ほのぼの学園百合小説 キタコミ!

水原渉

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番外編 Prime Yellows 3(2)

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 朱未の加入はあっさり決まって、話のあった数日後には合流して練習を開始した。
 ナミはもちろん、さぎりんも会って話すのは初めてだが、さぎりんは社交性特化型の人間なのですぐに仲良くなっていた。
 私が聞くまでもなく、懐メロの話題になったが、私やさぎりん同様、聴き馴染みがあるらしい。機会があれば面白そうだと思っていたそうだ。
「しかも、歌が絢音だしね」
 そう言って明るい笑顔を浮かべる。元々中1の時、私の歌を聴いてバンドに入った子だ。その動機に違和感はない。
 ただ、朱未は比較的最近、新しいバンドを組んだばかりである。そちらは大丈夫なのか聞くと、朱未は曖昧に微笑んだ。
「まあ、たぶん」
 朱未の新生バンドは、一岡に行った元LemonPoundの3人に、新しいメンバーを2人加えた5人で活動している。加入した2人はともに男子で、朱未は紅一点になっているそうだ。
 ギターは上手な子が入ったので、メインギターはその子に任せて、朱未はセンターボーカルを務めている。
「それが嬉しいかどうかは、かなり人によるね」
 さぎりんが苦笑すると、朱未もため息混じりに頷いた。
「やっぱり女の子が欲しいし、メインでボーカルを務めるほど歌が上手いわけでもないし。やりたくないわけじゃないけど……。莉絵の貴重感」
 朱未が残念そうにそう言うと、莉絵が得意げにドラムを叩いた。
 楽器の特性上、ドラマーはそもそも少ない上、女子に限定するとかなり限られる。吹部でパーカッションをやっている子はちらほらいるが、軽音部でもドラムは大体男子だ。やってみたいという子はいるかもしれないが、経験者を探すとなると、他校にまで範囲を広げても見つかるかどうか。
「私が莉絵に声をかけた理由でもある」
 さぎりんがふふんと笑うと、莉絵が鼻を高くして言った。
「私、もっと敬われてもいいんじゃない?」
「サイレント感謝」
「日本人はもっと、感謝の気持ちを声に出すべきだと思う」
 そう言って、二人でケラケラと笑った。
 交流を深めるのも大事だが、スタジオ代がもったいないので、各自楽器を準備した。朱未には今日はベースを持ってきてもらった。ベースが欲しい曲はベースを、私が大変な曲はギターをお願いすることにして、曲や割り振りは事前に送っておいた。
 一人増えるなら曲目を変更する話も出たが、今からの変更は無理と判断して見送った。同じように、当日参加バンドが1組増えたらしく、演奏曲数を減らす相談を、さぎりんから個人的に受けていたが、それも見送った。
 曲が減る分には負担は減るが、今のナミにはどんな形であれ、変更はない方がいいだろう。そんなにMCで話すこともないし、多少時間が短くなったところで5曲は大丈夫だ。
 ひとまず『ALL MY TRUE LOVE』からやってみたが、朱未のベースは私の想像よりだいぶ上手になっており、特に手こずることもなかった。
 1曲通して演奏して、拍手を送るナミの隣でそう言うと、朱未は「練習したからね」と満足そうに笑った。この1年の話をしているのか、それとも参加が決まってから数日の話をしているのか。
 せっかくなので歌も歌ってもらったら、こちらも上達していた。私が抜けた後、LemonPoundでボーカルを務めていたし、新生バンドでもセンターボーカルだ。
「朱未も成長して、私は嬉しいよ」
 5年前、私がメンバーを集めた時、朱未は初心者だった。それは莉絵も同じだし、ベースも初心者だった。どうしてもその頃のイメージが頭にあるが、もう立派にバンドの顔としてやっていけるだけの力量がついている。
「あの頃はみんなで切磋琢磨してた」
 朱未が懐かしむように目を細めた。今はしていないのだろうか。
「そう考えると、みんな経験者の中に飛び込んだ波香はすごいな」
 同じく初心者組だった莉絵が感心したようにそう言うと、ナミが可愛らしく拳を握った。
「私はさぎりについて行く」
「じゃあ、今年中に今の永峯さんレベルまで持ってきて」
「それは難しい」
 ナミが静かに首を振る。あっさりだ。
「まあ、朱未も何度もステージに上がってる5年戦士だからね。気が付いたらギターを弾いてた人間と比較しなかったら、十分上手い」
 莉絵が次の曲をやろうとスティックを鳴らした。みんなが何をするのかと、私を見つめる。
 リーダーになった覚えはないが、気が付いたらギターを触っていた人間として、今回のライブは私が引っ張るとしよう。
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