異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊

文字の大きさ
124 / 183

牛を求めて1

しおりを挟む
 今日からは本格的に肉探し。

 参加するしないは個人の判断にお任せする。ずっとわちゃわちゃしてたし、来たい子だけ来てくれればいい。最悪ソロでも......寂しいけど。

「はーい注目ぅ。牛探しに参加したい子はなんかアクションを起こしてね。参加は強制じゃないから、不参加の子は自由にしてていいよ」

「きゃんっ!」

 可愛い鳴き声と共に、プリティなあんよが挙がった。ピンク色でぷにすべの肉球が丸見えです。触りたい欲求に駆られる......とっても気持ちよさそう。

 という事で記念すべき初日は、あんこが参加する事となりました。欲求に負けて話し合いが中断という事態は免れた。
 他の子たちはゆっくりしたいらしいので、本日は自由行動。
 骨喰さんは、魔物避けをこっそり出しそうなので車の中でお留守番。王都で買った刀を飾る台座へ乗せた。

「今更俺が心配する事でもないだろうけど、危ない事はなるべくしないでね。時間がかかるかもしれないから、ご飯は多目に用意していくから後はよろしく。
 じゃあお留守番頼むねー。行ってきます」

 あんこを抱っこして出発。久しぶりの完全なる二人きりが嬉しいらしく、お嬢様のしっぽがいつもより振れている。

 小さくない生体反応が固まっている所に片っ端から赴いて確認していくローラー作戦になる。ラブラブデート、時々牛探しに出発ですよ!!



 ◇◇◇



 一箇所目、拠点から南。
 結構離れた位置にあるが、ここが拠点から一番近かったので、始めはそこへ狙いを定めて向かっていく。

 思ったよりも緩やかな道なのでお嬢様を下ろして一緒に走って進んだ。

 大型犬サイズになったお嬢様が楽しそうに、そしてかなりの早さで走っていく。
 俺があんこを追いかけたり、あんこに追いかけられたり、競走したりと楽しみながら進んでいたらいつの間にか着いていた。楽しい時間は過ぎるのが早い。

「うわぁ......」

 ............そこに居たのは目的の牛ではなかった。
 なんかよくわからんムッキムキの豚。

 ▼サイドチェス豚
 肉体改造が趣味の豚
 肉質はカチカチで食えたもんじゃない▼

 ......次行こうか。なんかここら一帯ムワッとしていて湿度が高い気がする。あんこもなんとも言えない表情。
 主食は鶏ササミとプロテインって言いそうな豚さんグッバイ。



 ◇◇◇



 二箇所目、筋肉豚の巣から更に南へと進んでいく。
 あんこはあの豚が生理的に無理だったみたいで、あれからずっと抱っこされている。可愛くて癒されるから、ずっとそのままでいてくれても問題は無い。

 ゴツゴツした岩場が多くなってきていたけど、もう慣れたもんで苦もなく進めた。
 そして現場に到着。到着したんだけど......うん。


 ............一応見た目は牛。そう、一応分類的には牛ではあるんだけど、コレジャナイ感が一目で伝わってきた。

 ▼ミルクミノタウロス
 母性溢れる牛型の魔族
 ミルクは絶品だが、とても腐りやすく劣化が早いので直飲み推奨▼

 冬になる前に子どもをおっきくしないとだもんね。
 爆乳に群がっている子ミノと、パツンパツンに張った爆乳が重いらしく寝そべっているママミノ。
 パパミノはエサ探しかな?子育て頑張ってください。
 この歳でミノタウロスの母性に充てられて、ミルクを直飲みとか......絶対に無理。開けちゃいけない性癖の扉は、このままずっと閉じたままでいてほしい。



 ◇◇◇



 ここで一度休憩。あんこ可愛いよ、あんこ。しゅき。

 いつもより三倍甘えてくるあんこが愛おしい。でっかくなって全身で絡みついてくる。
 身体中で毛並みを味わいながら一緒にランチ。

 いつも皆のお姉ちゃんをしてるから、こういう時には全力で甘えてきてください。俺も幸せなので。


 イチャイチャしながら作戦会議。このまま南下しても次の生体反応までは遠いので、西に行くか東に行くかを相談。時計回りか反時計回りかの相談だね。
 ローラー作戦なのでいずれ牛にぶち当たるはずなんだけど、俺にこういった決断を任せると余りいい事が無い。

 どっちがいいかなーと聞くと、東を選んだお嬢様。

「じゃあ午後からはあっちを探そうねー」

 方針が決まったので、食休みを兼ねたイチャイチャを続けていった。



 ◇◇◇



 捜索再開予定時刻をオーバーしてしまったが悔いはない。大幅に遅れてはいないのでセーフだ。


 後一つか二つ回って今日は終わりだろう。
 あんこは走りたいみたい。それじゃあ行きましょうか。


 三箇所目、南南東くらいの位置にある岩場へ到着。

 ......うん、居ない。見当たらない。
 でも生体反応はしっかりある。

 というと......まさか地中なのか?
 うーん、ここはハズレかぁ。ある程度の大きさの地中生物となると、モグラ辺りかね。これまでの経験上どうせ碌でもない個性を持つモグラなんだろうな。

 ......放置でいいや。地下帝国を作って住んでいる牛なんているはずがない。
 もしそうだった場合には素直に危機管理能力を賞賛しよう。



 ◇◇◇



 四箇所目、南東にある傾斜の多い地帯。そんなに数はいないけど、そこそこ強めな生体反応があった場所。

 ......ここに居るのは牛じゃないっぽい。けど一応確認しておかないと。

 あー、鳥だわ。どれどれ......


 ▼アンディスピューテッドチャンピオンホーク
 とにかく強い鷹
 肉は筋が多くて食用には不向き▼


 ......チッ......この世界でもタカは強いのかよ......
 今年もウサギの生皮を剥ぐんだろうか。

 ちょっと去年までを思い出してピリピリしたけど、心を鎮めて移動を始める。きっと今年こそは鳥類の頂点+六匹の動物の争いでの頂点、そして十二匹の動物の中で頂点を取ってくれるはずだ。
 わざわざここで鷹を倒す必要なんてないだろう。今年こそはきっとやってくれるはずだから......



 ◇◇◇



 五箇所目、東南東らへんの湿原っぽい場所に到着。
 ちょっとぬかるんでいるのであんこは抱っこしている。

 生体反応がある場所へ近付いていく。

 ............ここもハズレ。くそぅ。
 湿原に居たのは鋏が異常に大きいカニだった。

 今日の探索は全部ハズレか......
 発見は次回以降に持ち越し。まぁこういった事ですんなり見つかるなんて運を、俺は全く持ち合わせていない。
 地道に足で稼ぐしかないのだから、これくらいでへこたれてはいけない。

 さーて、このカニさんはどんなモンですかなー?

 ▼ローミートクラブ
 挟む力が異様に強いカニ
 鋏肉は生肉の様な見た目と味わいで、忌避される事が多いが一部熱烈な愛好家がいる▼


 ............よし、狩ろう。絶対に狩ろう。

 抱っこしていたあんこには悪いけど、定位置に入ってもらい、カニの鋏乱獲作戦を始動。

 カニって一部が欠けてもまた生えてくる......とか、それらしい事を聞いたことがあった気がする。それなら時間さえあければ延々と収穫できるだろうし、これは試してみる価値があると思われる。
 どうなるかわからないから、今は片方の鋏だけ頂いていって、しばらくしてから結果を確認しにこよう。
 その時に再生していたら、定期的に採取。再生していなかったら、もう片方の鋏を貰おう。
 胴体や脚などの部位については、鑑定さんの一言メモに出てこなかったから多分不味い。


 さぁ、鋏をもらおうか。ユッケが食べたい。桜ユッケじゃ満足出来なかったんや!
 レバ刺しやユッケの規制は本当に悲しかった!!
 何でもかんでも規制すればいいってもんじゃない。それなら生牡蠣だって規制すべきだと俺は思うのですよ!!

 悲しい事に代替品になってしまうけれど、それに近い物を食べれる機会は逃すわけにはいかぬ。

 この湿原に居るカニ達よ、オラに鋏をッ......

 鋏を寄越せェェェェエ!!


 定位置で困惑しているあんこに謝りつつ、鋏をどんどん集めていく。

 今夜はユッケ祭りじゃあー!



 ◇◇◇



 内心カニに謝りながらも、食べたいという欲に負けて鋏を集め終えた頃には辺りは暗くなり始めていた。

 熱中しすぎた事を反省しながら急いで帰宅。
 帰り道のあんこは後頭部に張り付くという今までに無いスタイルだった。後頭部にあたる感覚が新鮮で気持ちよかったです。


 拠点に戻って皆に報告。
 明日もお出かけする予定なので希望者の募集をかけると、あんことツキミが立候補。

 チーム辛辣はマイペースだなぁ......まぁいいや。
 明日もゆっくりしていてね。

 この日、皆はいつも通り好きな物を食べ、俺だけがハイテンションな夕食だった。

 ウチの子たちは生肉は余り好まないらしく、一口食べて見向きもしなくなった。
 君たちはあんこ以外元野生だろうに......

 ちなみに卵黄をたっぷり絡め、ユッケのタレと混ざりあったカニ肉はとても美味しかったです。レバ刺しに酷似した味の生物どっかいねぇかなぁ......
しおりを挟む
感想 60

あなたにおすすめの小説

うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

処理中です...