アクトレスの残痕

ぬくまろ

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「なにっ! どういうことなんだ。ほんとうなのかよっ!」
 スマホを持つ連の左手が震えていた。」
「ブツが出てきたから関連を調べないといけない。無関係であることを証明するのは難しいかもしれない」
「ほんとうにブツなのかよ。間違いないのか」
 父親の法事のことで連が珠美に連絡を取ったところ、思いがけないことを聞いてしまった。
 藤堂剛から受け取った茶封筒に入っていたのは、アイスピックであった。血液が付着したアイスピックは何らかの凶器である可能性が高いと判断され、DNA型鑑定で藤堂さくらの血液であることが確認された。アイスピックからは指紋が検出され、藤堂剛の指紋であることが確認された。
 電話を切った後、連は頭を抱えていた。なぜだ、なんのために、こんな結果でいいのか。頭が混乱して整理できない。彼は正常ではなかったのか。正常か、正常でないかの堺がわからなくなった。現実をどのように理解しなければならないのか。
 凶器であろうアイスピックから藤堂さくらの血液が検出された、さらに藤堂剛の指紋が検出された。この事実から、藤堂剛がアイスピックを握り、姉に向けて刺したことが想像される。では、なぜ刺したのか。殺さなければならない事情があるはずだ。偶然ではなく必然がなければ理解できない。両親を交通事故で亡くした後は、姉と弟、二人の関係はより強固になったはずだ。頼る者は、お互いに一人だけ。血がつながっている者は親戚を含めると何人かいるかもしれないが、肉親、非常に近い血縁関係にある人物となると、お互いしかいない。姉は劇団員として、女優をめざして稽古に励んでいた。弟は派遣社員として都内で働いているが、両親の事故の影響で近年体調を崩し、現在も苦しんでいる状態だ。体調を大きく崩して、精神状態が不安定になって……いや、そんな短絡的なことは想像できない。
 時間がない。藤堂剛は拘束されたが逮捕されていないということだ。取り調べは続くだろう。アイスピックを所持していたことをどう説明するのだろう。体力と精神力の消耗が心配だ。とにかく信じられない。藤堂剛の自宅から凶器が出てきた。今はそれだけが事実だ。俺は理由を知りたい。なんの理由だろうか。それさえ整理できない。姉弟の足跡を遡ってみるしかない。なにから探ってみるか。連は虚空を見つめた。

 二日後、連は千葉県千葉市中央区弁天の路上に立っていた。JR千葉駅から三百メートルほど北東に入ったエリアで、駅前の賑わいとは対照的に、戸建を中心にマンションやアパートが点在する閑静な住宅街である。あまり迷うことなく該当の住まいを見つけた。職業柄、アプリを使った住所検索には慣れている。よほど奥まった場所でない限り難なくたどり着く。表札には新しい姓が刻まれていた。当然だろう、以前に刻まれていた姓の人たちは引っ越してしまったのだ。ここにはかつて四人家族が暮らしていた。藤堂家の四人である。両親の事故をきかっけに、今後の生活のことを考え、売りに出したとのことだ。姉弟の誕生地であり、思い出が詰まった住まいである。経済的な理由であったにせよ苦渋の決断であったことは想像に難くない。朴訥に語った藤堂剛の顔が頭をよぎる。
 今回の目的は目の前の住まいではない。周辺の住まいを訪ね、藤堂家の情報を集めることにある。両親との関係、姉弟間の関係といった家族像を探ってみたい。不可解な事実をつきつけられ、頭には混乱の糸が何重にも絡まっている。それを解かねばならない。連は強い気持ちでここに立っている。
〈ピンポーン〉
「はい」
「ちょっとお聞きしたいことがあるのですか」
「なんですか?」
「以前、お隣に住んでいた人たちのことです。少しお時間いただけますか」
「驚愕館という出版社で週刊誌の取材ライターをしている者です」
「週刊誌? あっ! そういうことね。さくらちゃんの事件でしょ」
「はい」
 やはりあれだけ報道されると、被害者を知っている人たちは敏感に反応する。改めて殺人事件の衝撃の大きさを実感した。
「なにかわかったの?」
「いいえ、警察ではないので捜査しているわけではありません。取材を通して、事件の真相を追っているのです」
「あら、そういうことなの」
「はい。あのう……」
 問いかけるも、反応がない。人の息づかいを感じない。切れたようだ。さらに問いかけようと、顔をインターホンに近づけようとしたとき、突然玄関ドアが開いた。中から出てきたのは、女性だった。歳は五十代か。アルミ鋳物の門扉を挟んで向かい合った。
「テレビでニュースを見てたらさ、さくらちゃんが出てきたからびっくりしちゃった。何事かと心臓がバクバクして大変だったわよ。だって殺人事件でしょ。なんで? なんで? あのさくらちゃんがなんでこんな目に遭わなければならないの? 気が動転して、その後、どういう行動をとったのか覚えていないのよ」
 女性は興奮して一気に捲し立てた。
「あの」
 連が問いかけようとするも
「個人的な恨みかしら、それとも強盗? 事件に巻き込まれるなんて、そうそうあるものじゃないでしょ。可哀想、まだ若いし、まだまだこれからだっていうのに。冗談じゃないわよね」
 少し落ち着いたようだ。道を行き交う人に女性の視線が移った。
「あのう、お伺いした理由は、事件の被害者である藤堂さくらさんの家族のことを知りたくこの地を訪れました」
「えっ! 家族が関係しているの? そうなの?」
「いいえ、そういうことではなく、事件の背景にあるかもしれない人間関係について情報を集めているところです」
「人間関係? じゃあ、顔見知りってこと?」
「いいえ、顔見知りなのか、そうでないのか、現時点でなにもわかっていません。だから、いろいろ情報を集めているのです」
「ふーん、そうなの。でもね」
 女性は連を怪訝そうにじろじろ見ている。
「なにもわからないから、多くの情報を集めているんです。警察ではないので捜査権はありません。ライターとしてどこまで真相に迫れるか。いつもそんなことを考えながら仕事をしています。ときには危険な目に遭うこともあります。刃物が出ることも。真相に迫れば迫るほど、当事者たちは嫌がりますしね」
 女性は連をまじまじと見た。
「さくらちゃんをああいう酷い目に遭わせるなんて許せないわよ。まあ、役立つことがあれば何でも教えるわよ」
 女性はフッと息を吐き続けた。
「藤堂さん一家は普通の家族だったと思う。ご主人は会社勤めの普通のサラリーマン、奥様は駅近くのデパートで週に何回かアルバイトをしていたはず。さくらちゃんと剛君はここで生まれ育った。平均的なサラリーマンの家庭だったのに。あの事故がなければね。幸せな家庭が一瞬にして壊されるなんて理不尽よね。事故に遭う確率なんてそんなに高いわけじゃないでしょ。予期しない事故で両親を一度に失った後のさくらちゃんと剛君、すごく憔悴しきっていた。魂が抜けたような表情をしていてまともに見ていられなかった。事故からしばらくして、家を売ることになったって挨拶に来たのよね。寂しそうな表情が忘れられない。でも、生活のことを考えての決断だったと思う。事故がなければ幸せな日々は続いたのにね」
 女性は腕を組みながら視線を落とした。
「事故は相手に非があったわけですよね。損害賠償は当然に請求したでしょうね」
 女性は苦虫を噛み潰した。
「それがさ、酷いのよ。初めは、ラジオの操作に気を取られて、ハンドル操作を誤って、センターラインをオーバーしたって聞いていたのに、道路に積もった雪に太陽が反射して目がくらんだことが原因だったと覆してきたらしいの。酷いでしょ。きっと、弁護士が悪知恵を働かしたのよ。どんな手段を使ってでも依頼主を守ることが有能な弁護士の称号になるわけでしょ。おまけに、藤堂さんがセンターライン寄りにハンドルを切った跡があると言って、過失割合を争ってきたらしいの。親戚を通して交渉していたらしいけれど、さくらちゃんも剛君も疲労困憊。体調を大きく崩しちゃって、病院に通っていたと聞いた。加害者の態度も酷いのよ。謝罪はないし、交渉は弁護士任せ。まあ、弁護士の指示通りに動いているんでしょうけどね。通夜には来たけど、形式的に来たって感じ。顔を見せたら、すぐ帰っちゃった。さくらちゃんから加害者が来たって教えてくれたから、なにかあったらSNSで拡散しようと思ってスマホで写真撮っちゃった。見るたびに憎たらしくて憎たらしくてしょうがないのよ。家族を崩壊させておいて、謝罪もなく誠意もない。許せない」
「交渉は進んでいないのでしょうか」
「うん。ちょっと待って」
 女性はなにかを思い出したみたいにうなずき、家に入っていった。
 すぐに戻ってきて
「あなた、出版社の人よね。これ拡散してくれない? 名前も教えるからさ」
 女性は連にスマホの画面を向けて問いかけた。
 連は苦笑するしかなかったが
「画像を送るわよ。受け取ってちょうだい」
 目が真剣だ。拡散するわけにはいかないが、受信拒否したら、話を打ち切られてしまうかもしれない。
「一応受け取っておきます」
 連は力なく息を吐き、しかたなく受け取った。
「二人のことが心配よ。東京に行って、上手くやっているのかしら」
「さくらさんについては、劇団員の方たちに聞いてみたんですが、舞台女優をめざして日々頑張っていたみたいですね。近々、主演での公演が予定されていたと聞いています。剛さんについては、直接会ったことがありいろいろ話しました。体調を崩しながらも、懸命に生きています」
「うん、そうよね。さくらちゃんが舞台のチラシを送ってくれたのよ。楽しみにしていたのに、残念。というより、やっぱり悔しい。晴れの舞台を奪ったわけでしょ。なんか、タイミングを見計らってめちゃくちゃにしたってことはないかしら」
 女性は眉根を寄せ、短く息を吐き
「剛君はほんとうに可哀想。自動車事故の後、体調を大きく崩したのよ。病院に通っていたのよね。表情も一変した。明るく朗らかだったのに、陰りが出てきて無表情になってしまったのよ。幸せな家族だったからこそ、現実を直視することができなかった。誰だってそうよ、絶頂から突き落とされたようなものだもの。さくらちゃんから聞いたんだけど。剛君、精神科に通っているってことだった」
 女性は目を伏せた。連はそれを見て、軽くうなずき
「二人を取り巻く人間関係について気になったことはありませんか」
「取り巻く人間関係? あまりプライベートなことはねえ、よくわからないわ。東京へ行ってしまったし、そこでの暮らしぶりはここからじゃわからないわ」
「そうですよね」
 千葉から帰社し仕事を終えてから、三軒茶屋の自宅に戻ったのは、午後十一時を回っていた。
 未だに信じられない。何かの間違い? いや、俺がそう思ったとしても誰も信じない。藤堂剛の自宅から藤堂さくらの血液が付着したアイスピックは発見されたのだ。現実を直視しなければならない。じゃあ、動機はなんなんだ。姉弟間に何があったんだ。ただのケンカじゃない。そんなもんがなければ理解できない。俺は長時間話したが、姉に対する違和感をうかがい知ることはできなかった。それとも通常の精神状態ではなかったときに、偶発的に発生してしまった。いや、アイスピックをたまたま所持していた? そんなバカな。連はテーブルに置いていたスマホを手に取り、番号を呼び出し、ボタンをタッチした。
「珠美。俺だ。寝ていたか?」
「うんん、まだ。眠れなくて」
「俺も眠れないし、未だに信じられないんだ。見つかったアイスピックはほんとうに凶器だったのか」
「その線で調べている。剛君、憔悴しきった様子でしゃべらなかったみたい。黙秘という拒絶ではなく、言葉を出したくても出てこないといった状態だと聞いた。精神的に不安定な状態に陥っているのよ。精神科への通院歴もあることから、精神鑑定も行われるかもしれない」
「それじゃあ、刑法第三十九条にある“心神喪失の者は罰しない。心神耗弱の状態である者に関しては罪を軽減する”という方向に持っていこうとしているのか。そういうことか。ブツが出たからといっても、供述はないわけだろ。慎重に調べたほうがいいぞ」
「警察だからそれはもちろんわかっている」
「捜査情報がマスコミに漏れていないみたいだけど、抑えているのか。まあ、俺もメディアだけど」
「慎重に扱っているのは事実。でも時間の問題」
「俺もまだ記事にはできない。記事にしたくないと言ったほうがいいかな。謎だ。整理できない。まあ、今日はもう遅い。続きは明日聞くよ。お休み」
 藤堂剛は拘束された。重要参考人として。捜査の状況や供述内容によっては被疑者となる。ブツを所持していたということで捜査の対象となるのは必然だ。
 翌日、驚愕館のデスクでパソコンの画面を見つめる連は、これまでに得た情報を整理しながら、謎に迫ることにした。
 藤堂さくらを刺した凶器を藤堂剛が所持していた。それを訪れていた刑事に差し出した。その行為により、凶器を隠していることを認識していたことになる。殺害した後、凶器を処分することなく、なぜキャビネットの中に隠し続けていたのか。捨ててしまえば、万が一家宅捜査されても自身は安心のはずで、疑われることはないだろうと推測するはず。リスクを冒してまで所持する理由とはなんだ。最大の謎は、姉である藤堂さくらを殺害する動機だ。たった一人の身内をこの世から葬り去る理由とはなんだ。警察の関係者に頻繁に自ら接触した理由は、捜査状況を確認するためだったのか。殺害してからずっとおびえた日々を過ごしていたのか。それと、劇団員が言っていた、あるときから急におびえた表情をしていたと。あるときとは、どんなとき? どんなことがあったのか。だめだ、点と点がつながらない。どこかが間違っている。事実でないピースが入り込んでいるかもしれない。
 それにしても、不慮の事故で両親を亡くし、姉を殺害し、たった一人になってしまった藤堂剛。心中はいかばかりか。連はパソコンの脇に置いてあったスマホを手に取った。かつての藤堂家の隣家の住人、表札は林と刻まれていた、その女性の憤りを思い出していた。 
 加害者の態度について。謝罪なし、交渉は弁護士任せ、通夜には形式的に参列か。聞いただけで、その憤りは伝わってくる。SNS等で拡散したい気持ちは理解できる。しかし、一度拡散してしまえば、プライバシーは尾ひれをつけてあらぬ方向へ拡散してしまうだろう。ましてや、メディアに携わる者が率先して協力するわけにはいかない。まあ、気持ちはわかるが。連は女性が撮影した加害者の画像を見ながら、ため息をついた。
「プライバシーを侵害し、脚色することは、たやすくなった」
 連はスマホを戻そうとした手を止めた。目が軽く見開かれた。さらに開かれ、凝視した。スマホを操作し、画像を送信した。
「俺だ。今、大丈夫か。話せる時間はあるか」
「えー、まあー、ちょっとなら大丈夫だけど。用件は?」
「画像を送った。ちょっと見てくれ」
 珠美がスマホを操作し画像を確認する。戸惑いの気配が連の耳に広がる。
「誰?」
「藤堂家の両親が亡くなった交通事故の加害者だ」
「初めて見るけど、それがどうしたの」
「よく見ろ。何か感じないか」
「特に感じない。私に送ってくる理由がわからない」
「珠美は見当たり捜査をやったことがないか。それじゃ気づかないか」
「どういうことなの」
「まあいい。俺が間違っているかもしれないから。今はいい。また連絡する」
 連は電話を切った後、画像を凝視続けた。
 トイレから戻った後、国立国会図書館のリサーチ・ナビの地方紙の記事牽引・検索で探し始めた。日付は聞いていたので、さほど時間はかからなかった。記事を見て、頭を左右に振った。
「俺も見当たり捜査員にはなれないな。でも一応、調べてみるか」
 連はスマホを手に取った。
「驚愕館の中野です。先日はお忙しい中、ご対応いただき、ありがとうございました。前の件に関連してお聞きしたいことがありまして、連絡いたしました。今、お時間ありますか」
「ああ、あのときのライターさん。お聞きしたいって、どんなことかしら」
 連はかつての藤堂家の隣に住んでいる女性に電話をかけた。追加取材の可能性を考え、予め女性の携帯電話番号を聞いていたのだ。
「あなたから送っていただいた画像に関することです」
「ああ、事故の加害者の画像ね」
「はい、そうです」
「そういうこと? ネットでさあ、公開する気になったのね」
 女性の声が弾んでいた。
「いいえ、そうじゃなくてですね。通夜のときも含めて、加害者のことを知りたくて連絡しました」
「あらそうなの。思い出すたびに腹が立ってくるわ。アイツのことを知りたいって、どんなことかしら」
「事故後の対応とか、人間関係とか、加害者自身のことを掘り下げてみたいんです」
「私は通夜でのことしか知らないよ。そうねー、あっ、そうだ。加害者側との交渉に関わった人がいるわ。藤堂さん、ご主人のお兄さんがいる。名刺をもらったから、連絡先がわかる。ちょっと待ってて」
 スマホを置く音が聞こえた。
「もしもし」
「はい」
「電話番号がいいかしら」
「会社名と住所もお願いします」
 連は会社名、住所、電話番号を手元の取材ノートにメモした。
「ありがとうございました」
 連は電話を切った後、番号をタッチした。
 社名、所属に続いて氏名が名乗られた。
「驚愕館の中野と申します。藤堂さんはいらっしゃいますか」
「はい。少々お待ちください」
「はい。藤堂です」
 十秒ほどして発せられた声は低く落ち着いていた。
「驚愕館の中野と申します。週刊誌や月刊誌の取材ライターをやっています」
「週刊誌? 取材?」
「はい。本日、お電話申し上げたのは、不慮の事故で亡くなられた弟様夫妻に関することをお聞きしたいからです」
「時が経っている話を今頃週刊誌が取り上げるのですか。一体なんのために、名をさらすのですか。理由をなんですか」
 さらに声が低くなり、警戒のトーンが耳に響く。
「いいえ。ご夫妻のことを週刊誌に掲載するわけではありません。加害者のことを知りたいのです」
「加害者? よくわからないな。加害者のなにを知りたいのですか。加害者に関することであったら、警察に聞けばいいのではないですか。取材先が間違っていますよ」
 藤堂さんのおっしゃることはもっともだ。しかし、引き下がるわけにはいかない。連自身、何を調べようとしているのか目的が明確でないのだ。それでも引っかかることがあるから加害者と関わった人たちの協力を得たいのだ。素直にぶつけるしかない。
「ある事件を追っているのですが、警察による捜査が難航しておりまして、解決の糸口も見えていません。捜査権がない出版社としては、事件への関わりの可能性が低い事象や人物についても取材や調査を試みているところです。取材ライターとして、一パーセントの可能性でもめぼしいものがあれば日々追い続けています。藤堂さんに連絡したのもその一環なのです」
「既に終わったことをほじくり返されるようで気分がいいものではない。あの件に関しては思い出したくないが、テレビで交通事故関連のニュースが流れるたびに、頭の中に映像が再現されるんだ。きっと、死ぬまで続くと思う。もう関わりたくないんだ。当事者の気持ち、理解していただけますか」
 当事者の立場になれば、きっとそうだろう。蒸し返されたくはないはずだ。酷い事件のことは忘れたい。日常に持ち込みたくない。マスコミに追いかけられたくない。とにかく静かに暮らしたい。遺族、親戚、その立場であったらそう思う。父のときのように。
 でも、それで終わりではないんだ。事件が解決しなければ、終わりではないんだ。犯人を捕まえて裁かなくては、悲しみは癒えない。たとえ完全には癒えないかもしれないが、殺人罪の有罪判決が出れば、気持ちの整理はつく、そう信じたい。少しでも犯人に近づきたい。
「藤堂さん」
 早く切りたがっているのだろう。返事はなかった。
「藤堂さくらさんの事件について取材を行っています」
 息を止めた気配が耳に伝わる。
「その事件に関連した取材なのです。まだはっきりとした輪郭は見えていませんが、引っかかることがあるのです」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ。何を言っているのかよくわからない。加害者とさくらがどうつながるのだ。接することはあり得ない。物理的につながらないじゃないか。君は何を言っているのかね」
「はい、私も確信があるわけでもありません。先ほども申しあげましたが、取材ライターとして、一パーセントの可能性でもめぼしいものがあれば日々追い続けているのです」
「じゃあ、君はあのときの加害者がさくらを殺害した犯人だと言いたいのか。超現象ではないんだ、あり得ないだ。推理小説でも書くつもりか」
 語気が荒くなってきた。
「はい、物理的にあり得ない。と、思いますが……」
 問い返すネタがない。歯切れが悪くなってきた。このまま、終話するしかないのか。
「仕事の醍醐味を問われれば、間違いなくスクープ、いわゆる特ダネです。でもそんなのは常に転がっているわけではありません。転がっているのは、道端の小さな石ころと同じです。取材をしても記事にならないケースがかなりあります。それは目的を持って取材にあたっても、パズルのピースを思うように埋められなかったり、埋められたと思っても真実でなかったり、散々な結果になることがありました。それでも、前を向いて追求していかなければ、目的を達成することも、真実を探り当てることもできません。今回、藤堂さんにお電話申し上げたのも、藤堂さくらさんの事件の真相を追うためなのです。犯人は今もどこかでほくそ笑んでいるかもしれません。そんなのは絶対に許せません。藤堂さんがお持ちになっている情報が事件と関連があるとは限りません。でもそれでもいいんです。間違っていたら、また始めればいいんです。今まで、それを繰り返してきました。それが、取材ライター、中野です」
 鼻から息を吐く音の後、思案の沈黙が広がる。
「中野さん、あなた、訴えられたこと、ありますか」
 連は戸惑った。問いの真意はなんだろう。いや、そんなことより、嘘はだめだ。
「訴えられかけられそうになったことはあります」
「そうですか。そんなことがあっても、取材ライターを続けている理由はなんですか」
「身内が殺されたんです」
 息を呑む空気が耳に伝わる。連は続ける。
「父親は警察官でした。飲食店からの通報でもう一人の警官と現場に駆けつけました。そして、店の裏側で何者かに刺されたのです。殉職です。犯人は捕まっていません。僕は十二歳、妹は七歳でした。犯人はきっとどこかで生きている。必ず見つけてやる。絶対に許さない。ペンは剣よりも強し。それがライターを選んだ理由です。今も当時と変わらない気持ちで仕事を続けています。これからも」
 胸に熱いものが込み上げてくる。
「私が持っている情報が役に立つとは思えません。あなたがその情報をもとに、さくらの事件にどう切り込んでいくのか、想像できませんね。が、まあいいでしょう」
「ありがとうございます」
 連はスマホを耳に当てながら、深々と頭を下げた。目頭が熱くなった。

 二日後、連は、藤堂氏が勤める会社の近くの喫茶店にいた。店は藤堂氏が指定した。窓際の二人用テーブルの席に、背筋を伸ばし座っている。約束の時間の二十分前だ。約束の時間に遅れることはない。相手を待たせるよりも、自分が待つほうがいい。どんなに待っても苦にならない。心の準備を整えるのに最低十分は必要だ。経験則から導き出した。
 自動ドアが開き、一人の紳士が入ってきた。店内を見回してすぐ、連と視線が合った。オリーブドラブのジャケットが目印と伝えておいた。緊張した面持ちで近づいてきた。こちらにも緊張が伝染する。テーブルに視線を置きながら、連の向かいの席にゆっくり座る。腰がイスに収まるや否や視線を鋭く向けてきた。連は心持ち身を引いた。
「私は人を待たせるのが嫌いなんです」
 機嫌が悪いようだ。六割の仏頂面。待っていたのは、僕のはず。なぜかわからないが、出鼻をくじかれたか。
「だから私は待ち合わせの時間の十分前には到着するように心掛けています。その私よりも、あなたは先に到着していた。悔しいですね」
 連は腕時計を見た。待ち合わせの時間は、午後六時。長針は十の位置を指している。午後五時五十分。なるほど、約束の時間の十分前だ。なるほどそういうことか。僕のほうが先に着いてしまった。結果的に僕を待たせることになったわけだ。おのれの経験則が、災いを招いてしまったか。これはいけない。
「私も人を待たせるのが嫌いなんです。だから、二十分前には到着できるように心掛けています。この度は、藤堂様にご不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございません」
 連はテーブルに額をつくくらい深々と頭を下げた。
「いや、謝る必要はありませんよ。心掛けの尺度の差が出たまでです」
 連はゆっくり頭を上げた。藤堂氏は無表情である。あえてそうしているのか、素なのか、年輪を重ねた表情からは読み取れない。とりあえず始めなければ
「先日は、お電話で失礼しました。改めまして、驚愕館の中野と申します」
 連は名刺を両手で差し出した。藤堂氏は名刺を受け取り、凝視した後、テーブルに置き、スーツの内ポケットから名刺入れを取り出し、慣れた手つきで連に名刺を差し出した。連は名刺を凝視した。大手証券会社の営業部長、藤堂正(まさ)尚(たか)。視線を藤堂氏に向けた。白髪の中に黒髪がほどよく混ざり、髪の量もほどよいナイスミドル。細いシルバーフレームのメガネの奥から、刺すような視線を放っている。情では動かない。無言で語りかけてくる。金融業界の本流を歩きながら、のし上がってきたオーラを漂わせている。
 連も名刺をテーブルに置いた。
「初めに言っておきますが、プライバシーを侵害しないでほしい。これはお願いではなく、強い要求です。情報が一度外部に流出してしまうと、それが拡散してさらに大きな被害を引き起こしかねない。現に、個人情報が流出してしまう事故や事件は後を絶たない。悪用されていないとアナウンスされているが、実際のところはわからない。わからないから、悪用されていないと言うしかないのだろう。そこのところは、出版社の方なら強く認識していますよね」
 藤堂氏は視線を外さずに、ゆっくりと確かめるように語った。
「はい。承知しております。ご提供いただいた情報は大切に管理し、適切な取扱いに努めます」
 連は深々と頭を下げ、一拍間を置き、ゆっくり上げ、視線を交わした。
「三十分間というお約束なので、早速始めたいと思います。よろしくお願いいたします。藤堂さくらさんと剛さんのご両親が亡くなった後、姉弟の支援は藤堂正尚さんが行っていたのですね」
 藤堂氏は軽くうなずいた。
「葬儀の手配と加害者との対応も支援していたのでしょうか」
 藤堂氏は少しむっとして口を開いた。
「そりゃそうですよ。二人とも大人でしたが、いきなり両親を奪われたわけです。誰かが支えなければ前に進めませんよ。私たち親戚が務めるのは必然でしょう」
 ここからが本番だ。
「かつて藤堂家が住んでいた家の隣家の方から聞いたのですが、通夜に訪れた加害者の態度について、謝罪もなく誠意も感じられなかったということでした。藤堂さんはどのような印象をお持ちになったのでしょうか」
 すると、途端に藤堂氏は苦虫を噛み潰した表情を浮かべた。口元を曲げ、連に視線を向けた。
「加害者の立場に立ったことはないが、そういう立場になれば、色々と知恵を授けられるらしいですね。加害者として、自分を守るための心掛けっていうやつですか、態度の豹変が物語っています。加害者、犯罪者を支えるという弁護士の本懐に照らせば、そういうことになるでしょうね。損害賠償額や過失割合などについて交渉を行おうとしたところ、加害者が弁護士を通じて、いきなり示談を申し出てきたんです。事故を起こしたことによる道義的責任も果たそうとしない加害者に対して、怒りを通り越して呆れてしまいました。こちらも弁護士に確認したところ、事故の当事者同士が口頭で交わした約束も、事故当事者が成人同士であった場合、示談が成立したとされるそうです。事故直後の口約束やメモなどで示談成立となった場合、例えば、通院が長引いて治療費が予想を上回ったとき、後に後遺障害が判明したとき等でも、損害賠償金を増額させることができないということになります。示談というタイトルではなく、念書や覚書と書かれていても、署名捺印してしまえばその内容は示談として有効なものになってしまうようですね。双方が納得するまで話し合いを続けようと考えていましたから、すぐには応じませんでした。それが気に入らなかったのでしょう。加害者らしからぬ態度を見せたのです」
 藤堂氏はコーヒーを一口すすった。
「加害者は、社会的地位の高い職業の方ですか」
「医者です。当時は勤務医であり、半年後に開業するということでした」
 藤堂氏はふっと息を吐き
「計画は頓挫したそうです」
「しかし、彼は逮捕されませんでした。治療や入院を要する状況であったということで、身柄を拘束して取り調べなどの捜査をすることができなかった。それで逮捕しないという判断がされたのでしょう。逮捕の理由に加えて、逮捕の必要性についても認められなかったということでしょう。入院して体の自由がきかない状況では、逃亡や罪証隠滅をはかるのは困難であると考えられた可能性があります。ただ、私はそれだけではないと考えていますがね。詳細は控えますが、加害者周辺に社会的地位の高い方がいらっしゃいます」
 藤堂氏は視線を上げ、虚空を見つめた。
「加害者周辺の社会的地位の高い方についての詳細はお聞きしませんが、人間関係について何か知っていることがあれば聞かせいただけますか」
 藤堂氏は、虚空から一気に視線を下した。
「加害者周辺? なんでまた。役に立たない情報でしょう。対象からどんどん離れていきますよ。出版社の方は相当幅を広げて取材しているのですね。そういうのって、役に立つことはあるのですか。空振りが多いような気がしますが」
「はい。おっしゃるとおりです。取材したものがすべて活字になることはほとんどありません。まったく記事にならないこともあります。目的やテーマを持って情報を収集していますが、当たってみて、見当違いや、気づかなかったことが出てくることもあります。いいえ、そのほうが多いですね。だから、取材は難しいのです」
 連は藤堂氏を改めて見据えた。藤堂氏の目に若干の憐憫の色が宿る。
「私は証券業界のことはよくわかりませんが、藤堂さんのお仕事とは趣が異なるような気がします。出版業界の事情を訴えるのは好きではありません。それぞれの業界には、それぞれの事情があると思います。先ほど申し上げたのは、わたくし中野個人の心掛けです」
 連は軽く頭を下げた。
「中野さんは株取引を行ったことはありますか」
「いいえ、ありません。きっと、一喜一憂しながら自滅すると思います」
「ははっ」
 藤堂氏が笑った。目に柔らかな光が宿る。
「まあ、株式投資には色々な取引があります。気軽に始められるのもあります」
 連を一瞥すると、窓に視線を移した。道を行き交う人々を追っている。再び、連に視線を戻す。
「加害者である唐松(からまつ)幸三(こうぞう)は反省していないでしょう。内心はもちろん、表情からもうかがえなかった。なんで俺が加害者なんだ。そんな顔をしていましたよ。思い出したくもなかったが、今回のさくらの件で頭によみがえったのも事実です。両親と子供、二度殺されているわけです」
 間があり
「唐松幸三には家族がいます。奥さん、子供が二人かな。両親は健在、弟が一人。もちろん、家族に罪はありません。私が申し上げているのは、加害者周辺の人たちのことを伝えているだけです」
「はい」
「ハンドルを握っていたのは兄のほうですが、弟が同乗していたんです。弟の証言について伝わってきたのですが」
 藤堂氏はコーヒーを一口すすった後、苦虫を噛み潰した。
「目撃者の一人としての証言なんですけど、まあ加害者寄りになりますよ。相手の車、つまり、弟夫婦の車がセンターラインを越えそうになったので、驚いて、ハンドル操作を誤ってしまったと証言しているんですよ。タイヤ痕が残っていないので、真偽のほどはわかりませんが、嘘であると思っています。ドライブレコーダーを搭載していれば真実は一目瞭然であったと思いますが、事故当時の映像がありませんので、得体のしれない圧によって事実を操作することもできますよ。警察官は現場を確認するだけです。損害賠償という民事の部分については一切タッチしません。事故の当事者が交通違反をしているかどうか、刑事罰に該当する可能性があるのかなどについてしか興味がないんです。過失割合については民事の問題であり、警察が関わる仕事ではありません。示談交渉においては当事者の合意で決め、訴訟では裁判官の判断で決めるものです。だから、唐松の弟は、唐松幸三にとって有利となる事実を実況見分調書に記録してもらいたかったのでしょう。双方の言い分が食い違う場合は、それも踏まえて記録してもらうしかないのですが、弟夫婦は亡くなりました。だから、弟夫婦の主張は抜け落ちてしまいました」
 藤堂氏は掌底でテーブルを叩いた。ソーサーの上でコーヒーカップが躍る。
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赤井です。今回は「恋愛小説」です(笑)。 舞台は令和7年と昭和20年の陸軍航空隊の特攻部隊の宿舎「赤糸旅館」です。 80年の時を経て2つの恋愛を描いていきます。 「特攻隊」という「難しい題材」を扱いますので、かなり真面目に資料集めをして制作しました。 「第20振武隊」という実在する部隊が出てきますが、基本的に事実に基づいた背景を活かした「フィクション」作品と思ってお読みください。 日本を護ってくれた「先人」に尊敬の念をもって書きましたので、ほとんどおふざけは有りません。 過去、一番真面目に書いた作品となりました。 ラストは結構ややこしいので前半からの「フラグ」を拾いながら読んでいただくと楽しんでもらえると思います。 全39チャプターですので最後までお付き合いいただけると嬉しいです。 それでは「よろひこー」! (⋈◍>◡<◍)。✧💖 追伸 まあ、堅苦しく読んで下さいとは言いませんがいつもと違って、ちょっと気持ちを引き締めて読んでもらいたいです。合掌。 (。-人-。)

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
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 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

25年目の真実

yuzu
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結婚して25年。娘1人、夫婦2人の3人家族で幸せ……の筈だった。 明かされた真実に戸惑いながらも、愛を取り戻す夫婦の話。

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