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眠りから覚めた。
ㅤ体も......脳も......全てがスッキリしている。人の皮を被ったナニかの八つ当たりに怯える事もなく、今までにないほど熟睡できた事がとても嬉しかった。
そして、目が覚めても最初に目に入ったのが昨日と変わらないダンジョンの壁だった事に安堵する。
体調面は全く問題がない。ゴツゴツした場所で寝ていたからか、体がバキバキになっているくらい。
お腹は軽く空いている感じはするけれど、喉の乾き等は全く感じられなかった。
これは、血液貯蓄の影響がいい方向に作用しているのだろうか......
冷静に考えてみると水を確保したり、食べ物を探したりする優先度が凄く低くなっているのは助かる。興奮状態で気にならなかっただけでは無さそう。
お腹の具合とかが全然気にならなかったので、簡易収納は簡単に選択肢から外れてしまっていたけど、これで生理現象が普段と変わっていなかったらダンジョンで生きていく事が厳しくなっていた事だろう。
偶然だったけど選択が間違いとはならなくてよかった。
血の貯蔵がある限り、飢えや渇きとはほぼ無縁に近い状況であるのは強い。
「アハハハッ......今の自分はもう、世間一般で言う化け物ってヤツだな。世間様に嫌われまくっていたから、このまま人類の敵になってもいいかもしれない」
少しだけ今後について考え込むがすぐに答えは出た。
「もし外に出れたその後にも、以前と同じように自分の事を世界が嫌うなら......――絶対に我慢なんてしない」
バイト先からクビを宣告された直後のように、ただ無機質にその一言を吐き出した。
思いがけず気合いが入った。
湧き水で身体と腰蓑にしているボロ布を洗い、水を一口飲む。
これでよし、さぁ先に進もう。
◇◆原初ノ迷宮第六層◆◇
階段を降りた先は今までの雰囲気とは全然違う階層となっていた。
ヤバい雰囲気を察知し、遮蔽物となる岩の陰に隠れて思考する。
まず一つ目、フロアの中がしっかり明るくて広い事と、先程までのように一本道ではなくなっている事。
二つ目、モンスターが寝ている状態の者もいる事。
三つ目、明らかに前のフロアよりもモンスターの殺傷能力が上がっていそうな事。ゴツい刃物――斧や剣など――を持っている者がいる。
チュートリアルが終わり、ここからがダンジョン本番だという事なんだろうな。
ここまでで何かしらこの階層の対策が出来たのかといったら、そんなことはない。要領が悪いのだから、一度敵と戦って相手の強さなどを肌で感じてみないとどうしようもない。
結論、当たって砕けてから対策しよう......となった。
なんとも言えない脳筋な結論に短時間で到達し、高笑いをあげながらこのフロア内で一番近くにいた敵へと殴りかかった。
「アハハハハハハハハハハッッ」
──────────────────────────────
バンデットリザードマン
レベル:30
──────────────────────────────
──────────────────────────────
ソードリザードマン
レベル:31
──────────────────────────────
──────────────────────────────
メイジリザードマン
レベル:29
──────────────────────────────
殴りかかりながら相手のステータスをチェックし、これくらいのレベル差ならば今まで通りどうにかなると判断。
自分の笑い声に驚く斧持ち、剣持ち、魔法使いの二足歩行のトカゲ。慌てて武器を構え始めるも、時既に遅し。
横振りな金砕棒の一撃が隙だらけな剣持ちと魔法使いを襲う。
魔法使いの方は反応できずに直撃し、剣持ちは剣を使ってガードするも呆気なく剣をへし折られ、そう軽くはないダメージを負い壁まで飛ばされる。
腕力と武器の重さは正義。
この短い間で力でのゴリ押し、自身にも発現した魔法を使った戦い方を全否定するような戦い方に目覚める。
剣や魔法、戦術に頼るよりも、純粋な暴力に頼った戦い方を好んで使うようになったのはこれまで不遇な生活で抑圧されていた所為なのだろうか......
自身の内に眠っていた暴力性と、自身のスキルの効果が混ざり合った結果、敵対者には悪夢のように映る戦法が確立されていった。
とても楽しそうに......笑いながら金砕棒を振り回し、己が傷つくことも厭わずに襲いかかる。圧倒的とは言えない程のスピードと膂力を誇り、そこそこの戦闘センスを持ち合わせた一見すると勝てそうに見える化け物。
だが実際に戦えば、腕が飛ぼうが足が落ちようが、怯むことなく向かってくる。
本来、人間如きに恐れを抱かない魔物ですら、この戦法により恐怖を感じさせるという異常性がダンジョンで開花した。
初めて人に畏怖したモンスターはダークゴブリンウォーリアー、続いてそうなった二匹目は、今現在彼と対峙しているバンデットリザードマンとなる。
金砕棒の振り回しでガラ空きになった背中に、容赦なく斧を叩き込んで上半身と下半身を分断したはずが、次の瞬間には狂ったような笑い声をあげながら、己の目の前で金砕棒を振り上げている。
――なんだコイツは......
目の前のイカれた生物を見て呆気に取られ......そこで彼の命は潰えた。
よし、バンデットとメイジは潰した。残りは......――
壁にもたれかかって血を吐くソードに目を向ける。相手の手に握られた折れた剣を奪い、体に傷をつけてそこから血を躊躇いなく吸い取り、六階層初の戦闘が終わった。
『レベルが2上がりました』
「アハハハハッ......この階層の相手でもまだ余裕があるな!!」
メイジとバンデットの死体からも血を吸い出し、分断された自身の下半身から装備を剥ぎ取って装備し直す。
続いてメイジの装備していたローブを奪って装備し、こちらの戦闘を眺めていた残りの敵に向かって走り出した。
ㅤ体も......脳も......全てがスッキリしている。人の皮を被ったナニかの八つ当たりに怯える事もなく、今までにないほど熟睡できた事がとても嬉しかった。
そして、目が覚めても最初に目に入ったのが昨日と変わらないダンジョンの壁だった事に安堵する。
体調面は全く問題がない。ゴツゴツした場所で寝ていたからか、体がバキバキになっているくらい。
お腹は軽く空いている感じはするけれど、喉の乾き等は全く感じられなかった。
これは、血液貯蓄の影響がいい方向に作用しているのだろうか......
冷静に考えてみると水を確保したり、食べ物を探したりする優先度が凄く低くなっているのは助かる。興奮状態で気にならなかっただけでは無さそう。
お腹の具合とかが全然気にならなかったので、簡易収納は簡単に選択肢から外れてしまっていたけど、これで生理現象が普段と変わっていなかったらダンジョンで生きていく事が厳しくなっていた事だろう。
偶然だったけど選択が間違いとはならなくてよかった。
血の貯蔵がある限り、飢えや渇きとはほぼ無縁に近い状況であるのは強い。
「アハハハッ......今の自分はもう、世間一般で言う化け物ってヤツだな。世間様に嫌われまくっていたから、このまま人類の敵になってもいいかもしれない」
少しだけ今後について考え込むがすぐに答えは出た。
「もし外に出れたその後にも、以前と同じように自分の事を世界が嫌うなら......――絶対に我慢なんてしない」
バイト先からクビを宣告された直後のように、ただ無機質にその一言を吐き出した。
思いがけず気合いが入った。
湧き水で身体と腰蓑にしているボロ布を洗い、水を一口飲む。
これでよし、さぁ先に進もう。
◇◆原初ノ迷宮第六層◆◇
階段を降りた先は今までの雰囲気とは全然違う階層となっていた。
ヤバい雰囲気を察知し、遮蔽物となる岩の陰に隠れて思考する。
まず一つ目、フロアの中がしっかり明るくて広い事と、先程までのように一本道ではなくなっている事。
二つ目、モンスターが寝ている状態の者もいる事。
三つ目、明らかに前のフロアよりもモンスターの殺傷能力が上がっていそうな事。ゴツい刃物――斧や剣など――を持っている者がいる。
チュートリアルが終わり、ここからがダンジョン本番だという事なんだろうな。
ここまでで何かしらこの階層の対策が出来たのかといったら、そんなことはない。要領が悪いのだから、一度敵と戦って相手の強さなどを肌で感じてみないとどうしようもない。
結論、当たって砕けてから対策しよう......となった。
なんとも言えない脳筋な結論に短時間で到達し、高笑いをあげながらこのフロア内で一番近くにいた敵へと殴りかかった。
「アハハハハハハハハハハッッ」
──────────────────────────────
バンデットリザードマン
レベル:30
──────────────────────────────
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ソードリザードマン
レベル:31
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メイジリザードマン
レベル:29
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殴りかかりながら相手のステータスをチェックし、これくらいのレベル差ならば今まで通りどうにかなると判断。
自分の笑い声に驚く斧持ち、剣持ち、魔法使いの二足歩行のトカゲ。慌てて武器を構え始めるも、時既に遅し。
横振りな金砕棒の一撃が隙だらけな剣持ちと魔法使いを襲う。
魔法使いの方は反応できずに直撃し、剣持ちは剣を使ってガードするも呆気なく剣をへし折られ、そう軽くはないダメージを負い壁まで飛ばされる。
腕力と武器の重さは正義。
この短い間で力でのゴリ押し、自身にも発現した魔法を使った戦い方を全否定するような戦い方に目覚める。
剣や魔法、戦術に頼るよりも、純粋な暴力に頼った戦い方を好んで使うようになったのはこれまで不遇な生活で抑圧されていた所為なのだろうか......
自身の内に眠っていた暴力性と、自身のスキルの効果が混ざり合った結果、敵対者には悪夢のように映る戦法が確立されていった。
とても楽しそうに......笑いながら金砕棒を振り回し、己が傷つくことも厭わずに襲いかかる。圧倒的とは言えない程のスピードと膂力を誇り、そこそこの戦闘センスを持ち合わせた一見すると勝てそうに見える化け物。
だが実際に戦えば、腕が飛ぼうが足が落ちようが、怯むことなく向かってくる。
本来、人間如きに恐れを抱かない魔物ですら、この戦法により恐怖を感じさせるという異常性がダンジョンで開花した。
初めて人に畏怖したモンスターはダークゴブリンウォーリアー、続いてそうなった二匹目は、今現在彼と対峙しているバンデットリザードマンとなる。
金砕棒の振り回しでガラ空きになった背中に、容赦なく斧を叩き込んで上半身と下半身を分断したはずが、次の瞬間には狂ったような笑い声をあげながら、己の目の前で金砕棒を振り上げている。
――なんだコイツは......
目の前のイカれた生物を見て呆気に取られ......そこで彼の命は潰えた。
よし、バンデットとメイジは潰した。残りは......――
壁にもたれかかって血を吐くソードに目を向ける。相手の手に握られた折れた剣を奪い、体に傷をつけてそこから血を躊躇いなく吸い取り、六階層初の戦闘が終わった。
『レベルが2上がりました』
「アハハハハッ......この階層の相手でもまだ余裕があるな!!」
メイジとバンデットの死体からも血を吸い出し、分断された自身の下半身から装備を剥ぎ取って装備し直す。
続いてメイジの装備していたローブを奪って装備し、こちらの戦闘を眺めていた残りの敵に向かって走り出した。
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