異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊

文字の大きさ
129 / 183

観察・下

しおりを挟む
 ☆Day15

 闘牛と化した囚牛のオス......ボス牛を筆頭に親牛共が。
 脂身の少ない赤身肉みたいになってきているのだろうか?パサつかずにしっとりしていてくれよ!

ㅤあと、とろけるような脂身のお肉も絶対欲しい。......鍛えているオス共には無理だよな。絶対に無理そうだよなぁ......脂身はメス牛に求めよう。そうしよう。
 育成方法を間違った気がしなくもないけど、二種類の肉を味わえそうって事にして納得しておきましょう。

 ちなみにボス牛の角の色が変化した。自分の得意分野を現しているのか、ボス牛の角は稲光のような青白い色と形になっている。
 ちょっとカッコイイぞ牛肉のクセに。



 ヘカトンくんには牛の餌の管理もお願いする事にした。実験も兼ねているので、親が子どもの分を食べているのは見逃すように言ってある。
 劇物を詰め込んだ収納袋を渡した時に、自分らの分と勘違いしたのか、目から光が消失した。
 なんか妙にヘカトンくんをからかうのが楽しい。

「一日二つは食べるんだよ。どの顔にも満遍なく渡るようにね」

 俺がそう言うとヘカトンくんは泣いた。お前......牛より根性ねぇな。

 冗談のつもりだったけど、このまま牛が力を蓄えていったら......いつか負けそうな気がしてきたので、決定事項に。

「牛の餌係にも任命するから、しっかり与えるんだよ」

 そっちには笑顔で頷くヘカトンくん。随分表情豊かになったのぉ。



 ☆Day20

 俺の時もそうだったけど、栄養をしっかり摂って鍛錬に精を出していれば、肉体改造は早く進む。
 鍛錬をしていないメスの牛と比べると一目瞭然だ。

 オスとメス......赤身肉の旨い肉と、サシが美しく入った肉になりそう。うん、楽しみだな......自慢の肉に仕上がった牛が自ら食肉に加工されにきてくれるのを待ってるからね!


 この日は秋刀魚を焼いた。
 旬の食材はしっかりお取り寄せできるらしく、丸々と太った秋刀魚が俺の目の前に出てきた。やったぜ!!

 どっかの秋刀魚フェスみたいにデカい網の上で焼くなんて事はしない。
 七輪を団扇でパタパタしながら焼くのが作法だろう。効率は悪いけど。
ㅤ某海鮮の一族みたいに、焼けた魚をヌコに盗られるなんて事は起きない。わんこと鳥に狙われはするかもしれないけど。

 焼いていくと暴力的な匂いが辺りに立ち込めてくる。正直辛抱たまらん!
 マイエンジェルたちも涎を垂らしながらソワソワしていて可愛い。この子たちは魚が好きなんだよね。
 チーム甘えんぼはワタを残し、チーム辛辣は綺麗に全てを食べた。

 俺もワタは苦手なので残したけど、それをヘカトンくんが嬉々として食べ始めた。そして、コイツは秋刀魚の身には興味を示さなかった。

 ......君と俺は相容れない存在らしいな。

 いや、それで喜んでくれるのはいいけど......俺の目の前でワタをガツガツ食わないでおくんなまし。

 塩焼き秋刀魚におろし醤油と白米。悪魔的だァァァ!!



 ☆Day25

 夕方になり牛の体調チェックを兼ねた視察を行っていると、ボス牛がデカくなっていた。
 鑑定をしてみると......

 ▼ミートブルファイター
 激しい闘志を内に秘めたミートブルの戦士
 サシの少ない極上の赤身肉▼

 ......進化しやがったよ。
 ヘカトンくんはあの劇物を大体四十食ったら進化したよな。
 牛肉は大体五十個食べて進化。

 個体差はあるけど大体五十食えば進化するんだろう。俺は名前を付けた瞬間に進化したし......劇物を一定の数以上を食べて、条件を満たすと進化するって事でいいんだろうか。

 いいデータが取れた気がする。
 今度王女さんとメイドたちを生贄に捧げて、説立証を目指してみようかしら......フフフフフ。


 ヘカトンくんは常に二つの顔が死んでいる。ごめんね(棒)
 ヘカトンくんに文字を教えていた時に気付いたんだけど、異世界人相手に文字を書く時以外は日本語しか書けなかった。
 オートで変換されるらしい。不便さは無いからこれでいいんだけど。

 平仮名が書けるようになって喜んでいるヘカトンくん。
 平仮名で「へかとんくん」と、俺が呼ぶ時に使っている呼称を何度も書いている。
 ステータスを覗いてみたら名前が「ヘカトンくん」で定着していた。

 なんだろう......愛着が湧いてきてはいる。
 せめてキモカワ系やぶちゃかわ系と思えればいいんだけど、まだ俺はその領域まで達せていない。いつかそこまで達せるのだろうか......



 ☆Day30

 オス牛のほとんどが進化した。極上の赤身肉になってくれてありがとう。

 メスはもうここでの生活を受け入れているのか、全く反抗的な態度を見せずに従順で大人しい。野郎との温度差パねぇっす。
 仔牛たちも来たばっかりの頃よりも、順調に大きくなっていっている。しっかり育ってくれよ。

 コイツらの誰でもいいけど、一体いつ挑んでくるんだろうか。まさか鍛えるのが目的ってだけじゃないよな!?

 ......こっそり一頭殺っちまうか?
 そろそろお肉が食べたい。極上のお肉を目の前にぶら下げられている状況。結構辛いねん。
 メス牛は今の所進化していないので対象外。進化したらどんな味や肉質になるんだろうなぁ......ジュルリ。



 ヘカトンくんは平仮名をマスターし、今はカタカナの習得に励んでいる。
 ここまで知性あるのなら喋れてもいいのに......とは思うけど、声帯が無いらしい。
 ボディランゲージとホワイトボードで必死に伝えてこようとする姿は微笑ましい。
 俺の名前とエンジェルスの名前は書けるようになった。褒めてあげてからキャラメルをあげた。
 キャラメルも気に入った様子。この調子で頑張ってね。



 ☆Day35

 メス牛の妊娠が発覚した。
 こういう時にどうすればいいのかわからず焦った俺は、敏感メイドちゃんを喚びだしてしまった。


 

 俺が喚び出した存在ってわからなかったみたいで、知らない気配の者が急に現れたと認識したらしい。

 喚び出してから約一秒。敏感メイドちゃんに命の危機が訪れていた。
 本人は初めての喚び出しに困惑しており、目を白黒させていた。
 飛んでくる鋭い石を収納していく。俺が侵入者を庇った事に気付いたのか、こちらへと向かってきたヘカトンくん。

 ホワイトボードに「ごめんなさい」と書いて謝ってきた。
 俺としてはこちらに非があるし、用心棒の優秀さをまざまざと見せつけられたので問題は無い。何が起こったのかよくわかっていない敏感メイドちゃんに事情を説明すると、その場にへたりこんでしまった。

 ヘカトンくん    の    ひょうかが    あがった▽

 さて、こうなるといつものメンツくらいは......やっぱりヘカトンくんに面通ししておかないといかんよなぁ。

「王女さんたちって今喚んで平気かな?今のように悲しい事故が起きかけたらヤバいから、うちの用心棒に顔とかを覚えさせとかないとと思って」

「本日は大丈夫な筈です。それに......絶対早いうちに顔を覚えさせておいた方がいいと思いますっ!!」

 鬼気迫る敏感メイドちゃん。今から喚ぶ子は仲間だから敵対行為しちゃダメだよと説明をしてから喚びだした。


 喚び出した王女さんとメイド二名はヘカトンくんに驚き、ミートブルに興奮し、進化した牛戦士を見て呆然とした。

 なんでミートブルがこんなにいっぱい居るのか、何故進化した個体が居るのか、そもそもヘカトンくんって何!?
 ......と、矢次早に質問をぶつけてきた。

 ふわっとした説明と、これ以降質問は受け付けませんという強硬な姿勢を示して強引に納得してもらった。俺自身よくわかっていない事が多いんだもの。
 牛パをする時には喚ぶ約束をさせられた。まぁどっちにしろ解体を頼む予定だったから、いずれバレていたんだけど。

 お風呂用具と浴衣などの衣類、おしゃれグッズを受け取ってから王女さんたちを送還。今は妊娠した牛の方が大事なので。

 説明を聞いても俺は上手くやれそうになかったので、もしもの時の為に敏感メイドちゃんを、仔牛が産まれるまでの間だけここに居てもらう事にした。

 諸々の説明の為に彼女は一時帰国。明日から来てもらう事になった。
 説明するのが怖いと言っていたが......まぁうん、頑張ってくれ。超常現象が起こること以外は、最高の職場だと思うもん。

 妊娠したメス牛のことは、今日はそのまま放置しておこう。気が立っていたら嫌だし。


 ヘカトンくんに皆のことちゃんと覚えたかを聞くと、○の札をあげた。なら良し!

 用心棒のお仕事とお勉強をよく頑張ってるねと褒めると喜んでいた。飴ちゃんを袋にこっそり入れておいたので、後で飴ちゃんをぺろぺろしなさい。



 ☆Day41

 朝飯を食べていると、ヘカトンくんが俺の事を呼びに来た......
しおりを挟む
感想 60

あなたにおすすめの小説

うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

処理中です...