俺がメイドで妹ご主人!!?

麻苺 遊奈

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1日目

宏樹side.

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屋敷に着くまでの間に何とか割り切ることができた…

何はともあれ、食っていかなきゃならない!

その為ならメイドさんになろうが、オカマになろうが関係ない!!

…あ、いや、やっぱオカマは…

25にもなって親に食わせてもらうのも情けない話しだし、夢を語るにしろ叶えるにしろ生きてるのが大前提だからな!!

…頑張れ……宏樹……

……負けるな……宏樹……

……………くじけんな……宏樹……


(クスッ)


心の準備をしていると、有馬さんが俺を見て笑った。

「どうかしたんですか?」

「失礼しました。篠田様があまりにコロコロと表情が変わるものですから、つい」

 どうやら一人百面相をずっと見られていたようだ。

…………。

………………。

……………………もっと早く突っ込んでよ………




 屋敷に入ると、中も想像以上だった。

広さもだが、調度品は恐ろしく高級なんだろう。照明、壷、絵画、彫像………俺が見ても高級とすぐに分かるようなものから、落書きやガラクタにしか見えないものまで多種多様だ。そして、それらはゴテゴテと嫌味ったらしく並んでいるのではなく、さりげなく品よく並んでいる。それに……

「あれ?」

「どうかされましたか?」

 有馬さんが俺の呟きに反応し、少しどぎまぎする。

「あ、いえ、あの、なんて言うか………一つ一つはよく分かんないんですけど、全体が凄くまとまってるっていうか……凄くセンスよく配置されてるなって…………」

「そうですか。屋敷内のレイアウトはお嬢様がお決めになってます。もしかしたら、篠田様とご趣味が合うかもしれませんね」

「はあ………」

 ニッコリと笑う有馬さんに、俺は曖昧に頷いた。

本当は、そんなことで声が漏れたんじゃない。妙な既視感を感じたからだ。

既視感?

いや、それとは違う。

自分だったら、ここに置くだろうなと考える物が、正にそこにあるのだ。ここまで趣味が合う人間がいるのだろうか?

首を捻りつつ、俺は有馬さんの後ろについて、お嬢様の部屋に向かった。




連れこられた部屋は、女の子らしさは皆無の部屋だった。女の子の部屋というよりは、会社の重役の部屋に近いイメージだろう。

机も重量感タップリの貫禄があり、その上には書類らしきものが積んであった。よく見ると、書類は履歴書だ。

カチャリ

有馬さんがお嬢様を呼びに行ってる間に、無遠慮に部屋を観察しまくってたので、ドアの開く音にドキリ心臓が跳ねる。

「お嬢様、こちらが篠田様です」

「あ、は、はじめまして!篠田宏樹と言いま」

あれ?

この子は………?

「……………ゆううううううううかああああああああああ!!!!!!!!!!」

ドンッ!!

ハレ?何で床が目の前に??おまけに右腕が痛い??何で????

「お嬢様に飛び掛かるのはやめて下さいね」

 有馬さんの言葉で何となく状況が飲み込めた。

俺は『お嬢様』を見た瞬間に飛びついたらしい。で、その俺を『お嬢様』の傍にいた有馬さんに取り押さえられた、ということみたいだ。

だけど、『お嬢様』って……

「優香……だよな?」

 有馬さんに取り押さえられながら見上げたその顔は、どこかしら冷たい表情ではあったが、美しく成長した優香だった。

腹の底から熱いものが込み上げてくる。良かった……生きてたんだ……

「あら、気づいたの。面白くないわね」

 恐ろしく素っ気なく、冷たく言い放つ。

その声色にカッと血が上った。

「なっ!お兄ちゃんに向かってなんだ、その言いか」

「何が『お兄ちゃん』よ。今まで探しもしなかったくせに」

吐き捨てるような言葉が胸に突き刺さる。違うんだ、優香……その言葉が喉まで出かかって、すぐに引っ込む。

「まあ、いいわ。有馬、放してあげて。話しづらいわ」

 優香の言葉を受け、有馬さんが俺を解放した。

優香は自分の机に座り、言葉を続ける。

「基本的な屋敷内のルールは、このファイルに書いてあるわ。それとお兄ちゃんの場合は、私のお兄ちゃんってことを隠しておいてもらうわよ?お兄ちゃんみたいな下品な男の妹なんて知られたくないもの」

 優香が薄く笑う。

優香の言葉にムッとしながらも、負い目のある俺は何も言えなかった。

「あと、細々したことはメイド長に聞いて。有馬、篠田をメイド長のところに案内して」

「分かりました。それでは篠田様、こちらへ」

 俺は優香の他人行儀な呼び方に肩を落しながら、部屋を出た。




扉を閉めた途端、一気に力が抜け、座り込んでしまう。

あ~俺が悪いのかな……いや、でも探しようがなかったし……つっても、やろうと思えば探偵雇うなり、何なり出来たはずなのにやってなかったんだし……でも、そんな金もないし……あ、義父さんから借りるってことも出来たな……あ~でも、これ以上、迷惑掛けれないし……いや、義父さん達なら貸してくれたかな~……あ、涙が…

「大丈夫ですよ」

俺の様子に見かねたのか、有馬さんが肩を叩きながら慰めてくれる。

「だ、だってぇ~」

「言い方は厳しいですが、貴方のことを考えて言ってくれてましたよ?」

「そうなんですか?」

 自分でもビックリするくらい情けない声だ……ハァ~

「ええ。こちらのお屋敷に来られてから、少し厳しい方になられましたが、根っこは変わっておられません」

「けど………」

「今は分からなくても、そのうち分かります」

 有馬さんはニッコリと笑いかけ、ハンカチを差し出す。

「メイド長に挨拶に行く前に、涙と鼻水、拭いたほうがいいですね」




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