血塗れダンジョン攻略

甘党羊

文字の大きさ
66 / 146

対無機物

しおりを挟む
 ──────────────────────────────
 マギメタルゴーレム
 レベル:9
 ──────────────────────────────

──────────────────────────────
 ガーゴイルエクスキューショナー
 レベル:99
 ──────────────────────────────
 ──────────────────────────────
 キラードール
 レベル:99
 ──────────────────────────────
 ──────────────────────────────
 マーダーマシン
 レベル:6
 ──────────────────────────────

 パッと見、いつも通りの物理ゴリ押しでどうにかなるんじゃないかと思っていたけれど、相手の情報を得てみるとそれが間違いだったと気付く。
 レベルカンストモンスターは複数体いてどれも似たような姿形をしている。ここまでは想定内。だが厄介なのは進化しているモンスターが二体いる事だ......これ、理性を飛ばしたら結構ヤバいんじゃ......

 そんな葛藤など知ったことか。無機物か魔法生物かわからない軍団は一斉に襲いかかってきた。

「―――!!」

「「「......!!」」」

 上位種であるマーダーマシンが号令のような仕草を見せると、その後ろに付き従っていたキラードールが一糸乱れぬ動きで攻め込んでくる。
 さすが無機物。これまでの生き物系モンスターとは一線を画す連携を見せる。

 これまでのモンスターのように連携がバラバラなんてことは無く、間髪入れずに攻撃が飛んでくる。フレンドリーファイアなんて物はもちろん無い。
 味方を目隠しに使ってその僅かな隙間から刃が飛んできたり、魔法を飛ばしてきたりと厄介な攻撃をしてきている。空間把握のスキルが無ければ今頃蜂の巣になっていたであろう。

「チッ!!」

 数は力。その事を痛感させられる。
 継戦能力が極めて高く、圧倒的な個の力があれば、数だけを集めた集団はただの烏合の衆になる。
 だが、練度の高い集団相手ではいくら強い個でも相手にならない。犠牲は出るが、囲んで手足を少しずつ削っていけばいいだけの事なのだから。

 血を流させ、体力を削り、終わりの見えない戦いに集中力や気力は削れていく。使えば使うほど武器の切れ味はどんどん衰えていき、武器自体も摩耗していく。
 運が良ければ戦闘を開始してすぐに致命傷を与えてられる事もある。戦闘が長引いても最後には全てがボロボロになった戦闘の継続が不可能な肉の塊が出来上がるだけだ。


 ――しかし......それはあくまで人の枠に収まったモノを相手にしている場合である。

 モンスターにとって予想外だった事は、頭を潰すか血を流し尽くさせる事以外では決して止まらぬ人外を相手にしていた事だった。

「ヒヒヒヒッ......最初は戸惑ったけど、やっと連携する集団を相手取るのに慣れてきたぞ......」

 治すのに血を大量に使うような致命傷や大怪我になりそうな攻撃、頭部への攻撃のみを避け、身体を削るだけのような弱い攻撃は無視して、最前線で戦うキラードールとマギメタルゴーレムを金砕棒で殴る。
 果たしてこんな戦い方を戦闘に慣れたと言っていいのか......疑問は残るが、確かにこれもこの戦闘においての解の一つだろう。

「―――ッ!!」
「「「「―――!!!」」」」

 統率は取れていても、所詮無機物......行動自体はオーダー通りのことを繰り返すだけであり、新たなオーダーが伝えられるまではどれだけ被害が出ていようがお構い無しに動くだけでパターンさえ読めてしまえば後はヌルゲー。

 面倒なのは飛び回りながら殺意の高い攻撃をばら撒くガーゴイルエクスキューショナーのみ。マギメタルゴーレムはただただ硬くて魔法が効き難いだけで殴ってればいつかは壊せる。キラードールは言わずもがな。
 マーダーマシンは司令塔に徹していて未だに前へ出てきていないが......キラードールの行動を見ていたらキラードールの強化版だと思っていても間違いではないと思える。

「アハハハハッ!! 死ねオラ!!」



 ◆◆◆



 キラードール約四分の三、ガーゴイル一匹を倒し、ようやくこの長い戦闘の終わりが見えてくる。

「フフフフフッ......完全な血狂いモードには入っていないけど......ある程度は入ってるなぁ。アハハッ、血の無い敵では狂わないとわかったのはいいけど、まさか自分の血の匂いで狂わされかけるとは......」

 流れ出た己の血でランナーズハイみたいな状態になっている。さしずめこの状態はキリングハイといった所か......
 しかし戦闘時における精神状態としてはかなりいい部類だ。冷静さと高揚感、思い切りの良さがいい具合いに融合し、思った通りに身体を動かせる。

「ヒャハハハッ!! 気持ちいいなぁ!! いずれ血を出すモンスターと戦ってもこの状態を維持する。それが目標かな......ハハハハッ!!」

 高性能AIのように即座に学習し対応してこないキラードールを殴り壊しつつ、狙いをデカくて邪魔なマギメタルゴーレムに変えて壊しにかかる。
 こういうモンスターの弱点は大体胸元に何かがあるのが定番というお約束を信じ、一際装甲の厚い胸部分を悪魔骨棒でひたすら殴る。使い慣れた金砕棒よりも壊れなさそうで、もし壊れた場合には金砕棒よりも精神的なダメージが無いからだ。

 ワンパターンな攻めしかしなくなったキラードールや飛んでくるガーゴイルを金砕棒で牽制、攻撃しつつ、ひたすらゴーレムを殴打。
 それから何十合と殴打を重ね、ようやくマギメタルゴーレムの胸部装甲の破壊が成る。

「アハハハハッ!! 見ーつけたっ!! やっぱりそこに居たんだね!!」

 分厚い装甲に守られた中から現れたのは、透明なクリスタルのようなモノで造られた小玉スイカ程のサイズの球体。ご丁寧に檻のようなモノで守られている。

「――――――!!!!」

 大切に守っていた弱点が顕になった事に気付いたマギメタルゴーレムは無差別に暴れ始める。
 マーダーマシンやキラードールなどを巻き込むが、そんなん知ったこっちゃねぇと云わんばかりの暴れっぷりで、檻の隙間から悪魔骨棒を突き込んで破壊しようとした行動を中断せざるを得なくなる......が、中断した事に対してもお釣りがくるぐらいの暴れ方によって被害を被る敵モンスターたち。

「アハハハハッ!! いいぞ、そのまま味方同士潰し合え!!」

 自分の事よりもゴーレムを排除するのが最優先と判断したガーゴイルとマーダーマシンが、暴れ回るマギメタルゴーレムに攻撃を仕掛け、マギメタルゴーレムはそれを排除しようとより一層暴走。

 こちらは仲間割れした敵を倒しやすいのから、順に潰していくだけの簡単なお仕事をするだけになる。

 あれだけ時間を掛けて削っていたキラードールの群れは瞬く間に数を減らし、ガーゴイルは地に落とされ、マーダーマシンはオーダー優先で隙だらけ。

「ハハッ!! これで終わりっ!!」

 最後まで残ったマーダーマシンとマギメタルゴーレムを漁夫ってぶち壊して戦闘は終わった。


『レベルが2上がりました』

『レベルがマックスに達しました』

『これより、種族進化を行います』

 ドロップ拾いとステータス確認などは後回しにしろという事か。
 戦闘終了のアナウンスと共に、自身二度目......いや、三度目の種族進化が始まった。


 ─────────────────────────────

 吉持ㅤ匠
 悪魔闘人
 職業:血狂い

 Lv:97→99

 HP:100%
 MP:100%

 物攻:150
 物防:1
 魔攻:70
 魔防:1
 敏捷:150
 幸運:10

 残SP:36→40

 魔法適性:炎

 スキル:
 ステータスチェック
 血液貯蓄ㅤ残303.9L
 不死血鳥
 部分魔化
 血流操作
 簡易鑑定
 状態異常耐性Lv8
 拳闘Lv8
 鈍器(統)Lv4
 棒術Lv8
 小剣術Lv4
 空間把握Lv10
 投擲Lv7
 歩法Lv6
 強呪耐性
 病気耐性Lv4
 解体・解剖
 回避Lv6
 溶解耐性Lv2
 洗濯Lv1
 ■■■■■■

 装備:
 魔鉄の金砕棒
 悪魔骨のヌンチャク
 肉食ナイフ
 貫通寸鉄
 普通のシャツ
 快適なパンツ
 再生獣革のブーツ
 魔鉱のブレスレット
 剛腕鬼の金棒
 圧縮鋼の短槍
 丈夫なリュック
 厚手の肩掛け鞄
 微速のベルト
 ババァの店の会員証ㅤ残高220

─────────────────────────────
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...