異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊

文字の大きさ
135 / 183

出撃

しおりを挟む
 意識が覚醒してくると、自分の顔がモフい物で挟まれている事に気付く。
 呼吸による動きと、毛と肌の温もりを感じるので、これは俺の顔をサンドしながら添い寝してくれている状況らしい。優しい。好き。愛してる。

 このモフみは......きっとあんことツキミちゃんだろう。というかダイフクが特徴的すぎるので、すぐにわかる。実質二択の状態なクセに、解答用紙の空欄枠は何故か二個ある......こんなん誰でもわかるよね。

 うん......脳も痛みや熱さは無く、完全に冷えている。
 よし、体調バッチリだ。起き......


「........................」


 ......たくないな。
 さっきは寂しい思いをさせられてしまったから、このまま......この状態でもう少し俺を癒してほしい。欲を言えば誰かが起こしにくるまではこのままでいたい。

 飽きるなんて事や、倦怠期なんてあるはずが無いんですよ。永遠にこの子たちを愛でていられる。

「こんな時なんだから、ピノちゃんやダイフクの野郎も来てくれていてもいいのに......
 贅沢言いすぎかなぁ......いやでも、こういう時だからこそどちゃくそ甘やかしてくれたっていいじゃないか......ハッ!!」


 天啓が降りてきた。
【千里眼】と闇糸の使い方を少し理解した今だからこそできる......!

 これはもう、やれって事だろう。やってやんよ!!

【千里眼】を使用して、ピノちゃんとダイフクの現在地を確認......

 いたね。探知してもいいんだけど、オフショットが見たいから仕方ない。


【千里眼】を解除して、お次は闇糸を伸ばしてー伸ばしてー......ピノちゃんとダイフクへ貼り付ける。

 後は骨伝導や糸電話みたいに、糸に俺の音声を乗せるッッ!!
 言いたい事や言葉が伝わらなかったら、その時は大人しく闇糸を巻きつけて拉致しようと思います。

「もしもし......わたしシアンさん。今、貴方から結構離れた場所にいるの......」

 ......返事はない。
 紙コップが無いと声は届かないのかな......イケると思っていたけど、骨伝導なんて代物は無理だったのかしら......

 まだ諦めるのは早い。もう一度試してみよう。

「もしもし......わたしシアンさん。今とっても寂しいの......」

 ............。

 ダメらしい。うんともすんとも言わへん。
 闇糸の気配には気付いてくれてるはずなのに......動こうともしない。悲しい。
 ......ハハッ、急に声がしたから驚いちゃっただけかな?

「パパキトク、スグカエレ・・・シアンヨリ」




 あの子たちはパパが危篤って言っても駆けつけてくれないのねっ!
 よし、もう諦めてハイエースしよう。

 決意するや否や、ピノちゃんとダイフク体に巻き付けて、こちらへと引っ張り込む。急だけど、二個目の案が強硬策なんて事になってごめんなさい。

 急に拉致されて驚いた顔をしていたけど、抵抗は無く素直に引き込まれてくれた。
 可愛い。いつもありがとう。

 このすべすべの蛇肌も、もちもちの羽毛も大好きだ。


 しばらく家族団欒を味わっていたら、あんことツキミちゃんがお目覚め。
 かーらーのー、愛すべき我が子たちからお説教タイム。


 皆心配していたんだから、しっかり反省しろと言い放つピノちゃん。ごめんなさい。

 急に血を出してびっくりしたんだと、ツキミとダイフクが言う。今日のお風呂で羽根を綺麗にするから許してね。

 今までにない量の血の匂いを、プンプンさせて帰ってきてびっくりしたとお嬢様。わたくし、貴女の為なら血を全て失ってもいい覚悟であります。
 ......いや、うん。心配かけてごめんなさい。


 それからしっかり説明。

 視線が不快だったし、アホなヤツらが何かを企んでそうだったから【千里眼】鍛えてみようと思いつく。
 そして【千里眼】を使用しながら動けたりしないかなーって色々と試していたら、脳に負荷がかかり過ぎたのか鼻血が出ました。アホでごめんなさい......と説明。

 やれやれだぜ......って感じのチーム辛辣。何か企んでるのは確定なのかとピノちゃんに聞かれたので、確定ですと返答。
 ピノちゃんこういった悪企み系をするのが好きよねー。何かしらいい案が思いついたのか、すっごい黒い笑顔になってる。可愛い。

 次に血を出したらわたしたちが拭うからね!! ってフンスフンスしてるチーム甘えんぼ。
 ......穢れが溜まって『少女』から『女』に成長してしまいそうだからやめて。普段からスリスリしてくれていいから。血はやめましょう。

 ......なんでそんなにシューンてしてるのさ。耳もしっぽも羽角も垂れ下がってる......なんでよ、血だよ、染みになっちゃうんだよ!?

 ......わかった。もし、そんな時があればお願いします。
 言い負かされる残念なパパン。いつの世も肩身が狭いもんですね......あはは。

 いい感じに会話が落ち着いてきたので、ここら辺で強引に方向転換してやる。俺に全員が抱っこされてる状態だし、今度は俺のターンだッッ!!

「はい、これで上手く話は纏まったね。じゃあ今からお風呂行こっか。......フフフ......皆キレイにしてあげるよ。ツキミとダイフクは血が染み込んでるかもしれないから、全力で洗ってあげる」

 ビクッとしてるけどどうしたのかなー?
 赤い物はしっかり洗わないと染みになっちゃうからねー。大変だよねー。

「心配しないでもいいよ。あんことピノもしっかり洗ってあげるからね......フフフフフフ」

 思わぬ飛び火に、「エッ!?」という顔をしている。萌える。
 助かるなんて思っていたのかな......皆を平等に愛するのが、ハーレム維持の秘訣だって誰か言ってた気がする。だから遠慮なんかしないでいいんだよ。




 ――その日はぐったりしてそれどころじゃなかった従魔たち。
 緊急従魔会議が次の日、こっそり開かれた事をシアンは知らない。

 彼のモフテクは既に一流の域に達しているわけなのだが、そこに“例のアレ”が加わるのはヤバい......
 なるべくアレを使わせないようにしようと、被害者の会に似た同盟が成立したとかしないとか......



 ◇◇◇



 次の日、なんかちょっとよそよそしい雰囲気が漂っている気がしなくもない。朝飯後に皆がコソコソと俺から離れていった。


 泣きそうだった。
 戻ってきたエンジェルたちに、やりすぎたかなーとは思うけど......毛並み、肌ツヤ、美しさの全てがワンランク上がったと思わない?
 めっちゃ美人さんだよ!!
 イケメンだよ!!
 ピノちゃんはナイススネイク!!

 なんて褒めてあげたら、満更でもなさそうにしたんだけど、すぐに我に返り、再びちょっと隙間があく。
 もういい加減慣れてください。ほんとまじで。




 そこから時は経ち、とうとうジュエリー受け取りの日がやってきた。
 お留守番のメイドちゃんとヘカトンくんはいつも通りよろしくね。


 情報収集っていうか......監視はしっかり行い、何かを企んでいるヤツらのツラはしっかり把握してある。

 作戦はこうなっている。
 あっちに着いたと同時に、チーム辛辣はボイレコの回収に向かう。
 場所は俺の魔力を辿れば行けるらしいので任せる。幻影やらなにやらでなんとかなるから任せろと、頼もしいチーム辛辣。ちなみに、あんピノ爆弾(極小)を持たせている。
 あの子たちの直感やセンサーに反応するようなイラッとした場所......とかに置いてきてもらう。俺の意思は介入していない。
 最近辛辣さが減ったから、チームホワイトにでも改名しようかなと思っている。

 チーム甘えんぼは護衛。
『今日はずっと離れないからね!!』と意気込むお嬢様とツキミちゃん。今日だけじゃなく、ずっと離れないでいていいからね。ずっとだよ!!



 はい。では行きましょうか。
 あの戦争から一ヶ月以上経っているのに、ゴミクズの処理をしっかり出来ていない王様。
 代償は支払ってもらいます。あの魔道具を預けてあるのに......ヘタレめ。
 平和ボケしすぎなんだよ。非情さも、危機管理能力も、決断力も足りていない。

 俺の戦闘力をアテにしてる状態を続けられるのは気に食わないからね。今回は少々痛い目に遭ってもらうよ。
 やる気まんまんのエンジェルたちもいるから、まぁ頑張ってくれ。

 そして石に魔力を込め、アラクネ国へとワープした。
しおりを挟む
感想 60

あなたにおすすめの小説

うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

処理中です...