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序章
夢、そして…
しおりを挟むーーーーーー10年前の俺がいる。
俺の脚にしがみつき、放そうとしない女の子がいる。
10年前の妹だ。
「いやっ!いっしょにいくッ!!」
「優香、わがまま言うなよ…お兄ちゃんは、必ず優香を迎えに来るから……」
俺は優香を必死に宥めようとする。
今日、俺と妹は互いに新しい親の元引き取られる事になっていた。
父さんと母さんが死んで1ヶ月程経とうとしていた頃だった。
駆け落ち同然で結婚をした父さん達に、頼れる親戚などいなかった。
だから、葬式には俺と妹で静かに行われた。
俺は15だったし、金は父さん達の遺した貯金が少しあったから バイト先の店長にいろいろと教わり助けてもらったりしながら、なんとか葬儀をする事ができた。
大体、息子と娘を残して深夜にボーリングなんてしに行くから、車ごと事故に遭い二人してこんな目にあうんだろ…
バチが当たったんだよ…ふざけんな…くそじじい…
葬儀の最中、怒っても仕方ない事をいつまでも心の中で言い続けていた。
そうでもしていないと、俺はどうにかなってしまいそうだった。
そんな俺達に、新しく保護者になってくれる親戚はおらず、俺達は1ヶ月ほど貯金を使いながら、家で生活をしていたが…それも出来なくなり、一旦施設に入れられた。
が幸いにもすぐに養子として迎え入れてくれる人が見つかった。
…俺と妹と
別々の人達に。
施設の外の小さな駐車場には、2台の車と、4人の大人が居た。
妹の隣には、新しく親になる若い夫婦の人達が立っていた。
俺の後ろには、新しい義父さんと義母さんがいる。
「宏樹くん…私達は先に車に乗ってるから、妹さんとゆっくり話すといい」
義父さんは俺に優しく声をかけ、義母さんと一緒に車に向かった。
義父さんはこの時から気の付く人だった。気配りが出来るというか、人の心の機微に敏感な人だった。
仕事が秘書という事があるからかも知れない。
お陰で俺は、引き取られてからすぐに新しい家族に早く馴染むことが出来たのだったから。
いやだいやだとぐずる妹に、困ったように頭をかく男性。それを、仕方ないわ…まだ幼いんだから。待ってあげましょう、と諭す女性。
「すいません五條さん…お待たせして…もう少し説得します」
「あっ、いや 良いんだよ。ゆっくり話しててもらっていいよ」
困ったような、優しそうな表情で、少し複雑そうに五條さんは笑った。
「すいません…ありがとうございます」
俺は妹の目線に合うようにしゃがみこむ。
「…優香、お兄ちゃんが優香に嘘ついた事…あったか?それに俺はもう15なんだ。学校を出たらすぐに就職をして迎えに来る」
頭を撫でながら、俺は必死に説得する。
優香は悲しそうな目をしながらも、なんとか納得してくれた。
「…えっく…ほんとに…むかえにきてくれる…んだよね…?」
目からこぼれ落ちる涙。
幼稚園児の妹にとって、親がいなくなって俺だけしか家族がいなくなり、離れる事は本当にいやでいやで仕方なかったはずだ。
「ああ!本当だよ。お金を貯めて、優香の事を迎えに行く!…だから、信じていい子で待っててほしい」
「うん…ゆうか、おにいちゃん…のこと…まってる。…えっく……ゆび…きりげんまん…!してっ…ぅ、うー…」
泣きながら、嗚咽と鼻水だらけになりながらも、必死に俺と約束をしようと、妹は震える小指を差し出す。
「…ゆーびきり…げんま…」
「嘘ついたら」
「…っ、はーり…せん…ぼ…ん…っんく…」
「…飲ーます」
「…ゆっ、ゆー…び…きった……」
指が離れ、わんわん泣き叫ぶ妹を抱き上げて、五條さんに託す。
俺が無力なばかりに、妹まで辛い目にあわせなくてはならない。痛む心を無視して俺は義父さん達の車に向かう。涙なんて見せない。
妹は相変わらず泣き続けていたが、振り向いたら俺も妹もダメだと。一歩一歩あるき続けた。
「っ、分かってくれてありがとう…絶対……絶対迎えに来るからな…!!」
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