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成長
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◇◆原初ノ迷宮第四層◆◇
自分の成長を目と肌で実感出来るのがとても楽しい。
死なない様にとりあえず生きているだけの生活から、全力で生きたいと思える生活に激変した今がとても楽しい。
自分は此処で一度死んで生まれ変わったんだ。だから前世の弱い自分は忘れて、新しい生を楽しむ。
前までとまるっきり違う殺伐とした非日常に、すんなり溶け込める自分は異常なんだと思う。こういう所が前世ではどこに行っても爪弾きにされたんだろうな。
もう前世の事については、驚く程に何も感じない。虐げてくれたおかげで今がある。だからプラマイゼロ。
だけど......だけど、もしこの迷宮を攻略して外に出た時に、前世と同じ対応をされた場合には......その時には全力で反抗しよう。もうあんなヤツらには屈しない。
決意が固まったのとほぼ同時に、第四階層へと到着。
「フフフ......この階層でも血液の貯蓄できるかな」
そう呟きながら四層を進んでいく。前の二層と少しだけ雰囲気が違っており、障害物みたいに岩が設置されていた。
上の階層とは違う箇所があったのに不用心に進んでしまった。ここまで順調に来れていたから若干の油断があったらしい。前までとそんなに変わらないだろうと高を括って進んだ自分が愚かだった。
最低限の知性を元々持っていたのか、この階層で出てくるヤツからなのか......
岩陰に隠れていた複数のダークゴブリンに気付かずに、奇襲を受けてしまう。
闇を纏ったナイフの投擲が襲ってくる。
ある程度は躱すも、全てを避ける事はできず、肩、腹、右胸をナイフが貫通していった。
魔法攻撃を初めて受けた自分は、その威力に驚く。ただのナイフでも貫通させられるとは思ってもみなかった。いくら自分が防御にポイントを振っていなくても、これは威力高すぎだろう。
貫通された場所は今まで通りすぐさま回復。怒るのも、反省するのも、全てを後回しにしてゴブリンを撲殺。
レベルアップのアナウンスがあったので戦闘が終わったのはわかったが、他にも近く隠れているヤツが居ないことを確認した後、岩を背にして座り込む。
ステータスを確認し、血液の残量をチェック。三箇所の貫通した怪我を治すのに合計1Lの血液を使った様子。
この能力が無ければ、ここで死んでいただろう。
だけど魔法攻撃を受けたとしても、この能力で瞬間回復する事を確認できたのは僥倖。
これからは不意打ちや、罠等には気を付けないといけない。特に不意打ちを。
頭部を岩に突き刺した後はしばらく気を失っていたし......そして、この能力は傷付いた傍から回復していくので、捕らえられて拷問となった時はとても危ない。
攻撃を受けても問題はないのはわかるけど、不必要な攻撃を受けるのはダメだ。
血液を大量に貯めた後、もしくはクソナメた態度の人間以外は気を付けなくてはならない。
「高揚してたから忘れていたよ。自分は簡単に死ななくなったけど、万能になったわけじゃない。緩んでいた気を、しっかり引き締めていかなきゃ」
両方のほっぺたを張って気合いを入れ直した。頬の痛みは直ぐに引き、血液残高が0.1L減っていた。
戒めの意味も込めていたのに......もう少し融通を利かせて欲しいと思い、内心で溜め息。
血液を回収してから奥へと進んでいく。
今回の戦闘でレベルアップした分のSPは敏捷に振った。
前世の自分なら、飛んできたナイフの殆どを避けるなんて芸当は不可能だ。それでもナイフを複数避けられたのは、多分だけど敏捷にステータスを振っていたからだと思ったから。
その狙い通りに反応速度は上がり、体の動きやキレも上昇したので、その後の二戦は楽に戦え、オマケにレベルも1上がった。
この階層は新しいモンスターは出てくる事は無く、レベルが上がり賢くなったダークゴブリンが、策を弄しながら襲ってくるだけだったので一度タネが割れればいつも通りのやり方で問題はなかった。
ㅤ小賢しく、数が多いので多少の面倒くささだけで、レベルが高くてとてもオイシイ相手。しかも人型なので血液の採取効率もよく、血液の貯蔵とレベル上げも捗った。
ダークゴブリン程度で血を使うと思わなかったけど、ここで失った1Lは勉強代と割り切る。いい経験だった。
倒したダークゴブリンから血を吸収していると、戦闘音を聞きつけたからなのか奥からどんどんダークゴブリンがやってくる。
多対一......圧倒的不利な状態なんだけど、楽しい。口角が上がるのを感じながらダークゴブリンの群れへと突っ込んだ。
――連戦に次ぐ連戦。
ひっきりなしに襲ってくるダークゴブリンの軍勢を拳で討伐していると、集中力が高まっていたおかげか......効率の良い殴り方を発見する。
身体能力でゴリ押しの素人戦闘からボクサーに似た戦い方へと変わり、それ以降は危なげなくダークゴブリンを殲滅した――
『レベルが4上がりました』
「ありがとうダークゴブリン」
自分を成長させてくれた事に感謝し、ステータスを確認してポイントを振り分けた。
──────────────────────────────
吉持ㅤ匠
Lv:11→17
HP:100%
MP:100%
物攻:12→17
物防:1
魔攻:1
魔防:1
敏捷:10→17
幸運:3
残SP:0
スキル:
ステータスチェック
血液貯蓄ㅤ残58.6L
不死血鳥
状態異常耐性Lv1
拳闘Lv1
ㅤ■■■■■■
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自分の成長を目と肌で実感出来るのがとても楽しい。
死なない様にとりあえず生きているだけの生活から、全力で生きたいと思える生活に激変した今がとても楽しい。
自分は此処で一度死んで生まれ変わったんだ。だから前世の弱い自分は忘れて、新しい生を楽しむ。
前までとまるっきり違う殺伐とした非日常に、すんなり溶け込める自分は異常なんだと思う。こういう所が前世ではどこに行っても爪弾きにされたんだろうな。
もう前世の事については、驚く程に何も感じない。虐げてくれたおかげで今がある。だからプラマイゼロ。
だけど......だけど、もしこの迷宮を攻略して外に出た時に、前世と同じ対応をされた場合には......その時には全力で反抗しよう。もうあんなヤツらには屈しない。
決意が固まったのとほぼ同時に、第四階層へと到着。
「フフフ......この階層でも血液の貯蓄できるかな」
そう呟きながら四層を進んでいく。前の二層と少しだけ雰囲気が違っており、障害物みたいに岩が設置されていた。
上の階層とは違う箇所があったのに不用心に進んでしまった。ここまで順調に来れていたから若干の油断があったらしい。前までとそんなに変わらないだろうと高を括って進んだ自分が愚かだった。
最低限の知性を元々持っていたのか、この階層で出てくるヤツからなのか......
岩陰に隠れていた複数のダークゴブリンに気付かずに、奇襲を受けてしまう。
闇を纏ったナイフの投擲が襲ってくる。
ある程度は躱すも、全てを避ける事はできず、肩、腹、右胸をナイフが貫通していった。
魔法攻撃を初めて受けた自分は、その威力に驚く。ただのナイフでも貫通させられるとは思ってもみなかった。いくら自分が防御にポイントを振っていなくても、これは威力高すぎだろう。
貫通された場所は今まで通りすぐさま回復。怒るのも、反省するのも、全てを後回しにしてゴブリンを撲殺。
レベルアップのアナウンスがあったので戦闘が終わったのはわかったが、他にも近く隠れているヤツが居ないことを確認した後、岩を背にして座り込む。
ステータスを確認し、血液の残量をチェック。三箇所の貫通した怪我を治すのに合計1Lの血液を使った様子。
この能力が無ければ、ここで死んでいただろう。
だけど魔法攻撃を受けたとしても、この能力で瞬間回復する事を確認できたのは僥倖。
これからは不意打ちや、罠等には気を付けないといけない。特に不意打ちを。
頭部を岩に突き刺した後はしばらく気を失っていたし......そして、この能力は傷付いた傍から回復していくので、捕らえられて拷問となった時はとても危ない。
攻撃を受けても問題はないのはわかるけど、不必要な攻撃を受けるのはダメだ。
血液を大量に貯めた後、もしくはクソナメた態度の人間以外は気を付けなくてはならない。
「高揚してたから忘れていたよ。自分は簡単に死ななくなったけど、万能になったわけじゃない。緩んでいた気を、しっかり引き締めていかなきゃ」
両方のほっぺたを張って気合いを入れ直した。頬の痛みは直ぐに引き、血液残高が0.1L減っていた。
戒めの意味も込めていたのに......もう少し融通を利かせて欲しいと思い、内心で溜め息。
血液を回収してから奥へと進んでいく。
今回の戦闘でレベルアップした分のSPは敏捷に振った。
前世の自分なら、飛んできたナイフの殆どを避けるなんて芸当は不可能だ。それでもナイフを複数避けられたのは、多分だけど敏捷にステータスを振っていたからだと思ったから。
その狙い通りに反応速度は上がり、体の動きやキレも上昇したので、その後の二戦は楽に戦え、オマケにレベルも1上がった。
この階層は新しいモンスターは出てくる事は無く、レベルが上がり賢くなったダークゴブリンが、策を弄しながら襲ってくるだけだったので一度タネが割れればいつも通りのやり方で問題はなかった。
ㅤ小賢しく、数が多いので多少の面倒くささだけで、レベルが高くてとてもオイシイ相手。しかも人型なので血液の採取効率もよく、血液の貯蔵とレベル上げも捗った。
ダークゴブリン程度で血を使うと思わなかったけど、ここで失った1Lは勉強代と割り切る。いい経験だった。
倒したダークゴブリンから血を吸収していると、戦闘音を聞きつけたからなのか奥からどんどんダークゴブリンがやってくる。
多対一......圧倒的不利な状態なんだけど、楽しい。口角が上がるのを感じながらダークゴブリンの群れへと突っ込んだ。
――連戦に次ぐ連戦。
ひっきりなしに襲ってくるダークゴブリンの軍勢を拳で討伐していると、集中力が高まっていたおかげか......効率の良い殴り方を発見する。
身体能力でゴリ押しの素人戦闘からボクサーに似た戦い方へと変わり、それ以降は危なげなくダークゴブリンを殲滅した――
『レベルが4上がりました』
「ありがとうダークゴブリン」
自分を成長させてくれた事に感謝し、ステータスを確認してポイントを振り分けた。
──────────────────────────────
吉持ㅤ匠
Lv:11→17
HP:100%
MP:100%
物攻:12→17
物防:1
魔攻:1
魔防:1
敏捷:10→17
幸運:3
残SP:0
スキル:
ステータスチェック
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拳闘Lv1
ㅤ■■■■■■
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