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統治をしている者は誰ぞ
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お父上様は、部屋に入って行き。凛実の方様の前にしゃがまれ、抱きしめて。
「凛実よ。ありがとう。良く頑張ったな。後は私が……」
凛実の方様に、労わりのお言葉を掛けられると。
「はい。殿様……暖かきお言葉ありがとうございます」
凛実の方様は、お父上様を見つめ。瞳を潤ませ、深々と頭を下げると。私達の所へ。
その様子を、見届けてから、お父上様は上座に腰を下ろされたの。
私は、凛実の方様を抱きしめて。
「凛実の方様。お疲れ様でした……私は、人に甘える事が苦手で……私や湖紗若様を本当の子供のように愛して下さったのに……時に、心を閉ざして失礼な態度を取ってごめんなさい。感謝しています。ありがとう」
「楓禾姫様……もったいないお言葉……」
言葉にならない凛実の方様は、号泣されて。
「母上様……」
鈴兄上様が、瞳を潤ませながら凛実の方様のお背中をさすって。稜弥様、詠史殿、なずなの瞳も潤んでいる。
私も涙溢れて。
しかし……
「何だ。この茶番は。理由もなくこんな事をして。分かっているのだろうな?」
この期に及んでも、外喜は。尊大で不遜で。不愉快極まりなくて。
己の抱く野心に捕らわれ て。お父上様の態度に言葉が、いつもと違う事に気付く事も出来ない……気付いても受け入れたくないのか……
「外喜よ。そなたこそ、己の置かれた状況を分かっていないようだな。少なくとも二つの罪を犯しているというのに」
「何を馬鹿なっ」
いつもお優しいお父上様……微笑まれているけど、瞳は笑ってなくて。
初めて見るお姿。
私達は、固唾を飲んで見守るしかなくて。
「私達が、そなたに掛けている嫌疑の一つは、これから調べねば白黒付かぬがな。外喜よ。なぜ、何の届け出もなく会議をすっぽかしたのだ?」
「誰に向かって物を言ってるのだ!」
「その言葉、そっくり返す! 桜家を。稜禾詠ノ国を統治しているのは誰ぞ!?」
ギリギリと歯ぎしりしている外喜。
「私が、会議を開くと布令を出したのだ。休む理由を届け出るのはそなたの義務ぞ。これから吟味する案件。会議を休んでまで、私的な茶会を開いた理由を明らかにしてもらう。二つ目は、なずなを拉致し西櫓に閉じ込めた。これを罪と呼ばずして何とする?」
真っ赤な顔して、お父上様を睨み付けている外喜。
「私も、これまで『私』を優先したから、責任は取るつもりだ。最後の私の務めとして。そなたの事を徹底追及する。外喜……人の上に立ち、国の統治を行う事を望む者が、下の者を大事にしないでどうする? 今回の件で、見張りや使い番をしていた者達に、こちらに内応するように。と説いたら何人もが応じたぞ。計画や、これまでの事も、少しだが聞き及んでいる。言い逃れは出来ぬぞ。そなたに失望している者達のなんと多い事か……今は、東櫓に留め置いているのだが。外喜は、私達の目の届く、多聞櫓《たもんやぐら》にて勾留するとしようかな……なずなを。女性で、しかも子供のなずなを暗い櫓に閉じ込めるなど……言語道断! 覚悟しておけ!」
青ざめて震えている外喜。
(ようやく事の重大さに気が付いたようね)
多聞櫓に連れて行かれる前に……
「外喜……私からも言いたい事があります」
そう伝えて。
項垂れた外喜を冷ややかな目で、見つめておられたお父上様が。
「楓菜姫様……ようやく、約束を一つ果たしました……」
そう呟かれると。瞳にみるみるうちに涙を溢れさせて……
お母上様が、ま四角の形の布に刺繍を施された。大切になされている、四つ折りにした手拭き布を、襟元より取り出されて……
涙を拭われたの。
「凛実よ。ありがとう。良く頑張ったな。後は私が……」
凛実の方様に、労わりのお言葉を掛けられると。
「はい。殿様……暖かきお言葉ありがとうございます」
凛実の方様は、お父上様を見つめ。瞳を潤ませ、深々と頭を下げると。私達の所へ。
その様子を、見届けてから、お父上様は上座に腰を下ろされたの。
私は、凛実の方様を抱きしめて。
「凛実の方様。お疲れ様でした……私は、人に甘える事が苦手で……私や湖紗若様を本当の子供のように愛して下さったのに……時に、心を閉ざして失礼な態度を取ってごめんなさい。感謝しています。ありがとう」
「楓禾姫様……もったいないお言葉……」
言葉にならない凛実の方様は、号泣されて。
「母上様……」
鈴兄上様が、瞳を潤ませながら凛実の方様のお背中をさすって。稜弥様、詠史殿、なずなの瞳も潤んでいる。
私も涙溢れて。
しかし……
「何だ。この茶番は。理由もなくこんな事をして。分かっているのだろうな?」
この期に及んでも、外喜は。尊大で不遜で。不愉快極まりなくて。
己の抱く野心に捕らわれ て。お父上様の態度に言葉が、いつもと違う事に気付く事も出来ない……気付いても受け入れたくないのか……
「外喜よ。そなたこそ、己の置かれた状況を分かっていないようだな。少なくとも二つの罪を犯しているというのに」
「何を馬鹿なっ」
いつもお優しいお父上様……微笑まれているけど、瞳は笑ってなくて。
初めて見るお姿。
私達は、固唾を飲んで見守るしかなくて。
「私達が、そなたに掛けている嫌疑の一つは、これから調べねば白黒付かぬがな。外喜よ。なぜ、何の届け出もなく会議をすっぽかしたのだ?」
「誰に向かって物を言ってるのだ!」
「その言葉、そっくり返す! 桜家を。稜禾詠ノ国を統治しているのは誰ぞ!?」
ギリギリと歯ぎしりしている外喜。
「私が、会議を開くと布令を出したのだ。休む理由を届け出るのはそなたの義務ぞ。これから吟味する案件。会議を休んでまで、私的な茶会を開いた理由を明らかにしてもらう。二つ目は、なずなを拉致し西櫓に閉じ込めた。これを罪と呼ばずして何とする?」
真っ赤な顔して、お父上様を睨み付けている外喜。
「私も、これまで『私』を優先したから、責任は取るつもりだ。最後の私の務めとして。そなたの事を徹底追及する。外喜……人の上に立ち、国の統治を行う事を望む者が、下の者を大事にしないでどうする? 今回の件で、見張りや使い番をしていた者達に、こちらに内応するように。と説いたら何人もが応じたぞ。計画や、これまでの事も、少しだが聞き及んでいる。言い逃れは出来ぬぞ。そなたに失望している者達のなんと多い事か……今は、東櫓に留め置いているのだが。外喜は、私達の目の届く、多聞櫓《たもんやぐら》にて勾留するとしようかな……なずなを。女性で、しかも子供のなずなを暗い櫓に閉じ込めるなど……言語道断! 覚悟しておけ!」
青ざめて震えている外喜。
(ようやく事の重大さに気が付いたようね)
多聞櫓に連れて行かれる前に……
「外喜……私からも言いたい事があります」
そう伝えて。
項垂れた外喜を冷ややかな目で、見つめておられたお父上様が。
「楓菜姫様……ようやく、約束を一つ果たしました……」
そう呟かれると。瞳にみるみるうちに涙を溢れさせて……
お母上様が、ま四角の形の布に刺繍を施された。大切になされている、四つ折りにした手拭き布を、襟元より取り出されて……
涙を拭われたの。
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