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単純作業
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◆◇原初ノ迷宮第五十層◇◆
階段を降り、躊躇いもなく扉を開ける。
五十階層のボス部屋はそこまで広く感じない。
上がりきったテンションそのまま、奥へと進もうとして荷物を置いていない事に気付いて思い止まる。このダンジョン内では荷物を台無しにする行為は絶対にやってはいけないと身に染みてわかっているお陰だろう。
また蛮族スタイルに戻るのだけは嫌だと理性が働いたらしい。
「アハハッ、危ない危ない。早くモンスターと戦いたすぎて気が急いていたよ」
一度行動をストップした事で落ち着きを取り戻す。しっかりと装備を整えてからボスモンスターと対峙した。
金砕棒と金棒を手にし、背中に短槍を背負い、太腿にはホルダーに収められたナイフ。
「バトル系の漫画で敵味方のどちらかに一人は絶対出てくるような出で立ちだなぁ......アハハ......」
自分のフル装備を確認して苦笑いしつつ、ボスモンスターに相対した。
「......見た目は......毒持ちか? 黒紫色で軽トラックくらいの大きさのでっかいスライム......毒持ちのキングスライムと予想。ステータスチェック」
──────────────────────────────
イヴィルスライムフロック
レベル:80
──────────────────────────────
イヴィルスライムフロック......フロックってなんだろうか。名前からは邪悪なスライムと云う情報しか読み取れない。
フロック......カエル? いや、カエルはフロッグだったような気がする......あぁもう!! 意味がわからなくてモヤモヤする。鑑定が簡易なままだからいけないんだろうか......
......もういいや。
「......うん、そうだよね。今までと同じように戦っていけばわかるだろ。あーだこーだ言う前にまず殴ろう。話はそれからだ!!!」
ズリュズリュと不快な音を出しながらこちらを見ていると思われるスライムに向けて駆け出した。
目やそれに似た器官は見て取れないが、視線のような......とりあえず見られているような感覚があるのが気持ち悪い。
相手の出方も特性も能力もわからない時はとりあえず殴るに限る。殴ればオールオーケー。運が良ければそれだけで終わる。
「おぉぉぉぉ......らァァァァァァっ!!!」
咆哮と共に振り下ろされる金棒の一撃が強大な力を伴ってスライムに激突する。
バシァァァァンッッ!!
水風船が破裂したと錯覚するような破裂音を響かせて軽トラックサイズのスライムが弾けて飛び散っていった。
「............はァ!?」
殺る気満々だったにも関わらず、呆気ない幕切れに暫し呆然としていまう。
............
......
五秒程隙だらけになってしまったたが、レベルアップのアナウンスが聴こえてきていないので戦闘はまだ終わっていないと思い直して気を引き締めなおす。
身体中に付着しているスライムは身体を叩いて落としていった。
「......ボスがこんなに呆気なく終わるはずがないよね。さぁどう来る?」
スライムの破片には何の動きもないがアナウンスは未だに聴こえてこないので、飛び散った禍々しい色のスライムの破片を一つ一つ丁寧に金砕棒と棍棒を使って潰していく。
今度は飛び散らないようにゆっくりと、磨り潰すように次々と潰していった。
「勢いよくぶん殴るんじゃなくて磨り潰すのが正解だったんだろうか......初撃って事で何も考えずに全力でぶん殴ってしまったのは大失敗だったなぁ......スライムの破片がバカみたいにばら撒かれてるよ......でも色が色だけに見落としが無さそうなのだけは救いか」
散らかしたモノはしっかり片付けないといけないよっていうダンジョンから贈られた些か数の多すぎる教材に辟易する。
「黙々と作業するのは苦じゃないからいいんだけどさぁ......どこを見てもスライムだらけ......終わりが見えないのは精神的にキツいわ......数多すぎ......」
スライム版無限プチプチ。
プチプチプチプチ......ゴリゴリゴリゴリ......
プチプチゴリゴリプチプチゴリゴリ......
プチプチゴリゴリ......
気の遠くなる程の数のスライムを時間を掛けてプチプチっと潰した後は、使用済みと未使用の区別がつかなくなるので部屋の真ん中に金棒で強引に掘った穴に入れていく。
部屋を四方に区切り、これで二つ目の区画が終わった。これだけやってもまだ残りは半分もある。
どう考えてもポジティブな思考にならない。心が折れそうだ......
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハ......」
口からは乾いた笑い声しか出てこない。きっとここに鏡があったら死んだ顔でスライムを潰している男が見れていただろう。
三つ目の区画を半分程終わらせた時、ふと思いつく。
スライムの破片って火にかけたらどうなるだろう......と。
「残り八分の三......後は火をつけた金棒と金砕棒で潰していってやろう!」
新しい事を思い付いた事で上がったなけなしのモチベーションのままスライムの破片を片付け始めた。
◆◆◆
長らく誰も訪れなかった部屋に突如として入ってきた
人間。
この人間はヤバい......早さと力が圧倒的で、己のスピードでは全く捉えられないと悟る。
攻撃で死ぬ事は無いが、捉えるには油断させないと無理だ。
磨り潰されて液状になった身体は穴の中に入れられていったのは救いだった。
膨大な数の個が合わさった群れの集合体が穴の中で再結合し、人間の隙を伺っていく。
全てを穴の中に戻して疲れきった所を襲おう――
そう思っていた所だったが、話は変わってきてしまった。
人間が何を思ったのか残りの個体に火をつけ始めた。これだとあの小さな個体は殺されてしまう。
これ以上被害が出ない内に倒すしかない。
そう思ったスライムは視界に入っていない個体を人間にバレないように集め始め、手のひらサイズのスライムを大量に作って襲わせた。
突如襲いかかってきたスライムに必死に対応している人間。
――やるならここしかない......
穴の中で巨大さを取り戻したイヴィルスライムは、スライムに対応している人間の背後から己の出せる最高速度で飛びかかり、巨大な身体で押し潰し......人間の身体を体内に取り込んだ。
──────────────────────────────
吉持ㅤ匠
闘人
Lv:65
HP:100%
MP:100%
物攻:130
物防:1
魔攻:70
魔防:1
敏捷:130
幸運:10
残SP:2
魔法適性:炎
スキル:
ステータスチェック
血液貯蓄ㅤ残226.4L
不死血鳥
状態異常耐性Lv8
拳闘Lv7
鈍器Lv9
小剣術Lv4
簡易鑑定
空間把握Lv8
投擲Lv7
歩法Lv5
呪耐性Lv3
病気耐性Lv4
解体・解剖
回避Lv4
■■■■■■
装備:
魔鉄の金砕棒
肉食ナイフ
魔虎皮のシャツ
悪魔大土蜘蛛のバンテージ
合成皮革のズボン
再生獣革のブーツ
魔鉱のブレスレット
剛腕鬼の金棒
圧縮鋼の短槍
丈夫なリュック
厚手の肩掛け鞄
黒革のナイフホルダー
ババァの店の会員証ㅤ残高1290
魔石多数
──────────────────────────────
階段を降り、躊躇いもなく扉を開ける。
五十階層のボス部屋はそこまで広く感じない。
上がりきったテンションそのまま、奥へと進もうとして荷物を置いていない事に気付いて思い止まる。このダンジョン内では荷物を台無しにする行為は絶対にやってはいけないと身に染みてわかっているお陰だろう。
また蛮族スタイルに戻るのだけは嫌だと理性が働いたらしい。
「アハハッ、危ない危ない。早くモンスターと戦いたすぎて気が急いていたよ」
一度行動をストップした事で落ち着きを取り戻す。しっかりと装備を整えてからボスモンスターと対峙した。
金砕棒と金棒を手にし、背中に短槍を背負い、太腿にはホルダーに収められたナイフ。
「バトル系の漫画で敵味方のどちらかに一人は絶対出てくるような出で立ちだなぁ......アハハ......」
自分のフル装備を確認して苦笑いしつつ、ボスモンスターに相対した。
「......見た目は......毒持ちか? 黒紫色で軽トラックくらいの大きさのでっかいスライム......毒持ちのキングスライムと予想。ステータスチェック」
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イヴィルスライムフロック
レベル:80
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イヴィルスライムフロック......フロックってなんだろうか。名前からは邪悪なスライムと云う情報しか読み取れない。
フロック......カエル? いや、カエルはフロッグだったような気がする......あぁもう!! 意味がわからなくてモヤモヤする。鑑定が簡易なままだからいけないんだろうか......
......もういいや。
「......うん、そうだよね。今までと同じように戦っていけばわかるだろ。あーだこーだ言う前にまず殴ろう。話はそれからだ!!!」
ズリュズリュと不快な音を出しながらこちらを見ていると思われるスライムに向けて駆け出した。
目やそれに似た器官は見て取れないが、視線のような......とりあえず見られているような感覚があるのが気持ち悪い。
相手の出方も特性も能力もわからない時はとりあえず殴るに限る。殴ればオールオーケー。運が良ければそれだけで終わる。
「おぉぉぉぉ......らァァァァァァっ!!!」
咆哮と共に振り下ろされる金棒の一撃が強大な力を伴ってスライムに激突する。
バシァァァァンッッ!!
水風船が破裂したと錯覚するような破裂音を響かせて軽トラックサイズのスライムが弾けて飛び散っていった。
「............はァ!?」
殺る気満々だったにも関わらず、呆気ない幕切れに暫し呆然としていまう。
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......
五秒程隙だらけになってしまったたが、レベルアップのアナウンスが聴こえてきていないので戦闘はまだ終わっていないと思い直して気を引き締めなおす。
身体中に付着しているスライムは身体を叩いて落としていった。
「......ボスがこんなに呆気なく終わるはずがないよね。さぁどう来る?」
スライムの破片には何の動きもないがアナウンスは未だに聴こえてこないので、飛び散った禍々しい色のスライムの破片を一つ一つ丁寧に金砕棒と棍棒を使って潰していく。
今度は飛び散らないようにゆっくりと、磨り潰すように次々と潰していった。
「勢いよくぶん殴るんじゃなくて磨り潰すのが正解だったんだろうか......初撃って事で何も考えずに全力でぶん殴ってしまったのは大失敗だったなぁ......スライムの破片がバカみたいにばら撒かれてるよ......でも色が色だけに見落としが無さそうなのだけは救いか」
散らかしたモノはしっかり片付けないといけないよっていうダンジョンから贈られた些か数の多すぎる教材に辟易する。
「黙々と作業するのは苦じゃないからいいんだけどさぁ......どこを見てもスライムだらけ......終わりが見えないのは精神的にキツいわ......数多すぎ......」
スライム版無限プチプチ。
プチプチプチプチ......ゴリゴリゴリゴリ......
プチプチゴリゴリプチプチゴリゴリ......
プチプチゴリゴリ......
気の遠くなる程の数のスライムを時間を掛けてプチプチっと潰した後は、使用済みと未使用の区別がつかなくなるので部屋の真ん中に金棒で強引に掘った穴に入れていく。
部屋を四方に区切り、これで二つ目の区画が終わった。これだけやってもまだ残りは半分もある。
どう考えてもポジティブな思考にならない。心が折れそうだ......
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハ......」
口からは乾いた笑い声しか出てこない。きっとここに鏡があったら死んだ顔でスライムを潰している男が見れていただろう。
三つ目の区画を半分程終わらせた時、ふと思いつく。
スライムの破片って火にかけたらどうなるだろう......と。
「残り八分の三......後は火をつけた金棒と金砕棒で潰していってやろう!」
新しい事を思い付いた事で上がったなけなしのモチベーションのままスライムの破片を片付け始めた。
◆◆◆
長らく誰も訪れなかった部屋に突如として入ってきた
人間。
この人間はヤバい......早さと力が圧倒的で、己のスピードでは全く捉えられないと悟る。
攻撃で死ぬ事は無いが、捉えるには油断させないと無理だ。
磨り潰されて液状になった身体は穴の中に入れられていったのは救いだった。
膨大な数の個が合わさった群れの集合体が穴の中で再結合し、人間の隙を伺っていく。
全てを穴の中に戻して疲れきった所を襲おう――
そう思っていた所だったが、話は変わってきてしまった。
人間が何を思ったのか残りの個体に火をつけ始めた。これだとあの小さな個体は殺されてしまう。
これ以上被害が出ない内に倒すしかない。
そう思ったスライムは視界に入っていない個体を人間にバレないように集め始め、手のひらサイズのスライムを大量に作って襲わせた。
突如襲いかかってきたスライムに必死に対応している人間。
――やるならここしかない......
穴の中で巨大さを取り戻したイヴィルスライムは、スライムに対応している人間の背後から己の出せる最高速度で飛びかかり、巨大な身体で押し潰し......人間の身体を体内に取り込んだ。
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吉持ㅤ匠
闘人
Lv:65
HP:100%
MP:100%
物攻:130
物防:1
魔攻:70
魔防:1
敏捷:130
幸運:10
残SP:2
魔法適性:炎
スキル:
ステータスチェック
血液貯蓄ㅤ残226.4L
不死血鳥
状態異常耐性Lv8
拳闘Lv7
鈍器Lv9
小剣術Lv4
簡易鑑定
空間把握Lv8
投擲Lv7
歩法Lv5
呪耐性Lv3
病気耐性Lv4
解体・解剖
回避Lv4
■■■■■■
装備:
魔鉄の金砕棒
肉食ナイフ
魔虎皮のシャツ
悪魔大土蜘蛛のバンテージ
合成皮革のズボン
再生獣革のブーツ
魔鉱のブレスレット
剛腕鬼の金棒
圧縮鋼の短槍
丈夫なリュック
厚手の肩掛け鞄
黒革のナイフホルダー
ババァの店の会員証ㅤ残高1290
魔石多数
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