血塗れダンジョン攻略

甘党羊

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対無機物

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 マギメタルゴーレム
 レベル:9
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 ガーゴイルエクスキューショナー
 レベル:99
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 キラードール
 レベル:99
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 マーダーマシン
 レベル:6
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 パッと見、いつも通りの物理ゴリ押しでどうにかなるんじゃないかと思っていたけれど、相手の情報を得てみるとそれが間違いだったと気付く。
 レベルカンストモンスターは複数体いてどれも似たような姿形をしている。ここまでは想定内。だが厄介なのは進化しているモンスターが二体いる事だ......これ、理性を飛ばしたら結構ヤバいんじゃ......

 そんな葛藤など知ったことか。無機物か魔法生物かわからない軍団は一斉に襲いかかってきた。

「―――!!」

「「「......!!」」」

 上位種であるマーダーマシンが号令のような仕草を見せると、その後ろに付き従っていたキラードールが一糸乱れぬ動きで攻め込んでくる。
 さすが無機物。これまでの生き物系モンスターとは一線を画す連携を見せる。

 これまでのモンスターのように連携がバラバラなんてことは無く、間髪入れずに攻撃が飛んでくる。フレンドリーファイアなんて物はもちろん無い。
 味方を目隠しに使ってその僅かな隙間から刃が飛んできたり、魔法を飛ばしてきたりと厄介な攻撃をしてきている。空間把握のスキルが無ければ今頃蜂の巣になっていたであろう。

「チッ!!」

 数は力。その事を痛感させられる。
 継戦能力が極めて高く、圧倒的な個の力があれば、数だけを集めた集団はただの烏合の衆になる。
 だが、練度の高い集団相手ではいくら強い個でも相手にならない。犠牲は出るが、囲んで手足を少しずつ削っていけばいいだけの事なのだから。

 血を流させ、体力を削り、終わりの見えない戦いに集中力や気力は削れていく。使えば使うほど武器の切れ味はどんどん衰えていき、武器自体も摩耗していく。
 運が良ければ戦闘を開始してすぐに致命傷を与えてられる事もある。戦闘が長引いても最後には全てがボロボロになった戦闘の継続が不可能な肉の塊が出来上がるだけだ。


 ――しかし......それはあくまで人の枠に収まったモノを相手にしている場合である。

 モンスターにとって予想外だった事は、頭を潰すか血を流し尽くさせる事以外では決して止まらぬ人外を相手にしていた事だった。

「ヒヒヒヒッ......最初は戸惑ったけど、やっと連携する集団を相手取るのに慣れてきたぞ......」

 治すのに血を大量に使うような致命傷や大怪我になりそうな攻撃、頭部への攻撃のみを避け、身体を削るだけのような弱い攻撃は無視して、最前線で戦うキラードールとマギメタルゴーレムを金砕棒で殴る。
 果たしてこんな戦い方を戦闘に慣れたと言っていいのか......疑問は残るが、確かにこれもこの戦闘においての解の一つだろう。

「―――ッ!!」
「「「「―――!!!」」」」

 統率は取れていても、所詮無機物......行動自体はオーダー通りのことを繰り返すだけであり、新たなオーダーが伝えられるまではどれだけ被害が出ていようがお構い無しに動くだけでパターンさえ読めてしまえば後はヌルゲー。

 面倒なのは飛び回りながら殺意の高い攻撃をばら撒くガーゴイルエクスキューショナーのみ。マギメタルゴーレムはただただ硬くて魔法が効き難いだけで殴ってればいつかは壊せる。キラードールは言わずもがな。
 マーダーマシンは司令塔に徹していて未だに前へ出てきていないが......キラードールの行動を見ていたらキラードールの強化版だと思っていても間違いではないと思える。

「アハハハハッ!! 死ねオラ!!」



 ◆◆◆



 キラードール約四分の三、ガーゴイル一匹を倒し、ようやくこの長い戦闘の終わりが見えてくる。

「フフフフフッ......完全な血狂いモードには入っていないけど......ある程度は入ってるなぁ。アハハッ、血の無い敵では狂わないとわかったのはいいけど、まさか自分の血の匂いで狂わされかけるとは......」

 流れ出た己の血でランナーズハイみたいな状態になっている。さしずめこの状態はキリングハイといった所か......
 しかし戦闘時における精神状態としてはかなりいい部類だ。冷静さと高揚感、思い切りの良さがいい具合いに融合し、思った通りに身体を動かせる。

「ヒャハハハッ!! 気持ちいいなぁ!! いずれ血を出すモンスターと戦ってもこの状態を維持する。それが目標かな......ハハハハッ!!」

 高性能AIのように即座に学習し対応してこないキラードールを殴り壊しつつ、狙いをデカくて邪魔なマギメタルゴーレムに変えて壊しにかかる。
 こういうモンスターの弱点は大体胸元に何かがあるのが定番というお約束を信じ、一際装甲の厚い胸部分を悪魔骨棒でひたすら殴る。使い慣れた金砕棒よりも壊れなさそうで、もし壊れた場合には金砕棒よりも精神的なダメージが無いからだ。

 ワンパターンな攻めしかしなくなったキラードールや飛んでくるガーゴイルを金砕棒で牽制、攻撃しつつ、ひたすらゴーレムを殴打。
 それから何十合と殴打を重ね、ようやくマギメタルゴーレムの胸部装甲の破壊が成る。

「アハハハハッ!! 見ーつけたっ!! やっぱりそこに居たんだね!!」

 分厚い装甲に守られた中から現れたのは、透明なクリスタルのようなモノで造られた小玉スイカ程のサイズの球体。ご丁寧に檻のようなモノで守られている。

「――――――!!!!」

 大切に守っていた弱点が顕になった事に気付いたマギメタルゴーレムは無差別に暴れ始める。
 マーダーマシンやキラードールなどを巻き込むが、そんなん知ったこっちゃねぇと云わんばかりの暴れっぷりで、檻の隙間から悪魔骨棒を突き込んで破壊しようとした行動を中断せざるを得なくなる......が、中断した事に対してもお釣りがくるぐらいの暴れ方によって被害を被る敵モンスターたち。

「アハハハハッ!! いいぞ、そのまま味方同士潰し合え!!」

 自分の事よりもゴーレムを排除するのが最優先と判断したガーゴイルとマーダーマシンが、暴れ回るマギメタルゴーレムに攻撃を仕掛け、マギメタルゴーレムはそれを排除しようとより一層暴走。

 こちらは仲間割れした敵を倒しやすいのから、順に潰していくだけの簡単なお仕事をするだけになる。

 あれだけ時間を掛けて削っていたキラードールの群れは瞬く間に数を減らし、ガーゴイルは地に落とされ、マーダーマシンはオーダー優先で隙だらけ。

「ハハッ!! これで終わりっ!!」

 最後まで残ったマーダーマシンとマギメタルゴーレムを漁夫ってぶち壊して戦闘は終わった。


『レベルが2上がりました』

『レベルがマックスに達しました』

『これより、種族進化を行います』

 ドロップ拾いとステータス確認などは後回しにしろという事か。
 戦闘終了のアナウンスと共に、自身二度目......いや、三度目の種族進化が始まった。


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 吉持ㅤ匠
 悪魔闘人
 職業:血狂い

 Lv:97→99

 HP:100%
 MP:100%

 物攻:150
 物防:1
 魔攻:70
 魔防:1
 敏捷:150
 幸運:10

 残SP:36→40

 魔法適性:炎

 スキル:
 ステータスチェック
 血液貯蓄ㅤ残303.9L
 不死血鳥
 部分魔化
 血流操作
 簡易鑑定
 状態異常耐性Lv8
 拳闘Lv8
 鈍器(統)Lv4
 棒術Lv8
 小剣術Lv4
 空間把握Lv10
 投擲Lv7
 歩法Lv6
 強呪耐性
 病気耐性Lv4
 解体・解剖
 回避Lv6
 溶解耐性Lv2
 洗濯Lv1
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 装備:
 魔鉄の金砕棒
 悪魔骨のヌンチャク
 肉食ナイフ
 貫通寸鉄
 普通のシャツ
 快適なパンツ
 再生獣革のブーツ
 魔鉱のブレスレット
 剛腕鬼の金棒
 圧縮鋼の短槍
 丈夫なリュック
 厚手の肩掛け鞄
 微速のベルト
 ババァの店の会員証ㅤ残高220

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