ポツンと異世界鍛冶屋 ~隠居の戦士、催淫鍛冶でドスケベウェポンを量産し、雌奴隷たちとエッチな老後を過ごすハーレムスローライフ~

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魔術師シルヴィア・ラヴクラフト編

淡い過去と苦い過去を知る女

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「お、お前はまさか――」

 魔王討伐メンバーから外れて以来、同じ志を持ち、同じ釜のメシを食った連中とは連絡はおろか顔も合わせてはいない。
 否、合わせられるはずもない。
 勇退と言う言葉を用意してもらったとはいえ、実質遠まわしの戦力外通告クビ
 必要のなくなった人間に、必要ではないと判断を下した側の人間がわざわざ会いに来るなんて、そんな稀有なことは通常ではあり得ないのだ。

 イヴェットから初め、勇者様一行が魔王城で消息を絶った……と言う噂話を聞いたとき、残念と言う気持ちが先行したのは言うまでもない。
 しかし、頭の片隅にはどこかホッとしたさもしい気持ちもあった。理由? それは、俺の過去や失態を知っている連中だからだ。

 当然、過去や失態が完全に消えてなくなるわけではない。
 とは言え、過去や失態を知っている人間がいなくなれば、その辛酸が薄まることもまた事実。
 そんな矢先の邂逅――。
 本当に、人生ってのは何が起こるか分からない。

「サブリナ……。サブリナ・ラヴクラフトなのか?」

 頭にはトレードマークであるパプコーン編みのベレー帽、美しい絹のローブをまとい、珍しい東洋の錫杖しゃくじょうを持った個性派魔術師に問いかける。
 思えば、サブリナ本人を前にサブリナか? とは変な質問をしてしまったものだ。
 だが、彼女は特に気にする様子もなく、ふわりと微笑み会釈を返してくれる。

「くすくすっ。おじゃまいたしますわ、ドナルド様」
「え……?」

 その楚々とした立ち居振る舞いと落ち着いた口調に、わずかながらの違和感を覚えた俺は眉をひそめる。

「サブリナはわたくしの姉。わたくしは妹のシルヴィア・ラヴクラフトと申します」
「妹!?」
 
 って、優雅なカーテシーに気を取られている場合ではない。

「瓜二つじゃねぇか! それにカッコウも……」
「身に着けているものは、すべて姉のお古ですから当然ですわ」
「お古。そうか、どうりで……。まぁ、サブリナと比べりゃ、断然おとなしい感じだけどな」
「周りからもよく言われますわ」
「でも、見れば見るほどそっくりだ」

 シルヴィアの顔を見て、サブリナと初めて出会ったときのことが鮮明に思い出される――。

 当時、俺は魔王討伐メンバーに女が加入することは反対していた。
 なぜなら、戦いにおいて女は足手まといになると言う強い固定概念が頭に根付いていたからだ。

(いくら由緒ある魔術の名家の出身だからと言って、練習と実戦は違う。練習で失敗しても死なねぇが、実戦での失敗は死を意味する。その恐ろしさを、この女は分かっているのか?)

 それでも、勇者様たっての希望でメンバー入り。

(勇者様の意向ならしかたねぇ。どれ、それなら、女魔術師様のお手並みを拝見と行こうじゃねぇか)

 どちらかと言えば見下していた面もあった。
 しかし、その思惑は良い意味で裏切られることになる。

(な、なんだよこの女……)

 いざ戦闘が始まれば即座に動き、陣形を指示。
 大きな課題であった「攻めるところは攻め、引くところは引く」と言う状況判断も上手かった。
 さらに魔物の知識も豊富で、弱点ウィークポイントを突いて的確にダメージを奪っていく頭脳戦略を得意とし、戦闘自体が無駄に長引くことがなくなった。
 総じてメンバーへの怪我や負担が減り、遠征にかかるコストも大幅に削減されたのだ。

(世の中に、こんな有能な女がいたとは。恐れ入ったぜ)

 加入から数日後。
 俺は意を決して、あまり期待をしていなかったと言う旨を正直に伝え詫びても、彼女は別段気にすることもなく笑顔で水に流すと言う器の大きさも兼ね揃えていた。

『戦場に男も女もないわ。強い者、優れた者が生き残るってだけ。だから今日も私たちは無事生き残った……明日もそうでありたいわね』
『そうだな。その通りだ』
『ね、今夜も行くでしょ? 勇者様には止められてるけど、息抜きは必要だからね』
『もちろん朝まで付き合うぜ』
『そうこなくっちゃ』

 戦闘だけでなくギャンブルの腕も相当で、他メンバーには内緒でよく酒場の賭場へ出向いてはふたりでカネの動きを楽しんだものだった。
 一晩で家が建つほど儲けたこともあるし、逆に一文無しになることも多々あった。
 で、結局勇者様にバレて大目玉。懐かしいぜ。まるで昨日のことのようだ。

「ところで、サブリナの妹君いもうとぎみが俺に何の用だ?」
「シルヴィア、と呼んでくださいまし」
「あ、ああ分かった……。シルヴィア。こんな辺鄙なところまで来た目的はなんだ」
「ドナルド様が一線を退いた……と言うお話は、風の噂で聞いておりました」
「そうか」
「そこでまずひとつ目は、直接感謝の言葉を伝えたいと思いまして。姉……いえ、姉さんが大変お世話になりました、と」
「なりましたって、ずいぶんな言い方じゃねぇか。まるで――」

 その先は、さすがの俺も口にはできなかった。

「姉さんの現在について、ドナルド様はご存知でしょうか」
「ある情報筋からそれとなくな。魔王城の中で消息を絶った……と」
「ええ。ですが、完全に絶ったと言うわけではないのです」
「どういうことだ」
「この受け継いだ錫杖から、姉さんの生命の息吹を感じ取ることができるのです。おそらく、魔王城のどこかに幽閉されているのではないかと……」
「幽閉!? 人類の殺戮をもくろむ魔王が、そんなまどろっこしい真似をするとは思えないが」
「わたくしも初めはそう思いましたわ。しかし、最近は姉さんの息吹が日に日に弱まっている気がして……居ても立っても居られず、ここまでやってきたのですわ」
「で、俺に何をしてほしいんだ。魔王軍に打ち勝つ武器か」
「あ、いえ、その……」

 それまで毅然とした態度で接していたシルヴィアが突然口ごもる。

「どうした、はっきり言え」
「お願いです、ドナルド様。わたくしと一緒に魔王城に赴き、姉さんの救出の手助けをしていただけませんか」
「なんだって!?」

 突拍子もない要望に、俺は目を丸くした。

「バカ言え。俺が実戦を離れてから何年経ってると思ってんだ。エモノであるギガースハンマーも、もう満足に持ち上げられやしねぇんだぞ」
「そ、そこを何とか! わたくしだけの力では到底、魔王城の深部までたどり着くことすら不可能ですから……」
「いくら頭を下げられても、お断りだ。俺が無様を晒すと同時に、お前が俺に失望することが目に見えているからな」
「ではドナルド様は、ピンクオパールのネックレスを贈った相手を見捨てるおつもりですか!?」
「ぶはっ!」

 どうしてコイツ、俺がサブリナに贈った装飾品のことを知ってやがるんだ。
 
「ピンクオパールは愛を象徴する石。ドナルド様は、姉さんに好意を抱いていたからこそ、贈ったのではないですか?」
「い、いや。俺はただ、店の主人に勧められて、たまたま……」
「たまたま購入したものがピンクオパールなんて、ドナルド様も罪な方ですわね。女性の心をいたずらに弄んだことになります」
「弄んだなんて人聞きが悪い。俺はサブリナに手を出しちゃいねぇし、それに……」
「メンバーのリーダーである勇者様が、姉さんに好意を抱いていたから、身を引いたんですわよね?」

 参った。シルヴィアのやつはどこまで知ってやがるんだ?

「姉さんは、わたくしに手紙を送ってはボヤいてましたわ。モテる女は辛いと。でも、いつも最後にはこう締めくくっておりました。恋に年齢は関係ない……とも」
「……」
「勇者様と姉さんは同い年であったと聞いております。しかし、恋に年齢は……と書いていたと言うことは、このメッセージは遠まわしにドナルド様への想いを記していたのですわ」
「サブリナがそんなことを……?」
「手紙には、どちらかと言うとドナルド様との楽しい思い出がつづられることが多かった……。姉さんも、悩んでいたのだと思いますわ」

 今さら隠してもしょうがねぇな。

「俺がサブリナに対して女としての魅力を感じていたのは確かだ。しかし、メンバーを離れたと同時に終わったんだよ。愛だの恋だの言うやり取りは」
「それは、姉さん本人の気持ちを聞いての結論ですか?」
「いや、最後はろくに言葉も交わさずに去っちまったからな」
「でしたら! わたくしと一緒に姉さんを! そして答えを――」
「何度言われても、その要求は受け入れられねぇ。思い出ってのは、思い出のまま残しておいた方が良いときもあるんだ」
「はぁ……。さすがにこれ以上話してもらちがあきそうにありませんわね。では、一度出直しますわ」
「出直す? ってことはまた……」
「ええ。説得にこさせて頂きます、何度でも」

 どことなくサブリナの面影を感じるその真っすぐ過ぎる瞳に、俺は思わず言葉を失ってしまう。

「……では、そろそろ失礼いたします。夜分遅くにおじゃましましたわ」
「お、おい。ところでお前、こんなところに一人で来たのか?」

 イヴェットは怪盗としての足があるのでまだ分かるが、身体の線が細い魔術師のシルヴィアが長く険しい山道を切り開けるとは思えない。

「いえ、ふもとの街で護衛を二人、雇ってきましたわ。ですから、ご心配なく……」

 つまり、カネで傭兵を雇ってここまで来たってわけか。
 それにしちゃあ、静かすぎるな。
 普通、護衛と銘打っているのなら依頼人から片時も離れず、工房の中まで立ち入ってもおかしくないもんだが。

「あらっ!?」
「……ん?」

 ドアを開け、外に出たシルヴィアは開口一番素っ頓狂な声を上げた。

「あの方たちは、いったいどこへ……?」

 そして、その場をウロウロとし始める。

「あー、こりゃ任務放棄されたんだな」
「放棄? なんですの、それ……」
「帰っちまったんだよ」
「そ、そんな! お金は往復代、ちゃんと払いましたわ!」
「傭兵なんてそんなもんだ。気分次第で右にも左にも流れる」
「気分次第って……」
「どうする? そろそろ薄暗くなる頃だが、一人でふもとまで帰るか? 日中、工房に住み着いてる野良猫が顔を洗ってやがったから、じきに天気も荒れると思うがな」
「……」

 俺の予想を物語るように周囲には突如生温かい風が吹き始め、ザァザァと木の葉を揺らす不気味な音がより一層強まってきている気がした。

「あ、あの。ドナルド様、急で申し訳ないのですが……」
「分かってる。俺だって、女一人を夜の森に放り出すような真似はしねぇよ。お前も思うところがあるだろうが、とにかく翌朝まで雨風をしのいでいけ」
「た、助かりますわ」

 木箱を重ね、布で覆った簡易ベッドと即席の仕切り。たったこれだけで、宿の一室のような空間が出来上がる。

「裏手には風呂がある。少々汚いが長旅で疲れた身体を癒すには十分だろう。酒は飲める方か?」
「は、ハイ。たしなむ程度ではありますが……」
「よし。その間、俺は夕食の準備に取り掛かる。もし嫌でなかったら、湯上りにこの俺のローブを使え」
「ありがとう、ございます……」

 差し出したローブを素直に受け取ったまでは良かったが、シルヴィアの顔は真っ赤だ。

「どうした?」
「い、いえ。いくら成り行きとは言え、男女が一つ屋根の下で一晩など、初めてで、その……」
「ハッ。長く冒険をしてきた俺にとっちゃ、日常茶飯事いつものことだ。深く気にする必要はねぇよ」
「ですが、一つ不可解な点がありますわ」
「不可解な点?」
「ええ。このローブやドナルド様の衣服から、女性の香水の匂いがします」
「ゲッ!?」

 女ってやつはどうしてこんなにも感がいいんだ。
 俺は香水なんてつけたことはないし、買ったことすらない。紛れもなくイヴェットから植え付けられたものだろう。

「ドナルド様の指には愛を誓う指輪がございません。それはひとえに、未だ姉さんに未練を抱いているからと推測していましたが……どうやら、違うようですわね」
「じ、人生ってのは何が起こるか分からないからな。俺にも俺の事情ってもんがあるんだ」
「つまり男として、ヤることはヤっていらっしゃると」
「……」
「ま、これほど魅力的な男性ですもの。世の女性が放っておくわけはありません。でも、姉さんの想いには誠実でいて欲しいものですわ」
「う゛……」

 クソッ。やはり慈悲など与えず、外に叩き出しておくべきだったか。
 まさか、古傷とも言える過去を掘り起こしてくる面倒な人物が現れるなんてな。
 しかも、翌朝去ったとしても日を改めて出直してくる? さらに目的はサブリナの救出ときたもんだ。

(冗談じゃない。ようやく戦いのしがらみから抜け出せたんだぞ)

 山奥での生活は決して快適とは言わないが、俺は俺なりに気に入っている。
 イヴェットと言う有能な雌奴隷を手に入れ、催淫武器の錬成にも着手し、忘れかけていた雄としての威厳を取り戻そうとした矢先の出来事――。

 だが、説得をしたところで聞く相手ではないことは今までのやり取りでも明らかだ。
 では、どうやってこの状況を打破する? どうすればシルヴィアを丸め込める?

(ハッ……!)

 壁に立てかけてある錫杖を見て、俺は閃いた。

「それでは、お言葉に甘えてお風呂を頂きます」
「……」

 そうだ。そうだよ。
 何度もここにやってくる。そんな無駄な手間をかけるくらいならいっそのこと、

(シルヴィアの錫杖に催淫属性を付与しちまえばいいんだ。そうすれば――)

 俺の雌奴隷として手中に収められるし、今後一切の無駄口をほざくこともなく、として自由に操ることができるからな。
 楚々と会釈をして工房の裏手へと向かう華奢な背中を見、俺はひとりほくそ笑む。

(サブリナのことは俺自身も確かに心残りではある。しかし、シルヴィアにとってもサブリナが人生の足かせになっていることは、頼りない足取りから見ても明らか……)

 だから俺が解放してやるのだ。そのしがらみを。
 そして、女として生まれた悦びも直々に仕込んでやる。

(俺のローブを受け取ったときの反応から察するに、シルヴィアは男との経験も皆無なんだろう。くくっ、楽しみだぜ)

 処女への期待は股間と共に膨らみ、ますます俺の気持ちを高ぶらせ、熱く燃え滾らせるのであった――。
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