、これからカナミに降りかかる危機が嫌でも分かる。
そして、倉庫にいた女の子たちがどうしてずっと泣き続けていたのか、と言う理由も――。
『カナミ。倉庫からは出れたんだ。そのまま逃げることはできないか?』
「無理……だと思う。周りにはこの男の他にもたくさんいるみたいだし、そもそも船の構造も分からないから、いたずらに逃げるのは危険だわ……」
『海の中は……ダメだよな』
「あたしの運動神経じゃそれこそ自殺行為だと思う。とにかく、今すぐにどうこうされる感じじゃなさそうだし、とりあえず従って、隙を伺ってみるわ」
こんな状況でも気丈に振る舞い続けるカナミ。
無理もない。なぜならすでに彼女のステータスは、一緒に冒険をしていた俺よりも格段にレベルが上がっていたからだ――。
◇◆◇
やがてカナミは船の外へと出され、整列していた女の子たちの中にねじ込まれる。
相変わらず、彼女たちの表情は重く暗い。
たまらず、その中のひとりに声をかけようとしたそのとき、はるか向こうから女性の金切り声が聴こえてきた。
「な、なにっ? 何が起きたの?」
慌てふためくカナミに対し、周りの少女たちはいたって冷静、無表情。
あまりの温度差に冷や汗が頬を伝ったのも束の間、隣にいた背の低い子がぽつりと漏らす。
「烙印、押される。奴隷番号……」
「え……?」
「次、私の番だから……」
「あ、ちょっと」
ひとり、またひとりと列から少女たちが消え、その代わりに悲鳴がとどろく。
まさに死へのカウントダウンを連想するかのような状況に、カナミはゴクリと生唾を飲み込んだ。
「きゃああああ! ひぐぅううううッ、い、痛ひぃッ、や、止めてぇっ……ぇ゛ぇ゛っっ……!!!!」
(この声、さっきの……)
蚊の鳴くような声でしゃべっていた女の子が発する、喉から絞り出すような叫び。
それは、痛み、苦しみ、悲しみと言った負の感情をすべて孕む調律。
(あ、ああ……)
本能的に逃げなくてはと頭が思っていても、肝心の身体がついてこない。
「おら、オメェで最後だ。とっととこっちへ来い!」
そうこうしている間にカナミはスキンヘッド男に腕を掴まれ、岩陰の方へと連れこまれてしまう。
(これは……)
モクモクと立ち上る灰色の煙を発する、ドーム型をした大きな陶器釜。
「座れ」
「な、なにをされるんですか……」
「な~に、ちょっとチクってするくらいだ。注射みたいなモンだよ」
ウソだ。この男は笑顔でウソをついている。
今日日、注射程度であのような悲痛な叫びを上げる子供はいない。
きっと、もっと恐ろしい何かをされるのだ。
それにもうひとつ気になるのは、座れと命じられた藁の束がぐっしょりと濡れていること……。
「空は雲一つないのに、どうして……」
「おら! なにボケッとしてるんだ。しっかり見とけ!」
「み、見とけって。まさか……」
窯の中央のくぼみで熱せられた棒が程なく取り出され、その先端がカナミの方へゆらりと迫ってくる。
赤黒い先端はプレートのような形をしていて、何かの文字が彫られているようだ。
(烙印が押されると言うのは、これのこと……? え、ちょ、ちょっとウソよね……!?)
何の前触れもなく、かつ自然に、プレートがカナミの左上腕をめがけて容赦なく押し付けられる。
じゅうううううううううううっっっっ!!!!!!
「ぃ゛ひぃ゛っ、ぁぐぅぅっんんッッ!? や、やめっ、ぃやあああっっ!!!」
熱い熱い熱い!
いや、それを通り越して痛い痛い痛い!!
一瞬でも気を抜けば意識が吹っ飛んでしまいそうな激痛がカナミの全身を蝕む。
「お~っと。動かない動かない。動くと、おめぇのキレイな部分まで台無しになっちまうぜ?」
「ら、らって、らってぇ……ひぐっ、えぐッ。ぁっ、痛いっ、痛いよぉぉっ……!!」
「ったく、赤ん坊みたいにピーピー泣くんじゃねぇよ。あと十秒だ」
あと十秒。
その積み重ねの一秒一秒がどれほど長いと感じたことか。
「あひ゛ッ、く゛ひぃぃ! イヤっ、も、もう許し……てっ!!」
「し~ち、は~ち、きゅ~う……」
極めつけは、わざとやっているかのような遅々としたカウント。
カナミの額には多量の脂汗が滲み、視界が歪み、呼吸が乱れる。
そして、永遠とも思われる時を経て、ようやく――。
「よ~し、完了だ。今冷やしてやるからな」
バシャ!!
カウントが終わるや否や、近くに置いてあったバケツの水がカナミの脳天から降りかかる。
もう熱いのと痛いのと冷たいので、何が何だかよく分からなくなってきた。
「ひ、ひどい……。ぐすぐすっ、ぁぐ、はぁっ、んぁッ……。く゛っ! ぃ、痛っっ!!」
たまらずへたり込み、うずく左腕を無意識に触れたとき、焼かれるのとはまた違った鋭く刺すような痛みがカナミを襲う。
「これ、文字……。どうして、こんなこと……」
白い細腕に黒字で刻まれたslaveと言う文字と459と言う番号。
当然、水で濡れた手で擦っても消えることはない。
(夢なら覚めて、覚めてよぉ……!)
涙を流し幾度となく願っても文字同様、じくじくとした痛みは一向になくならない。
半狂乱のカナミが、これは紛れもなく現実なのだと気付くのは、それから数分経った後であった――。
◇◆◇
(な、なんてことだ……)
原始的な拷問行為が目の前で繰り広げられ、俺は絶句するしかなかった。
ようやくカナミが淫紋魔法から解放され安心したのも束の間、今度は奴隷の烙印を押される。
皮膚そのものに焼き付けられてしまったのだ。おそらくあの文字は一生消えることはないだろう。
女性にとって、自分の身体が傷つけられ穢される悲しみや悔しさは計り知れない。
嗚咽を漏らしうずくまる彼女の姿に、俺はなんて声をかけたらいいんだろう?
『だ、だいじょうぶか……』
ようやく絞り出した形ばかりの言葉に、カナミの肩がピクリと揺れ――、
「大丈夫なわけないでしょ!!」
彼女のイメージを根底から覆すような、怒りを全面に押し出した大絶叫が放たれる。
ビリビリ!!
と、モニターが音をたて、俺は思わず身体ごとのけ反ってしまった。
「これ見てよ! あたしの腕! いくら擦っても消えない、落ちない、なくならない!」
きっと逆鱗に触れてしまったのだ。
ここまで激昂するカナミを俺は見たことがない。
「ねぇタクヤ、今すぐ助けに来て! 見てるだけじゃなくて助けに来てよ早く!!」
『俺だってできるならそうしたいさ! でもどうやって……』
「それを考えるのがタクヤの役目じゃない! 頭を使いなさいよ!!」
『分かってる……分かってるさ』
「お金もスマホもどこかに落としちゃって……もうイヤだわ、こんなふざけた世界!! そもそも、タクヤがこんなゲームに誘ってこなければ――」
狂ったように、ただひたすら早口でまくしたてるカナミに、俺は萎縮しそれ以上何も言えなくなってしまう。
その姿があまりに情けなかったのだろう。ハッと目を見開いた彼女は唐突に言葉を切り、慌てて謝罪を口にする。
「ご、ごめんなさい……タクヤのせいじゃないのに、あたしったら……」
『い、いや。いいんだ……』
「きっと、あたしはもうこの世界からは抜け出せないんだわ。ごめんねタクヤ、今までありがとう……」
『な、何言ってるんだ! まだ諦めるなよ!』
「……」
『お、おい。どうし――』
溜まりに溜まった感情をひとしきり出し切ったカナミはその後、意気消沈したかのようにうなだれる。
瞳の生気も失われた今の表情は、一緒に船に乗せられた女の子たちと極めて酷似していた。
「オラ! さっきから何ブツブツ言ってやがんだ! 早く立ちやがれ!!」
「……」
言葉を発することも、抵抗することもなくなったカナミは、程なく奥の薄暗い建物の内部へと連れていかれてしまうのであった――。
◇◆◇
「278番! ショートカットのメスガキに1200JEM!」
「待った! 1400JEMだ!!」
「344番の褐色エルフ娘をぶっかけ奴隷用に2500出すぞ」
「いやいや、俺が最初に目をつけてたんだ、いっそ3000!!」
「そこのパツキン巨乳432番を4000JEMだ」
「5000、5000!! デカチチはもれなくオレによこせ! 並べておっぱいハーレム団を作るんだ!!」
質素な電球に照らされただけの広々とした室内が、異様な熱気に包まれている。
ここはナショナルリバーサイドの最西端、奴隷地区にある特別オークション会場。
中央には、番号札が書かれた首輪を括りつけられ正座を強いられている少女たち――。
彼女らを取り囲むようにして、商人や貴族、金持ちの投資家など、多種多彩な男たちが大声を放ったり、笑ったり、悔しがったりしている。
そのどれもが私利私欲にまみれ、とにかく吐き気が出るくらいに下品で浅ましい内容だ。
『クッ、なんだあいつら……。人の命をおもちゃみたいに扱いやがって……』
人身売買をするだけでも道理に反すると言うのに、さらにはその掲げられる値段が衝撃的だった。
少女ひとりのその後の人生が、たったの5000JEMでやり取りされてしまうとは。
しかし、金額の高い安いにかかわらず、買われた者からはなにひとつ文句は出ない。いや、最早出す気力もないのだろう。
ひとりまたひとりと、生気の失った少女が新しい主のもとへと渡り、新しい人生の幕が開ける。その先にある未来が、光か闇かは想像に難くない。
(カナミ……)
一方、自身の与えられたスペースで俯き正座をしているカナミは、十分経った今も未だ買い手がつかないでいた。
(いっそのこと、このまま誰も買おうとしなかったら……)
解放してくれるのではと言う考えが俺の頭をよぎる。
だが、その願いも空しく――。
「残ってんのはもうコイツだけか。チチがデカいだけでなんの特徴もねぇクソ女だ。おまけに覇気もなくマグロっぽいしな」
ツカツカと革靴を鳴らしてやってきた白衣姿のメガネ男が、見下ろしながら暴言を連発する。
『な、なんだコイツ! いきなりやってきて、俺の幼馴染になに失礼なこと言ってやがるんだ! おいカナミ! 言い返してやれ!!』
「……」
『カナミ!?』
「ほぉ、ここまでコケにされて反応なしとはよほど精神がヤられちまってるようだな。ククク……面白い。よし、この奴隷はボクが買おう。新薬の実験台として徹底的にこき使ってやる」
カインと名乗った白衣の男はオークションの主催者に金を払うと、カナミの首輪の鎖を強く引っ張る。
「ぁっ、ぅぅッ……!?」
「たった今からボクがお前の主人だ。いいな?」
「は、はぃ……ご主人様……」
「ククク。せいぜい、500JEM以上の働きはしてくれよ? 簡単に壊れでもしたら許さねぇからな?」
そう。残りモノのカナミにつけられた値段は何とオークション史上最安値の500JEM。
人間としてほぼ無価値の結果に俺は静かな怒りを覚える一方、カナミは怒るどころかむしろその現実を抗うことなく素直に受け入れてしまうのであった――。
「……ふえっ?」
暗闇に包まれた空間、断続的に続く揺れ、周りから干渉されない時間が続いたことにより、カナミはいつの間にか眠りに落ちていたようだ。
「お前がこの倉庫の最後だ。とっととついてきやがれ!」
色々なことが一度に起こり過ぎて、最早抵抗する気もおきない。
タトゥー入りの太腕が光の向こうから伸び、外へと引きずり出される。
「先にこれを着ておけ」
ガタイのいいスキンヘッド男が押し付けてきたのは、麻でできた服。
「あ、ありがとうございます。あの。あたし、いったいどこへ連れていかれるんですか?」
「あー? 今さら何を言ってんだ。これからお前たちをナショナルリバーサイドの奴隷地区でオークションにかけるんだよ」
「オークション!?」
「ま、オメェなんざまだまだションベン臭いガキだが、俺たちのお得意さんはむしろガキを好む傾向が強いからな。チチもケツもデケェし、アピールによっちゃ高値がつくぜ。ひっひっひ」
「た、高値って……! いったい人のことなんだと思ってるのよ!!」
「おいおい。自分の立場が分かってんのか? 行き場を失った哀れなガキどもに生きる道を与えてやってんだ。むしろ感謝の言葉が先だろうが」
「感謝!? そんなのするわけないじゃない!」
「くくっ。これから見ず知らずの人間の性奴隷になるって言うのに、ずいぶんと威勢がいいじゃねぇか。ま、もう少ししたらその生意気な口もきけなくなるだろうぜ」
オークション。高値。性奴隷。
これらの言葉を並べるだけで、これからカナミに降りかかる危機が嫌でも分かる。
そして、倉庫にいた女の子たちがどうしてずっと泣き続けていたのか、と言う理由も――。
『カナミ。倉庫からは出れたんだ。そのまま逃げることはできないか?』
「無理……だと思う。周りにはこの男の他にもたくさんいるみたいだし、そもそも船の構造も分からないから、いたずらに逃げるのは危険だわ……」
『海の中は……ダメだよな』
「あたしの運動神経じゃそれこそ自殺行為だと思う。とにかく、今すぐにどうこうされる感じじゃなさそうだし、とりあえず従って、隙を伺ってみるわ」
こんな状況でも気丈に振る舞い続けるカナミ。
無理もない。なぜならすでに彼女のステータスは、一緒に冒険をしていた俺よりも格段にレベルが上がっていたからだ――。
◇◆◇
やがてカナミは船の外へと出され、整列していた女の子たちの中にねじ込まれる。
相変わらず、彼女たちの表情は重く暗い。
たまらず、その中のひとりに声をかけようとしたそのとき、はるか向こうから女性の金切り声が聴こえてきた。
「な、なにっ? 何が起きたの?」
慌てふためくカナミに対し、周りの少女たちはいたって冷静、無表情。
あまりの温度差に冷や汗が頬を伝ったのも束の間、隣にいた背の低い子がぽつりと漏らす。
「烙印、押される。奴隷番号……」
「え……?」
「次、私の番だから……」
「あ、ちょっと」
ひとり、またひとりと列から少女たちが消え、その代わりに悲鳴がとどろく。
まさに死へのカウントダウンを連想するかのような状況に、カナミはゴクリと生唾を飲み込んだ。
「きゃああああ! ひぐぅううううッ、い、痛ひぃッ、や、止めてぇっ……ぇ゛ぇ゛っっ……!!!!」
(この声、さっきの……)
蚊の鳴くような声でしゃべっていた女の子が発する、喉から絞り出すような叫び。
それは、痛み、苦しみ、悲しみと言った負の感情をすべて孕む調律。
(あ、ああ……)
本能的に逃げなくてはと頭が思っていても、肝心の身体がついてこない。
「おら、オメェで最後だ。とっととこっちへ来い!」
そうこうしている間にカナミはスキンヘッド男に腕を掴まれ、岩陰の方へと連れこまれてしまう。
(これは……)
モクモクと立ち上る灰色の煙を発する、ドーム型をした大きな陶器釜。
「座れ」
「な、なにをされるんですか……」
「な~に、ちょっとチクってするくらいだ。注射みたいなモンだよ」
ウソだ。この男は笑顔でウソをついている。
今日日、注射程度であのような悲痛な叫びを上げる子供はいない。
きっと、もっと恐ろしい何かをされるのだ。
それにもうひとつ気になるのは、座れと命じられた藁の束がぐっしょりと濡れていること……。
「空は雲一つないのに、どうして……」
「おら! なにボケッとしてるんだ。しっかり見とけ!」
「み、見とけって。まさか……」
窯の中央のくぼみで熱せられた棒が程なく取り出され、その先端がカナミの方へゆらりと迫ってくる。
赤黒い先端はプレートのような形をしていて、何かの文字が彫られているようだ。
(烙印が押されると言うのは、これのこと……? え、ちょ、ちょっとウソよね……!?)
何の前触れもなく、かつ自然に、プレートがカナミの左上腕をめがけて容赦なく押し付けられる。
じゅうううううううううううっっっっ!!!!!!
「ぃ゛ひぃ゛っ、ぁぐぅぅっんんッッ!? や、やめっ、ぃやあああっっ!!!」
熱い熱い熱い!
いや、それを通り越して痛い痛い痛い!!
一瞬でも気を抜けば意識が吹っ飛んでしまいそうな激痛がカナミの全身を蝕む。
「お~っと。動かない動かない。動くと、おめぇのキレイな部分まで台無しになっちまうぜ?」
「ら、らって、らってぇ……ひぐっ、えぐッ。ぁっ、痛いっ、痛いよぉぉっ……!!」
「ったく、赤ん坊みたいにピーピー泣くんじゃねぇよ。あと十秒だ」
あと十秒。
その積み重ねの一秒一秒がどれほど長いと感じたことか。
「あひ゛ッ、く゛ひぃぃ! イヤっ、も、もう許し……てっ!!」
「し~ち、は~ち、きゅ~う……」
極めつけは、わざとやっているかのような遅々としたカウント。
カナミの額には多量の脂汗が滲み、視界が歪み、呼吸が乱れる。
そして、永遠とも思われる時を経て、ようやく――。
「よ~し、完了だ。今冷やしてやるからな」
バシャ!!
カウントが終わるや否や、近くに置いてあったバケツの水がカナミの脳天から降りかかる。
もう熱いのと痛いのと冷たいので、何が何だかよく分からなくなってきた。
「ひ、ひどい……。ぐすぐすっ、ぁぐ、はぁっ、んぁッ……。く゛っ! ぃ、痛っっ!!」
たまらずへたり込み、うずく左腕を無意識に触れたとき、焼かれるのとはまた違った鋭く刺すような痛みがカナミを襲う。
「これ、文字……。どうして、こんなこと……」
白い細腕に黒字で刻まれたslaveと言う文字と459と言う番号。
当然、水で濡れた手で擦っても消えることはない。
(夢なら覚めて、覚めてよぉ……!)
涙を流し幾度となく願っても文字同様、じくじくとした痛みは一向になくならない。
半狂乱のカナミが、これは紛れもなく現実なのだと気付くのは、それから数分経った後であった――。
◇◆◇
(な、なんてことだ……)
原始的な拷問行為が目の前で繰り広げられ、俺は絶句するしかなかった。
ようやくカナミが淫紋魔法から解放され安心したのも束の間、今度は奴隷の烙印を押される。
皮膚そのものに焼き付けられてしまったのだ。おそらくあの文字は一生消えることはないだろう。
女性にとって、自分の身体が傷つけられ穢される悲しみや悔しさは計り知れない。
嗚咽を漏らしうずくまる彼女の姿に、俺はなんて声をかけたらいいんだろう?
『だ、だいじょうぶか……』
ようやく絞り出した形ばかりの言葉に、カナミの肩がピクリと揺れ――、
「大丈夫なわけないでしょ!!」
彼女のイメージを根底から覆すような、怒りを全面に押し出した大絶叫が放たれる。
ビリビリ!!
と、モニターが音をたて、俺は思わず身体ごとのけ反ってしまった。
「これ見てよ! あたしの腕! いくら擦っても消えない、落ちない、なくならない!」
きっと逆鱗に触れてしまったのだ。
ここまで激昂するカナミを俺は見たことがない。
「ねぇタクヤ、今すぐ助けに来て! 見てるだけじゃなくて助けに来てよ早く!!」
『俺だってできるならそうしたいさ! でもどうやって……』
「それを考えるのがタクヤの役目じゃない! 頭を使いなさいよ!!」
『分かってる……分かってるさ』
「お金もスマホもどこかに落としちゃって……もうイヤだわ、こんなふざけた世界!! そもそも、タクヤがこんなゲームに誘ってこなければ――」
狂ったように、ただひたすら早口でまくしたてるカナミに、俺は萎縮しそれ以上何も言えなくなってしまう。
その姿があまりに情けなかったのだろう。ハッと目を見開いた彼女は唐突に言葉を切り、慌てて謝罪を口にする。
「ご、ごめんなさい……タクヤのせいじゃないのに、あたしったら……」
『い、いや。いいんだ……』
「きっと、あたしはもうこの世界からは抜け出せないんだわ。ごめんねタクヤ、今までありがとう……」
『な、何言ってるんだ! まだ諦めるなよ!』
「……」
『お、おい。どうし――』
溜まりに溜まった感情をひとしきり出し切ったカナミはその後、意気消沈したかのようにうなだれる。
瞳の生気も失われた今の表情は、一緒に船に乗せられた女の子たちと極めて酷似していた。
「オラ! さっきから何ブツブツ言ってやがんだ! 早く立ちやがれ!!」
「……」
言葉を発することも、抵抗することもなくなったカナミは、程なく奥の薄暗い建物の内部へと連れていかれてしまうのであった――。
◇◆◇
「278番! ショートカットのメスガキに1200JEM!」
「待った! 1400JEMだ!!」
「344番の褐色エルフ娘をぶっかけ奴隷用に2500出すぞ」
「いやいや、俺が最初に目をつけてたんだ、いっそ3000!!」
「そこのパツキン巨乳432番を4000JEMだ」
「5000、5000!! デカチチはもれなくオレによこせ! 並べておっぱいハーレム団を作るんだ!!」
質素な電球に照らされただけの広々とした室内が、異様な熱気に包まれている。
ここはナショナルリバーサイドの最西端、奴隷地区にある特別オークション会場。
中央には、番号札が書かれた首輪を括りつけられ正座を強いられている少女たち――。
彼女らを取り囲むようにして、商人や貴族、金持ちの投資家など、多種多彩な男たちが大声を放ったり、笑ったり、悔しがったりしている。
そのどれもが私利私欲にまみれ、とにかく吐き気が出るくらいに下品で浅ましい内容だ。
『クッ、なんだあいつら……。人の命をおもちゃみたいに扱いやがって……』
人身売買をするだけでも道理に反すると言うのに、さらにはその掲げられる値段が衝撃的だった。
少女ひとりのその後の人生が、たったの5000JEMでやり取りされてしまうとは。
しかし、金額の高い安いにかかわらず、買われた者からはなにひとつ文句は出ない。いや、最早出す気力もないのだろう。
ひとりまたひとりと、生気の失った少女が新しい主のもとへと渡り、新しい人生の幕が開ける。その先にある未来が、光か闇かは想像に難くない。
(カナミ……)
一方、自身の与えられたスペースで俯き正座をしているカナミは、十分経った今も未だ買い手がつかないでいた。
(いっそのこと、このまま誰も買おうとしなかったら……)
解放してくれるのではと言う考えが俺の頭をよぎる。
だが、その願いも空しく――。
「残ってんのはもうコイツだけか。チチがデカいだけでなんの特徴もねぇクソ女だ。おまけに覇気もなくマグロっぽいしな」
ツカツカと革靴を鳴らしてやってきた白衣姿のメガネ男が、見下ろしながら暴言を連発する。
『な、なんだコイツ! いきなりやってきて、俺の幼馴染になに失礼なこと言ってやがるんだ! おいカナミ! 言い返してやれ!!』
「……」
『カナミ!?』
「ほぉ、ここまでコケにされて反応なしとはよほど精神がヤられちまってるようだな。ククク……面白い。よし、この奴隷はボクが買おう。新薬の実験台として徹底的にこき使ってやる」
カインと名乗った白衣の男はオークションの主催者に金を払うと、カナミの首輪の鎖を強く引っ張る。
「ぁっ、ぅぅッ……!?」
「たった今からボクがお前の主人だ。いいな?」
「は、はぃ……ご主人様……」
「ククク。せいぜい、500JEM以上の働きはしてくれよ? 簡単に壊れでもしたら許さねぇからな?」
そう。残りモノのカナミにつけられた値段は何とオークション史上最安値の500JEM。
人間としてほぼ無価値の結果に俺は静かな怒りを覚える一方、カナミは怒るどころかむしろその現実を抗うことなく素直に受け入れてしまうのであった――。
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