異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊

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血の池温泉

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ㅤ温泉と言えばコレだ!!  という物を忘れていたので、慌てて温泉に戻って湯が湧き出している所に沈めてきた。スプラッシュを食らった時にクソ熱かったからきっと上手くいくはず。たぶん大丈夫なはず。

 さーて、コレがどうなるか楽しみだなー。


 それでは気を取り直して温泉宿風の料理を作って行きましょう。


 献立は、焼きおにぎりの出汁茶漬け、刺身盛り合わせ、天ぷら、漬物類、ローストビーフのサラダ、デザートにはアイスを。

 ......どうしても刺身は外せない。外せないのだが、異世界フィッシュは川魚しか持っていないし、刺身でもイケそうな異世界サーモンはあるが寄生虫が怖い。
 俺の場合、毒物なら無効化されるけど......寄生虫が体内に入った場合がどうなるのかわからない。胸焼けや頭キーンが実際に起こってしまったので、臓器系やらの内側からのダメージは食らいそうだと判断。

 なので、異世界サーモンはあんこに冷凍してもらってルイベにしようと思う。今回は諦めて、次回以降に機会があればということで。


 さてさて、そうなれば刺身なんて作れない。なので今回は、安心と信頼のメイドイン地球の魚をお取り寄せ。

 そのついでにタコとイカも取り寄せておく。

 テキ屋のあんちゃんになりきって、たこ焼きやいか焼きをあの子たちの目の前で作る予定。
 お腹の空いているあの子たちの前で、“待て”の状態のまま作りたいと思っております。暴力的な匂いを撒き散らしていた元凶を、出来たてアツアツのまま食べてもらいたいからだ。決して嫌がらせ目的ではない。我慢しているあんこたちが見たいだけだ。

 話が逸れてしまった......今はとりあえず温泉宿っぽい料理を作る事に情熱を注ぐだけだ。気に入ってくれるといいなぁ......



 ◇◇◇



 はい、こちら板長のシアンです。板前さんレベルの料理は無理なので諦めました。

 素人料理に毛が生えた程度のレベルだけど、そこそこ上手に作る事ができたと思っている。料理系のスキルが生えてくれたらなぁと思うけど......そう簡単に生える訳がないよね。まぁこれからも料理はするから、いつか生えてきてくれると信じましょうか。

 そんなこんなでいい時間となったので、ここからは温泉の雰囲気作りのお時間です。作った料理は一旦収納に仕舞って移動。


 温泉に着いたので早速取り掛かる。所詮付け焼き刃の改装なので、ただただ温泉宿っぽい雰囲気を出す為に、提灯を何個か用意し、糸を使って吊るした。

 うむ......思ったよりも全然いい。とてもイイぞぉコレはぁ!!

 安全性の考慮などから蝋燭型のライトになっているのもあるけど、やっぱり和紙から透けて見えるリアルな火が揺らめく感じはエロくていいわぁ。雪景色に温泉と湯気、それと揺らめく光を放つ提灯......この短時間でここまでやれたらパーフェクトと言っていいでしょう!

 光が透けてくる系のオブジェ大好き。
 灯籠とかも設置できたらいいなぁ。夢が広がるぅぅぅぅ!!



 あ、やべ。そろそろ皆をお迎えにいかないと。



 うん。ごめんね。
 お迎えに行った俺を待ち構えていた皆。温泉をすっごい楽しみにしていたもんねー。

『遅いー!』

 と、あんことピノちゃんに怒られてしまった。ごめんなさい。

 プリプリ怒る姿が可愛かった。そんなあんことピノちゃんを抱っこで宥めながら温泉へ向かう。その際に注意点を説明。
 色素が沈着しそうに感じた場合には即座にお湯から上がることを厳命した。

 皆の素晴らしい体色が変化しちゃうのは許せない。可愛くなるかもしれないけど、進化以外での色の変化は悲しい。
 これには皆素直に従ってくれた。わがまま言ってごめんね。



 温泉へ着いた俺はちっちゃい桶と手拭いをヘカトンくんに手渡す。一番風呂は君の物さ。

「桶で体を流してから入ってね。ほら、皆も待ちきれない様子だから早く行きなさい」

 嬉しそうに動き出したヘカトンくんが、しっかり掛け湯をしてから温泉に入っていった。

 うん、実におっさん臭いダラけ方をしている。いつもお疲れ様ですぅ。

「お待たせ。じゃあ掛け湯してあげるから浴びた子からどうぞ」

 桶でバシャバシャお湯を掛けてあげる。掛けた子から突入していくと思ったけど、全員浴び終わるまで待機していた。返り血をガッツリ浴びた絵面になっているけど、チョコーンとお座りして待機しているのが可愛い。

「皆で入りたいのかな?  待てて偉いね。ほら、もう大丈夫だから行っておいで」

 その言葉で全員が走ってき、ヘカトンくんがダラけている近くに飛び込んだ。

 血飛沫を浴びたヘカトンくんがプンスコしているけど、皆が楽しそうで和む。
 ワラビがあげた血飛沫の量が異常に多かった気がしなくもないけど、きっとそれは体格のせいだよね。きっと。


 さて......ビジュアルにさえ目を瞑れば、皆とても嬉しそうで素晴らしい光景だ。

 犬かきで泳ぐあんこ。しっぽが水面に出ていてフリフリしていて可愛い。

 水面をスイスイ泳ぐピノちゃんはいつもよりスピードが出ている。額の宝石は赤い中でも目立っていてキュート。

 ツキミちゃんは羽根を広げてパシャパシャさせている。全身に染み込ませようとしているのか、いつもより羽毛が広がっていてまんまるキュート。

 ダイフクは顔面だけ水面に出していて水中の様子がわからない。緩んだ顔をしているし、楽しんでくれているみたいなので放っておこう。

 ヘカトンくんはやけに馴染んでいる。銭湯にいるベテランのおっさんみたいで笑いそうになった。

 ワラビは角だけが見える。角だけ出して潜水しながら移動しているらしい。まさか鰓とか装備してる訳じゃないよね?  呼吸はどうなってるんや?

 うーん謎。皆思い思いの過ごし方で温泉を楽しんでいるっぽいから問題は無いな。

 とまぁ、様子だけ見ればとっても素敵なんだけど......全てに※但し、血塗れ風味です。と表記される。


 うん、観察するのもいいけど、そろそろ俺も入ろうかね。冬にマッパで待機は辛い。
 あぁぁ......あったけぇ。温泉やべぇわ......チョー気持ちいい。何も言えねえ。


 適温で長時間浸かれそうだけど、熱い湯と温めの湯も欲しいかもしれない。見た目の割にしっかり温泉している。

 ......頑張って作らないとな。打たせ湯とかも欲しいし。


 浴槽の縁に肘をかけてリラックスしていると、ピノちゃんが俺の肩の上に乗ってきた。はしゃぐのに満足したらしく、ゆったりしたいとの事。
 手の上に乗せて一緒に浸かった。こういうさり気ない甘え方がクセになるんだよなぁ......可愛い、好き。

 この子の鱗は水を弾くっぽくて、軽く拭えば元の白さ戻っていたので一安心。
ㅤ冬に温泉に入るカピバラやサルの気持ちがよくわかるよ......

「きもちいいねー。ピノちゃんはこの温泉気に入った?」

「シャァァァ」

 意思疎通を介さず、ただシャーってされた。寛いでるのを邪魔すんなって事なのだろうか......悲しい。

 目を向けると、目を閉じてリラックスしているから邪魔だったんだね。ごめんよ。

 構うのは諦めて他の子に目を移す。
 ダイフクとヘカトンくんは並んでまったり、ツキミちゃんは視線に気付くと俺の方へ飛んできて肩に乗った。

 あんことワラビは......

 何してんだろう。

 未だに角だけ出して潜水しているワラビの角に器用に乗っているあんこが見えた。楽しそうでなによりでございます。


 それからはまったり浸かり、もう風呂から上がろうよって言い出すまで、皆の行動を眺めて楽しんだ。
 皆を綺麗に拭き、血痕が残っていないのを確認。あんこが角の上を気に入ったらしく、ずっとワラビに乗っているのが悔しかった。この泥棒鹿めッッ!!

 お風呂上がりには定番のだろうと、ホカホカな皆にスノー印のコーヒー牛乳を振る舞い、お部屋で待っててと言って一度解散。



 温泉に戻ってきた俺は、沈めておいたネットを引き上げる。
 ネットの中には真っ赤な楕円形の物が十個入っていた。

 うん、俺が作っていたのは温泉卵。
 ガチの温泉卵を作るのは初めてなので、上手く作れているか心配。
 ドキドキしながら御開帳。

 温度が高かったのか、白身は完全に凝固している。そして、卵の白身は赤く染まっていた。

 ......うわぁ......ドン引き......ってのが正直な感想。
 なんで中まで赤くなってんねん!!

 そんなゆで卵をビクビクしながら一口......

 中は半熟トロトロ、白身部分は仄かな塩分を感じる。
 まぁ、アレだ。普通に美味しいゆで卵だった。

 ......後で中まで火を通したのを用意しよう。さっ、お腹を空かせたあの子たちを待たせちゃ悪いから早く戻ろう。




 この日の夕飯はあまり評判が良くなかった。
 唯一箸の使えるヘカトンくんには好評だったくらい。

 結局いつも使ってるご飯皿に、申告してきた食べたい物を乗せていった。この時、ヘカトンくんがワラビの皿にワサビをぶち込んでいたのは見ないフリをした。

 後、魚は火を通したのがいいと全員から言われたので、刺身系は個人で楽しもうと思います。


 食べ終わってゴロゴロしていたら寝てしまった皆を布団に寝かせた俺は、再び温泉に向かっていった。

ㅤ温泉に浸かりながらの雪見酒は、とても贅沢だった。
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