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楓禾姫となずな

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  -三日後 瑠璃の海-

 私は楓禾姫様にお誘い頂き、浜辺に敷物を敷いて話をさせて頂いていた。

 すぐ、傍では、湖紗若様と瑠璃様が砂山を造り競争されている。



 とても幸せな時。

「五日間あっという間だったわ。なずな、明日帰ってしまうのね。寂しいわ」

「そうですね。私も寂しいです」

 楓禾姫様と湖紗若様が、稜禾詠ノ国から旅立たれたと知った時の怖さ。焦燥感。


「でも、二度と逢えなくなる訳じゃないもの。鈴兄上様と喧嘩したら瑠璃ノ島に来ると良いわ」

「うふふ。そういう使い方もあるのですね」

 鈴様と供に、楓禾姫様と湖紗若様の消息が分かった時に安堵して。

 これから、稜禾詠ノ国を背負って立たれる鈴様の不安なお気持ちが伝わって来て。 生涯お支えするのだ。と誓いつつ、私も不安でたまらなくて。

「 ごめんなさい。冗談が過ぎたわ。これからも稜禾詠ノ国と、瑠璃ノ島を お互いに行き来しましょう。なずな」


「はい。楓禾姫様。こうしてこれからの事を楓禾姫様とお話しさせ頂けて、不安な気持ちが少し和らぎましたわ」

 思わず不安な心情を吐露してた。勝手に溢れてくる涙。楓禾姫様も泣いておられて。

「そうよね…… こちらに来てから自分の事ばかりに精一杯で……なずな。これからも逢えるけど、 あえて言うわ。今まで私と湖紗若様を支えてくれてありがとう。なずなが居てくれたから、時に辛くて悲しいと思う日々も頑張ってこられたの。なずなは、 自分の事より人の事を優先するような優しい子で 、一生懸命過ぎて…… 心が苦しくなって辛くなったら鈴兄上様に甘えてね…… 頑張り過ぎないように。鈴兄上様と二人で助け合って、新しい稜禾詠ノ国を作り上げて行けば良いのだから」

 そうよ。私だけが 不安な分けじゃないのよね。楓禾姫様も、外喜様との事で心身共に疲れているのに。 生まれながらにして、上に立つ者としての運命からは……瑠璃ノ島を治めて行く不安もおわりでしょうに。 私の事を気遣って下さる。お優しいのは楓禾姫様です。

「楓禾姫様と湖紗若様のお心が壊れて。 いつか倒れてしまわれるのではないかと心配でした。お二方共、 お互いを想い、守る為に。お饅頭の大きい方を食べようとなさっていましたよね? もしすり替わっていなかったら……どうなっていた事か…… お気持ちは分かります。でも悲しむ人間がいるという事をお忘れにならないで下さい」

 あの時の、楓禾姫様と湖紗若様の覚悟を思えばこんな事言ってはならないのに……

「その言葉をそっくり返すわ。外喜の手の者に背負い投げをし掛けるなんて。けど、私と湖紗若様の所に来ようとしてくれたのよね。ありがとう。なずなも悲しむ人間がいるという事を忘れないで」

 そう言われると、私を抱きしめて下さった楓禾姫様。小さく嗚咽をもらしておられて。恐れ多いけれども、私も楓禾姫様のお背中に手を回して。私も泣いてしまって。

「フウひめ さまも なずなも たいせつなひとです。ムリしてけがしたら、リンにいさまも リョウヤも エイシも かなしみます。わたしも」

 湖紗若様……


「湖紗若様こそ……湖紗若様に何かあったら……私は……瑠璃様という大切な方がお出来になられたのですから……」

 私は、湖紗若様と瑠璃様も抱きしめさせて頂いて。ご自分を大切になさって下さい。 そうお伝えしたかったのに涙が溢れて……

「ごめんなさい。なずな。じぶんも たいせつにする。そうでしょ?」


「はい。湖紗若様」


「そうね。鈴兄上様となずな。湖紗若様と瑠璃ちゃま。稜弥様と詠史殿と私。大切な人の為にも、相手の悲しむ事をしてはならないのよね」


 稜禾詠ノ国に帰る前に、楓禾姫様と湖紗若様と話をさせて頂けて良かった……

 一気に何でも完璧にやろうとしないで、少しずつ。自分の出来る事から。行って。増やしていって。不安や、分からない事は鈴様に相談して。


 それで良いのよね。






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