上 下
76 / 133

幸せな空間 『早く帰って来るんだよ』

しおりを挟む
 英士side

 お年寄り達一人一人と
 話をしている風歌ちゃんとるなちゃん

 施設側では 、それ所ではない事態に見舞われて。 ここから見えるガラス窓の向こう……職員室の中で、お通夜のように座ってるのが見える

 長谷川さんが御厨くんに、社長に呼ばれて労って下さったという話をしていて……

 御厨くんは

 涼也「正義が不正義に負ける訳無い。ですよ……俺だけじゃない。るなちゃんとふうちゃん、ご家族と支援者達……負けたくなかったから……」

 そう答えたんだ

 英士「社長さんさ、今頃声掛けるとか何考えているんだろうね?」

 涼也「『事を荒立てないでくれ』 散々言われましたからね……それから考えたら……けど、はっきり言って遅いんだよ! って言いたいですけどね」

 英士.涼也「『 我々は、施設側のあなた達への態度に憤ってるんですよ』って感じを出してるのが腹立つ。これから、施設側とどんな距離感で付き合えばいいか? 会社の事情を考えてるんだろうね」

 英士.涼也 《……》

 涼也「るなちゃんと、ふうちゃんは、素直に自分達の事を考えて下さったんだ。って思うんだろうけど……俺達はひねくれてますからねぇ」

 英士「オイラ達はひねくれてるからねぇ。物事を斜めにしか見れないよね……素直な風歌ちゃん、るなちゃんと違って」

 涼也「こんなひねくれたヤツだ……って知ったらるなちゃんは……」

 英士「こんなひねくれたヤツだ……って知ったら風歌ちゃは……」

 英士.涼也「離れて行くかも……」

 英士.涼也 《き、気を付けなきゃ……》

 なんてバカな事考えちゃったんだ

 風歌ちゃんと、るなちゃん、御厨くんは今、畳部屋にいらっしゃる入居者の皆さんと話をしているんだけど

 施設側との
 あまりにも違い過ぎる空間 
 暖かな
 そして
 泣きたくなる様な幸せな空間
 美しい絵の様だな……

 オイラは遠くから見つめてた

 風歌「新川さん、お出掛けですか?」

 入居者の新川さんが立ち上がられてさ

 新川「子供の夕飯作りに帰るんだよ」

 るな「気を付けて帰って下さいね」

 新川「アンタ達も、早く帰って来るんだよ」

 って

 新川さんの言葉……まるで
 ここ(施設)で待っているよ
 って言ってるみたいでさ……

『早く帰りなさい』
 じゃなくて
『早く帰って来るんだよ』

 風歌ちゃんと、るなちゃんは

 風歌.るな「はい。早く帰ります」

 って答えてさ

 オイラも交じりたいなぁ
 なんて考えてたら

 吉井「え、いし、くん」

 吉井さんに呼ばれたから
 側に行きしゃがむと

 吉井「が、んば……った、な」

 オイラの頭をポンて
 沢山、沢山
 撫でて下さったんだ






しおりを挟む

処理中です...