異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊

文字の大きさ
70 / 183

呼ばれた気がしてた

しおりを挟む
「なぁ、もう記憶は読めただろ?俺の言ったことは真実だって事を理解できた?」ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 返事はまだ返ってこない。

 なのに今はイライラした気分は無くなってしまい、毒気が抜かれてしまった感じになっている。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
 鳥が難しそうな顔をしながら考え事をしているという、普段見れないモノを見ていたら気が抜けてしまった。
 ここに来たのは本当に偶然だったんだよ。

 理由を教えてくれてこっちに非があるのがわかれば謝るから、そろそろちゃんと話をしてくれないかなぁ。

 隔離された地って言うくらいだから封印とか、障壁とか、なにかしらの妨害工作を施してるんだよね?
 俺には何も感じられなかったから、そっちの対策不足だと思うんだけど......


『......すまなかった。ここへ来たのは本当に偶然だったんだな』ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
 ......あら意外。

 普通に謝罪をしてきた。
 無駄に会話なんかしようとしないで、最初から記憶を探ってくれていたらもっとスムーズに事が進んだのに。

『この土地の事は誰にも話さないで欲しい。その小屋は友との思い出の地であり、形見でもある。だから人が来て荒らされたりしたくないのでな』

 おっと......形見の土地に俺らは滞在しちゃってたのか。
 うん。そこはごめんなさい。

「知らなかったとはいえ、思い出の土地に無断で踏み込んでしまって申し訳ない。そういう事ならすぐに出ていくよ。
 この土地の事は誰にも話す事はないから安心してほしい」

『うむ。悪いがそれで頼む。我の名はムニン、友から貰った名だ』

 ......確かなんかの神話に出てくる鳥の名前じゃんか。こいつの言う友って転生者だったりするのかな?

 コイツが神話に出てくるような生物か、この世界特有のモンスターなのかが気になったので鑑定してみる。

 あー、なるほどね。
「俺はシアンだ。勝手に踏み込んで、更には失礼な態度をとって悪かった」

 俺がそう言うと、ヤツは返事もせずに飛び去って行った。
 なんだったんだろう。説明が足りなすぎる。
 まぁ知恵が少しついた喋れる鳥なんだし、所詮そんなものかと思っておく方がいいか。

 なんでそんな風に思えたのかは、鑑定結果を見たらそう思えてしまったから。

 ▼シュルードレーベン(ムニン)
 名が付き半精霊化したカラス型モンスター▼

 狡賢いカラスが人と仲良くなって名前を貰ったんだね。そして進化して今に至ると。

 アイツはそこまで強くないみたいだし、ジャミングかなんかが俺には効果がなくて、ココに入れたんでしょう。

 寝ているお嬢様とピノちゃんを、起こさないようにソーッと抱きあげる。
 そしてゆっくりとその場から離れていった。
 ぬかるんでいて揺らさずに移動するのが難しいけど、意地でも不快な揺れは感じさせたくなかったので、かなり気合いを入れて走っていった。

 今から寝床を探すのも面倒だし、地面はドロドロ。こんな地面に寝かせるのだけは避けなくてはならない。

 良さげな木が生えている場所を見つけたので、今日はもうここで休もうと思う。木と木の間にハンモックを設置して、あんことピノちゃんをハンモックの上に寝かせてあげる。ゆっくり寝てね。

 俺は地面にブルーシートを敷いて、その上に寝転がって眠った。



 ◇◇◇



 ぺろぺろ......ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ぺちぺち......ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 顔に幸せを感じて目が覚めた。

 珍しく俺よりも早く起きていたあんことピノちゃんが、俺を起こそうと頑張っていた。

 時間を見てみるといつもの起床時間よりも二時間くらい遅い時間で、単に俺が寝坊しただけだった。

 ごめんねと謝ってからご飯をあげる。
 昨日はずっと寝ていて、夜を食べていなかったからお腹が空いてるみたいで、朝飯への食い付きが凄かった。

 少食なピノちゃんもおかわりを要求してきたので少し驚いた。最近食べられる量が増えたのかな?
 俺もお腹が減っていたので、チーズ入りのハムカツをパンに挟んでガッツリめな朝食を食べる。朝から揚げ物。

 朝食を食べ終わってタバコを吸っていたら、起きたら場所が変わっていたけど何かあったの?と質問をされる。

 夜中に変な鳥がやってきて、ソコは思い出の地だから~って事を言われて大人しく退去したんだよってふわっとした返答をした。

 説明を終えると、お疲れ様......みたいな感じで肩に前足を置かれる。

 その様子が凄く可愛くて癒される。やっぱりこの子は俺の癒しだ。


 お嬢様に説明していて思ったけど、これから精霊系の出来事は、全て超常現象の類いとでも思っておこう。
 真剣に向き合ったとしても、俺には多分理解できないし脳味噌の無駄遣い。

 思考を放棄して、皆で朝風呂タイム。昨日の夜に入れなかったからね。
 触れ合いが少なかった分を取り戻す為に、思いっきり触れ合いを楽しんだ。

 朝に風呂へ入るのも気持ちいいけど、やっぱり夜にちゃんと入るのは大事だなぁと思った。

 風呂に入ってリフレッシュできたので、今日も移動を頑張ろうと思えた。
 まだまだ続く旅だけど頑張って進もう。



 ◇◇◇



 そこから三日間移動を続けて、ようやく国達の中央にあるダンジョンへと辿り着いた。
 広すぎるでしょ。多分普通の人達だと半月以上はかかるぞ。

 ダンジョンへと近づくにつれて、複数のパーティが組んで移動していると思われる冒険者のグループや、馬車で移動している人達が多く見受けられるようになってきていたので、方角を間違わずにちゃんと進めていたんだと安心できた。

 その中で一組、ちょっとだけ気になる集団を見つけた。

 一際豪華な鎧を装備している男女が四人と、ボロボロの衣服を着ている男が三人と女が二人、偉そうにしているガキンチョが一人のちぐはぐな集団。
 ガキンチョの性別は見た目ではどっちなのか判断できない。遠いから鑑定もできない......まぁどっちでもいいか。

 ボロボロのヤツらは奴隷なのかな?目が死んでいて、あんな雰囲気の人は日本でも見た事ある。

 こっちに来てから奴隷とは遭遇していたのかもしれないけど、見た目では一般人と見分けはつかなかったから気にもとめていなかったから、はっきり見れたのは今回が初めてだった。

 あんな扱いだとモチベーションが上がる事なんてなさそう。こっちだとエナドリドーピングも出来そうにないし。

 男の奴隷の一人には、よく見ると親指大の角みたいなのが生えている。
 魔族?亜人?どちらにしろ初めて見れたので、少し嬉しかった。

 偉そうなガキンチョが、このチグハグなパーティの主だろうけど、ダンジョンに挑むんならそれなりの扱い方をしてあげた方がいい成果を挙げてくれると思うよ。
 死んだ方がマシとでも思っていたら、足を引っ張られた挙句に全滅もありえるからね。

 まぁ......皆さん死なないように頑張ってね。

 こんな最高難易度らしいダンジョンでも挑むヤツらは多いみたいで、さっき見たヤツらの他にもかなりの数のパーティがいる。

 それに伴って商人たちも多く存在していて、ダンジョン付近に作られている街みたいな所は、最初に行った街よりも賑わっていて発展もしている。


 このダンジョンに挑む時があれば少し活用させてもらおうかな。

 しばらくダンジョンは遠慮したいので、遠目からチラッと見るだけにしておく。


 .........

 ...............


 あれ?なんで俺は今ダンジョンを見ているんだろう。

 普通に違和感も無くダンジョンの方へと向かっていた。つい先日地理などを頭に叩き込んだばかりだったのに。

 このまま進んでいったら連邦国へ行ってしまうやんけ......


 ダンジョンの方に向かうように誘導されていたとか?そんな訳はないだろうけど、無意識にそちらへと向かってしまったこの現象はなんだろう。

 この事が凄く気持ち悪く思えてきたので、急いで方向転換。
 帝国方面へ向かって走り出した。


 なるべく急いでこの場から離れる。

 この場に長く留まっていたら、なにかしら悪い事が起きてしまい、それに巻き込まれてしまいそうに思えたから。


 こういうホラーみたいな現象はガチでやめてほしい。本当に気持ち悪い。

 俺の精神に干渉される事なんてないハズなのに......ダンジョンから何か電波みたいのが出ていて、それが俺になんか影響を与えていたりするのか?
 あのジジィのダンジョンでもなんかされていたっぽいし、これが正解なのか?


 わからん!ダンジョンってなんなんだよ!

 その日は、日が暮れるまで走ってダンジョンから離れた。

 血相変えて走っている俺に、心配そうな視線を向けているあんことピノちゃん。

 心配させちゃってごめんね。俺が落ち着けるまで待っててくださいませ。
しおりを挟む
感想 60

あなたにおすすめの小説

うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

処理中です...