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血肉
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殴れば殴り返され、切られれば瞬時に殴り返す。モンスターの群れに包囲され、集中攻撃を受けながらも、着実に周囲の動くモノの数を減らしていく。
ただただ獲物を殴り殺す事だけを考え、殴っていた獲物が動かなくなればすぐさま笑いながら次へと襲いかかる。
そんな事を繰り返すこと数十分......臓器や肉片がそこかしこに散らばり、複数の死体が散乱するフロアの唯一の生き残りとして、血と汗と肉片に塗れた男が笑い声を上げながら立ち尽くしていた。
「はぁはぁ......アハハハハハッ......身体能力が上がっても、体力までも異常に発達する事はないみたいだね......でも、楽しかったァ」
もうこれまで何度も繰り返した作業。
慣れた手つきで、転がるモンスターの骸から血液や使えそうな物を奪い取っていく。そうはいってもこちらの攻撃で破損した武器の破片や、簡易鑑定で魔石と出た使い道のわからない不思議な小石などだが。
「フフフフ......不定形な生物よりも、ちゃんとした動物はやっぱりリターンが多いな。道具も血液も経験値も......その分攻撃を食らう頻度もあがるけど」
このフロアにいたモンスターは最初に倒したリザードマン三体を除いて人型が五体、それに加えてホーンディアーという角が特徴的な鹿のモンスターや、メイズウルフという群れて襲ってくる狼のモンスターなどの獣が数十体。
ダークゴブリンウォーリアーよりも戦闘能力は低かったが、どれも彼よりレベルが高くて数が多い厳しい戦いになっていた。
その対策として、考えていることが一つ......
「対多数と連戦に対応する為のスタミナ面の不安。対多数はこれから慣れていけばいい。それよりもスタミナが最重要。この身体は食事する必要はあるのか、それとこれらの肉は食べられるのかだ」
ステータスに現れない部分の肉体の強さ、体力等への懸念......それを解消する為に肉体改造へ取り掛かろうと考えていた。
「沢山食べて沢山動く。部活をやっているヤツがこれが大事と話していたのを聞いたことがあるから......先ずはここから試してみよう」
例えコイツらの肉に毒があっても、状態異常耐性があるから致命的な問題にならないはず。毒とかを喰らえば耐性が成長するかもしれないので試す価値はある。
こんな序盤で耐性を持っていても死ぬような毒があるとも思えないし。
「血抜きは完璧に出来ていると思うから、適当に切り取って食べてみよう」
人型でも躊躇なく撲殺できるのだが、人型のモンスターを食べる事には抵抗がある。なので日本でも食べられている鹿に手を伸ばした。
ただ死なない程度に生きていただけの高校生に、解体などの技術などある訳はなく......ボロボロなゴブリンのナイフで引きちぎった後ろ脚の皮を剥ぐだけだった。
「グロっ......壊す時は大丈夫なのに......なんでこう思うんだろう」
よくわからない感覚に戸惑いながらも全ての皮を剥ぎ終え、手から出した炎魔法で肉を炙り始めた。
今までした事の無い作業、慣れない魔法の行使、ちゃんと焼く事が出来ているのかと、終始気を張りながら焼いていく。
MPが少なくなり気怠さが出てくるまで、肉を焼く作業を続けた。
中まで焼けたのかわからないけど、これ以上やると気を失ってしまうので中断。
ヒヨコ以来の食事は肉を焼いただけの味気無い食事だったが、キチンと火の通った部分はとても美味しく......そして、今食べたコレらが自分の血肉になっていくものと感じた。
焼けていない部分は時間経過で回復した分の魔力を注ぎ込み、腹いっぱいになって動けなくなるまで追加を焼き続けた。
鹿から剥いだ皮はそのまま鞄用に使い、鞣されてもいない不十分な出来の物だったが、ズボンよりも面積が多かったので、腐ったりして使えなくなるまではコレを使おうと決めた。使えなくなるまでには新しい皮も手に入ると思うし、運が良ければ鞄のような物も手に入る可能性もあると思ったからだ。
今まで持っていた鞄をそのまま新しい鞄に詰め込み、このフロアで倒した敵の持ち物等で必要になりそうな物も鞄に入れてから階段を探しに移動を始める。
上の階層よりも細くなった部屋のようになっているエリア外の道を進むと、グジュグジュと水気を含む気色悪い音が響いてくる。
これまでに遭遇したモンスターで一番ソレに似た音を出していたのはアシッドスライムだが、今現在聞こえてくるその音はアシッドスライムが五匹集まっても出せないであろう大きさだった。
「アハハッ......この先には、きっとヤバそうなモンスターがいそうだね。どうしようかな......この音が食事の音ならきっとデカい隙だよね。でもこの音がモンスター自体が出してる物なら......」
スライムのようなタイプだったら面倒なので、一度その場で立ち止まり、音を出さないように静かに歩いて部屋の入口へと向かう。
部屋の中を覗いて敵の姿を確認した自分は、急いで先程レベルアップした分のステータスを振り分ける。
「相手は食事中で、こちらに背中を向けている......敵はボス部屋に出てきたダークゴブリンウォーリアーよりも、断然凶そうなモンスター......落ち着け......ふぅ......先制の不意打ちで倒せたらいいな」
荷物を部屋の入口に置いて走り出す。
食事中で隙だらけなモンスターの後頭部に向けて、全力で金砕棒を振り抜いた。
──────────────────────────────
吉持ㅤ匠
Lv:23→30
HP:100%
MP:8%
物攻:22→28
物防:1
魔攻:3→5
魔防:1
敏捷:20→26
幸運:5
残SP:14→0
魔法適性:炎
スキル:
ステータスチェック
血液貯蓄ㅤ残62.8L
不死血鳥
状態異常耐性Lv1
拳闘Lv2
簡易鑑定
■■■■■■
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ただただ獲物を殴り殺す事だけを考え、殴っていた獲物が動かなくなればすぐさま笑いながら次へと襲いかかる。
そんな事を繰り返すこと数十分......臓器や肉片がそこかしこに散らばり、複数の死体が散乱するフロアの唯一の生き残りとして、血と汗と肉片に塗れた男が笑い声を上げながら立ち尽くしていた。
「はぁはぁ......アハハハハハッ......身体能力が上がっても、体力までも異常に発達する事はないみたいだね......でも、楽しかったァ」
もうこれまで何度も繰り返した作業。
慣れた手つきで、転がるモンスターの骸から血液や使えそうな物を奪い取っていく。そうはいってもこちらの攻撃で破損した武器の破片や、簡易鑑定で魔石と出た使い道のわからない不思議な小石などだが。
「フフフフ......不定形な生物よりも、ちゃんとした動物はやっぱりリターンが多いな。道具も血液も経験値も......その分攻撃を食らう頻度もあがるけど」
このフロアにいたモンスターは最初に倒したリザードマン三体を除いて人型が五体、それに加えてホーンディアーという角が特徴的な鹿のモンスターや、メイズウルフという群れて襲ってくる狼のモンスターなどの獣が数十体。
ダークゴブリンウォーリアーよりも戦闘能力は低かったが、どれも彼よりレベルが高くて数が多い厳しい戦いになっていた。
その対策として、考えていることが一つ......
「対多数と連戦に対応する為のスタミナ面の不安。対多数はこれから慣れていけばいい。それよりもスタミナが最重要。この身体は食事する必要はあるのか、それとこれらの肉は食べられるのかだ」
ステータスに現れない部分の肉体の強さ、体力等への懸念......それを解消する為に肉体改造へ取り掛かろうと考えていた。
「沢山食べて沢山動く。部活をやっているヤツがこれが大事と話していたのを聞いたことがあるから......先ずはここから試してみよう」
例えコイツらの肉に毒があっても、状態異常耐性があるから致命的な問題にならないはず。毒とかを喰らえば耐性が成長するかもしれないので試す価値はある。
こんな序盤で耐性を持っていても死ぬような毒があるとも思えないし。
「血抜きは完璧に出来ていると思うから、適当に切り取って食べてみよう」
人型でも躊躇なく撲殺できるのだが、人型のモンスターを食べる事には抵抗がある。なので日本でも食べられている鹿に手を伸ばした。
ただ死なない程度に生きていただけの高校生に、解体などの技術などある訳はなく......ボロボロなゴブリンのナイフで引きちぎった後ろ脚の皮を剥ぐだけだった。
「グロっ......壊す時は大丈夫なのに......なんでこう思うんだろう」
よくわからない感覚に戸惑いながらも全ての皮を剥ぎ終え、手から出した炎魔法で肉を炙り始めた。
今までした事の無い作業、慣れない魔法の行使、ちゃんと焼く事が出来ているのかと、終始気を張りながら焼いていく。
MPが少なくなり気怠さが出てくるまで、肉を焼く作業を続けた。
中まで焼けたのかわからないけど、これ以上やると気を失ってしまうので中断。
ヒヨコ以来の食事は肉を焼いただけの味気無い食事だったが、キチンと火の通った部分はとても美味しく......そして、今食べたコレらが自分の血肉になっていくものと感じた。
焼けていない部分は時間経過で回復した分の魔力を注ぎ込み、腹いっぱいになって動けなくなるまで追加を焼き続けた。
鹿から剥いだ皮はそのまま鞄用に使い、鞣されてもいない不十分な出来の物だったが、ズボンよりも面積が多かったので、腐ったりして使えなくなるまではコレを使おうと決めた。使えなくなるまでには新しい皮も手に入ると思うし、運が良ければ鞄のような物も手に入る可能性もあると思ったからだ。
今まで持っていた鞄をそのまま新しい鞄に詰め込み、このフロアで倒した敵の持ち物等で必要になりそうな物も鞄に入れてから階段を探しに移動を始める。
上の階層よりも細くなった部屋のようになっているエリア外の道を進むと、グジュグジュと水気を含む気色悪い音が響いてくる。
これまでに遭遇したモンスターで一番ソレに似た音を出していたのはアシッドスライムだが、今現在聞こえてくるその音はアシッドスライムが五匹集まっても出せないであろう大きさだった。
「アハハッ......この先には、きっとヤバそうなモンスターがいそうだね。どうしようかな......この音が食事の音ならきっとデカい隙だよね。でもこの音がモンスター自体が出してる物なら......」
スライムのようなタイプだったら面倒なので、一度その場で立ち止まり、音を出さないように静かに歩いて部屋の入口へと向かう。
部屋の中を覗いて敵の姿を確認した自分は、急いで先程レベルアップした分のステータスを振り分ける。
「相手は食事中で、こちらに背中を向けている......敵はボス部屋に出てきたダークゴブリンウォーリアーよりも、断然凶そうなモンスター......落ち着け......ふぅ......先制の不意打ちで倒せたらいいな」
荷物を部屋の入口に置いて走り出す。
食事中で隙だらけなモンスターの後頭部に向けて、全力で金砕棒を振り抜いた。
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吉持ㅤ匠
Lv:23→30
HP:100%
MP:8%
物攻:22→28
物防:1
魔攻:3→5
魔防:1
敏捷:20→26
幸運:5
残SP:14→0
魔法適性:炎
スキル:
ステータスチェック
血液貯蓄ㅤ残62.8L
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